
「サーバント・リーダーシップ」という考え方が注目を集めています。
リーダーシップはなじみのある言葉だと思いますが、サーバントという単語はあまり知られていないかもしれません。
本記事では、サーバント・リーダーシップとはどんな意味なのか、なぜ今組織に求められているのかについて解説します。
1.サーバント・リーダーシップとは?
まず、サーバント・リーダーシップの定義や特徴について説明します。
サーバント・リーダーシップについて知ることで、これまでのリーダーシップとの違いについても理解できるでしょう。
サーバント・リーダーシップの「サーバント」とは「使用人」という意味です。使用人の仕事は主人のために奉仕すること。つまり、サーバント・リーダーシップとは「組織やチームのメンバーに奉仕・支援するタイプのリーダーシップ」のことを指します。
2.サーバント・リーダーシップの特徴
サーバント・リーダーシップをより深く理解するためには、逆のタイプのリーダーシップを考えるとわかりやすいでしょう。
サーバント・リーダーシップの対極に位置するのは、カリスマ型リーダーによる「支配型リーダーシップ」です。
カリスマ型リーダーのマネジメントは「部下に命令して仕事をさせる」というスタイルです。
部下が意見することもあるかもしれませんが、基本的にはカリスマ型リーダーが物事を決定し、部下は命令された業務を忠実に遂行します。
カリスマ型リーダーシップに対して、サーバント・リーダーでは一方的に命令して部下を動かすことはしません。
サーバント・リーダーはチームメンバーを信頼し、協力しあいながら組織全体を成長させます。
仕事の進め方などかなりの部分をメンバーに任せ、チームがパフォーマンスを発揮するための“支援”に徹します。
このスタイルがサーバント(使用人)と呼ばれる所以です。
支配型リーダーシップが、1人のカリスマ型リーダーを頂点として、多くのメンバーがリーダーを支えるピラミッド構造になっているのに対し、サーバント・リーダーシップでは、大勢のメンバーをリーダーが支える逆ピラミッドの構造になっています。
サーバント・リーダーシップでは、上に立つのはリーダーではなくメンバーなのです。
このように説明すると、中には「それは単に弱腰なだけではないか」「部下の言いなりになっているのではないか」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、サーバント・リーダーシップは決して「言いなり」ではないのです。
サーバント(使用人)という言葉で誤解を招きがちですが、サーバント・リーダーシップにおいて組織やチームの目指す方向を定めるのはリーダーの役割です。
ミッションやビジョンはリーダーがしっかりとメンバーに示し、その上でメンバーがそれぞれの個性を生かしてパフォーマンスを発揮できるよう支援すること。
それこそがサーバント・リーダーシップの本質なのです。
NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会では、「サーバント・リーダーシップの10の属性」として、以下の要素を挙げています。
・傾聴
サーバント・リーダーシップでは、しっかりと「聴く」ことが重要です。
傾聴することでメンバーの考えを引き出し、メンバーが能力を発揮できるサポートの方法を考えます。
・共感
傾聴するために重要なのが共感です。
一方的に話をしたり考えを押し付けるのではなく、相手の気持ちに共感し、理解を示すことがサーバント・リーダーシップに求められています。
・癒し
カリスマ型リーダーはメンバーから恐れられることも少なくありません。
しかし、恐れはメンバーを萎縮させ、意見を封じ、能力を下げてしまうことにつながります。
サーバント・リーダーはメンバーに癒しを与え、パフォーマンスを引き出すことに努めます。
・気づき
メンバーが能力を発揮できるよう、チームはもちろん、他部門や組織全体をよく見て、そこから得た「気づき」をマネジメントに活かしていくことが重要です。サーバント・リーダーシップには視野の広さが求められます。
・説得
意見の相違が生じた際、職位によってメンバーを服従させるのではなく、話し合いによって説得することが大切です。
・概念化
物事の本質を抽出して伝える「概念化」の能力を高めることで、チームメンバーとのコミュニケーションはより円滑化されます。
組織やチームが何を目指すのか、ビジョンを伝える上でも概念化は必要です。
・先見力、予見力
将来、起こりうる事柄について予見する力がサーバント・リーダーには求められます。
先を読むことで、今どうするべきかがわかるからです。予見力はチームメンバーを支援し導くのに必要な能力です。
・執事役
執事とは、主人のために奉仕する者であり、主人からの信頼を得て大切な役割を任される者です。
サーバント・リーダーは執事のようにメンバーに寄り添い、メンバーのためになる行動をとります。
自分自身よりもメンバーの利益に満足を感じられることが、サーバント・リーダーの資質の1つです。
・人々の成長に関わる
チームメンバーの成長を促進するのも、サーバント・リーダーの大事な役割であり能力です。
メンバー1人ひとりの個性やスキルを理解し、成長を促します。
・コミュニティづくり
メンバーが円滑にコミュニケーションし、成長できる環境をつくるのもサーバント・リーダーの役割です。
NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会によると、支配型リーダーシップに従うメンバーは主に恐れや義務感で行動し、リーダーの機嫌を伺いながら、自らの役割や指示内容だけに集中するとされています。加えて、リーダーをあまり信頼しておらず、結果として自己中心的な姿勢を身につけやすくなってしまうのだといいます。
サーバント・リーダーシップに従うメンバーは、主に「やりたい」という気持ちで行動し、やるべきことに集中して、工夫できるところは工夫しようとします。
また、リーダーのビジョンを意識して動き、リーダーを信頼し、周囲の役に立とうとする姿勢を身につけやすいのです。
参考:https://www.kaonavi.jp/dictionary/servant_leadership/
参考:https://www.thelion-mag.jp/_/dl/gat/ServantLeadership.pdf
参考:参考:https://www.servantleader.jp/
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