
「1on1を導入したいけれど、デメリットが多い気がして踏み切れない……」
「1on1は意味がない、むしろ逆効果という意見も聞くけれど本当?」
そんな疑問や迷いを抱いている人も多いのではないでしょうか?
率直に言って、1on1には確かにデメリットがあります。
1対1のミーティングを頻繁に行うので、特に上司にとっては時間的な負担が多いですし、成果が上がっているのかどうかもわかりづらいものです。
やり方が悪かったり、上司と部下の相性が悪かったりすると、むしろ信頼関係を損ねて逆効果になりかねません。
ですが、デメリットにはかならずその回避法、対処法があります。
また、1on1には多くのメリットもあって、一概に「実施したほうがいい」「いや、よくない」と断定するのは早計でしょう。
そこでこの記事では、まず、
◾️1on1の8つのデメリットとその回避法
について、くわしく説明していきます。
さらに、
◾️1on1の8つのメリット
も挙げて、その利点を解説します。
それら両面を踏まえた上で、
◾️1on1を導入すべきかどうか、判断のポイント3つ
を示しますので、この記事を最後まで読めば、あなたの職場で1on1に取り組むべきかどうかを判断できるようになるはずです。
あなたが1on1のデメリットを正しく理解した上で、自信を持って「あり・なし」を決定できるよう願っています。
1 1on1の8つのデメリットと回避法
1on1にはメリットも多い半面、もちろんデメリットもあります。
そこでまず、1on1導入で起こりがちな問題を8つ挙げてみました。
さらに、それぞれの問題を回避、解消する方法も提案していますので、「このデメリットは、自社の場合は問題なく回避できるかできないか」という側面からも考えてみてください。
1-1 上司・部下ともに時間と工数を取られる
まずもっとも大きな問題は、時間と工数がかかることです。
1on1は上司と部下が1対1でミーティングをしますが、「週に1回、30分ずつ」「月に1回、1時間ずつ」など、頻回に行うことが特徴です。
となると、特に上司は部下の人数分時間を取られてしまいます。
また、1on1では以下のような事前・事後の作業も必要です。
・事前にアジェンダを作成する
・対話の内容を記録する
・事後に部下は振り返りをする
・上司から部下にフィードバックする
これらが通常業務を圧迫する不安もあります。
【回避法】
1on1の普及にともなって、最近では支援ツールが登場し始めています。
これらを導入することで、時間短縮・工数削減が可能です。
例えば、アジェンダがテンプレート形式で簡単に作れる、フィードバックがSNSのようなコメント、「いいね」で簡単に送れるなどの機能が備わっていますので、利用するとよいでしょう。
1-2 効果が出るまで時間がかかる
時間と工数を取られるわりに、成果が出るまで時間がかかるという問題もあります。
というのも、1on1は部下の自主性、自立性を育てるために行うものです。
ただ、ミーティングを行ったからといってすぐに部下がめざましく成長するわけではありません。
継続的に対話を重ねることで徐々に成長を促すのが1on1なのです。
そのため、1〜2ヶ月も経つと「何回も面談しているのに成果が実感できない」という不満が出て、1on1をやめてしまう企業も多いようです。
「1on1はムダ」「やってみたが効果がなかった」と言われるのは、成果が出るまで待てなかったことが原因とも考えられます。
【回避法】
1on1とは時間がかかるものだ、継続的に行わなければ意味がない、という原則を理解しましょう。
成果が上がるには、少人数の職場で3ヶ月〜1年、100人以上いれば1〜3年程度の期間が必要とも言われていますので、それを目安に長い目でみてください。
1-3 上司のコミュニケーションスキルによって効果が左右される
もうひとつ大きな問題として、1on1に臨む上司のコミュニケーションスキルによって、部下の成長度合いが左右されてしまうことがあります。
というのも、1on1では上司が部下に対してアドバイスや指導をするのではなく、部下自身が自分で考え、解決を見出せるように対話で導いていかなければなりません。
これはなかなかにテクニックが必要なものです。
そのため上司には、
・部下の話を上手に引き出す傾聴力
・自主的に解決法を見つけるよう誘導する会話力
・部下の心を開かせる信頼感
などが求められます。
これらの能力の差によって、1on1の成果には大きな差が出てしまうのが難点です。
【回避法】
最近では、1on1研修やセミナーも多く開催されています。
導入前にこれらを実施して、全社に1on1の意義やメソッドを浸透させ、上司のスキルを向上させていく必要があるでしょう。
また、1on1支援ツールの中には、対話のテンプレートを作成することができるものもありますので、それを利用すれば、対話内容を均質化することもできます。
1-4 上司と部下の相性によって逆効果にもなり得る
前項とも関わりますが、1対1で対話するには、お互いの信頼感が重要です。
部下と相性の悪い上司がミーティングを行っても、効果が出ないばかりか、部下のモチベーションを低下させるなどの逆効果になる場合もあります。
【回避法】
1on1は、かならずしも直属の上司と部下で行う必要はありません。
メンターとメンティという関係性であれば行えます。
そこで、チームの中で相性のよい者同士をマッチングするという方法も考えられます。
ミーティングを実施してみて相性が悪そうであれば、途中でペアを変更するなど、柔軟に実施しましょう。
1-5 やり方が悪いと逆に上司と部下の信頼関係が損なわれる
1on1の本質やメソッドを理解しないまま実施すると、逆に部下が上司に対して不信感を抱いてしまうケースもあります。
例えば上司が、部下に一方的に意見を押し付けたり、部下の話を聞かずに自分だけが話し続けてしまうと、部下が反発を感じたり、自主的に考えることを放棄してしまう危険性があります。
【回避法】
1on1は従来の評価面談や指導の場ではない、ということを上司に理解させる必要があります。
ミーティングでは主役は部下なので、話す割合も部下7〜8割、上司2〜3割程度のバランスになるよう留意するとよいでしょう。
1-6 雑談で終わるなど形骸化してしまう
週に1回もミーティングをしていると、「何を話せばいいのかわからない」「特に取り上げたいトピックもない」という日も出てきます。
それが重なるうち、なんとなく雑談をして終わってしまったり、ミーティングをすること自体が目的になってしまったりと、形骸化する場合もままあります。
こうなると、1on1の成果は期待できず、ただ時間と工数をムダに費やすだけになってしまうのです。
【回避法】
毎回事前にかならずアジェンダを作成しましょう。
「特にいま抱えている問題はない」「話すことがない」と思っている場合でも、深掘りしていけば何か課題はあるものです。
そこで、あらかじめトピックの例をリスト化しておいて、そのうちのどれかを選べるようにするなど工夫するといいでしょう。
また、1on1支援ツールの中には、トピックのアンケート機能を備えたものがあります。
部下がアンケートに答えていくと、取り上げるべきトピックが見えてきてアジェンダができる、という便利なものですので、利用してみるのも一案です。
1-7 効果が数値にあらわれにくい
1on1の目的は、部下が自主的に考え、自立的に問題解決できるようになることですが、この成果は数値化しにくいのが難点です。
当事者である上司と部下は成長を実感できていても、人事などの管理部門などからは客観的な評価がしづらいのです。
そのため、レポートを提出させたり評価シートを作ったりと、さらに業務が煩雑になる恐れもあります。
【回避法】
まず、「1on1の効果は直接数字であらわれるものではない」「部下が自立する、問題解決能力が向上する、モチベーションがアップするといった、数値化できない成果を目指すものだ」ということを知っておいてください。
その結果、業績がアップする、離職率が下がるといった定量的なメリットも得られますが、その数字と1on1の関連性も見えにくいものです。
これをどうしても数値化したいのであれば、1on1支援ツールに頼るという手もあります。
1on1の内容に対して多くの人からフィードバックをもらい、それをデータ化・見える化する分析機能を備えたツールがあるので、それを利用しましょう。
1-8 場合によっては社内周知や研修なども必要になる
1on1は従来の評価面談や指導などとはまったく違うものなので、管理部門には、その意義やメソッドを社内に周知させる努力が必要です。
全社向けにセミナーを行ったり、メンターとなる上司に研修を実施したりすれば効果は格段に上がりますが、そのためにはコストも手間も大きくかかってしまいます。
導入のための準備段階だけでも通常業務を圧迫してしまうので、忙しい職場では取り組みにくいでしょう。
【回避法】
もちろん特に研修などしなくても、上司自身が1on1を勉強してスムーズに運用できる場合もあります。
が、もし「自社の場合は、研修をしないとできないだろう」と判断できる場合は、回避せずにしっかり研修をするしかないでしょう。
あるいは、思い切って「1on1を導入しない」という決断をするのも選択肢のひとつです。
部下を成長させる方法は、1on1以外にもさまざまにあるので、自社に合った方法を取ってください。
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