マネジメントとリーダーシップの違いとは?学ぶための本や研修も紹介

マネジメントとリーダーシップ、共に組織やチームをまとめ上げるには欠かせない要素として知られています。

しかし、両者の定義や、求められる能力にどんな違いがあるのか、曖昧な人も少なくないのではないでしょうか。

この記事では、マネジメントとリーダーシップの相違点や、組織内で果たす役割などを明確化し、それぞれの能力・スキルを習得するのに最適な書籍や研修を紹介していきます。

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1.マネジメントの定義

マネジメントは、「経営」「管理」を意味する英語「management」をカタカナ表記した言葉です。

managementを、経営学における専門用語として最初に用いたのがアメリカの経営学者ピーター・F・ドラッカーでした。

現代経営学の父とも称される彼は、その著書「マネジメント」のなかで、マネジメントを「組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関」と説明しています

すなわち、マネジメントとは、組織の目標達成のための、計画立案、進捗状況の管理・分析、必要に応じた修正などを通じて、組織運営の維持と発展を担う能力や機能のことです。

より端的には、ヒト・モノ・カネといった経営資源を適正管理する役割と捉えることができます。

2.リーダーシップの定義

リーダーシップとは、英語の「leadership」をカタカナ表記したもので、組織の目標達成のため、自発的な行動と共にチームメンバーを適切に導いていく能力を指す言葉です。

リーダーシップは、先述したピーター・ドラッカーやロングセラー「7つの習慣」を著したスティーブン・R・コヴィーらにより、多角的に定義づけられてきた背景があります。

共通点をまとめると、組織が進むべき明確なビジョンを定めること、積極的に問題解決を図りながら集団活動を維持し導いていくことなどがポイントとして挙げられます。

主に座学を通じて習得する一般的スキルとは異なり、人間性や行動力といった要素が大きく関わっているのが特徴です。

3.マネジメントとリーダーシップの違い

それでは、一見混同しやすいマネジメントとリーダーシップの違いをまとめていきましょう。

ネジメントとリーダーシップの定義の違い

先に紹介した両者の定義の違いを噛み砕いてまとめると、マネジメントはどちらかといえば、管理・調整・修正など「現在」の状況をやりくりする視点に基づいて行われます。

そのため、短期的な見通しを重んじ、現実志向の意思決定を繰り返していくのがマネジメントです。

一方、リーダーシップにおいては、戦略やビジョンといった企業が「将来」進むべき道を示すことが最大の焦点となります。つまり、一定のリスクを負いつつ、中長期的な視点で常に先を見据えた意思決定を行っていくのがリーダーシップです。

チームで果たす役割としての違い

マネジメントは、目標達成のために集団活動の維持・調整を担い、チーム全体の推進力へとつなげていきます。

リーダーが示した方向性を実現するため、戦術面の細かな策定を行うのがマネジメントにおける主な役割です。具体的には、業務の進捗状況からメンバーのパフォーマンス・健康状態・規則や秩序の遵守に至るまで包括的な視点で管理することが求められます。

プロジェクト進行の遅延、人員不足やその他トラブルなどが発生した際は、臨機応変に調整を行い、チーム活動全体を支えなければなりません。

このように、リーダーシップに求められる役割と比べ、具体的かつ実務的な側面が強くなっています。

リーダーシップは、中長期的に何を目指すのかというビジョン設定の段階で重要な役割を果たします。

「どうするか」に主眼を置くマネジメントに対して、リーダーシップでは「何をするか」をメインに発案します。

また、マネジメントは「維持」「調整」という言葉に代表されるように、業務活動や秩序の保持に注力しますが、リーダーシップは将来を見据え、既存のやり方やシステムを変革する役割を担うことも少なくありません。

さらに、チームの士気を高め鼓舞する、メンバーのモチベーションに気を配るといった定性的な役割が求められるのもリーダーシップならではの特徴です。

求められる能力の違い

まず、マネジメントにおいて特に求められる能力や特徴は、客観的・論理的思考力、計画策定力、観察力、管理調整能力、人材育成力などが挙げられます。

適切なマネジメントを実践するには、あまり遠くの目標ばかりに気を取られるのではなく、現実的思考に基づき現状の組織運営に何らかの歪みや課題が見られないか注視しなければなりません。

また、各メンバーから上がってくる報告やアイディアを公平な視点で捉え、集団全体の利を考慮できる冷静な思考力が求められます。

さらに、こうした論理的判断をベースとしながら、チーム全体の雰囲気や各メンバーとの信頼関係を良好に保つコミュニケーション能力も大切な要素となります。

そして、優れたマネジメントにおいては、各メンバーの業務を評価するだけでなく、数年後を視野に入れた各々のキャリア開発支援に前向きに関わっていく姿勢が必要です。

リーダーシップに必要な能力や特徴としては、目標設定力、意志力、先見性、決断力、行動力、誠実さ、カリスマ性(人間的魅力)、創造性などが挙げられます。

まずリーダーは、ビジョン設定において、経済や業界の動向、これから企業が進むべき方向性などを適切に把握し(先見性)、チームメンバーのモチベーションを十分引き出せる最適な目標を示す必要があります。

また、予期せぬ事態や困難な状況に直面した際には、チーム全体で方向性を再確認し、力強く先導していく意志力や行動力が問われるケースも少なくありません。

「このリーダーなら信用できる」とメンバーに思わせるだけの人望や誠実な人柄もリーダーシップには求められます。

そして、優秀なリーダーは既存の枠組みを打破し、新たな価値を創造するきっかけをも作り出します。単に自身の発想のみに頼るのではなく、チームメンバーの創造性を見出し、適切に育んでいく姿勢も重要です。

4.マネジメントとリーダーシップの違いを学べる本

ここでは、マネジメントとリーダーシップの違いを学ぶために、おすすめの書籍を紹介していきます。

「リーダーシップとマネジメントの違い」/ジョン P. コッター著(ダイヤモンド社)

1つ目は、ハーバードビジネススクール名誉教授ジョン P. コッターが執筆した論文をまとめた電子書籍です。

著者のジョン・コッターは、リーダーシップ論の権威として世界的評価を集めている人物で、数多くの経営者が彼の理論を学び実践に役立てているといわれています。

元々は「DIAMONDハーバードビジネス・レビュー(2011年9月号)」に掲載された論文を、ダイヤモンド社が翻訳・編集し2015年に電子書籍版として発売しています。

サブタイトルには「両者は補完関係にある」と記されており、まさに本文で扱っているリーダーシップとマネジメントの関係性を理解するうえで最適な1冊です。

著者は「複雑な状況」にうまく対処できる「冷めた」要素を含むのがマネジメント、「変化」に動じずうまく乗り越える「熱い」要素を伴うのがリーダーシップだと説いています。

そして、新しい環境への適応と競争の激化が避けられず、大規模な変革が求められる状況下ならば、より一層リーダーシップが求められるようになると主張しています。

過去に雑誌の一部に掲載されていた論文のため、ページ分量も少なく、短時間でリーダーシップとマネジメントの相違点と補完関係を体系的に学びたい人に最適です。

「最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと」/マーカス・バッキンガム著(日本経済新聞出版)

フリーのコンサルタント兼作家で、リーダー及びマネジャーの実践における世界的権威として知られるマーカス・バッキンガムが執筆した本作。

2006年に日本経済新聞出版より発売され、国内でもベストセラービジネス書籍としての地位を確立しています。リーダーとマネジャーの「たったひとつの本質的違い」を追求、調査と科学的アプローチに基づいた核心部分を提示した一冊です。

著者は、まず「よりよい未来に向けて人々を一致団結させること」がリーダーの考えるべき要点だと指摘しています。リーダーたる者、未来へのイメージを明確化したら、決して情熱的で弁舌に長けている必要もなく、とにかくアイディアが相手に明確に伝わるよう説得することがすべてだと説きます。

一方、マネジャーが唯一考慮すべきポイントは「部下の一人ひとりの特色を発見し、それを有効活用する」ことに限ると提示。マネジャーは、各々の部下の個性や強みをしっかり観察し、それらを活かして将来成功できる計画立案に専念すべきと著者は述べています。

一見、抽象的な印象を抱くかもしれませんが、本著は具体的にどのように行動すればいいのかも含めてわかりやすくまとめられているので、理解度が深まりやすいのが特徴です。

本著で示されたシンプルな法則に則れば、誰もが局面に応じてリーダーとマネジャーの特質を賢く使い分けることができるでしょう。

また、学術論文のようなタイプとは異なるので、堅苦しい文体に抵抗がある人でもスムーズに読み進めることが可能です。リーダーやマネジャーの立場にある人以外でも、有益な発見を得られそうな一冊となっています。

5.マネジメントとリーダーシップそれぞれの必要性

ここではマネジメントとリーダーシップ、それぞれの必要性を順に確認していきましょう。

マネジメントの必要性とは?

適切なマネジメントは、人材流出を防ぎ組織運営の安定性を高めるうえでも不可欠な要素です。

仕事への価値観やワーキングスタイルが多様化している現代において、各メンバーの働きやすさやモチベーションを加味したマネジメントが行われなければ、人材の定着率が上がらず、せっかく人材育成に割り当てた時間やコストが無駄になってしまうでしょう。

中長期的には、採用コストの増加や企業成長の鈍化といった問題にも直面することになります。

さらに、せっかく有望なアイディアがあっても、優れたマネジメントが行われなければその現実化の段階で行き詰まってしまうでしょう。

たとえば、プロジェクトの予算編成、リソースの割り当て、人員配置などの決定が適正に行われれば、アイディア実現に向けた現実的な第一歩を踏み出せます。

そして、企業文化やポリシーを会社全体で淀みなく実践するためにも、マネジメントの存在は欠かせません。もし、チームメンバーよりフィードバックがあった場合は、企業文化やポリシーの改善を図るなど、問題解決への具体的姿勢もマネジメントに期待されています。

リーダーシップの必要性とは?

リーダーシップとは、必ずしも集団のトップに立つものだけが持つべきスキルではありません。

リーダーシップが身についたビジネスマンは、より難しい課題でも前向きに挑戦する意識が高まるほか、各チームメンバーが動きやすい社内環境づくりへと自ずと貢献できるようになります。

また、確固たるリーダーシップの存在は、組織が硬直化し環境の変化に対応できなくなるリスクを抑えることにつながります。

マネジメント的視点だけに囚われていては、既存の枠組みを維持することばかりに注意が向き、スムーズな意思決定や変革への姿勢が失われるかもしれません。

予測困難な時代背景にあって、未来志向で迅速な判断を下せるリーダーシップの重要性は、今後ますます際立ってくるでしょう。

マネジメントとリーダシップは結局どちらも重要

ここまで見てきたように、マネジメントとリーダーシップでは対照的な個性が目立っているのは確かです。

ただ、年々複雑さと変化の度合いを増しているビジネス環境においては、マネジメントとリーダーシップ双方の視点を併せ持つことが重要です。

リーダーシップ偏重では、定量的視点に欠ける傾向がありますが、逆にマネジメントが過剰となれば、組織の生産性や風通しがかえって悪化するリスクもあります。

どちらか一方のスキルを優先する場合でも、マネジメントとリーダーシップを共に理解することは、中長期的に自身のキャリアへ有用な成果をもたらしてくれるはずです。

6.マネジメントとリーダーシップを学べる研修

続いて、マネジメントとリーダーシップを学べる研修を紹介していきます。

リーダーシップ・マネジメント研修(ビジネスコーチ株式会社提供)

2005年にビジネスコーチング業務を開始した、ビジネスコーチ(株)が主催するプログラムです。

研修では、主にリーダーとしての自己変革の促進や悪癖改善、経営幹部若返りによる環境適応、部下育成力強化、女性活躍促進やダイバーシティへの適応といった課題解決に取り組みます。

研修の企画に当たって、ビジネスコーチは、エグゼクティブ研修の第一人者であるマーシャル・ゴールドスミス博士と提携。彼は、コーチングやリーダーシップ論に関する数多くの著書を出しているほか、クライアントにはフォードモーター、ファイザーなど大手グローバルカンパニーのCEOを抱えることで知られています。

研修の最大の目的は、ゴールドスミス博士特有のノウハウをベースに、対話などを重視したコーチング型リーダーを育成することです。

理論のみに終始せず、受講者がすぐに実践できる具体的行動も多数紹介しています。また、受講者同士が1対1で向き合い、相互作用的に理解度を深められるピアコーチングの推奨などで研修の受けっぱなしを防止できます。

こうした研修を通じ、受講者はリーダーシップとコーチングの関係性を深く理解するとともに、現場を動かし、部下の自発性を高めていくコーチングスキルを身につけることが可能です。

リーダーシップ・マネジメント研修 まず変革すべきはリーダーだ – ビジネスコーチ株式会社 (businesscoach.co.jp)

リーダーシップ・マネジメント関連セミナー(SMBCコンサルティング提供)

SMBCグループの一員としてコンサルティング・教育事業に携わるSMBCコンサルティングでは、すべての階層に必要なリーダーシップと管理職としてのマネジメントスキルを養うための各種セミナーを企画しています。

セミナーの前提として、SMBCコンサルティングは、リーダーシップとマネジメントを極めて重要な経営の両輪として設定しています。

リーダーシップによって策定・浸透したビジョンを、マネジメント層が日々の業務へと落とし込む仕組みをベースとする一方で、リーダーシップ自体は社員全員が備えるべきスキルという考え方です。

開講セミナーの「信頼を築いて人を動かすリーダーシップ」では、リーダーシップとマネジメントの違いから入り、信頼を築くためのコミュニケーションスキルに着目。

コミュニケーションスキルに関わる体系的な理論を紹介する過程では「部下へ仕事を任せる」という現実的なテーマを掲げて「いつ任せる?」「どこまで任せる?」「何を・どのように任せる?」といった観点から理論と実践の横断的学習を行います。

部下に仕事を託すという日常的なやり取りを、学術的・科学的知見に基づいて紐解いていくため、参加者も高い興味関心を持って受講できるでしょう。

リーダーシップ・マネジメント|セミナー・研修情報|SMBCコンサルティング

マネジメントやリーダーシップは学んでこそより磨かれる!

マネジメントとリーダーシップは定義そのものも違いますし、チーム内での役割や能力の違いもあります。そのため、ビジネスシーンで両方のスキルを身につけておくことが重要です。

本文で紹介した経営・マネジメントの第一人者による書籍や実効性の高い研修への参加を通じて、マネジャーや一社員としても重要なノウハウを掘り下げてみましょう。

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