OKRとは?KPIやMBOとの違いと仕組みや導入へ向けた進め方

働き方改革が進む中、組織や社員の目標設定については企業として常に頭を悩ます問題です。いかにして社員のモチベーションを高め、企業を成長させ続けられるかが大きな課題になっています。

GoogleやFacebookなどの外資系企業やメルカリなどの国内企業が採用したことで、注目を浴びているのが「OKR」という目標管理のための手法です。今回は、OKRの考え方や導入方法などについて詳しく解説します。


1 OKRとは?

OKRとは「Objectives and Key Results」の略で、「目標と成果指標」を意味します。アメリカのIntelが初めて採用し、その後はgoogleFacebook、メルカリなどの先進的な企業が採用したことで注目されています。OKRの特徴は従来の目標設定の手法と比較しても、非常に短いスパンでの設定や評価が可能な点にあります。

OKRでは企業全体から部署、個人へと目標を落とし込んでいく過程で、密接なコミュニケーションが行われるという特徴があります。OKRは企業内で共有し、誰でも確認できるようにします。それにより、社内の積極的なコミュニケーションが増加し、社員同士が顔を合わせることが少ない大規模なプロジェクトでも、円滑に進めやすくなるというメリットがあるのです。

1-1 OKRのイメージ

 OKRのイメージを図にすると以下のようになります。

まずは、企業として達成すべき組織目標が設定されます。その下部に、部署やチーム、社員個人の目標と成果がついてきます。OKRは企業が定めた目標を達成するために設定されるもので、その実現のために社内全員でコミュニケーションを密にし、目標達成をめざしていくというものです。

 1-2 OKRKPIの違い

 OKRと似た目標管理の手法として、「KPIKey Performance Indicator)」があります。KPIは「重要業績評価指標」という意味で、目標達成のために必要なプロセスを確認するために使います。

KPIは達成が可能な現実的な目標を設定しますが、OKRは組織の活性化を目的に設定するため、通常では達成が難しいレベルの目標を設定します。そのため、OKRは目標達成のための過程を全社員からわかるように視覚化し、そのプロセスを共有するといった違いがあります。

1-3 OKRMBOの違い

 従来からある評価手法として、「MBOManagement by Objectives)」があります。MBOはアメリカの経営学者であるピーター・ドラッカーが提唱したもので、社員が目標を自分で設定し、それを達成できるかを評価の基準としています。日本でも成果主義を導入する企業の多くで導入されています。

MBOでは目標の達成率は100%に設定されています。MBOでは自分で決めた目標を達成し、年に1回の上司や管理者からの評価を経て、人事考課に反映させるのが一般的です。

OKRは「ストレッチゴール」という、自身が考えるよりも実現の難易度が高い目標設定を行います。達成すれば非常に嬉しく感じられるような目標が理想的です。目標を高く設定することで、仕事の優先度を意識した働き方ができるようになるのです。例え目標を達成できなかったとしても、その過程において社員の自己成長が期待できます。そして、OKRでは目標の6070%の達成率をめざし、達成できれば素晴らしい成果とみなします。また、MBOとは異なり、OKRは人事考課と切り離して考えるという違いがあります。

1−4 OKRKPIMBOの違い一覧

OKRとKPIMBOの違いをリスト化すると以下の通りです。

 

OKR

 

KPI

 

MBO

 

実施の目的

組織の成長・改善

目標達成のための

進捗状況の確認

報酬を決めるための

人事考課

共有する範囲

全社

部署・チーム

上司と社員

達成の水準

60〜70%

100%

100%

レビューの頻度

1ヶ月から四半期で行う

随時行う

1年に一回行う


2 OKRの仕組み

OKRの仕組みについて解説します。まずは、OKRの「O」と「KR」の意味から確認していきましょう。

 2−1 【O】はObjective(目標)

OKRのOは「Objective」の略で、「目標」を意味します。OKRで設定する目標は非常にシンプルなものがよいとされています。最初に企業の目標を設定し、それから部署やチーム、社員個人の目標を設定していくのです。Objectiveを達成するために各人の役割をわかりやすくし、モチベーションを高めながら目標達成に取り組むことが目的になります。また、1ヶ月から四半期で達成できるような目標だと定義されています。

Objectiveでは先述の通りストレッチゴールを意識して、達成が困難な気後れするくらいの目標を設定します。企業をあげて全力で取り組み、結果として6070%の達成率になるのがOKRの理想です。100%達成できるような目標はOKRとしては低いレベルと考えられるため、目標を練り直す必要があります。

【O】Objective(目標)について

・企業をあげて全力で取り組める、社員のモチベーションを高められるような目標を設定する

・ストレッチゴールを意識し、結果として60~70%の達成率になる目標にする

・企業理念や行動指針と連動している

・具体性があり、客観的に把握できる目標にする

・1ヶ月から四半期で達成できる目標である

・目標は3~5つに絞る

2−2 【KR】はKey Results(成果指標)

 OKRのKRは「Key Results」の略で、「成果指標」を意味します。Objectiveの達成度を計測するための具体的な指標です。Key Resultsは計測可能で、実現すれば目標達成に直結するとわかる必要があるため、達成可能な具体的な数値を設定します。1つのObjectiveに対し、3つほどのKey Resultsを設定しましょう。

【KR】Key Results(主要な成果)について

・計測でき、実現すれば目標の達成が可能な数値である

・具体的で客観的な評価を得られるものである

Objective1つに対して35Key Resultsを設定する

2−3 OKRの具体例

 OKRを設定する際の具体例をご紹介します。Objective(目標)は大きな目標に、Key Results(成果指標)は数値化できる具体的なものにするとよいでしょう。

【O】Objective(目標)の例

・人気商品の売上の成長率を加速させる

【KR】Key Results(成果指標)の例

・2つのWEBメディアを立ち上げ、プロモーションを増やし、製品名を浸透させる

・販売先へのアポイントを昨年対比110%に増やす

・顧客からの問い合わせの返答時間を30%短縮する

上記は、GoogleOKRの例を参考にしています。Objectiveで立てる目標は定量的でも定性的でもよいとされ、Key Resultsは数値がわかる定量的なものにします。OKRの設定内容は企業によって異なります。

2−4 達成状況を定期的に確認

 OKRの導入においては、定期的な達成状況の確認が重要です。OKRは非常に高い目標設定が求められるため、その達成には部署や社員一人ひとりにも相応の貢献度が求められます。そこで、周囲と協力し合って目標達成をめざすために、部署やチーム単位で達成状況を逐一確認できる状態でなければなりません。組織内のコミュニケーションを加速させ、目標達成のために社内の一体感を高められるでしょう。

2−5 結果の測定を行う

 OKRは1ヶ月から四半期の範囲内で目標を設定します。その結果がどうなったかを測定するために、具体的な数値を確認しながら行います。OKRで定めた目標を達成できなかったとしても、結果を分析して次のOKRを設定する際に役立てられます。

2−6 OKRは人事考課に反映しない

 OKRは人事考課と直接的に関係はしません。個人の評価やそれにつながる報酬とは分けて考えることで、社員は100%達成可能なレベルの目標ではなく、より達成困難なレベルの目標を立てられるのです。企業や個人のOKRの過程と成果指標を分析し、次に活かせる社内の仕組み作りが重要です。


 3 OKRを導入している企業一覧

OKRを導入している企業は多くあります。国内外の代表的な企業をご紹介します。

OKRを導入している国外の企業

Intel

google

Facebook

など

OKRを導入している国内の企業

株式会社メルカリ

Chatwork株式会社

株式会社GameWith

株式会社サイバーエージェント

Sansan株式会社

など

 3−1 Sansan株式会社のOKRの事例

 クラウド名刺管理サービスを提供しているSansan株式会社は、法人向けクラウドOKRサービス「Resily(リシリー)」を2018年に導入しました。2015年からOKRを導入していた同社ですが、事業拡大の中で毎期に渡ってOKRを設定することに膨大な時間を費やしていました。そこで、クラウド式のOKRを導入し、各部署のOKRへアクセスしやすい環境を整え、目標達成を妨げる問題を発見しやすくするなど改善。各部署やチームの達成状況を瞬時に確認できるようにしました。

Sansan株式会社ではOKRを定めたことで企業内でのコミュニケーションが活発になり、スピードを持った事業展開が期待できるようになっています。

Sansan株式会社のOKR導入事例についてはこちら

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000033468.html


4 OKR導入によって起きる3つのメリット

OKRを導入すれば、組織の一体感が増すなど、より高い目標達成へ向けて進みやすくなります。その中でも具体的なメリットとなるのは以下の3つです。

1:企業側と社員側の一体感が生まれる

2:社内のコミュニケーションが円滑に

3:より大きな目標へ挑戦しやすくなる

4−1 1:企業側と社員側の一体感が生まれる

 OKRは企業全体の目標と社員一人ひとりの目標を関係性の深いものにできます。定量的な評価によって、社員は自分の企業への貢献度がわかりやすくなり、愛社精神や仕事へのモチベーションを育てられます。

また、1ヶ月から四半期ごとに評価が実施されるため、社員が目標に対する貢献度や評価の納得度を随時確認できます。これにより、企業と社員がお互いに理解し合いながら目標へ向かって進むことができるのです。

 4−2 2:社内のコミュニケーションが円滑に

 OKRでは個人の目標も可視化されます。同じ部署やチーム内で協力したりライバル視したりするなど、切磋琢磨できる環境が生まれやすくなります。その結果、部署や役職に関係なく密度の高いコミュニケーションが行われるようになり、仕事も円滑に進むようになるでしょう。

4−3 3:より大きな目標へ挑戦しやすくなる

 OKRでは非常に高い目標を設定します。6070%の達成が目標とされますが、それ以上の結果をめざすことで、より大きな目標へと挑戦できます。また、人事考課とも切り離された目標なので、失敗を恐れることなく挑戦しやすくなるのもOKRならではの特徴です。


5 OKRの導入へ向けて・進め方

OKRを実際に導入する際には、順序立てて進めていく必要があります。以下のチャートを参考にご説明します。

OKR導入へ向けての進め方

1:企業全体のOKRを作成

2:部署(チーム)のOKRを作成

3:個人のOKRを作成

4:定期的なレビュー

5:成果を測定する

 

5-1 1:企業全体のOKRを作成

 最初に企業全体のOKRの作成から取り掛かります。企業OKR1つの目標が理想ですが、企業規模によっては35個など、複数の目標を立てる場合があります。1つの目標に対しては、3つほどの成果指標を設定し、その中での優先順位を決めます。

企業OKRは経営者がトップダウン式に決めてしまうのではなく、ボトムアップ式に社員からの意見を取り入れることで高い効果を発揮します。「取り組むべき価値があるかどうか」「社員一人ひとりが能力をフルに発揮するにはどうすればよいか」など、各部署やチームからさまざまなアイデアを出してもらい、取り入れてOKRを決定しましょう。決定した企業OKRは全社員に共有します。

5-2 2:部署(チーム)のOKRを作成

 企業のOKRが決まったら、次は部署やチーム、職種ごとなど複数の階層に分けて「部署(チーム)」のOKRを作成します。この時、企業のOKRのすべてを部署のOKRに反映させる必要はなく、いずれか1つに絞って設定できます。その際、企業OKR1つには必ず関係していなければなりません。

5-3 3:個人のOKRを作成

 部署のOKRを設定したら、個人のOKR作成に入ります。これは、部署のOKRと連動した内容である必要があり、上司と社員間で相談しながら目標を決めましょう。部署やチーム内のメンバーとも話し合いながら設定すると、お互いのモチベーションアップにつながります。

5-4 4:定期的なレビュー

 OKRでは1ヶ月から1週間の間隔でレビューを行います。定期的なレビューによって、OKRの進捗状況を把握することが重要です。OKRで定めた目標を達成するためには、社員個人の努力だけでなく、部署やチーム間での連携が欠かせません。レビューで得られた進捗状況や課題点などは、企業全体で共有しましょう。

5-5 5:成果を測定する

 定期的なレビューで得られた情報をもとに、各社員が定めた目標の達成率を測定し、現状の評価と今後のためのフィードバックを行いましょう。四半期の中間で行うレビューでは、目標に対してどれだけ達成できたかを定量的に測る必要があります。目標がふさわしくないと判断できれば、途中で修正する柔軟さも必要です。

四半期を通して行う最終レビューでは、各OKRの結果を測定し評価します。分析して得られた結果は、次期のOKRを設定する際のデータとして役立てます。


6 OKRの課題点

OKRの導入には課題点もあります。企業のフェーズによってはうまく合致しない恐れがあることです。ベンチャー企業や創業間もない企業などは、日々の経営にスピード感が求められます。そのため、OKRで定める四半期という枠組みよりも早く、経営方針や目標が変わるような企業の場合、OKRを適切に運用できない可能性があるのです。

また、OKRは複数回のレビューや社員とのミーティングなど、効果測定や評価にそれなりの工数を割かれます。目標の達成を定量的に考察し、しっかりと社員へのフィードバックを行うための時間的余裕がない企業の場合、導入するのは難しいでしょう。部署やチームによっては定量的なKey Resultsが設定しにくいため、OKRを運用できないケースもあります。


7 まとめ

OKRは企業の目標を軸にして社員個人の目標を設定するという、一見するとトップダウン形式の目標設定手法のように思えます。しかし、企業の目標を達成するために社員一人ひとりが意識して自分の目標に取り組むことは、ボトムアップ的な意味合いを持ちます。OKRの運用において大切なのは、トップダウンとボトムアップによる目標への提案をうまく合致させることです。

企業全員の意欲を掻き立て、目標達成のために尽力するには、適切なコミュニケーションが必須。どんなことでも話し合える企業風土が重要になってきます。

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