心理的安全性と人的資本経営の関係について|田中弦のCEOBlog-vol.4

※こちらのブログは、UniposサイトのCEOblogから転載/リライトしています。

このCEOブログは、CEOの田中がこれからの企業経営について得た人的資本経営に関する情報をまとめ、見解を踏まえて投稿していくシリーズです。

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本日は、心理的安全性と人的資本経営の関係について考察していきます。

これまでの連載を振り返ってみます。

〜他記事リリース後リンク紐付け〜

  • 人的資本を考えるシリーズその1:人的資本経営を多面的に考えてみる👇
    ▶︎人的資本は人的資源と違い、伸び縮みします。そのために人的資本の開示だけではなく「活用・改善」がポイントとなり、競争力に直結します。
  • 人的資本を考えるシリーズその2:人的資本の開示は誰にとって重要か👇
    ▶︎人的資本の開示は機関投資家だけではなく労働市場へのメッセージでもあるため、上場企業だけではなくすべての企業にとって重要ではないかと考えました。
  • 人的資本を考えるシリーズその3:具体的な開示項目を先駆者に学ぶ。企業文化は開示項目となるか?👇
    ▶︎人的資本の土台は企業文化や企業風土であり、人的資本においてここが重要なポイントではないか、と申し上げました。先進的な事例として、丸井グループ様を取り上げました。

今回は、以上のことを踏まえて、「心理的安全性と人的資本経営の関係について」考えていこうと思います。

人的資本の「土台」とは、健全な組織風土と、心理的安全性の高さである

私は、人的資本の土台は、「健全な組織風土」と「心理的安全性の高さ」ではないか、と考えています。実はシリーズその1でも少し書いていたのですが、文量の関係上、書ききれませんでした。また、丸井グループ様のような事例も先に紹介しておきたかったのです。(そうしないと具体性に乏しいので・・)

人的資本の土台については、その1に登場する、以下の図の赤枠部分が該当します。

出典:リクルート社『人的資本経営の潮流と論点2022』を参考にUnipos社作成

私は人的資本の開示とは、組織風土や組織文化を語り、その上に立脚する組織能力を開示することではないかと考えています。

そのためにも、人的資本の価値向上のための「活用・改善」を実行していく必要があります。

組織風土の改善・改革と、人的資本の関係

組織風土の上に、組織文化があります。組織文化とは、その企業における成功体験から構築され、その中で卓越した組織能力が競争力となっていきます。

つまり、組織風土がズタズタに傷んでいる土壌においては、人的資本の比較可能な指標にせよ、独自指標にせよ、「活用・改善」ができないのです。

せっかく人的資本の開示をしても、年々下がっていく、もしくは他社と比べて見劣りするものとなってしまっては、開示への興味や意義が徐々に薄れ、人的資本に対し経営レベルでの感心が高る中で、形骸化してしまいそうですね。

それを防ぐには、土台である組織風土をこのタイミングで改革していく必要があります。

健全なカルチャー情勢が、人的資本経営の土台を作ります。(下図参照)

出典:『「カルチャー」を経営のど真ん中に据える』遠藤功、東洋経済新報社より引用、Uniposにて加筆

組織風土を痛める主要因は「心理的安全性」の低さにある

「心理的安全性」の低さは、組織風土を傷めることにつながります。

心理的安全性とは、要約すると「自分の考えや意見などを恐れなく、組織のメンバーの誰とでも言い合える状態」です。

1999年にエイミー・エドモンドソンさんが論文発表され、その後「恐れのない組織」においてまとめられて以来、Googleのプロジェクト・アリストテレスにおいて心理的安全性の高いチームこそが生産性が高い、など多くの研究がなされてきました。

心理的安全性の低さの要因とは

上司の高圧的な言動や、上意下達のカルチャーが心理的安全性の低さの要因です。

ミスの報告、誰かの意見に対する反論、こういった言いにくい意見を言える環境づくりが非常に重要です。
(詳細は拙著「心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100」にて詳述しております。)

心理的安全性が低い組織では、「沈黙」を選んだ方が得です。

黙っていれば、「無知だなぁ未熟だなぁ」とも思われません。
黙っていれば「若いのに生意気なやつだ」とも思われません。

今後、不確かで不安定なマーケットにおいて、沈黙を選んだほうが得な組織と、活発な発言が展開され多くの社員を「資本」として活用できる組織では、競争力が全く異なってきます。

日本の恥の文化と、同調圧力が強い組織では、かんたんに心理的安全性は下がってしまいます。

心理的安全性を高めることで組織風土改革は実行可能なものとなる

では、組織風土を改革するにはどうしたらいいのでしょうか。それは、心理的安全性を高めることです。

今の時代、社長も、部長も、課長も、上司の誰もが「自分の言っていることが絶対的に正しい」と言い切れなくなっています。

突然の戦争や、海外でのライバル企業の出現、人口減などは企業が初めて経験することばかりです。

リーダーだけのシングルCPU(脳)で意思決定するのか、それとも多くのCPUを同時に使える状態で意思決定するのか。これからの世界では、多様な意見があったほうが生き残る確率が高くなります。

ダイバーシティ(多様性)は非常に重要な考え方ですが、性別や年齢だけではなく、意見や価値観、コミュニケーションの取り方の多様性も含んでいます。心理的安全性は、これらの多様性を上げるための土台です。

全ての人を活かし切る経営をするために組織風土改革が必要

元来、日本企業は組織のちからや改善のちからが優れていると言われてきました。現場の力が強いのも日本的経営の特徴でした。

ところが、最も組織力や改善が必要とされてきた大メーカーですら、不祥事が多く発生しています。

日本特有の問題として、世代間のはたらく価値観が大きく異ることも、心理的安全性の低さに拍車をかける要因となっています。

近年日本では少子高齢化により人材の確保自体が難しく、そして不安定になってきています。
こういった時代には、若手でも、経営者でも、全ての人を活かし切る経営が重要となってきます。

その実行過程においてはまず、心理的安全性を高めることが組織風土改革では重要なのです。

まとめ

組織風土は根深く、一朝一夕に変わるものでもありません。変化の早い今の世の中で、組織風土から手をつけるなんて遠回りだと思われるかもしれません。

ですが、心理的安全性とは何かを学ぶことによって、確実に組織の風土を変えることが可能です。

実は組織風土という土台から着手することこそが、実は最もお得で先回りすることではないでしょうか

次回は、世代間の働く価値観について、お話してみたいと思います。

随時更新予定ですのでまた次の機会に。

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 代表取締役社長CEO 田中 弦
1999年にソフトバンク株式会社のインターネット部門採用第一期生としてインターネット産業に関わる。ブロードキャスト・コム(現 Yahoo!動画)の立ち上げに参加。その後ネットイヤーグループ創業に参画。 2001年経営コンサルティング会社コーポレイトディレクションに入社。 2005年ネットエイジグループ(現UNITED)執行役員。モバイル広告代理店事業の立ち上げにかかわる。2005年Fringe81株式会社を創業、代表取締役に就任。2013年3月マネジメントバイアウトにより独立。2017年8月に東証マザーズへ上場。2017年に発⾒⼤賞という社内⼈事制度から着想を得たUniposのサービスを開始。2021年10月に社名変更をし、Unipos株式会社 代表取締役社長として感情報酬の社会実装に取り組む。2022年10月に著書「心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100(ダイヤモンド社刊)」を刊行。