
さまざまな組織から注目度が高まりつつある「心理的安全性」。
自社の組織をより良く変革させるには、心理的安全性が重要なのではないかと考える企業担当者の方も増えているでしょう。
とはいえ、自社の心理的安全性がどれくらいの状態にあるのかを把握しないことには、最適な施策を検討することができません。
そこでまず、心理的安全性の現状をアンケートなどで計測する必要があります。
自社の心理的安全性を計測した結果、たとえ心理的安全性が低い組織であることがわかったとしても、今から適切なアプローチを行えば心理的安全性の高い組織へ変えていくことが可能です。
本記事では、自社の心理的安全性を高めたいと考える方へ向けて、心理的安全性を測る3つのアンケートをご紹介します。
加えて、アンケート以外でも心理的安全性を測定するため、心理的安全性が高い組織・低い組織の特徴や、意識調査のアンケート結果なども詳しく解説するので、併せて参考にしてください。
心理的安全性をアンケートで測ることはできるのか?
心理的安全性が高い組織を目指すために、まずは組織の現状を把握する必要があります。
心理的安全性の測定は一見難しそうですが、アンケートなどを活用し測定することが可能です。
以下では、心理的安全性の提唱者、エイミー・C・エドモンドソン教授の「7つの質問」や、日本発の心理的安全性測定サービス「SAFETY ZONE」など、心理的安全性をアンケートで測定するためのさまざまな試みをご紹介します。
心理的安全性を測るアンケート「エドモンドソン教授の7つの質問」
心理的安全性の測定において非常に有名かつ有効なのが、エイミー・C・エドモンドソン教授が提唱する「7つの質問」です。
エドモンドソン教授は、チームの心理的安全性がどれくらいかを測るために、以下の7項目をチームメンバーに尋ねるといいます。
(1)チームの中でミスをすると、たいてい非難される
(2)チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える
(3)チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することが ある
(4)チームに対してリスクのある行動をしても安全である
(5)チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい
(6)チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない
(7)チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる
心理的安全性が高いチームなら、「チーム内でミスをしても非難されることがない」「困ったときにはほかのチームメンバーに助けを求められる」「チームメンバーに拒絶されることはない」などのように、上記の7つの質問に対してポジティブな回答が多くなるでしょう。
心理的安全性を測るアンケート②株式会社ZENTech「SAFETY ZONE」
株式会社ZENTechが提供する「SAFETY ZONE」も、心理的安全性を測定・診断するのに有効なサービスです。
SAFETY ZONEは、日本の心理的安全性の第一人者・データサイエンティストの石井遼介氏と慶應義塾大学との共同研究によって開発されたサービスで、「4つの因子(項目)」に分けて心理的安全性を検証します。
日本の組織人を1万人以上調査した豊富なデータと知見から、日本の心理的安全性は4つの因子で成り立つことを見出しました。
<心理的安全性の4つの因子>
(1)話しやすさ
(2)助け合い
(3)挑戦
(4)新奇歓迎
SAFETY ZONEでは、上記4つの項目に関連する合計20問に回答することで、その組織がどの因子に課題があるのかを知ることができます。
また、役職別・職種別・年代別とさまざまな切り口で、組織の現状把握と課題抽出を行なえるため、どのような施策に取り組めば良いかがわかりやすくなるでしょう。
参考:SAFETY ZONE | 心理的安全性を計測するために生まれたサーベイシステム
参考:株式会社ZENTech|心理的安全性のリーディング・カンパニー
心理的安全性を測るアンケート③米QuestionPro Survey Software「QuestionPro」
米QuestionPro Survey Software社が提供するアンケートシステム「QuestionPro」には、専門家によって開発された、心理的安全性のアンケートテンプレートが用意されています。
設問には「あなたの友人や同僚に自分の会社をどれくらい勧めるか」「異なることを理由に拒絶されたことがあるか」といった趣旨のものなどがあります。
QuestionProではアンケート結果だけでなく、ページビューや平均解答時間などの指標もレポートとしてまとめてくれるため、無料で簡易的に心理的安全性を測るには便利なシステムといえるでしょう。
参考:心理的安全性調査の質問+サンプルアンケートテンプレート
アンケート以外で心理的安全性を測定する方法
ここまでご紹介してきたような、チームメンバーにアンケートに答えてもらい心理的安全性を測定する以外の方法で、心理的安全性を測ることは可能なのでしょうか。
細かな値をだすことは難しいものの、「心理的安全性が高い組織」と「心理的安全性が低い組織」それぞれに見られる特徴があります。
アンケート以外で心理的安全性の状態を把握したい場合は、自分のチームや組織を振り返り、どのような特徴があるかを考えてみるのも一つの方法でしょう。
以下では、心理的安全性が高い組織の特徴と、心理的安全性が低い組織の特徴を解説します。
心理的安全性が高い組織の特徴
心理的安全性が高い組織の特徴は、次の3つです。
ポジティブな発言や考え方をするメンバーが多い
心理的安全性が高い組織では、前向きな発言や考え方をするメンバーが多くなると考えられます。
例えば、チーム内で何らかのトラブルが発生したときに、単に原因となった人を責めるのではなく、どうすればそのトラブルに対処できるのか、トラブルを今後防ぐにはどうしたら良いのかなど、前向きかつ自由に自分の考えを発言するでしょう。
心理的安全性の低い組織では、まわりから非難されないよう「自分のせいではない」などと主張する姿勢が見られるかもしれません。
反対意見や目新しい意見が歓迎される
反対意見や目新しい意見が歓迎されるのも、心理的安全性が高い組織の特徴です。
そもそも心理的安全性は、馴れ合いによる居心地の良さを意味する言葉ではありません。たとえ自分と正反対の意見でも、またはたった一人だけの意見でも、心理的安全性の高い組織なら寛容に受け止めているでしょう。
課題に対して厳しく話し合える
心理的安全性=馴れ合いではないとお伝えしたとおり、課題に対して厳しい意見交換ができない組織は、心理的安全性が高いとはいえません。
心理的安全性が高い組織なら、言いにくい意見も本音で話し合うことができます。ただし「厳しく」というのは、相手のミスや欠点を責めることではないため注意しましょう。
心理的安全性が低い組織の特徴
続いて、心理的安全性が低い組織の特徴は、次の3つです。
変化を好まない
心理的安全性が低い組織には、変化を好まない特徴があります。
というのも、現状と異なる意見や目新しい意見を言うことでチームから拒絶されるくらいなら、自分の本当の意見や考えは言わないほうが安全だと考えてしまうからです。
心理的安全性が低い組織は、何事も穏便に・無難に済ませておこうと変化の生まれないチームになってしまい、組織のイノベーションが生まれることもなくなってくるでしょう。
積極的にコミュニケーションをとろうとするメンバーが少ない
心理的安全性が低い組織では、エドモンドソン教授が発表した以下の
「4つの不安」が生じていると考えられます。
- 無知だと思われる不安
- 無能だと思われる不安
- 邪魔をしていると思われる不安
- ネガティブだと思われる不安
そして4つの不安は、いずれもチーム内のコミュニケーションを減少させることにつながります。
「こんなことも知らない・できないのか」と思われるのが不安で、積極的に質問や相談をしようとするチームメンバーは少なくなっていくでしょう。
ミスの発覚が遅れることがある
もし心理的安全性の高い組織なら、ミスをすることそのものが非難につながるという心配がないため、失敗は素直に認め、ミスをチームメンバーや上司に速やかに報告する特徴があります。
しかし心理的安全性の低い組織では、何よりもまず無知・無能だと思われる不安が勝ってしまうため、自分の失敗を認めなかったり、ミスを報告しなかったりという状況が生じてしまうのです。
「心理的安全性」に関するアンケート調査にも注目
自社の組織に限らず、世間一般的に「職場の心理的安全性」がどのように捉えられているのか、気になる方もいるでしょう。
心理的安全性への注目度が高まるにつれて、心理的安全性に関する意識調査が行われるようになっています。
その例として、ProFuture株式会社が実施したアンケート調査「あなたの職場の『心理的安全性』は?」の概要は、以下のとおりです。
<概要>
- 「心理的安全性」の概念の認知度は約4割
- 心理的安全性、「重要である」が9割以上
- 心理的安全性が確保されていないと感じるのは会議での発言やプレゼン時
- 職場の心理的安全性「高いと思う」は半数以下
この調査では、心理的安全性という概念について知っている人は、回答者全体の約4割にとどまっています。
注目度が高まっているとはいえ、まだ心理的安全性の概念は浸透していないようです。
そして心理的安全性を確保することは、ほとんどの回答者が多少なりとも重要だと考えているのに対し、自分の職場の心理的安全性を高いと考える回答者は半数を下回りました。
特に、会議で発言をするときや提案・プレゼン等をするときなどの場面で、「発言しにくい雰囲気がある」「提案が却下されやすい」ことが心理的安全性を低いと感じる原因になっていると考えられます。
職場の心理的安全性を測るうえで、多くの人の前で発言を求められるシーンでの、発言のしやすさや提案・プレゼンに対する適切な対応が一つのポイントになるでしょう。
「心理的安全性」は馴れ合いではない
ここまで、自社の心理的安全性を高めたいと考える方へ向けてご説明してきましたが、心理的安全性への注目度が高まる一方で、いまだ「心理的安全性のある職場はヌルい、馴れ合いだ」などと誤解されることも多くあります。
「心理的安全性が高い組織の特徴」でもお伝えしたとおり、心理的安全性が高い組織とは、課題に対して厳しい指摘や話し合いができたり、高い成果のために遠慮なく反対意見を出し合えたりする組織を指します。
心理的安全性の提唱者・エドモンドソン教授も、心理的安全性を「対人関係においてリスクのある行動をしても、このチームは安全だというチームメンバーによって共有された考え」と定義しています。
心理的安全性があるからこそ、一人ひとりが萎縮せず、安心して厳しい(リスクのある)行動がとれるのです。そしてその行動こそが、個人のパフォーマンスを向上させ、組織のイノベーションを生み出すことにつながります。
もし「心理的安全性のあること=チームで馴れ合い仲良くすること」だとするなら、上記のような成果は生まれません。
心理的安全性の高い組織を目指す理由の根本にあるのは、組織として成果を出すためであることを忘れないようにしましょう。
まとめ
今回の記事では、心理的安全性のアンケートによる測定や、心理的安全性が高い/低い組織の特徴を中心に解説しました。
あらためて記事の内容を振り返ってみましょう。
・心理的安全性を測るアンケートは、以下の3つ
・エドモンドソン教授の「7つの質問」
・株式会社ZENTech「SAFETY ZONE」
・米QuestionPro Survey Software「QuestionPro」
・心理的安全性が高い組織の特徴は、以下の3つ
・ポジティブな発言や考え方をするメンバーが多い
・反対意見や目新しい意見が歓迎される
・課題に対して厳しく話し合える
・心理的安全性が低い組織の特徴は、以下の3つ
・変化を好まない
・積極的にコミュニケーションをとろうとするメンバーが少ない
・ミスの発覚が遅れることがある
ProFuture株式会社の「職場の心理的安全性に関するアンケート調査」によると、心理的安全性を重要だと考える人は9割以上
心理的安全性=馴れ合いではなく、安心してリスクのある行動をとるため、そして成果を出すために必要
本記事を参考に自社の心理的安全性の状態を振り返り、より心理的安全性の高い組織に近づくための施策を考えていきましょう。