
企業が大きくなるほど、運営に必要な多角的な情報がどんどん蓄積されて行くもの。
日々増えて行く情報を、きちんと社員に共有できているでしょうか?部署の一部の人や、社内の重鎮だけが知っているような情報があると、次第に属人化が進んでしまいます。
そこで、社員が誰でも閲覧でき、情報を広く共有できるツールとして、社内Wiki(ウィキ)の必要性が増しています。社内Wikiの重要性から導入のメリット、導入の際におすすめのツールについてもご紹介します。
1.社内Wikiとは?
社内Wikiとは、社内の情報や蓄積されたノウハウをわかりやすくまとめ、社内の誰でも閲覧できる状態にすることにより、情報の共有とコミュニケーションの円滑さを実現するためのツールです。
特定の人しか知らない情報があると、「その人が不在の際に周囲の誰も対処方法がわからない……」ということが起こり得るため、それを防ぐ意味でも、誰もが任意のタイミングで必要な情報を引き出せる社内Wikiは便利なツールなのです。
ちなみに、よくウェブ上の情報収集でウィキペディアに行き当たる人も多いかと思いますが、社内Wikiはその自社版だと思っていただければよいでしょう。
社員が誰でも編集できることが多い
社内Wikiに書き込む際には、多くの場合はHTMLの特別な知識は必要なく、誰でも情報を編集できます。そのため、新入社員の自己紹介や定例会議の議事録など、常に新しい情報で社内Wikiを満たすことが可能です。
多くの情報の蓄積が重要な社内Wiki。より多くの社員の手で編集が進んでいくことが理想的だといえます。
2.社内Wikiを導入する5つのメリット
社内Wikiを導入し運用していくうえで得られる、主な5つのメリットは以下の通りです。
1:情報やノウハウを一箇所に集約
2:属人化するのを防ぐ
3:使い手を選ばない
4:組織内の情報共有が進む
5:新人教育の一環に
情報やノウハウを一箇所に集約
企業が大きくなるにつれて社内の情報は増えていきますが、その管理は非常に難しくなります。「誰がどの情報を握っているのか?」「この情報は最新のものなのか?」など、混乱しがちになるからです。そのため、社内Wikiにさまざまな項目を作成し、最新の情報を保存しておきましょう。それだけで、情報へのアクセスが格段に容易になります。
また、社内で蓄積されたノウハウも重要です。何か問題が発生した時、社内Wikiに解決策が載っていると、常に特定の誰かに相談する必要もなくなります。
属人化するのを防ぐ
情報を特定の人しか知らない、ノウハウを一部の人しか持っていないという状況のことを、属人化といいます。他部署に限らず、自部署の人がどんな仕事をしているか知らないという人もいるのではないでしょうか? 属人化すると、その人がいなくなった途端に仕事が回らなくなってしまうなど、企業にとっての不利益にもつながります。
そこで、属人化を防ぐためにも、社内Wikiにマニュアルなどの情報を載せておくことで、誰もが必要な時に情報を引き出せるようになります。
使い手を選ばない
誰でも簡単に編集ができる社内Wiki。ブログ感覚でサクサクと編集できるため、パソコンが苦手な人でもも大丈夫。使い手を選びません。多くの社員が編集を行いやすいので、情報の蓄積がされやすく、社内Wikiの内容の充実にもつながっていきます。逆に、特定の人物しか更新できない状況では、多忙のため情報の適宜な更新が行われにくくなり、古いものになっていくということも起こり得ます。そのため、社内の誰でも更新可能なのは、非常に重要だといえます。
組織内の情報共有が進む
社内Wikiが充実すれば、仕事に関連した他部署の情報も閲覧できるようになります。部署の垣根を超えて、どんな仕事をしているのか把握することで、相互理解が深まるでしょう。他の社員から自分の仕事内容を知ってもらうことで、仕事のモチベーションアップにつながるかもしれません。企業全体の目標などを見える化することで、社員の一体感が増すのも期待できます。
新人教育の一環に
新卒者や中途採用者に対して行う社員教育。簡単な社内マニュアルなど、基本的な情報を社内Wikiを使って覚えてもらうのが効果的です。毎回新たにプログラムを組んで教えるよりも、担当者の負担を減らせます。また、業務のフローなどをまとめておけば、新人が困った際に閲覧することで、毎回先輩や上司に質問を仰がなくてもよい状況を作り出せます。
3.おすすめの社内Wikiツール7選
社内Wikiのメリットはおわかりいただけましたでしょうか。ここからは、7つのツールをご紹介します。導入時の参考にしてみてください。
Confluence:使いやすいテンプレートつき
「社内Wikiのデザインや仕様をどうしようか迷う」という人には、複数のテンプレートが充実している「Confluence」がおすすめです。GIFや絵文字を加えることもでき、独自性の高いページを作成できます。協力してページの編集ができるため、社内Wikiの作成が促進しそうです。
テンプレートが用意されているので、初めて社内Wikiを運用する方や、すぐに運用を始めたいという場合に向いています。
Confluenceの詳細はこちら
https://www.atlassian.com/ja/software/confluence
NotePM:議事録やノウハウ集を残せる
会議の議事録や社内マニュアル、ノウハウ集などを編集しやすい社内Wikiである「NotePM」。絵文字なども使える簡単な編集画面に、フォルダを階層化しツリー構造で保存できます。確認したいファイルがある場合、文章で検索することができるため、社内の情報閲覧が容易です。そのため、積極的に編集が行われるようになり、ノウハウ蓄積もされやすくなりそうです。
社内Wikiを活性化させるため、段階的に権利設定機能を使いたい場合、既読機能やコメント機能で社内のコミュニケーションを活性化させたい場合に向いています。
NotePMの詳細はこちら
https://notepm.jp/
Kibela:個人の情報発信を支援
スタートアップ企業から大企業まで、組織の規模に応じた情報共有をサポートしてくれる「Kibela」。
部署ごとにグループを作ることができ、部内に留めておきたい情報は非公開グループでのみ閲覧可能など、独自の仕組みを持っています。
また、社員ごとのプロフィールを設定でき、誰が情報発信をしたかや、その人の得意分野がわかるなど、編集の相乗効果が生まれやすいのもポイントです。
社員の顔と名前、得意分野がわかるなど、クリエイティブな組織づくりをめざしたい場合におすすめです。
スタートアップから大企業まで導入に向いているとされますが、多機能なエンタープライズプランの利用は費用がやや割高なので、社員数が少ないほうが向いているといえそうです。
Kibelaの詳細はこちら
https://kibe.la/ja
Crowi:シンプルに活用できる
ブログを書く要領で編集できる「Crowi」は、リアルタイムプレビュー機能を搭載。書き込みながら完成後の画面をイメージできます。操作が簡単なので、会議の議事録やマニュアルなどの情報が蓄積されやすく、コミュニケーションを円滑に行えるツールとなるでしょう。
オープンソースなのでカスタマイズ可能な分、システムに詳しいか社内にプログラムが組める社員がいなければ運用が難しいかもしれません。無料で導入できるため、規模が小さめの企業やスタートアップ企業に向いています。
Crowiの詳細はこちら
https://site.crowi.wiki/
esa.io:情報を育てていくなら
情報を育てるという視点で作られた「esa.io」は、最初は不完全な状態で公開しても、後から何度も更新して情報を育てていく、というコンセプトを持った社内Wikiです。
編集のしやすさはもちろん、複数人が同時に編集できたり、リアルタイムでプレビューできたりと、使い手の利便性を考えて作られているのが特徴です。
2ヶ月の無料トライアル期間を含め、試験的な運用から始め、次第に本格的な社内Wikiに仕上げて行こうとお考えの方に向いています。
esa.ioの詳細はこちら
https://esa.io/
Scrapbox:お気に入りのお店の情報も蓄積できる
遠方から同時に編集することも可能な「Scrapbox」。編集データは全てテキストデータになっており、他のツールと連携させることも容易です。技術面の話だけでなく、近所の美味しいお店の情報など、さまざまな情報を共有できるようになっています。メンバー間の信頼感を高められる、ちょっと変わった社内Wikiのツールといえそうです。
社内Wikiのページ上に各自のアイコンを表示できるため、社内イベントなどを行う際には、「参加可能な日にアイコンを表示してください」と共有するだけで、日程調整アプリを使う必要がありません。社内での交流を重視している場合に向いているといえます。
Scrapboxの詳細はこちら
https://scrapbox.io/?lang=ja
Qiita:team:メンバー間の信頼感を獲得
「Qiita:team」は簡単に編集できて共有可能な社内Wikiのツールです。議事録などはテンプレートで統一されており、誰が書いても読みやすくなっています。
気になったことや何か問題があればコメント機能によって、重大化する前に解決できます。
編集した記事ごとにコメントができ、フォードバックを送ったりとコミュニケーションの場としても機能するのです。Extraプランを導入する場合、IPアドレスによるアクセス制限をかけられるため、社内のセキュリティに力を入れている企業に向いています。
Qiita:teamの詳細はこちら
https://teams.qiita.com/
根本的な社内コミュニケーション不足の問題は、〇〇にあり?!組織の生産性を下げる「プロセス損失」を防ぐ方法とは
4.社内Wikiへの掲載に向いている6つの内容
社内Wikiで実際に運用するのに向いている内容を6つにまとめました。
下記以外にも、企業ごとに独自の項目があっても面白いでしょう。
ミーティングの議事録:参加者以外にも情報を共有
最近では働き方改革の一環から、全員参加方式のミーティングスタイルが見直されています。ミーティングには部署で必要な人物だけが参加し、開催時間も従来の1時間から30分を目安にする、といった具合です。そうなれば社内Wikiを活用し、ミーティングの議事録を載せる方法が効果を発揮します。参加者以外は議事録を見れば内容を理解できますし、個人ごとにかけていたミーティングの時間を大幅に削減できます。
業務マニュアル:仕事の進め方で迷わないように
社内の属人化を防ぐ意味でも、業務マニュアルを載せておくのは非常に効果的です。仕事の進め方で迷った時に閲覧すれば問題が解決するように、社内Wikiに載せておきましょう。業務マニュアルがあれば仕事の進め方の先々が理解できるので、担当者が急な休暇に入ったとしても、業務のスムーズな引き継ぎが可能です。
プロジェクト管理:進捗情報の共有
進行中のプロジェクトの管理表として、社内Wikiを使う方法があります。特に、複数の部署のメンバーでプロジェクトを回している場合は、情報共有ができるのが強みです。複数人で同時に編集できる社内Wikiの強みを活かしたやり方だといえるでしょう。進行状況などを細かくまとめることで、プロジェクトメンバー間の連携が密になります。また、引き継ぎもスムーズに進めやすくなります。
社内用語集や福利厚生のまとめ:新人向けに
新入社員や中途入社の社員は、わからないことばかりで最初は非常に戸惑うもの。その企業独自の用語などがあるため、わからない内容があれば些細なことでも周囲に質問したり、相談したりするケースがあります。
周囲も新人が入るたびに毎回同じことを答えていたのでは、あまり効率的とはいえません。そこで、社内Wikiを活用しましょう。よくある質問や社内用語集などをまとめておくと、「わからないことは、まずそこを見ておいてね」と簡単に対応できます。同じく、よく質問されやすい社内の福利厚生制度も社内Wikiとしてまとめておくとよいでしょう。
社内ブログ・社内報:最新情報の共有
各部署の社員が日頃どんなことを考え、どんな仕事をしているのか。社内Wiki内に社内ブログを作成することで、情報共有の場として活用しましょう。例えば、部署ごとにブログを立ち上げ、メンバーの持ち回り制で仕事内容や部署内での出来事などを、編集してもらいましょう。情報がたまれば、その部署を示す立派な資料となります。
企業としての理念を載せたり、最新情報や発表したりするには、社内報が効果的です。新人が企業理念を知ることは大切ですし、中堅社員が原点に立ち戻るには、社内報を読むのがよいでしょう。
コミュニケーション:近所の美味しいお店の紹介など
一見すると仕事に関係ないように思える、コミュニケーションツールとして社内Wikiを運用する方法があります。会社の近所の美味しいランチのお店など、ちょっとした役に立つ情報共有の場を作るのです。社員全員が編集できる社内Wikiの特性により、さまざまな情報が集まるでしょう。編集の敷居を下げることで、社員の社内Wikiへの苦手意識を克服できる効果も期待できます。
5.社内Wikiがうまく機能しない状態を防ぐためには
社内Wikiは便利なツールですが、情報がたまっていかなければあまり意味をなしません。
社内Wikiをきちんと機能させるための方法をご紹介します。
管理者を任命する
社内Wikiでは管理者を任命できます。管理者は各部の責任者などを選出します。社内Wikiは社員なら誰でも編集できるため、管理者がいなければ書き込み内容を精査できず、誤った情報が記載されたり、逆に正しい情報が消されたりする可能性があります。また、情報が常に最新のものかを判断する必要も、管理者にはあるのです。ただ管理するだけではなく、社員に積極的な編集を促すなど、管理者の周囲への声かけも重要だといえます。
編集しやすい環境をつくる
社内Wikiが便利なものであるためには、多くの情報の蓄積が欠かせません。それには、社員が編集しやすい状況を整備することが重要です。編集においてあまりに条件が厳しすぎると意欲が削がれ、協力してくれる社員の数が伸び悩むことが考えられます。そこで、初期の頃は編集する際のルールを緩和してみるとよいでしょう。「何でも自由に書いてください」というくらいのかんたんなルールにしてみるのです。
社内Wikiは情報量が命。より多くの社員から情報を寄せてもらうことが大切です。社員の中のハードルを大きく下げることが、編集しやすい環境づくりにつながっていきます。
情報の分散化を防ぐ(システムの統合)
社内Wikiは基本的に社内に1つ、というのが理想です。部署やチームごとにWikiを運用していると、情報が拡散してしまうばかりか、どれを閲覧すればよいかわからなくなり、関係者以外誰も見なくなってしまいかねません。逆に、複数のWikiや社内SNS、社内掲示板などを運営している場合は、必要なものをのぞいて、社内Wikiに統合するのも必要です。
根本的な社内コミュニケーション不足の問題は、〇〇にあり?!組織の生産性を下げる「プロセス損失」を防ぐ方法とは
6.まとめ
社内Wikiの活用は、情報やノウハウの蓄積により、属人化などを防ぐ目的があることがわかりました。
企業の規模が大きくなり、社員数が増えるほど部署間の連携が取りにくくなるもの。
部署の壁を超えて、お互いにどんな仕事をしているか知ることで、双方に敬意を払った働き方ができるようになるでしょう。
そんな、社内のコミュニケーションツールとしての働きも期待できる社内Wiki。社内の情報共有の意識を持つなら、まずは専用ツールの導入から初めてみてはいかがでしょう?