離職防止に心理的安全性が効く3つの理由を事例と共に解説!

今後ますます人材の確保が難しくなると見込まれるなかで、従業員の離職を防ぐための取り組みは、企業にとって重要であることはいうまでもありません。

離職防止の取り組みの例としては、長時間労働を削減し働きやすい環境をつくったり、面談を定期的に行い従業員の将来への不安を軽減したりといったものがイメージしやすいでしょう。

しかし、そこで忘れてならないのが、従業員が離職を選択する理由の上位に「人間関係の悩み」があるということ、その人間関係の悩みを解消するのに「心理的安全性」が欠かせないということです。

そこで本記事では、離職防止の新常識である「心理的安全性」の概要や、心理的安全性がなぜ離職防止に効くのか、心理的安全性を高めるためには何から取り組めば良いのかなどについて解説します。

1.離職防止の新常識「心理的安全性」

厚生労働省が公表している「新規学卒者の離職状況」によると、2018年新規大卒就職者の3年以内の離職率は、31.2%でした。

大卒者の約3割が3年以内に離職してしまう状況は、1990年後半から続いています。

今後、日本では労働人口の減少が進み人材の確保が難しくなっていくこと、転職のハードルが下がっており人材が流出しやすくなっていることなどを考えれば、離職防止のための取り組みは欠かせないでしょう。

そこで鍵となるのが「心理的安全性」です。

新卒1年以内で転職した経験のある381人を対象に、株式会社ビズヒッツが転職理由などについてのアンケート調査(調査期間:2021年3月11日〜25日)を実施したところ、転職理由の第1位は「人間関係」でした。

また、独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した「若年者の能力開発と職場への定着に関する調査」(調査時期:2016年2月〜3月)でも、「初めての正社員勤務先を退職した理由」として上位に「人間関係」が挙げられています。

そのほかの調査でも、「悩みがあっても周囲に相談しにくかった」「ギスギスとした雰囲気で居づらくなってしまった」「常に上司の機嫌をうかがわなければならなかった」など、離職理由には必ずといって良いほど人間関係の問題が挙げられています。

近年では、このような人間関係の課題に心理的安全性が有効だと考えられ、離職防止の観点から、心理的安全性を重視する企業が増えているのです。

参考:新規学卒者の離職状況|厚生労働省

参考:学歴別就職後3年以内離職率の推移|厚生労働省

参考:新卒1年目の転職理由ランキングと第二新卒の転職を成功させるための方法

参考:調査シリーズNo.164「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成(若年者の能力開発と職場への定着に関する調査)」|労働政策研究・研修機構(JILPT)

2.改めて「心理的安全性」とは?

ここであらためて、心理的安全性の概要を確認していきましょう。

心理的安全性とは

「心理的安全性」は、組織行動学を研究するエイミー・C・エドモンドソン氏が初めて提唱した「サイコロジカル・セーフティ(psychological safety)」という概念を和訳した言葉です。

具体的には、チームや組織のなかで、個々人が恐れや不安を感じることなく、自分の能力や個性を安心して発揮できる状態のことを表しています。

心理的安全性の高い職場では、一人ひとりが自分らしくいられるとともに、質問や相談をしたり、新しいアイデアを提案したりしても、嘲笑や否定などを心配する必要がありません。

心理的安全性に関する誤解

心理的安全性が高い職場を「ヌルい」職場だと考えている方もいるかもしれませんが、それは誤解です。

ヌルい職場は単にメンバーの仲が良いだけで、例えば困難な問題については見て見ぬふりをします。

一方、心理的安全性の高い職場では、困難な問題でも改善に向けて指摘し合ったり、話し合ったりするでしょう。

人間関係を気にすることなく、率直に意見を交わし合える環境だからこそ、厳しい意見が飛び交い、衝突することも十分あり得るのです。

心理的安全性の「4つの不安」

心理的安全性が不足していると、メンバーには次の4つの不安が引き起こされるといわれています。

①無知だと思われる不安

→質問や相談をすることで、自分が無知だと思われることへの不安です。

 心理的安全性が不足していると、無知だと思われる不安から必要な質問や相談ができなくなり、業務効率や業務の質の低下につながるでしょう。

②無能だと思われる不安

→ミスや失敗、欠点を認めることで、自分が無能だと思われることへの不安です。

 心理的安全性が不足していると、無能だと思われる不安からミスを隠したり、他人のせいにしたりする場面が増え、いずれ大きなトラブルにつながる可能性があるでしょう。

③邪魔をしていると思われる不安

→発言や提案をすることで、自分が邪魔をしていると思われることへの不安です。

 心理的安全性が不足していると、自発的な発言を控えるようになり、画期的なアイデアや有意義な意見が表に出てこなくなるでしょう。

④ネガティブだと思われる不安

→発言や提案をすることで、他人を否定していると思われることへの不安です。

心理的安全性が不足していると、間違っていることを指摘したり、否定的な要素が含まれるアドバイスをしたりできなくなってしまい、チームとして機能しなくなる可能性があるでしょう。

3.心理的安全性が離職防止に効く3つの理由

第1章「離職防止の新常識『心理的安全性』」において、企業の離職防止対策には心理的安全性が有効であると述べました。

以下では、その具体的な理由について解説します。

人間関係の質が良くなる

心理的安全性の高い組織は、無知・無能だと思われる不安や邪魔をしていると思われる不安などを抱えることなく、相手を信頼して行動できるため、メンバー間の人間関係の質が良くなります。

コミュニケーションも多く発生し、遠慮なく相談やフィードバックなどが行われるようになるため、好循環が生まれるでしょう。

一人ひとりが個性を発揮し働けるようになる

心理的安全性が確保されていれば、他人から拒絶される不安が生じません。

それぞれの個性や意見が尊重される環境は、それだけで離職防止につながるうえ、イノベーションや新しいアイデアが生まれやすくもなります。

イノベーションや新しいアイデアなどに対して、一人ひとりが欠かせない存在として、個性を発揮しながら活躍できるようになり、さらなる人材定着につなげられます。

エンゲージメントが高まる

心理的安全性の確保によって人間関係の質が良くなり、積極的なコミュニケーションが交わされるようになれば、メンバーのエンゲージメントの向上が期待できます。

エンゲージメントが高いメンバーは、自発的に行動するようになり、自社で働くことの満足感も高まります。その結果、離職率の低下につながるでしょう。

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4.心理的安全性が離職防止につながった事例2つ

さまざまな取り組みにより心理的安全性の向上に成功し、従業員の離職防止につなげられた2社の事例をご紹介します。

【事例①】株式会社ハイフライヤーズ

千葉県内で認可保育施設「キートスチャイルドケア」「キートスベビーケア」を運営するハイフライヤーズでは、2010年の創業以来急成長を続けていたものの、2018年10月から2019年9月の1年間の保育士の離職率は34.7%と危機的な状況でした。

給与や福利厚生は業界トップクラスであるにも関わらず、入社しても数か月で辞めてしまう保育士が多く、一時は自治体から改善勧告を受けるなど、窮地に立たされていたといいます。

そこで同社は、社員同士が感謝の気持ちを伝え合えるピアボーナスツール「Unipos」を導入し、心理的安全性の育成を目指します。

例えば新入社員には、最初から会社のためになることを考えるのではなく、まずは周りの人に感謝の気持を伝えることが大切だと説明し、先輩社員にも、指示や指導するよりも「ありがとう」のコミュニケーションを先にすることを伝えるようにしました。

このような取り組みが、新入社員も活発に意見できる環境づくりに寄与し、心理的安全性の向上につながったそうです。

その結果、離職率を当初の34.7%から10.4%にまで改善させることができ、社員の仕事への意欲上昇、サービスの質の向上、売上増などの好影響も表れました。

参考:保育士の離職率を24ポイント改善、7%の売上増につなげた組織改革 Uniposがマネジメント面で果たした役割とは

参考:株式会社ハイフライヤーズ

【事例②】株式会社ビースタイル

人材派遣・人材紹介サービスや採用支援サービスを運営するビースタイルでは、2012年には離職率が27%にまで達していました。

離職率を改善する鍵は従業員間のコミュニケーションにあると考え、さまざまな制度や施策を導入していきます。

導入した制度や施策の例として、「バリューズアワード」と呼ばれるお互いに感謝の気持ちを表せる表彰制度、誰でも幹部に率直かつ気軽に意見を伝えられる「全社日報」、マネージャークラスとランダムに1対1の面談を行える「1on1ミーティング」などが挙げられます。

このような合計20以上の取り組みによって、全方位のコミュニケーションが円滑になり、従業員の心理的安全性やエンゲージメントの向上などにつながりました。

結果として、離職率を当初の27%から8%にまで大幅に低下させることに成功しています。

参考:離職率改善のために実施した(株)ビースタイルのコミュニケーション施策とは

参考:企業情報 | ビースタイル グループ

5.心理的安全性を高めるためにまず取り組みたいポイント

職場の心理的安全性を高めるために、まず取り組みたいポイントとして挙げられるのが、次の3つです。

・現在の組織、チームの心理的安全性の状態を把握する

・コミュニケーション量を増やす

・組織、チームのリーダーから自己開示する

それぞれのポイントについて確認していきましょう。

現在の組織・チームの心理的安全性の状態を把握する

職場の心理的安全性を高めるためには、まずは現状把握が必要です。

現在の組織・チームの心理的安全性はどれくらいなのかを可視化しましょう。

その際に有効なのが、エドモンドソン教授が提唱する、“心理的安全性を測る7つの質問”です。

その質問とは、次のとおりです。

<心理的安全性を測る7つの質問>

  1. もしあなたがこのチームでミスをしたら、多くの場合非難される
  2. このチームのメンバー同士で、問題や困難な課題を提起できる
  3. このチームのメンバーは、自分と異なる物事を排除することがある
  4. このチームなら、安心して対人リスクを取ることができる
  5. このチームのメンバーに助けを求めることは難しい
  6. このチームには、私の成果を意図的に無下にするような行動をする人はいない
  7. このチームのメンバーと仕事をするとき、私のスキルと才能は尊重され、生かされていると感じる

上記の7つの質問に対してポジティブな回答をするメンバーが多い場合は、その組織・チームの心理的安全性は高いと判断できるでしょう。

一方で、ネガティブな回答をするメンバーが多い場合は、その組織・チームの心理的安全性は低いことになります。

もちろん、全体としてポジティブな回答が多いとしても、ネガティブな回答をしたメンバーがいる場合には注意が必要です。その回答者は、チームメンバーに対して不安を抱えながら仕事をしている可能性が高く、離職につながりやすい兆候があるといえます。

参考:Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams

コミュニケーション量を増やす

心理的安全性を高めるためには、チームメンバー同士がお互いに理解を深め、信頼関係を構築する必要があります。

そして、それらはコミュニケーションなしでは成り立ちません。

メンバー間のコミュニケーション全体の量を増やすのに加え、「この件についてどのように感じたか」「大切にしている価値観は何か」などと、お互いの感情や価値観などを知ることができる会話を意識的に増やすことが大切です。

そのためには、例えば上司と部下が1対1で行う定期的なミーティング「1on1」の実施や、コミュニケーションツールの導入などが有効でしょう。

組織・チームのリーダーから自己開示する

組織・チームのリーダーが率先して自己開示することも、心理的安全性を高める重要な要素です。

自己開示とは、例えば自分の思いを正直に伝える、過去の失敗や自分の弱みを打ち明けるなどといったことです。

リーダーがチームメンバーに積極的に自己開示することで、メンバーは「このチーム内では、自分をさらけだしていいんだ」「失敗を認めたり弱みを見せたりしても安全なんだ」と思えるようになります。

メンバー一人ひとりがそのような思いを持つようになり、自己開示するようになれば、組織やチームの心理的安全性は自然と高まっていくでしょう。

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6.まとめ

今回は、離職防止の新常識である心理的安全性についての概要や、心理的安全性がなぜ離職防止に効くのか、心理的安全性を高めるためには何から取り組めば良いのかなどを中心に解説しました。

あらためて、記事の内容を振り返ってみましょう。

・企業の離職防止対策として、心理的安全性は欠かせない

・心理的安全性とは、チームや組織のなかで、個々人が恐れや不安を感じることなく、自分の能力や個性を安心して発揮できる状態のこと

・心理的安全性が離職防止に効く理由は、次の3つ

 ・人間関係の質が良くなる

 ・一人ひとりが個性を発揮し働けるようになる

 ・エンゲージメントが高まる

・心理的安全性が離職防止につながった事例は、次の2つ

 ・株式会社ハイフライヤーズ

 ・株式会社ビースタイル

・心理的安全性を高めるためにまず取り組みたいポイントは、次の3つ

 ・現在の組織、チームの心理的安全性の状態を把握する

 ・コミュニケーション量を増やす

 ・組織、チームのリーダーから自己開示する

従業員が離職を選択する理由はさまざまで、どのように扱えば良いのか、どのような対策が有効なのかと悩んでしまうこともあると思います。

自社の離職原因に人間関係が挙げられる、またはその可能性がある場合には、本記事を参考に、まずは心理的安全性を高める取り組みから始めてみてはいかがでしょうか。

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