【Unipos心理的安全性サミット2022】これからの組織改革に心理的安全性が欠かせない理由~専門家・実践家が語る~

去る2022年2月24・25日の2日間、

Uniposを提供する中で数々目にしてきた、心理的安全性が組織に起こす素晴らしい変化を世に伝えるべく、各界の専門家と実践企業をお招きし「Unipos心理的安全性サミット2022」を開催しました。

ベント当日は、専門家による学術的な知見と、先進的な取り組みを行っている企業の知見の双方から、

イノベーション創出やガバナンス強化、組織改善、パーパス経営といった、現代の企業経営に欠かせない要素をどのようにつくっていけばいいのか、それらに心理的安全性がどのように寄与するのかを語っていただきました。

コロナ禍により全講演オンライン配信となりましたが、視聴の皆さまからは多くのコメントや質問が寄せられ、心理的安全性への関心の高さ、組織をより良く変える熱気に包まれた2日間となりました。

▼本記事では、2日目の25日より、4公演をピックアップ!講演サマリーをお伝えしていきます。

  1. 『組織のガバナンス強化と「心理的安全性」 ー経営リスクの回避に必要な風土のつくり方ー』株式会社ZENTech 取締役 石井遼介 氏

  2. 『「心理的安全性」の理論から読み解く3つの離職とその予防』株式会社エリクシア 代表取締役 上村紀夫 氏

  3. 『離職に悩む保育業界で離職率改善により売上7%UPしたそのワケとは?~改善のカギは「承認」と「感謝の共有」~』株式会社ハイフライヤーズ 保育運営本部 本部長 キートス統括園長  日向美奈子氏

  4. 『本気でDXを進めるために必要なマインドセット』株式会社圓窓 代表取締役 元・日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 澤円 氏

どれも組織を変えたい方必見の内容ですので、ぜひ最後までご覧ください!

【Pickup①】組織のガバナンス強化と「心理的安全性」 ー 経営リスクの回避に必要な風土のつくり方 ー

株式会社ZENTech 取締役の石井 遼介 氏は、心理的安全性を日本に広めた先駆者であり、研修やサーベイ、コンサルティングを通じて数多くの企業の心理的安全性浸透をサポートされています。

今回のサミットのテーマである心理的安全性の定義について、石井氏は「地位や経験に関わらず、誰もが率直な意見や素朴な疑問を言い合うことができる組織・チーム」のことだと説明。

その上で、「チームの心理的安全性が、チームのパフォーマンスや業績に貢献するという証拠が、米国組織行動学会を中心に報告されている」のだと言います。

さらに、心理的安全性の効果はそれだけに留まらず、従業員のエンゲージメントが高まり離職率が低下したり、健全な意見の衝突からイノベーションが生まれたりと、組織にとって様々なメリットをもたらしてくれるのだそうです。

石井氏によると、心理的安全性は「組織で成果を上げようとするときの、すべての協働の土台になる」ものだといいます。

この土台がないと、組織は心理的“非”安全な状態となり、不祥事やコンプライアンス上の問題をリーダーや経営陣がキャッチアップできないまま時間が経過してしまったり、組織間に溝が生まれたり、離職率が高止まりしたりといった経営リスクにさらされることになるのです。

心理的安全性を高めることは、このようなリスクの回避につながるだけでなく、企業としての「成長のドライバー」になると石井氏は言います。

「“心理的安全性”と“仕事の基準”の両方が高いと、企業の成長はドライブします。そのような環境をつくるには、組織のパーパスが言語化され、組織のそれぞれのメンバーが手触り・実感を持てる水準で浸透していることが重要です」(石井氏)

では、なぜ今という時代に心理的安全性が必要なのでしょうか。その理由として石井氏は「現代が変化の激しいVUCAの時代だから」という点を挙げます。

VUCAの時代とは、いわば「正解のない」時代であり、「正解がすばやく遷り変わる」時代ともいえます。そのような時代では、経営やマネジメントは一層困難を極めることになります。

そこへ追い打ちをかけたのがコロナ禍です。業績予想を立てても、たった1年を全うすることすら困難な時代。それが私たちが置かれている立ち位置だと石井氏は指摘します。

「マーケットが激変するいま、経営や事業も変化し続けることが求められています。完璧な計画立案などは幻想として捨て去り、速く小さく試して、価値ある失敗をし、軌道修正しながら、本当に行きたい場所に最終的に到達することが大切です」(石井氏)

そのためには、組織の多様な視点を集めて「現実」を見つめる必要があります。なぜなら、「経営者であっても、すべてを見通せるわけではない」(石井氏)からです。心理的安全性は、組織のメンバーが持っている、さまざまな視点が、会議や、チャットツール、雑談などのコミュニケーションを通じて、組織・チームに共有されるために重要です。

ここで石井氏は、あえて「心理的安全性の壊し方」について解説を行いました。心理的安全性の壊し方を知ることで、逆説的に心理的安全性の高め方を学ぶという狙いです。

心理的安全性を壊すなら、「罰や不安でマネジメントすればいい」と石井氏は言います。なぜなら、罰や不安を与えられると、人はなるべく「失敗を避けよう、問題を起こさないようにしよう」と行動するようになる、さらには「余計なことをしないようになる」からです。

たとえば、何かミスが発覚して、部下が上司に報告をしたとします。そのミスについて上司が部下を厳しく叱責すると、果たしてミスは減るでしょうか。実は「ミスが減るのではなく、ミスの報告が減る。つまり、部下はミスを隠すようになる」(石井氏)のだといいます。

なぜ、そんなことが起きてしまうのか。行動分析学によると、「行動の直後に罰があると、その直前の行動が減る」。つまり、「叱責」の直前の行動である「報告」が減ってしまうのです。

このように、罰や不安といった要素は、メンバーから自主性ややる気を奪ってしまう。もっと言えば、自主的に何かをやると「この組織・このチームでは罰が与えられることを学習する」のだと石井氏は言います。

では、経営層やマネージャー層はどのように振る舞えばいいのか。石井氏は「正論を振りかざすよりも、役に立つことをする」ことが重要だと述べます。

「そのためには、経営者の言葉を『メンバーがとれる行動に置き換える』と役に立つことが多いです。たとえば、ビジネスでよく使われる『危機感』という言葉ですが、『危機感を持て』といっても、本当に危機感そのものを持ってほしいわけではなく、危機感を持ったときにとってほしい行動があるはずです。それを言葉にした方がマネジメントは上手くいきます」(石井氏)

石井氏はさらに、「経営者だからこそできる3つのアクション」として、「まず、自らがつくる」「旗を立てる」「経営が”本気”を示す」を紹介しました。

「まず、自らがつくる」とは、経営者が小さく行動を変えることで、思った以上の大きな影響を組織に及ぼすことです。たとえば、直属の管理職からの報告が遅かったとして、その原因は部下の管理職にあるのではなく、自分たち経営陣が萎縮させているのではないか――つまり、「自分たちが課題になってしまっているのではないか」と考え、行動を改善することで、組織は大きく変わる可能性があるのです。

「旗を立てる」とは、トップや経営陣が経営や組織戦略の柱として心理的安全性を宣言することです。トップや経営陣が「私たちの会社では、組織戦略として心理的安全性を重視し、それに向けて経営陣も努力していく」と宣言することで、心あるリーダーが動きやすくなるからです。

「経営が本気を示す」とは、経営のメッセージを行動を通じて、言行一致でメンバーに伝えることです。たとえば、成功できなかったとしても、挑戦した社員がいたとき、どう処遇するか。挑戦した社員に対し、挑戦したことは称賛せず、結果の失敗を追求することは「挑戦が大事」と言って挑戦を促していても、「結果だけが大事」というメッセージとして伝わるでしょう。組織のメンバーは、トップや経営層の「言葉」や「標語」ではなく、実際の「行動」や「判断」こそを、経営からのメッセージとして受け取るのです。

どうすれば強靭な組織をつくれるのか。そんな悩みを抱える経営者やマネージャー層にとって、大きなヒントが得られた講演になりました。

【Pickup②】「心理的安全性」の理論から読み解く3つの離職とその予防

産業医であり、経営コンサルタントでもある株式会社エリクシア 代表取締役の上村 紀夫 氏。

様々な組織課題を解決に導いてきた実績の中から、今回は特に離職対策や組織活性に関して心理的安全性の観点からお話いただきました。

上村氏は「心理的安全性は離職対策の万能薬ではない」としながらも、「積極的な取り組みを検討する価値はある」と述べます。

その理由としては、心理的安全性が組織やチームと個人をつなぎ合わせ、変化への耐性が強い組織づくりに役立ち、社員の働きがい向上につながるからだといいます。

そもそも、なぜ心理的安全性が注目されているのか。

上村氏は3つの点を理由として挙げます。

まず、「個の意識の高まり」です。コロナ禍でテレワークが定着した結果、会社と従業員の精神的距離は広がっており、従業員は仕事とプライベートの切り分けをこれまで以上に行うようになりました。

その結果、職場の一体感が薄れ、従業員の定着率や帰属意識が低下するという課題が生まれているのです。

こうした個の意識の高まりによる課題を解決できるのが心理的安全性です。心理的安全性が高まり、対話や協働が生まれると、「個の集合体をチームにできる」(上村氏)からです。

また、「変化への対応」の方法としても心理的安全性が注目されています。

VUCAの時代である現代において、企業も個人も少なからず変化しています。変化は「成長」というプラスの要素ももたらしますが、一方で「ストレス」というマイナスの要素も与えてしまうのだと上村氏は言います。

「昇進のように、一見するとポジティブな変化であっても、ストレスでメンタルダウンしてしまう人もいます。どんな変化でも、少なからずストレスになるからです。だからこそ、個人も組織も変化適応力を高める必要があります」(上村氏)

心理的安全性が担保されることで、変化への耐性が上がるだけでなく、有意義なコミュニケーションによって成長を促す効果も期待できると上村氏は言います。すなわち、「心理的安全性は、“Change”を“Chance”に変える重要アイテム」(上村氏)なのです。

そして、3つめの理由が「働きやすさへの偏重」です。

上村氏は、会社が良かれと思って提供していることと、従業員が会社に求めていることに大きな差があり、この差が「あきらめ」や「落ち込み」「むなしさ」といったマイナス感情を従業員の中に生み出していると指摘します。

一方で、会社がしてくれたことに対するプラス感情も従業員の中にないわけではありませんが、プラス感情はすぐに当たり前のことになり、慣れてしまった従業員はプラス感情を失ってしまうのだといいます。

「それなのに、多くの会社はプラス感情を生もうとしてしまいます。これは従業員に良く思われたかったり、課題を改善するよりも何かを足す方が楽だからです。実際には、マイナス感情の処理をしなければならないのに」(上村氏)


上村氏はこれまでの産業医、および経営コンサルタントとしての経験から、従業員が生き生きと働けるかどうかを決める要素を「個人活性」と名付け、「心身コンディション」「働きやすさ」「働きがい」の3つに分類しています。

この3要素は、心身コンディションを土台として、その上に働きやすさ、そして最上段に働きがいが乗るピラミッドを構成しています。心身コンディションが崩れるとメンタルダウンにつながり、働きやすさが崩れると消極的離職(今の場所が嫌なので辞めてしまう)につながり、働きがいが崩れると積極的離脱(もっとより良い職場を探して辞めてしまう)につながってしまうというわけです。

さらに、やっかいなのは働きがいが失われることで起きる「消極的定着」だと上村氏は指摘します。

やる気はないけれど辞めたくもないということで、消極的に組織に定着してしまうのです。

こうした事態を避けるために、コロナ前は働き方改革やモチベーションエンゲージメントが組織施策のトレンドになっていました。

ところが、コロナ禍で心身コンディションが悪くなってしまったことで、多くの企業は働きやすさを重視する方向にかじを切りました。

「その結果、働き方改革は進みましたが、そこで止まってしまうと、組織がぬるま湯になったり、ぶら下がり社員が出てきたりしてしまいます」(上村氏)

では、どうすればいいのでしょうか。働きがいと働きやすさと心身コンディションのどれに注力すればいいのでしょうか。上村氏は「答えは組織によって異なる」としながらも、「組織活性へのアプローチは不可欠」と述べ、3要素それぞれの対策を紹介しました。

たとえば、心身コンディションについては産業医や経験豊かな労務担当をつけて、不調者の早期発見をすること。そして、リモートワークやフレックスなどの環境を整えて働きやすさを積み上げること。パーパスを浸透させ、働きがいを与えることなどです。

もっとも、快適な環境を整えすぎてしまうことは、前述の「消極的定着」や「ぶら下がり」を生むリスクもあります。そこで上村氏が推奨するのが、「心理的安全性」です。心理的安全性が向上すれば、働きやすくなることはもちろん、働きがいまで高めてくれる可能性もあるからです。

上村氏が語った心理的安全性と組織活性の関係性については、目から鱗が落ちる思いの方も多いのではないでしょうか。組織づくりについてあらためて考えさせられる講演となりました。

【Pickup③】離職に悩む保育業界で離職率改善により売上7%UPしたそのワケとは? ~ 改善のカギは「承認」と「感謝の共有」~

株式会社ハイフライヤーズは、保育園の「キートス」を運営する企業です。

キートスはフィンランド語で「ありがとう」の意味であり、現在13園で170名の社員が働いています。

そんなキートスを統括するのが、保育運営本部 本部長 キートス統括園長の日向 美奈子 氏です。

実はキートスは過去、年間34%という高い離職率に悩まされていた時期があったと日向氏は話します。もっとも、その理由は勤務条件が悪かったからではありません。

「もともと当社では有給取得率100%であり、社宅の家賃は社員の自己負担0円。さらに初任給は23万2千円です。社外からも『本当にうらやましい』と言われるような環境を整えていました」(日向氏)

それにも関わらず、保育士の離職率が高かったのはなぜでしょうか。その理由として、日向氏は「保育士にとって、処遇や福利厚生の手厚さは離職しない絶対の価値ではなかった」ことを挙げます。

「毎年、多くの保育士が新卒で入ってきます。Z世代である新卒の社員は、SNS世代でもあり、『いいね』をほしがっています。つまりSNS世代特有の『承認欲求』を満たすことが離職防止につながると考えました」(日向氏)

そこで、同社が導入したのがUniposでした。導入後、離職率は7.4%まで低下するなど、大きな効果が上がったといいます。

なぜ、Uniposがこれほど機能したのでしょうか。日向氏は「Uniposの仕組みが最大の理由」だったと述べます。

「Uniposはやりとりのすべてが社員全員に公開されています。そこに経営層や上司が介入しないため、信頼性や透明性が担保されているのです。すべての社員がやりとりを共有して信頼性を担保するUniposの仕組みを、私は『ありがとう』のブロックチェーンと呼んでいます」(日向氏)

たとえば、「会社から表彰される」といった行為は、経営者や上司の意思が介在します。つまり、中央集権的な仕組みになってしまっているのです。そうではなく、社員同士が感謝や称賛を送り合うことで、そこに会社や上司の思惑が入らないことが担保されている点が重要だったのです。

このようにして育まれた社員同士のつながりによって、心理的安全性が高まり、組織の内部理解が促進されたと日向氏は言います。

この心理的安全性と内部理解こそが、企業のミッションの実現に必要なのです。

「私たちは今、“荷物のいらない保育園”に取り組んでいます。一般的に保育園にお子さんを預けるためには、おむつやおしりふき、エプロンなどたくさんの荷物を用意する必要があります。朝保育園にお子さんを連れて行く際、そういった荷物と自分の荷物の両方を保護者は持ち運ばなければいけません。そのせいで、お子さんと手をつなぐことができないのです」(日向氏)

そこで、キートスではこれら必要な荷物を保育園が用意。料金も同社が負担しており、無料で「荷物で両手がふさがらないから、手を繋いで通うことができる」

「親子が目と目、心と心を向き合わせることができる」という価値を保護者に提供しています。こうしたチャレンジができるのも、心理的安全性が高い職場ならではといえます。

キートスでは、子どもたちが幸せになれる場所やサービスのことを「hoiku」と呼び、Karaokeのように世界共通語にするという夢を持っているそうです。

「どの国にも、子どもと子育てをする親が存在しています。その国の文化にあった保育を提供することで、hoikuを世界に広げたいと考えています。とても壮大な夢ではありますが、これからも保育園業界の前例にとらわれないミッションを遂行していきます」(日向氏)

Uniposの導入により組織の内部理解が進み、挑戦できる組織づくりが可能になったハイフライヤーズ。心理的安全性こそが、“荷物のいらない保育園”の推進と、hoikuを世界共通語にする夢を目指すための土台になっています。

【Pickup④】本気でDXを進めるために必要なマインドセット

澤氏は元・日本マイクロソフト業務執行役員を務めた人物であり、現在は株式会社圓窓の代表取締役として、数々の企業の顧問やアドバイザー、大学の客員教授などで活躍しています。

この日、出張先の遠方からリモートでサミット会場に接続した澤氏は、「2020年。25年ぶりに世界はリセットされました」と切り出しました。

25年前のリセットとは、インターネットの登場と普及です。そして、2020年のリセットとは、言うまでもなくCOVID-19によるものです。

では、リセットされた時代において、組織、そして個人はどうあるべきなのでしょうか。

澤氏が、まず言及するのは「メール」です。

「オンラインミーティングがこれだけ普及した時代でも、未だによく使われているのはメールです。メールは便利ですが、“届きすぎる”という問題があります。しかも、やっかいなのは、メールを開くまで必要性や緊急性がわからないことです」(澤氏)

メールは開くまで緊急性がわからないからこそ、開かなければならない。しかし、メールを全部見ようとすると、今度は時間が足りなくなってしまう。つまり、「“ちゃんとする”と時間が足りなくなる」のがメールなのだと澤氏は言います。

そんなメールを運用する上で、澤氏が「悪魔の言葉」だというのが「とりあえず」というフレーズです。

澤氏によると、「とりあえず」はいろいろなものを奪い去っていく言葉であり、日本のビジネスは特に「とりあえず」で人を巻き込むことが多いのだといいます。

具体的には、「メールで“とりあえず”TOやCCに入れる」ことです。

「あの人にも“とりあえず”知らせておいた方がいいかなとか、“とりあえず”送っておかないと失礼になるかもとか、そういう“とりあえず”でTOやCCに入れるのです。だけど、送られた側としては、そのメールを開くまで自分が中身に関係しているのかどうかもわかりません。“とりあえず”で、礼儀正しく時間を奪ってしまっているのです」(澤氏)

「時間とは『貸し借り』するもの」だと澤氏は続けます。たとえば、今回の講演であれば、「30分という時間をお借りして、その分の価値を返すということ」(澤氏)なのです。

続いて澤氏は、コロナ禍による働き方や意識の変化にも言及しました。

「コロナ前後で、対面ミーティングの価値が大きく変わりました。(オンラインミーティングで済むことが多いからこそ)対面で会う時間、そして空間の持つ価値は跳ね上がっているのです」(澤氏)

現在はリモートワークが浸透し、出社と在宅勤務を組み合わせたハイブリッドワークも一般的になっています。便利な点もある反面、「今までのようなやり方で心理的安全性を作れなくなる」(澤氏)という課題も見えてきています。

では、どうすればいいのでしょうか。

澤氏が挙げるのが「経営三層構造」です。すなわち、経営者視点、マネージャー視点、一般社員視点という3つのレイヤーで会社とビジネスを捉えるのです。

まず、経営者は「社会貢献」の視点でビジネスを捉えます。なぜなら、すべてのビジネスはなんらかの社会貢献の側面を必ず持っているからです。すなわち、経営者にはビジネスの「全体像」が見えているといえます。

次にマネージャー視点で見えているのは、ビジネスの「内部構造」です。どのチームが社会貢献をする上でどんな役割を持っているのか、どのように連携すべきなのかといった「仕組み」に注目する視点です。

最後に一般社員は、自分に課されたタスクを見ています。それはビジネスのもっとも細かい部分であり、言い換えれば「解像度がもっとも高い世界」を見ているといえます。

こうした三層構造になっている中で、心理的安全性を高めるポイントは、別のレイヤーの人が見ている世界に興味を持つことだと澤氏は言います。完全に理解しなくてもいいので、別のレイヤーを見て想像を巡らせることで相互理解につながり、心理的安全性が高まるというわけです。

続いて澤氏は、社会人に必須とされる「報告・連絡・相談」――いわゆる“ほうれんそう”に着目。報告と連絡に時間を使うのではなく、相談に時間を使ってほしいと話します。

とはいえ、時間は有限です。澤氏は「大事なのは限られた時間をどう使うか」だと述べ、「そのためにコア業務とノンコア業務を区別することが大事」と言います。

ここでいうノンコア業務とは、「仕事のための仕事」のことです。たとえば、報告書をまとめたり、報告のためにミーティングを行ったりすることは、すべてノンコア業務になります。

こうしたノンコア業務については、ソフトなどを導入して短縮することが望ましいといいます。

さらに、報告のための会議は不要とした上で、「データを直接見る文化をつくること」や、「感覚ではなく数字で表すこと」、「事実と所感を分けること」などの重要性についても言及。これらを企業カルチャーとして定着させることが重要と強調しました。

また、心理的安全性を高めるためのポイントとして、「怒りで相手をコントロールしない」ことを挙げ、「理不尽だと感じると分断が起き、心理的安全性は損なわれる」と指摘。その上で、問いかけるときは「Why(なぜそうなった?)」ではなく「What(何があった?)」とすることで、相手は話しやすくなり、心理的安全性の向上にも寄与すると述べました。

加えて、メンバーにアウトプットしてもらうことが大事だと述べ、「Uniposは感謝のアウトプットができる。それは(心理的安全性に)すごく効果がある」と話しました。

最後に澤氏は、心理的安全性とは「気が楽」なことだと結論づけ、「自分がやっている仕事に納得感を持てることが大事」とした上で、そうした環境をどう作っていくのかがマネージャー、および現場メンバーに求められることだと述べました。

様々な視点から心理的安全性について語られた澤氏の講演は、あらためて自身の組織やビジネスについて考える良いきっかけになったのではないでしょうか。

***

Unipos心理的安全性サミット2022では、2日間にわたり多数の専門家・実践企業の皆様にご登壇いただき、心理的安全性というテーマを深く掘り下げたご講演を行っていただきました。

心理的安全性は近年、大きな注目を集めているキーワードであり、これからの時代の組織づくりにおいて鍵を握ることは間違いありません。

本イベントが、皆様の組織革新にとっての一助となれば幸いです。