
「スキルマップを作るように言われたがどこから手をつければいいのか?」
「スキルマップを作ることでどんなメリットがあるのか?」
「スキルマップの作り方がわからない」
このようにお悩みでしょうか。
スキルマップは社員の技能力、業務遂行能力を一覧にしたもので、自社の人材にどのようなスキルがあるか把握し、より適切に活用できる手段のひとつです。人材配置、評価、人材育成など幅広く活用できます。
この記事ではスキルマップとは何か、自社に合った作成方法、評価の際の注意点などを説明します。読後にはスキルマップの活用方法について詳しく理解できるでしょう。
1. スキルマップとは
ここではビジネス領域において「スキルマップ」と呼ばれるものが何を指し、どのようなものがあるのか見ていきます。
1-1. そもそもスキルとは何を指すのか
ビジネス領域において「スキル」と使う場合は、おもに仕事に直接必要な、実務で使える技能を指すことが多いでしょう。
例えばPC端末やソフトウェアを使える力はもちろん仕事上に必要なスキルです。
しかしそれ以外にも、
・来訪したお客様と英語で会話をし案内する
・タスク管理など自己マネジメントができる
・同じ職場の同僚とうまくコミュニケーションをとる
など、業務遂行に直接かかわりがなくても実務全体で見たときに必要な能力全般も「スキル」には含まれます。
技能別の名詞を語頭につけて「ITスキル」「コミュニケーションスキル」「語学スキル」など「名詞+スキル」でわかりやすく表すこともあります。
このようにビジネス領域における「スキル」は一般論的な漠然としたものではなく、各企業や組織ごとに必要な項目を選定し、どの程度できればどの評価になるのか、それぞれが判断基準をもっているため、それに沿った内容の「スキルマップ」をつくる必要があります。
1-2. スキルマップの定義
「スキルマップ」とは、在籍している社員・従業員の仕事における「スキル」を可視化したものです。
・その社員・従業員がどんなスキルをもっているのか
・スキルごとの習熟度はどのレベルか
・どの部署に配置すればより能力を発揮でき会社に貢献できるのか
・業務を遂行するにあたり、不足しているスキルや習熟度はどれか
・その社員・従業員が今後どのような目標をもち、どの点を伸ばしていけばよいか
これらがスキルマップを作成することで一目でわかります。
また個々の能力値だけではなく、組織全体の人員配置のバランスも見えるため、部署ごとの人材リソースの偏りがある場合補充の優先度がわかります。例えば専門性の高いキーパーソンが一人しかいないなど、潜在リスクも可視化されます。
1-3. スキルマップの一例
スキルマップは「詳細にその業務を行うのに必要なスキルを分類し、項目別にその人がどの程度のレベルで業務遂行できるのか数字などで評価する一覧表になっているもの」が一般的です。
①スキルマップのテンプレート一例
一方、「どのようなことが得意か、本人の来歴やPRポイント、取得した資格の内容詳細に記載しているもの」は、「スキル管理表」などと呼ばれます。
②スキル管理表のテンプレート一例
(①②引用元:テンプレート祭り https://template-matsuri.com/template/index3.html)
両方を組み合わせて利用すると、より詳細に各人のスキルを可視化でき、管理することが可能になります。
なお厚生労働省ではこの2つを組み合わせて「職業能力評価シート」としています。
③厚生労働省「職業能力評価シート」の一例とテンプレートの選び方
(③引用元:厚生労働省「キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000093584.html)
厚生労働省にあるテンプレートの項目は「わが国の「職業能力評価制度」の中心をなす公的な職業能力の評価基準(厚生労働省HPより引用)」です。そのため、必ずしもどの会社、組織にもぴったり合うとは限りません。
これらのシートはあくまでもひな形として利用し、自社に合った項目や評価基準を、実際に仕事にかかわり従業員を評価する立場の者が少しずつアップグレードしていく必要があります。
2. スキルマップを作成する7つのメリット
ここではスキルマップを作成することによって得られる、個人と組織全体へのメリットを見ていきます。
2-1. スキルの可視化により公平かつ正確な社員の能力評価ができる
評価は見えづらく曖昧になっている場合も少なくありません。
スキルマップを作成し公開し、共有することで、なぜその社員がこの評価になっているのかを社員本人が公平に正確に知ることができます。
また上司も社員それぞれの評価基準がはっきりするため公正な判断ができ、自信をもって評価することができます。
また、どのスキルを向上させ身につけた場合に、どのように昇格や昇進が可能になるのかも可視化する、という応用的な活用方法もあります。
2-2. 従業員への教育が効率的にでき、効果が上がる
各人のスキルが可視化されることで、自社全体に不足しているスキル、今後強化しなければならないスキルが把握でき、人材育成へ効果的に注力できます。
2-3. 組織において最適な人材配置ができる
社員個々人のスキルを把握できることで、組織内でそのスキルが必要とされている部署に適切に配置することができます。適材適所をすすめることにより、業務の効率化が期待できます。
2-4. 社員のモチベーションがアップする
スキルマップを公開することで、社員自身が自分のスキルを客観的に把握できます。自分の現在のスキルレベルから今後の明確な成長目標やキャリアへの道筋が把握でき、社員のモチベーションアップにつながります。
2-5. 個人や部門、部署ごとの目標が可視化でき業務効率化がかなう
スキルマップから得られた情報を全体で共有することで、個々の社員だけではなく部門、部署ごとの問題や目標が具体的に見えてきます。
ここから、今後その問題についてどのように対処すべきか、どう改善すべきか、そのように会社の業績につなげるかなどの対応ができ、業務全体の効率化へつなげられます。
2-6. リスク管理が容易になる
例えば、業務において重要なスキルを持っている人が突然に休職や退職をした場合、その人の担当している部署の仕事が回らなくなるという事態が起きるリスクが考えられます。このようなリスクを事前に防ぐためにスキルマップを活用できます。
2-7. 検定試験などに活用できる
スキルを洗い出し業務の流れを可視化することで業務内容の基準が明確になるため、それに従った業務検定を構築することができます。この検定試験を利用して、さらに評価レベルの基準にすることも可能です。
また、業務検定試験のためのテキスト作成や、講習にも活用できます。
【参考:スキルマップの誤った使い方によるデメリットを防ぐための注意点】
スキルマップは基本的に導入によるメリットのほうが大きいといえますが、使い方によってはデメリットが発生する可能性があります。 ・評価する側に公平性が見られない場合 ・抽象的で可視化が難しいスキルを評価する場合 などでは、どのように対処すべきかを説明します。
(1)社員にはスキルの評価基準を公開する スキルマップの運用においては、スキルの評価基準を誰もが公正に判断できるよう、公平かつ明確な評価基準を設定し、それを社内全体で公開して共有することが必要です。 仮に評価の基準が曖昧な場合、評価される側の社員や従業員が納得できず、ひいてはモチベーションの低下を招く危険性がありません。 評価方法がわかりづらいという現場の意見が聞かれた場合、議論のうえで新たなルールを策定しマニュアル化します。
(2)抽象的で可視化が難しいスキルは細分化する 「マネジメントスキル」「ビジネスマナースキル」など、評価が人によりわかれるスキル項目があると、どのように数値化すべきかは評価する個人の判断や考え方に大きく影響されてしまいます。 このような場合はさらに細かくスキルを細分化し、数字で計測できる状態に項目を設定します。 例えばマネジメントスキルならば ・課題を分析する力 ・進行管理を適切に行う力 ・問題が起きたときの解決力 など、複数項目に分けて数字で表し、複数人数で評価することで、その社員のスキルを標準化し可視化することができるでしょう。
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