
顧客満足が高い企業は、売上が安定しやすい傾向があります。リピート率が高くなるうえ、良い口コミが広がりやすいからです。
その顧客満足を高めるために意識したいのが、職場の心理的安全性です。
では、心理的安全性とはどのような概念なのでしょうか。
この記事では、心理的安全性の概要、顧客満足と心理的安全性の関係、心理的安全性を高める方法などを解説しています。
1.顧客満足とは?
最初に、顧客満足の概要と、顧客満足とよく似た言葉である顧客体験の概要を解説します。
顧客満足について
顧客満足は、ある製品やサービスを購入する前に抱いていた期待と、購入後・利用後に得られた結果の差によりもたらされる感情です。
購入前に抱いていた期待以上の結果を得られれば顧客満足は高くなります。反対に、購入前に抱いていた期待以下の結果しか得られなければ顧客満足は低くなります。
顧客満足は、企業の売上に非常に大きな影響を与えます。顧客満足が高いとリピート購入につながる、良い口コミが増える、顧客満足が低いとリピート購入につながらない、悪い口コミが増えるなどの影響が現れるからです。
したがって、企業は顧客満足を常に把握して、維持・改善する施策を実施しなければなりません。顧客満足は、製品購入者を対象とするアンケート調査などで把握できます。
顧客満足を維持・改善するために最初に取り組みたいのが、顧客の期待水準を把握することです。顧客の期待水準が高すぎると、顧客満足を高めることは難しくなります。
期待水準が高すぎる場合は、価格を調整するなど期待水準を管理する施策が必要です。ただし、期待水準を下げすぎると、製品やサービスを購入してもらえません。
コンセプト・ターゲットを明確にして、サービスを効率よく提供できる体制を築くことも重要といえるでしょう。コンセプト・ターゲットが不明瞭だと、顧客満足を高めるサービスを絞り込めないため結果的に過剰なサービスを提供してしまうことになります。
プラスアルファの機能・サービスで、競合商品・競合サービスと差別化することも有効です。自社製品・自社サービスならではの価値を提供することで、ニーズに合致した消費者から選ばれるようになります。
以上の施策などで、顧客満足を高められます。さまざまな施策を実施しなければならないため、顧客満足の向上にスタッフ間の協力は欠かせないといえるでしょう。
顧客体験とは
顧客満足と関係が深い言葉といえるのが顧客体験です。カスタマーエクスペリエンス(CX)と呼ばれることもあります。
顧客体験は、ある企業の製品やサービスなどと接したときに顧客が抱く印象です。
したがって、ある製品やサービスを利用したときの印象だけではなく、ブランドやカスタマーサポートなどに対する印象も顧客体験に影響を与えます。
企業とのやり取り全般に対して顧客が抱く印象といえるでしょう。当然ながら、顧客体験は顧客満足に影響を与えます。顧客満足を高めたい場合、顧客体験を改善しなければなりません。
顧客体験は、顧客との接点で生じている課題を把握して対処することなどで改善できます。顧客体験が改善すれば顧客満足が高まり、やがては売上やリピート率などが向上するでしょう。
顧客体験の改善にも、スタッフ間の協力は欠かせません。顧客の意見を共有し、具体的な施策に反映するなどが求められます。
2.顧客満足を高めるには「心理的安全性」に着目すべき
顧客満足は、企業にとって非常に重要な概念です。顧客満足が低い状態が続くと、売上は低下していくと考えられます。顧客の多くが不満をいだいている状態だからです。
顧客満足を高めるために注目したいのが職場の心理的安全性です。職場の心理的安全性が低いと、効果的な施策を実施したとしても有効に機能しない恐れがあります。
職場で次のような問題が起こりやすくなるため、まずは職場の心理的安全性を高める必要があります。
情報を共有しにくくなる
職場の心理的安全性が低いと、社員間で情報を共有しにくくなります。
例えば、顧客満足の改善に役立つ意見が寄せられても上司に報告しない、わからないことがあっても質問せずに業務をすすめるなどが考えられます。
情報共有が進まないと、組織として課題を認識することや有効な施策を導き出すことは難しくなるでしょう。そのため、顧客満足を高める前に、職場の心理的安全性を高める必要があるのです。
意見交換が滞る
職場内で活発な意見交換を行いにくくなる恐れもあります。
例えば、顧客からクレームが寄せられても改善策を話し合わない、そもそもスタッフ間で話し合おうとしないなどが考えられます。
意見交換が滞ると、職場内で連携をとれない、業務効率が悪くなるなどが予想されます。各スタッフがそれぞれの立場から自由に意見を表明するために、職場の心理的安全性は重要です。
現状を改善しにくくなる
スタッフ間で問題点を指摘できなくなることも考えられます。
例えば、現在の施策では顧客満足を改善できないと気づいていても指摘しない、トラブルを避けるため現状を肯定する意見しか述べないなどが考えられます。
問題点を指摘するスタッフがいないと、新たな視点を得ることはできないでしょう。現状を正しく認識して問題点を解決していくため、心理的安全性の確保は欠かせません。
職場の心理的安全性を高めることで、スタッフ間でお客様の声を共有し具体的な施策に反映しやすくなります。結果的に、顧客満足の改善につながると考えられます。
3.心理的安全性とは?
以上の通り、職場の心理的安全性が低いと問題が多発し顧客満足を改善しにくくなります。
ここで気になるのが「心理的安全性とはどういうものなのか」ということです。
ここでは、心理的安全性の概要と心理的安全性が高い職場の特徴、心理的安全性が低い職場で引き起こされる4つの不安について解説します。
チームを信じて自分の意見を発信できる状態
心理的安全性が高いとは、マイナスに捉えられる恐れがある発言・行動でも安心して行える状態です。
具体的には、このチームであれば誰も否定しない・拒絶しない・バカにしないなどと相互に確信できる状態を指します。各スタッフが、自分らしさを安心して発揮できる状態といえるでしょう。
例えば、上司のリアクションを気にせず失敗を報告できる、先輩の顔色をうかがわず質問をできる、同僚の嫉妬を心配せず改善案を提案できるなどの状態は、心理的安全性が高いと考えられます。
心理的安全性は、ハーバードビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授が1999年に提唱した概念です。
近年になって注目を集めている理由は、Googleのピープルアナリティクスチームが実施した「Project Aristotle」でチームの効果性に影響を与えている5つの因子に取り上げられたからです。「Project Aristotle」は、効果的なチームを可能にする条件を明らかにすることを目的としています。
心理的安全性は、職場にどのような影響をもたらすのでしょうか。
心理的安全性が高い職場の特徴
心理的安全性が高い職場は、各スタッフのパフォーマンスが向上すると考えられています。各スタッフが誰も否定しない・拒絶しない・バカにしないなどの確信を抱いているため、安心して自分の能力を発揮できるからです。
チームのパフォーマンスが向上しやすい点も見逃せません。情報共有や意見交換が活発になるため、業務の効率化が進み新しいアイデアも出やすくなります。
各スタッフのエンゲージメントも高くなる傾向があります。
エンゲージメントは、組織に対する愛着や組織に対する貢献意欲を指します。スタッフの定着率や生産性に関わる重要な概念です。
エンゲージメントが高まる理由は、安心して自分の能力を発揮できるためこの組織で働き続けたい、この組織の成長に関わりたいなどの思いが強くなるからです。
心理的安全性が低い職場で引き起こされる4つの不安
心理的安全性が低い職場で働くスタッフは、4つの不安を抱きやすくなります。その結果、先述の「情報を共有しにくくなる」などの問題が引き起こされるのです。
具体的に、各スタッフはどのような不安を抱きやすくなるのでしょうか。
1,無知と思われる不安
簡単な質問をすると「初歩的なことすらわからないのかと思われるのでは」などの不安がよぎります。したがって、相談・質問などを気軽に行えません。
心理的安全性が低いと、職場で先輩や同僚を信頼しにくくなってしまいます。
2.無能と思われる不安
失敗や助けを求めたときに「仕事をできない人と思われるのでは」などの不安がよぎります。そのため、失敗を報告しにくくなったり助けを求めにくくなったりします。
無能と思われる不安は、チームのコミュニケーションを妨げる原因といえるでしょう。
3.邪魔と思われる不安
会議などで意見を述べると周囲から「邪魔をしていると思われるのでは」などの不安がよぎります。不安が強くなると、発言や提案を積極的に行えません。
邪魔と思われる不安は、スタッフを消極的な状態に追い込んでしまいます。
4.ネガティブと思われる不安
問題点を指摘すると「何にでも否定的な人と思われるのでは」などの不安がよぎります。この思いが強くなると、改善案などを述べることが難しくなります。
ネガティブと思われる不安は、チーム内の議論を妨げる要因になります。
以上からわかる通り、心理的安全性が低い職場は、スタッフ、チームともに生産性が低くなりやすい傾向があります。顧客満足の改善も難しいといえるでしょう。
4.心理的安全性を高めるには?
心理的安全性は、さまざまな取り組みで高めることができます。どのように高めればよいのでしょうか。
職場の心理的安全性を評価する
最初に取り組みたいのが、職場の心理的安全性を評価することです。
現在の状況を把握しないと改善は行えません。各スタッフに「失敗をすると指摘されるか?」「問題点や改善策についてスタッフ間で話し合えるか?」「他のスタッフに協力を求められるか?」「自分のスキルや能力を発揮できているか?」などの質問をして、職場の心理的安全性を評価するとよいでしょう。
傾聴を心がける
スタッフ間で会話をするときは傾聴を心がけます。傾聴とは、目・耳・心を傾けて相手の考えや気持ちに共感しながら理解しようと話を聞くことです。
したがって、何かをしながら話を聞く、何かを見ながら話を聞くなどはおすすめできません。相手の話は、視線を合わせて身体を少しだけ前に乗り出して聞きます。この姿勢を示すことで、耳を傾けていることが伝わるため相手は話をしやすくなります。
理解していることを伝える
傾聴を心がけていても、適切なリアクションがなければ話を聞いているかわからなくなることがあります。
したがって、話を聞くときは、理解していることを相手に伝えなければなりません。具体的には、適切なタイミングで相槌を打つ、話の内容を要約して提示するなどが考えられます。
意見が食い違う場合は、納得できる点、納得できない点を示したうえで話し合いをします。
相手を尊重する
相手を尊重することも欠かせません。お互いに尊重し合うことで信頼関係は築かれます。
相手を尊重する方法として、相手の仕事の進め方を理解する、相手のために時間を確保するなどが考えられます。あるいは、アサーティブコミュニケーションを活用してもよいでしょう。
アサーティブコミュニケーションは、双方が我慢をしたり意見を押し通したりせず自分の意見や気持ちを伝えるコミュニケーションの技法です。
私を主語にするアイステートメント(I statement)などを心がけることで実践できます。軋轢を生まずに意見や気持ちを伝えられるため、心理的安全性の改善に役立ちます。
失敗を積極的に認める
各スタッフが失敗を積極的に認め合うことでも、心理的安全性は高まります。誰でも失敗するものという認識が職場内に生まれて、失敗した人を否定しにくくなるからです。
同様に、弱みや苦手を積極的に認めることも重要です。誰にでも弱みや苦手があるという認識が職場内に生まれると、サポートを求めやすくなります。
ただ、失敗・弱み・苦手を認めることは簡単ではありません。上司や先輩が率先して行うべきといえるでしょう。
積極的に感謝を伝える
これら以外にも、スタッフ間で積極的に感謝の気持ちを伝えることでも心理的安全性は高まります。
感謝の気持ちを伝えることで、相手の存在やサポートを肯定できるからです。相手の役に立ったことがわかると、さらに貢献したい思いが強まります。これらの気持ちの連鎖によっても、心理的安全性は高まるのです。
非常に魅力的な行動ですが、毎日、顔を合わせるスタッフ間で実行するのは照れくさいと感じる人もいるのではないでしょうか。
このように感じる人が多い場合は、Uniposを始めとするピアボーナスを実現できるサービスを活用するのも良いでしょう。
ピアボーナスとは、スタッフ間で感謝のメッセージと少額のインセンティブを手軽に贈りあえるサービスです。
感謝の気持ちを伝え合う社内文化を形成し、職場の心理的安全性を高めることができます。
5.心理的安全性向上により顧客体験向上につながった事例
職場の心理的安全性を高めることは、顧客体験を改善し顧客満足を高めることにつながります。ここでは、称賛文化の醸成によって職場の心理的安全性が高まり、顧客体験を改善できた事例を紹介します。
テレパフォーマンス・ジャパン株式会社
コールセンターのアウトソーシング事業を手掛けるテレパフォーマンス・ジャパン株式会社は、「最高の顧客体験は最高の従業員体験から生まれる」を掲げて業界全体が直面する離職率の高さなどの課題と向き合っています。
離職率が高い原因として、全員が在宅勤務で孤立しやすい点があげられます。解決策のひとつとして導入したのがUniposです。
Uniposを導入してから、スタッフ間の交流が活発になっています。例えば、ちょっとした心配りに感謝の気持ちを伝える、テストに合格したスタッフにお祝いのメッセージを送る、お客様からお叱りを受けたスタッフを励ますなどが行われています。
また、スタッフからもらった「ありがとう」を見返して、モチベーションを維持しているスタッフも少なくありません。
Uniposは、社内に感謝・称賛の文化をもたらし、スタッフの心理的安全性を確保しました。最高の従業員体験が生まれることで、顧客体験も向上すると捉えられています。
参考:【Unipos】コールセンター業務の孤独感を解消しモチベーションも向上 Uniposがスタッフマネジメントの要に
株式会社ハイフライヤーズ
千葉県内で認可保育園を運営する株式会社ハイフライヤーズは、業界内トップクラスの待遇にも関わらず保育士の離職率が高い点に悩んでいました。
主な原因として考えられたのが、称賛・承認が不足していたことです。そこで、会社がMVPを選出する表彰制度を導入しましたが、状況を改善することはできませんでした。
その理由として、多くの保育士が求めているのは会社からの一方的な称賛ではなく、一緒に働くスタッフからの感謝ではないかということが推測されました。
以上を踏まえて、新たに導入したのがUniposです。
具体的には、Uniposをたくさん利用すると翌月に有給が付与されるUnipos有給休暇などの施策と併せて実施しています。これにより、保育士間で積極的に感謝の気持ちを伝え合う文化が形成されました。
また、保護者の声をUniposで共有して保育士のモチベーションアップにつなげたり、Uniposの投稿から保育士のモチベーションを評価して声掛けや面談を実施したりするなどの活用も行われています。
以上の取り組みを行った結果、心理的安全性が高まり、保育士の離職率は34.7%から10.4%まで改善しました。
保育士のモチベーションアップがサービスの向上に繋がり、コロナ禍にもかかわらず売上が7%伸びている点も見逃せません。
職員の心理的安全性を高めることが、従業員体験のみならず顧客体験の向上にも役立っているといえるでしょう。
参考:【Unipos】保育士の離職率を24ポイント改善、7%の売上増につなげた組織改革Uniposがマネジメント面で果たした役割とは
顧客満足の向上は心理的安全性の確保から
顧客満足は企業の売上などに影響を与えます。現状を把握するとともに改善していくことが重要です。
また顧客満足は職場の心理的安全性と深い関わりがあります。心理的安全性が低いと、意見を提案しにくいなどの問題が生じるため現状を改善しにくくなるからです。
心理的安全性は、感謝の気持ちを積極的に伝えることなどで高められます。
健全な意見が出る組織にして、顧客満足を向上させていきましょう。