
「シャッフルランチ 」という制度をご存知でしょうか?
近年ではベンチャー企業を中心に採用が広がっている、福利厚生制度の一環です。多くの社員の協力によって成り立つシャッフルランチ 。
今回はその仕組みと魅力、制度として取り入れるメリットや実施のポイント、注意点についてご紹介します。
1 シャッフルランチとは?
シャッフルランチとは、「企業が負担するお金で他部署の社員同士がランチを食べられる」、という制度のことです。
その実施目的は、部署の壁を超えた社員同士の交流がメイン。ランチという食事の場を借りて、普段接することのない他部署の人がどんなことを考え、どんなスタンスで仕事に臨んでいるのかなどについて知れる、社員にとって貴重な機会なのです。
1-1 ランチ代は基本的に企業が負担
シャッフルランチは企業の福利厚生の一環です。
多くの企業では、社員は無料か格安でランチ会を楽しめます。シャッフルランチの予算は企業によって異なりますが、1000円からのケースが多く、2500円ほど支給される場合もあるようです。
普通は食べられない、豪華なランチを味わえるのが社員にとってのメリットとなります。普段はあまり足を運ばないようなおしゃれなお店でランチができるのですから、社員のモチベーションも大きく上がるでしょう。
2 シャッフルランチを行う目的と4大メリット
シャッフルランチは、単なるお昼ご飯代の補助という訳ではありません。企業と社員の双方にメリットの多い福利厚生制度なのです。以下に、4つのメリットをまとめました。
1:他部署間のつながりを深められる
2:社員数が多い企業ほどお互いを知れて効果的
3:仕事中に他部署の人へ話しかけやすくなる
4:昼休みなので子育てや介護中の社員も参加しやすい。
順番にご説明します。
2−1 1:他部署間のつながりを深められる
シャッフルランチは文字通りメンバーを「シャッフル」するのがポイント。
参加者を募り、チームや部署の垣根を取り払い、普段の交流が少ない社員同士でシャッフルしてチームを編成します。そのため、シャッフルランチの参加者同士は「なんとなく顔を知っているくらい」のつながりであることが多く、ほぼ初見同士で話さなくてはならないこともあります。
しかし、それこそがシャッフルランチ最大の魅力。 知らないチームや部署のメンバーと交流を深められる絶好のチャンスです。美味しい料理を前に、会話に花を咲かせることで、これまでにない交友関係が広がっていきます。
2−2 2:社員数が多い企業ほどお互いを知れて効果的
他部署とメンバーをシャッフルして行うシャッフルランチ。これは、社員数が多い企業ほど効果を発揮します。
社員数が100人を超えるような事業所だと、誰がどんな仕事に携わっているのか、新しく入った人がどの部署に配属になったのか、よくわからないまま過ごしているケースも少なくありません。 そのため、社員同士がお互いを知り、どんな仕事をしているかを把握することで、相互理解につながるのです。
例えば、一見地味そうで何をしているかわからなかったAさんに対しては、「Aさんは、会社を支える縁の下の力持ちのような仕事をしている」といった、これまでとは違った見方ができるようになるでしょう。
2−3 3:仕事中に他部署の人へ話しかけやすくなる
シャッフルランチで他部署の人と交流ができると、業務中や休憩時間にも話しかけやすくなります。
趣味や出身地など共通点があれば親近感がわきますし、そうでなくても、一度食事をした仲ということで、格段に話しかけやすくなるでしょう。廊下ですれ違った時や、別件の用事で部署を訪れた際などに、気軽に挨拶しあえる関係になっているかもしれません。
そこから行き詰まっていた仕事がうまく運び出したり、部署の垣根を超えた新しいプロジェクトの話が膨らんだりするなど、仕事関係の話が広がっていくかもしれませんよ。
2−4 4:昼休みなので子育てや介護中の社員も参加しやすい
企業の福利厚生はなるべく利用したいと思っても、部署の懇親会が飲み会などの場合、参加するのが難しい人たちもいます。子育て中の人や、家族の介護がある人、遠方から通っていて通勤に時間のかかる人などです。
しかし、シャッフルランチは昼休みに行われるため、上記の理由を持つ人たちも、気軽に参加しやすいのが特徴です。
普段は孤独に自分と向き合っている人も多いので、シャッフルランチを機会にさまざまな人に相談できる機会になります。
子育てや介護の経験がある人から、貴重なアドバイスがもらえるかもしれません。 より多くの社員が部署の垣根を超えて接する機会を持てる、シャッフルランチには様々なメリットがあることがおわかりいただけたでしょう。
3 シャッフルランチのやり方の5ポイント
では、実際にシャッフルランチのやり方について説明します。 ポイントは以下の5つです。
1:部署が被らないようチーム編成を決める
2:システムを自動化する
3:社内への事前アナウンスを徹底する
4:周辺のおいしい店をピックアップ
5:チームに1人、ムードメーカーを配置する
3-1 1:部署が被らないようチーム編成を決める
企画する側として、シャッフルランチが失敗だったといわれないように、最善を尽くせるよう計画を練っていきましょう。
シャッフルランチのチームを組む際には、なるべく同じ部署のメンバーが被らないように気をつけましょう。
シャッフルランチの醍醐味は、面識の少ない他部署の人同士の交流だからです。そのため、普段から面識がほどんとない人たちを同じチームに配置すべきです。チーム編成の方法は、部署ごとに分けてくじ引きで決めたり、社内のSNSツールを使って普段の関係性が薄い人同士をマッチングさせる、などの方法があります。
3-2 2:システムを自動化する
シャッフルランチのチームやお店を決める際には、システムを自動化しておくと便利です。
シャッフルランチのチーム編成を行う際には、メンバー全員のスケジュール確認とお店の手配という複雑な工程があります。
基本的にはこれらの作業を幹事が1人で行うことになるため、どうしても負担が多くなりがちです。 ChatWork(チャットワーク)やSlack(スラック)など、社内連絡に使われているツールにプログラムを加えることで、シャッフルランチのメンバー選定や参加可能な日時の調整など、複雑な作業を自動化できます。
幹事の負担を減らすことで、シャッフルランチの実施率を高める効果が期待できます。
シャッフルランチで自動化するとよい項目 |
・部署が異なるメンバーの選定 ・メンバーが参加可能な候補日の選定 ・日程決定後の社内カレンダーへの自動登録 ・リマインドのメールやチャットの送信 |
3-3 3:社内への事前アナウンスを徹底する
メンバーを決めると同時に、シャッフルランチが行われていることを周知徹底しておく必要があるでしょう。
せっかく開催しても、誰も参加してくれないのでは意味がありません。社内の広報ツールや掲示板のポスターなどを駆使し、シャッフルランチの日程を告知しましょう。
費用がほとんどかからないのと、参加への敷居が高くはない点も、しっかりとアピールすべきポイントです。
3-4 4:周辺のおいしい店をピックアップ
続いてはお店選びです。普段からお昼はコンビニで買ってきて一人で食べている、という人は多くいるでしょう。その人たちを満足させシャッフルランチのリピーターにするには、美味しくておしゃれなお店選びは非常に重要です。
時間的に会社の周辺のお店に限られるので、口コミやSNS、お店選びのWEBサービスなどを利用して選定しましょう。
複数のお店をピックアップしておけば、チームごとにローテーションで回せるので、今後の運営が容易になります。
3-5 5:チームに1人、ムードメーカーを配置する
シャッフルランチが有意義なものになるには、多くの会話が必要不可欠。そのためには、場を盛り上げる人物の存在が重要です
チームはランダムの配置とはいえ、あまりにも寡黙な人が揃ってしまうと、会話が盛り上がらず食事の音だけが響くランチ会になってしまいますよね。
そこで、チームを決める際に、社内のムードメーカー的な人を1人、入れるようにしておくとよいでしょう。その人がうまく場を盛り上げてくれることで他部署間の交流が捗り、メンバーをシャッフルした意味が大きくなります。
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4 シャッフルランチの運用で気をつけるべき3点
シャッフルランチは、社内のコミュニケーションを円滑にし、今後の更なる多様性が期待できるなど、会社として行う福利厚生の施策としては、非常に魅力的なものです。
しかし、運用面で気をつけなければ、本来の目的を達成できず失敗ということもありえます。
シャッフルランチがきっかけで社員同士の関係が悪化し、社内のコミュニケーションが円滑に取れなくなってしまう可能性もあるでしょう。 そこで、シャッフルランチをの運用で気をつけるべき点を3つにまとめました。
4-1 1:マッチングの難しさ
メンバーをランダムで選ぶ場合でも、同じ部署や近い関係の社員同士が同じチームになってしまうことがあるでしょう。
また、年齢差があったり男女比に偏りがあったりしても、シャッフルランチが盛り上がらないことがありえます。そんな時は、上記でお伝えした通り、ムードメーカー的な人物を配置したり、メンバー間のバランスがよくなるように再度調整するとよいでしょう。
4-2 2:マンネリ化させない
好評につきシャッフルランチを繰り返し開催していると、マンネリ化は避けられないもの。
何度も同じお店になったり、チームのメンバーの大半が以前と同じだったりすると、途端にマンネリ化してしまいます。そのため、何度開催しても参加者を飽きさせない工夫が必要です。
お店選びは重要ですが、繰り返すうちにバリエーションが限られてしまうもの。そんな時は、メニューの多いお店を選ぶことで料理のバリエーションを増やし、マンネリ化を防ぎやすくできます。社員数が少ない企業ではチームのメンバーが被りやすくなりますが、うまく工夫して乗り切りましょう。
4-3 3:コミュニケーションが苦手な人への配慮
シャッフルランチの参加者が、全員乗り気かどうかは残念ながらわかりません。人見知りしがちな人や、コミュニケーションが苦手な人もいるでしょう。その人たちへの対応もしっかりと行わなくてはなりません。
同じチームの人がそつなく話題を振るなどフォローするのがベストですが、チーム編成によっては難しい場合も……。
そのため、ランチ中に話すお題などをあらかじめ決めておくと、話題が尽きなくてよいですよ。好きな食べ物や観光地、休日の過ごし方など、誰でも答えやすいライトな話題を揃えるのが会話を弾ませるコツです。
5 効果的な運用のためにすべき5つのこと
毎月や隔週でシャッフルランチを開催するとなると、社員にとってはありがたいことですが、運用する担当者からすれば、負担が重くのしかかってくるかもしれません。
そこで、シャッフルランチを効果的に運用していくために必要な、5つのポイントをまとめました。
1:便利なツールの導入
2:実施の目的を社内全体に共有
3:ランチ後のレポートやアンケートを重視
4:結果を社内に共有
5:PDCAを回してより有意義なイベントに
上記のポイントを押えることで、シャッフルランチは企業の文化として根付いていくでしょう。
5-1 1:便利なツールの導入
ランチのチームメンバーをランダムにする場合、地道に手作業でやっていたのでは膨大な時間がかかってしまいます。
そこで、いくつかの便利なツールを使うことをおすすめします。
まずは、社内SNSを使う方法です。社内SNSとして多く使われているChatWorkやSlackなどを利用するのです。Botを作成すれば、自動でチーム編成を組み立てられるようにできます。しかも、普段あまり係わりのないメンバー同士を同じチームに振り分けられるなど、すべて自動でお任せできるのが便利です。
また、プログラムなどを組まずに行いたい場合は、オンラインあみだくじなどが便利です。作成したあみだくじをURLで共有し、全員が名前を書き込んだら自動的にあみだくじの結果が表示されるというもの。
メンバーに周知しておけば、あとは結果を告知するだけなので、担当者の負担が少なく済みます。
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5-2 2:実施の目的を社内全体に共有
シャッフルランチの実施が決まったら、社内全体に告知しておきましょう。その際に、「なぜ開催するのか?」を明確にしておく必要があります。
社内の離れたメンバー同士の交流による活性化と聞けば、参加に不満を持つ人も少なくできるでしょう。
豪華なランチについても補足説明すれば、参加者の胃袋を刺激するはずです。 また、開始前のリマインドも忘れないようにしましょう。開催が近づくとチーム編成やお店の詳細とともに、開催日時の情報を添えることで、当日に忘れて参加できない人を減らせます。
5-3 3:ランチ後のレポートやアンケートを重視
シャッフルランチは開催して終わりではありません。終わった後にはアンケートを取るようにしましょう。何度も継続して行っていくうえで、参加者の感想は貴重な情報です。
アンケートはなるべく多くの参加者が答えやすいよう、項目を少なく、短時間で回答できる内容にしておくとよいでしょう。
感想だけでなく意見やフィードバックをくれる人もいるので、次回開催の参考になります。
5-4 4:結果を社内に共有
シャッフルランチの参加率などの実績や、アンケートで得られた結果などは、積極的に社内に共有するようにしましょう。
実際に多くの社員が参加していることを知れば、これまで見送っていた人も、次回から参加したいと思うかも知れません。
そのためにも、シャッフルランチの様子を撮影した写真や、アンケートから抜粋した好意的な意見などと合わせて公開するとよいでしょう。
5-5 5:PDCAを回してより有意義なイベントに
シャッフルランチが好評で終わったからと、また同じ内容で繰り返し行うことも大事ですが、PDCAサイクルを回して行くのも重要です。
アンケートの結果などをもとに、PDCAを回しながら反省点を次回に活かしましょう。
たとえ失敗したとしても、それは貴重な糧となります。参加者にとってより有意義なシャッフルランチにできるよう、改善を重ねて行く必要があるのです。
●PDCAとは
Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善の4つからなり、頭文字をとってPDCAサイクルと呼ばれる。
PからAを順番に回すことで、目的の改善や効率化が期待できる。
6 シャッフルランチの導入事例5社
シャッフルランチを実際に導入している企業についてもご紹介します。
6-1 株式会社サイバーエージェント
シャッフルランチの取り組みを最初に始めたのは、株式会社サイバーエージェントだといわれています。
部署の垣根を超えたシャッフルランチの実施により、社員同士の横のつながりを大切にしている企業です。ときには会社役員が参加するケースもあるらしく、企業の経営方針などについても質問する機会に恵まれそうです。
働きがいのある企業として有名な、サイバーエージェントらしい取り組みだといえるでしょう。
6-2 株式会社メルカリ
株式会社メルカリもシャッフルランチを行っている有名な企業です。
一時は幹事の負担増により、シャッフルランチの回数が減ったこともあったようですが、独学でプログラミングの勉強をしていた翻訳担当の社員がシステムの自動化を実現。 同じチームに選ばれたメンバー全員が参加可能な日程を自動で算出し、利用可能なお店の候補も自動でリストアップするなど、幹事が負担に感じる部分を自動化しています。
これにより、幹事のモチベーションがアップし、シャッフルランチの実施率を52.4%から72.4%へと大幅にアップさせることに成功しています。
6-3 サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社には「仕事Bar」という、シャッフルランチに似た制度があります。これは、リラックスした雰囲気で真面目に仕事の話をする、「場(Bar)」を設け、そこに食事代が支給される制度です。
部署を挟んだ5名以上が対象となっています。ランチに限ったものではありませんが、部署を超えて話し合うという目的は、シャッフルランチと同じですね。
6-4 こねヒト株式会社
女性の悩み解決に関するアプリを製作するこねヒト株式会社。社内の福利厚生制度としてシャッフルランチがあります。毎月、第2、3、4月曜日がシャッフルランチの日のようです。場合によっては社長と一対一で食事をする機会もあるため緊張しそうですが、普段は聞けない企業のことや社長の意外な一面などを聞けそうです。
シャッフルランチ後はFacebookのグループで写真をシェアするなど、広報にも力を入れています。
6-5 株式会社TRASTA
株式会社TRASTAでは、毎月1回の全社員ランチ「トランチ会」を2018年から廃止し、代わりにシャッフルランチ制度を導入。毎月、人事や福利厚生に力を入れるチームがアプリを活用してランチグループを編成します。
部署を超えてこれまであまり関係のなかった職種の社員同士が触れ合い、お互いに意見を出し合うなど貴重な場となっています。
7 まとめ
社員がやりがいを持って働けるよう、福利厚生の一環として、シャッフルランチを導入している企業は増加傾向にあるようです。
大手のベンチャー企業がすでに制度を活用しているのは、自社での採用を上層部に提案する際に、よい事例になるでしょう。 部署を跨いだランチ会は、多くのコミュニケーションを生みます。それが部署を超えた事業の原動力になったり、新たな事業の発展につながったりするかもしれません。
今回ご紹介したシャッフルランチは、企業の売り上げや発展に対して即座につながるものではありませんが、社員一人ひとりを大切にするという姿勢を見せることで、企業にとって将来的にプラスに働く可能性を秘めています。