
組織がひとつの目標に向かって団結することは、生産性の向上や業績のアップに大きくつながる要素です。
そして、組織がチームワークを高めるためには、何よりリーダーシップが重要とされます。
しかし、リーダーシップとは、ただ単に仲間をぐいぐい引っ張っていくことではありません。
真のリーダーシップとは何なのか。今回は、チームワーク向上にリーダーが果たす役割やリーダーシップの重要性などについて解説します。
1.なぜチームワーク向上にリーダーが欠かせないのか
どのような企業であっても、業務を遂行するうえでは、必ずチームを作って対処していくものです。
一定の人数を集め、部署やプロジェクトチームに分け、それぞれの組織がひとつの目標に向かって協力し、切磋琢磨しながら日常の業務をこなしていきます。
そこには、組織の力学のようなものが働き、まとまりのない組織なら業務効率は落ちてしまうでしょう。個の力だけでは難しい課題に対処するためにチームを組んでいるのにもかかわらず、組織が単なる個の集合体に陥ってしまいます。
協力して課題に取り組めないならば、そもそも組織を作る意味がありません。
チームワークの取れた組織の活動は、生産性や業務効率に好影響を与えます。
個人の力量では対応力や労働時間に限界がある一方、チームがひとつになった組織なら、メンバー同士の特徴や個性が相乗効果を生み、個人の力量を大きく超えた力が生まれます。
たとえ困難な状況に陥ったとしても、メンバーそれぞれが意見を出し合えば、そこから解決の糸口を見いだせることもあるでしょう。
企業とは、そうしたチームの集合体であり、チームワークを向上させることは、そのまま生産性を向上させ、業務成績をアップさせることに直結するのです。
チームワークの取れた組織の中心には、必ずといっていいほど優れたリーダーが存在します。
チームが機能的な組織として活動するには、まずメンバーがひとつの目標に向かって進むための行動指針が必要です。
しかし、行動指針を示すだけなら誰にでもできます。チームにとって重要なのは、提示した行動指針をメンバー全員に共有させることです。
組織に集められたメンバーは、それぞれ能力も異なれば長所や短所も違うメンバーです。そうしたメンバー全員が同じ目標に向かって行動するには、適材適所で役割を振り分け、メンバーそれぞれの能力を余すことなく発揮できる環境を整えてあげる必要があります。
そのためには、まずメンバーの長所や短所を見抜き、各自に適切な役割を割り振るリーダーの存在が欠かせません。
リーダーが各自に相応しい行動指針を示し、ときには指示を与え、メンバー同士の欠点を補えるような調整をしていくことが組織には必要なのです。
メンバーを適材適所に振り分け、組織全体で行動指針を共有できれば、チームには強い団結力が生まれるでしょう。
団結力はメンバーの協力関係を強め、業務の無駄を省いたり、メンバーのモチベーションを高めたりといった効果を引き出します。
チームを組む一番の目的は、業務を効率化し、目標達成を早めることにあります。
その目的を果たすためには、固いチームワークと、そのチームワークを向上させるリーダーシップが何より重要なのです。
2.チームワークを向上には、どんなリーダーシップが必要か
そもそもリーダーシップとは、日本語に直せば「統率力」や「指導力」といった意味を持つ言葉です。
確かに、リーダーシップというと、司令塔やチームを引っ張っていくというイメージが思い浮かびます。
しかし、チームワークとの関係でリーダーシップを見る場合、単に統率力があるだけ、単にチームの中心的存在というだけでは、真の役割は見えてきません。
それでは、チームワークの向上に貢献するリーダーシップとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。以下、詳しく見ていくことにしましょう。
自分だけが頑張るのではない
チームの中心的な存在に抜擢された場合、普通はどうしても自分の役割に気負ってしまうものです。
リーダーとしてチームの誰より成果を上げなければならないと感じて、人一倍自分が頑張ろうとしてしまいがちです。
確かに、頑張っている姿をチームのメンバーに見せることで、背中で引っ張ろうとするのもリーダーシップのひとつかもしれません。
しかし、自分だけが頑張ろうとして、一人で仕事をこなそうと努力すれば、むしろチームとしての業務効率は悪くなってしまいます。
リーダーシップを発揮するとは、自分だけが頑張ってメンバーを引っ張るということではありません。
むしろ、自分以上にチームのメンバーに頑張ってもらうことこそ、真のリーダーシップのあり方だといえます。
たとえば、部下が仕事で失敗しても、リーダーがしっかりフォローしてあげれば、その部下は失敗を恐れず仕事に取り組めるようになるでしょう。
そのように、リーダーの役割は自分がどう頑張るかではなく、メンバーや部下をどうやる気にさせ、どう頑張ってもらうかです。
チームワークを高めるリーダーシップとは、チームの中心的存在になるのではなく、チームを支える縁の下の力持ちになることなのです。
寛容な雰囲気を作れるかどうか
チームワークを向上させ、生産性を高めるためには、そのための雰囲気づくりも重要です。
たとえば、会議でアイディアを出すよう求められたとき、それを頭ごなしに却下されれば、発言すること自体に及び腰になってしまうかもしれません。
斬新で柔軟なアイデアは、抑圧された環境で出てくることはなく、むしろ間違いや失敗を許容する雰囲気の中でこそ生まれるものです。
そのような寛容な雰囲気を作るためには、リーダーとメンバーが価値観を共有し、お互いの価値観を尊重し合っているような関係性が必要となります。
部下の意見や価値観に耳を貸さないリーダーには、誰も自分の意見を主張してこないでしょう。
リーダーシップに優れた人は、メンバーの何気ない意見や主張を無視することなく、むしろ同じ目線に立って考え方をシェアしようとします。
そうすることで、メンバーは意見を出すことを恐れなくなり、チーム内での意見交換も活発になり、新しい成果を生み出しやすくなるのです。
厳格な指示を出すより個性を尊重する
チームワークを高めるためには、ときにはリーダーがメンバーを管理し、自分の指示に従わせる場面も必要でしょう。
しかし、厳格でゆとりのない管理は、メンバーの個性を潰しかねません。
むしろ、チームワークを高めるためには、管理より協調、厳格な指示より個性を尊重するようなリーダーシップが求められます。
メンバーが能力を発揮するには、単に仕事を詰め込むように指示するのではなく、そのメンバーの能力に合った仕事を与えたほうが能率的です。
メンバーそれぞれが自分に適した仕事に従事できれば、より仕事に取り組みやすくなり、生産性の向上や作業効率のアップにも貢献します。
チームワークにおけるリーダーシップとは、部下に押し付けることではなく、部下を引き上げることです。
メンバーとの綿密なコミュニケーションを通して、それぞれの能力や個性を把握し、メンバーにとって身近な存在になることこそリーダーシップの本質です。
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