経営者必見|Google調査で判明した心理的安全性が「離職率・エンゲージメント」に直結する理由

Googleは「効果的なチームをつくる条件は何か」を、プロジェクト・アリストテレスという社内調査で分析しました。そこで最も重要とされたのが、効果的なチームを特徴づける5要素の一つ、心理的安全性です。本記事では、Googleが何を調べ、何を明らかにしたのかを一次情報に沿って整理し、5つの要素と、自社で活かす際の注意点まで解説します。

  • Googleは約180のチームを対象に、効果的なチームの条件を分析した
  • チームの有効性とより強く関連していたのは、「誰がいるか」よりも「どう協力し合うか」だった
  • 5つの要素のうち、心理的安全性が最も重要とされた
組織課題を解決に導く「心理的安全性」とは?

Googleが示した心理的安全性とは

心理的安全性とは、チーム内で対人関係上のリスクを取っても安全だと、メンバーが共有して信じている状態を指します。ここでのリスクとは、ミスを認める、分からないことを質問する、新しい提案をするといった行動です。こうした行動を取っても責められないと感じられるチームは、心理的安全性が高いといえます。

この概念はGoogleが生み出したものではありません。もともとはハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソンが、1999年の論文でチーム心理的安全性という構成概念を提示したものです。エドモンドソンはこれを「チームは対人的なリスクを取っても安全だ、とメンバーが共有している信念」と定義しています。製造業の51チームを対象にした研究で、心理的安全性が学習行動を促し、学習行動がチーム成果と関連するモデルを示しました(出典:Edmondson, 1999, Administrative Science Quarterly)。

プロジェクト・アリストテレスは、この概念だけを確かめるために始まった調査ではありません。Googleはチーム構成やチーム内の関係性など、多数の変数を分析しました。その結果、エドモンドソンが提唱した心理的安全性に当たる要素が、効果的なチームを特徴づける5要素の中で最も重要だと特定されたのです。調査の中身は次章で見ていきます。

なお、心理的安全性そのものの高め方や測定方法は、この記事では深く扱いません。基本的な意味を押さえたうえで、具体的な進め方は専用の記事で解説しています。

プロジェクト・アリストテレスとは

プロジェクト・アリストテレスは、Googleが社内のチームを対象に行った調査です。名称は「全体は部分の総和に勝る」というアリストテレスの言葉にちなんでいます。Googleは、優れたマネージャーの条件を調べたプロジェクト・オキシジェンの成功を受け、同様の分析手法をチームの有効性の研究に応用しました。目的は「Googleで効果的なチームをつくるものは何か」という問いに答えることです。

対象となったのは180チームです。内訳はエンジニアリングの115チームと営業の65チームで、成果の高いチームと低いチームが混在していました。規模は3人から50人まで、中央値は9人です。ここでのチームは、単なる組織図上のグループではありません。仕事を計画し、問題を解決し、成果を互いに必要とし合う、相互依存の高い集まりを指します(対象・規模の出典:Google re:Work「Understand team effectiveness」)。

Googleが比べたのは、大きく二つの側面です。一つはチーム構成、つまり誰がメンバーかという要素で、スキルや性格、経歴などが含まれます。もう一つはチームダイナミクス、メンバーが互いにどう関わり合うかという側面です。Googleの分析では、チーム構成よりも、メンバーがどのように協働するかというチームダイナミクスのほうが、チームの有効性と強く関連していました。

調査の方法は多層的でした。リーダーへの数百件のダブルブラインド面談に加え、年次の従業員意識調査やgDNAという縦断調査から、250項目を超えるデータを集めています。そのうえで35を超える統計モデルを使い、どの変数がチームの有効性と関連しているのかを分析しました。ここでは、複数の成果指標との関連が見られ、チームの種類を越えて現れ、統計的に安定して有意な要素が探されています。導かれた結論が、「大切なのはチームに誰がいるかよりも、チームがどう協力し合っているかだ」というものです。この結果はGoogle re:Workで公開されています(出典:Google re:Work「Understand team effectiveness」)。

Googleはチームの有効性をどう測ったか

調査を読むうえで見落とせないのが、「有効性」の測り方です。Googleははじめ、コードの行数や修正したバグの数といった客観指標を重視しようとしました。しかし、いずれも欠陥をはらむと気づきます。行数が多いほど良いとは限りません。修正したバグが多いのは、そもそもバグを多く生んだ裏返しでもあるからです。

そこでGoogleは、複数の見方を組み合わせて有効性を測りました。経営層、チームリーダー、メンバーによる評価を用い、営業チームについては、四半期の販売目標に対する実績も組み合わせています。立場によって「良いチーム」の基準は違いました。経営層は成果を、メンバーはチーム文化を、リーダーは当事者意識やビジョンを重視しています。定性評価には主観が入り、定量指標は状況を捉えきれない。両方を組み合わせることで、多面的な有効性の像に近づけました。gDNAのような長期調査のデータを土台にした点も、この分析の特徴です(出典:Google re:Work「Understand team effectiveness」)。

Googleが示した効果的なチームの5要素

Googleは、効果的なチームを特徴づける要素を重要度の高い順に5つ挙げました。並び順そのものに意味があり、先頭の心理的安全性が最も重要とされています。各要素の意味と、チーム内で見られる状態を次の表にまとめます。

要素 意味 チーム内で見られる状態
心理的安全性 対人関係上のリスクを取っても安全だと、メンバーが共有して信じている状態 ミスを認めても責められない。質問や新しい提案を安心して出せる
信頼性 期限内に質の高い仕事をやり遂げると、メンバー同士が互いに当てにできる状態 「やる」と言ったことを実際にやり遂げる。責任の放置が起きにくい
構造と明確さ 仕事の期待値、達成までのプロセス、成果の評価基準が明確であること。目標は具体的で挑戦的、かつ達成可能 役割・目標・意思決定の進め方がはっきりしている
仕事の意味 仕事そのもの、または成果に個人的な意義を見出せること。意義の中身は人によって異なる 自分の仕事に価値を感じている
影響 自分の仕事が組織の目標に貢献し、変化を生んでいるという主観的な実感 自分の仕事が組織全体にどうつながるかを理解している

(5要素の定義の出典:Google re:Work「Understand team effectiveness」)

信頼性を「相互信頼」とだけ捉えると、意味が抜け落ちます。ここでの信頼性は、約束した仕事を期限と品質を守ってやり遂げる、という遂行面の信頼です。構造と明確さは、役割や目標、評価の基準がはっきりしている状態を指します。Googleはこの明確さを支える手段として、目標管理の枠組みであるOKRを活用してきました。仕事の意味は仕事の内側に、影響は仕事がもたらす結果に向いている。こう読み分けると整理しやすくなります。

Googleはこの5要素について、チームが自己点検できるサーベイも用意しました。たとえば心理的安全性なら「チームでミスをしても、それを責められることはない」、信頼性なら「メンバーはやると言ったことを実行する」、構造と明確さなら「私たちのチームには効果的な意思決定のプロセスがある」といった項目です。抽象的な理念にとどめず、チーム自身が状態を確かめられるようにした点に、この調査の実践的な性格が表れています。

なぜ心理的安全性が最重要とされたのか

首位に置かれた背景には、人が職場で抱えやすい4つの対人不安があります。質問すれば無知に見えないか。助けを求めれば無能だと思われないか。異論を挟めば否定的だと受け取られないか。指摘すれば邪魔者扱いされないか。

こうした不安は、それぞれ具体的な行動を抑えつけます。無知に見られたくないから、基本的な質問を飲み込む。無能だと思われたくないから、ミスや弱点を隠す。否定的だと見られたくないから、気になる点を言わずにおく。邪魔だと思われたくないから、改善のアイデアを出さない。本来チームを前に進める発言が、静かに消えていきます。たとえば初歩的な疑問をその場で確認できるチームでは、誤解が早い段階で解けます。反対に質問をためらう空気があると、小さなズレが後の手戻りに変わることもあります。

エドモンドソンの研究では、質問する、助けを求める、失敗を共有する、改善を提案するといった学習行動が、チームの成果に結びつくとされています。心理的安全性は、その行動を支える前提になります。発言や質問がしにくいチームでは、役割の曖昧さや仕事上の問題も表に出にくい。そのため心理的安全性は、他の要素を支える土台として捉えられます。ただし、Googleが5要素を厳密な階層構造として示したわけではありません。

Googleの調査結果を読むときの注意点

示唆に富む調査ですが、自社に当てはめる前に押さえておきたい前提が3つあります。

Google社内の調査である

プロジェクト・アリストテレスは、Googleの社内チームを対象にした調査です。ここでの結論が、すべての企業に当てはまるとは限りません。実際、メンバーが同じ場所で働いていること、合意重視の意思決定、外向性、個人の業績、仕事量、職位、チーム規模、在籍期間などは、Googleでは有効性との強い関連が見られませんでした。ただしre:Work自身が、これらは他の組織で重要でないとは限らないと注意を促しています。たとえばチーム規模については、小さいチームのほうが有利だとする研究も少なくありません。

相関と因果を区別する

Googleが示したのは、強いチーム文化と有効性の高さが結びついていた、という関連です。心理的安全性を高めれば必ず成果が上がる、という因果を証明したものではありません。強い文化のチームほど離職しにくく、収益が高いといった傾向も報告されていますが、これはあくまで相関です。「Googleが離職率の低下を証明した」といった説明は、調査の趣旨を超えています。同じく、「誰がいるか」は無関係という読み方も行き過ぎです。示されたのは、資質の組み合わせが成果を確実には予測しなかった、という限定的な結果にとどまります。

心理的安全性はぬるま湯ではない

心理的安全性は、基準を下げることや、互いに甘くすることとは違います。Googleの5要素には、期限と品質を守ってやり遂げる信頼性も含まれています。安心して発言できることと、高い水準を求めることは、両立するものとして描かれています。

心理的安全性が低い職場で起こりやすい問題については、心理的安全性が低い職場の原因と特徴で解説しています。

Googleの知見を自社で活用する3つの視点

調査結果を自社に持ち込むなら、数字を追う前に見る角度を整えておきたいところです。ここでは3つの視点を挙げます。

全社平均ではなくチーム単位で見る

プロジェクト・アリストテレスが分析の単位に置いたのはチームでした。心理的安全性は、同じ会社の中でもチームによって大きく異なります。全社平均のスコアをながめるより、実際に協働している最小単位で捉えるほうが、状態を正しくつかめます。改善の打ち手も、部門全体ではなくチームごとに考えたほうが現実に合いやすくなります。

心理的安全性を含む5要素をセットで確認する

心理的安全性だけを切り出して追いかけると、全体像を見失います。信頼性や構造の明確さ、仕事の意味や影響の実感も、効果的なチームには欠かせません。5つは互いに補い合う関係にあり、どれか一つで成果が決まるわけではありません。安全性を高めても、目標や役割が曖昧なままでは力になりにくい。そう捉えておくと、施策が一点に偏らずに済みます。

共通言語をつくり、対話と改善を続ける

Google re:Workでは、チームの行動や規範を表す共通言語をつくること、チームの状態を話し合う場を設けること、リーダーが改善に関与することを提案しています。日常の行動としては、意見を積極的に募る、役割と責任を明確にする、自分の仕事がユーザーや組織にどうつながるかを振り返る、といった例が挙げられています。こうした日常的な行動を繰り返すことが、チームの状態を見直すきっかけになります。

Google re:Workでは、助けてもらった相手へ公に感謝を伝えることも、仕事の意味を支える行動例として紹介されています。こうした行動を継続する手段の一つが、Uniposのようなピアボーナスの仕組みです。ただし、ツールの導入自体が心理的安全性の向上を保証するものではありません。

チームの状態を数値でつかみたい場合は、心理的安全性をアンケートで測定する方法もあわせてご覧ください。

よくある質問

Googleの心理的安全性研究とは何ですか

Googleが社内で行った「プロジェクト・アリストテレス」という調査を指します。効果的なチームの条件を探る中で、心理的安全性が最も重要な要素として位置づけられました。調査結果はGoogle re:Workで公開されています。

プロジェクト・アリストテレスでは何が分かりましたか

チームの有効性を左右するのは「誰がいるか」よりも「どう協力し合うか」だと分かりました。そのうえで、効果的なチームに共通する5つの要素が示され、心理的安全性が最も重要とされました。

Googleが示した効果的なチームの5要素は何ですか

重要度の高い順に、心理的安全性、信頼性、構造と明確さ、仕事の意味、影響の5つです。並び順そのものに意味があり、先頭の心理的安全性が最も重要とされています。

心理的安全性が最も重要なのはなぜですか

質問する、助けを求める、失敗を共有する、改善を提案するといった学習行動を支えるからです。心理的安全性が低いと、疑問や問題が共有されにくく、信頼性や構造の明確さなど、ほかの要素を活かすことも難しくなります。

心理的安全性が高い職場は、ぬるま湯になりませんか

なりません。心理的安全性は基準を下げることではなく、互いに甘くすることでもありません。Googleの5要素には期限と品質を守る信頼性も含まれており、安全性と責任は両立します。

まとめ

Googleはプロジェクト・アリストテレスを通じて、効果的なチームを分けるのは、構成メンバーそのものよりも協力の仕方だと示しました。そこで挙げられた5要素の中で最も重要とされたのが心理的安全性です。ミスや疑問、提案を安心して口にできる状態が、他の要素を支える土台として捉えられます。

一方で、これはGoogle社内の調査であり、相関と因果は区別して読む必要があります。自社に活かすなら、全社平均ではなくチーム単位で見る。5要素をセットで確認する。共通言語をつくり、対話と改善を続ける。この3つの視点を手がかりに、自社のチームの状態を確認できます。