チームビルディング, マネジメント, 組織風土 2021.09.06 (最終更新日 2022.02.16) VUCAとは?意味や激変の時代に対応するためのポイントを紹介 ビジネスシーンは、日々目まぐるしく変化しています。 現代は、「VUCA」の時代といわれており、企業が生き残るためには時代の変化にうまく対応していくことが必要です。 そもそも、VUCAとはどのようなものなのでしょうか。そこで、この記事ではVUCAの意味やVUCA時代の企業のあり方、求められる要素や生き残るためのポイントについて解説します。 VUCAとは そもそも、VUCAとはどのようなものなのか、意味や読み方について見ていきましょう。 VUCAとは、ビジネスシーン・組織・個人など、さまざまなものを取り巻く環境が変化し、将来の予測が難しくなっている状況を示す造語のことです。 VUCAは、「ブーカ」と読み、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」、「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」といった4つの単語の頭文字を取って名付けられました。 VUCAの時代とは 現代は、VUCAの時代ともいわれています。 VUCAの時代とは、将来の予測がしにくいため、既存の価値観やビジネスモデルだけでは通用しない時代のことです。近年は、IT技術の進化によってVUCAの状態が続いているといわれています。 また、新型コロナウイルスの影響でテレワークが普及するなど、働き方が多様化していることも、世界的にVUCAの度合いが増している理由の一つです。 世界中が将来的な予測が難しい問題に直面しており、厳しいVUCAの時代における生き残るための方法が注目されています。 VUCAの歴史と浸透の背景 VUCAは、もともと米軍で使われていた軍事用語だとされています。 1990年代ごろからVUCAという言葉が使われ、冷戦終了後の複雑な国際情勢を表す場合などに用いられていました。その後、2010年代ごろから経営やビジネスの場などでもVUCAが取り上げられるようになり、徐々に世間に浸透していったといわれています。 なかでも、広く認識されるようになったきっかけは、2016年に開催された世界経済フォーラム、通称ダボス会議。 この場で「VUCAワールド」という言葉が使用されたことから、世界的にVUCAの認識が広まりました。 VUCAの4つの語源を詳しく解説 VUCAを理解するためには、語源となっている4つの単語について知る必要があります。 「Volatility(変動性)」は、この先どのような変化があるのか見通しが立たない、予測できない変動が激しい状態のことです。 IT技術の進展で、新しい商品やサービスが続々と誕生しています。その変化に伴い、ニーズや消費者の価値観も多様化している状況です。 このニーズをうまく読み取れないビジネスは、急速に衰退してしまうおそれがあります。しかし、いち早くニーズを把握できれば新しい価値観を生み出せる可能性もあるでしょう。 Volatilityを象徴する事例としては、スマートフォンの普及やSNSの流行、それに伴うマーケティング手法の変化などがあります。 「Uncertainty(不確実性)」は、不確実なことが多く、この先の環境の変化がわからない不安定な状況のことです。 不確実性が高い状態では、ビジネスの見通しを立てることが難しくなります。Uncertaintyを象徴する事例としては、少子高齢化に伴う高齢者の活躍、地球温暖化による気候変動などです。 また、新型コロナウイルスの影響による経済の変化も、Uncertaintyの一例といえるでしょう。 「Complexity(複雑性)」は、複数の要因が絡み合い、シンプルな解決策を導き出せなくなっている状態のことです。 Uncertaintyが高いと、ほかの国の成功事例を応用できなかったり、問題の解決に複数の国や企業が必要になったりするなどの原因につながります。 一方で、今までにない事業や発想が生まれる可能性もあるでしょう。 Uncertaintyの象徴的な事例としては、世界的に浸透しているものの日本では定着化していないキャッシュレス化や、空き部屋のレンタルサービスなどが挙げられます。 「Ambiguity(曖昧性)」は、問題解決にあたり本当にそれでいいのか判断できなかったり、絶対的な方法を導き出すことができなかったりする、あいまいな状態のことです。 「Volatility (変動性) 」「Uncertainty (不確実性) 」「Complexity (複雑性)」の3つの要素がそろった場合に、Ambiguityの状態になるといわれています。 Ambiguityを象徴する事例としては、大手の自動車・通信などの会社が行うベンチャーキャピタルが挙げられます。 VUCA時代に必要なフレームワークとは 激動のVUCA時代で生き残るために、企業はどのようなフレームワークを活用すれば良いのでしょうか。VUCAに対応するための代表的なフレームワークには、以下のようなものがあります。 OODAループ VUCA時代に不可欠だとされているのがOODAループです。 OODAループは、米軍が提唱したとされる思考法で、変化に柔軟かつ迅速に対応するためのフレームワークとして知られています。 OODAループは、「Observe(観察)」「Orient(状況判断)」、「Decide(意思決定)」「Act(実行)」という4つの要素から構成されており、それぞれの単語の頭文字を取って名付けられたものです。4つのステップをループして進めるスタイルとなっています。 ステップ1の「Observe」では、市場や顧客などの外部環境を集中して観察し、データを収集。 ステップ2の「Orient」は、ステップ1で収集したデータをもとにして現状の把握と理解を行います。 ステップ3の「Decide」では、方針や計画を具体的に定め、ステップ4の「Act」で決まったことを実行するのが一連の流れです。 OODAループは、迅速な意思決定に効果的なフレームワークで不確実性の高いVUCA時代に向いており、速やかに行動を決定できることがメリット。慎重に計画を立てるよりも、行動しながら考えるスタイルです。 一方で、方向性やビジョンがあいまいなままOODAループを実施すると、行き当たりばったりとなってしまう危険性もあります。混乱を避けるためにも、目的やゴールを明らかにしたうえでフレームワークを活用することが重要です。 VUCAプライム VUCAプライムとは、VUCAの4つの要素に対抗するためのフレームワークです。 VUCAプライムは、「Vision(ビジョン)」「Understanding(理解)」「Clarity(明快さ)」「Agility(機敏さ)」の4つの要素から構成され、VUCAと同じ頭文字で新しい意味を生み出す考え方となります。 「Vision」は、「Volatility」に対抗するものです。 明確なビジョンを持って前に進むよう取り組むことで、「Volatility」の混乱を克服できます。具体的には、「将来何を目指しどこに向かうのか」を明確化することが必要です。チームを導く場合は、そのビジョンを共有し、同じ場所にたどりつけるようにすることが求められます。 「Understanding」は、「Uncertainty」に対抗する考え方です。 何が起きているのか現状をしっかりと理解・把握することによって、不確実性を減らすことが期待できます。具体的にいうと、達成すべき目標に到達したり、成功したりするために必要なことを洗い出す必要があります。 「Clarity」は、「Complexity」に対抗するもの。 予測できない複雑な事態に遭遇した場合は、できる限り状況を単純化してみるという考え方です。物事をシンプルに捉えることで、速やかな意思決定を行えます。 「Agility」は、「Ambiguity」に対抗するための考え方です。 かつて例がなく、絶対的な判断が下せない施策も、有効と考えられる場合は迅速に実行します。意味や目的に着目して意識的に前進してみることで、機敏な組織をつくることが期待できるでしょう。 VUCA時代に企業・組織が求められるものとは VUCA時代において、企業や組織はどのようなあり方が求められるのでしょうか。企業や組織が求められるものについて、詳しく見ていきましょう。 柔軟な対応力 グローバル競争が激化するVUCA時代では、急速に市場が変化していくため、価値観も複雑化しています。 そのため、従前で対応できた手法や販売戦略だけでは、今後も成功できるとは限りません。市場ニーズの多様化に伴い、「これまでの勝ち筋は通用しなくなる」といった危機感を持つことが重要です。企業は、こうした状況にも柔軟に対応していくスキルが求められます。 人材マネジメントの変革 日本では、終身雇用を前提にした企業が多く、従業員は力を合わせて競争力を高めていきました。 しかし、VUCA時代はこのような雇用システムにも変化が生じています。VUCA時代を生き抜くためには、多様化する価値観を持つ人材を活用する、「ダイバーシティ」を取り入れることが重要な課題の一つです。 組織に多様な人材を集結させ、さまざまな価値観を認め合う環境づくりを行うことで、VUCAの「変動性」「不確実性」「複雑性」「曖昧性」に対応できるようになるでしょう。こうした人材マネジメントの変革のためには、経営層が動く必要があります。例えば、人事制度の見直しや従業員の再配置、さらにキャリアアップの支援や教育体制の構築などに乗り出すといったことが選択肢の一つです。 ステークホルダーへの情報発信 VUCA時代では、ステークホルダーへの積極的な情報発信が不可欠です。 ステークホルダーとは、企業経営において直接的・間接的に影響を受ける利害関係者を指します。企業の競争力の源は、人材です。「複雑性」「曖昧性」などが増すVUCA時代では、多くの人からの協力を得ることが欠かせません。 経営陣は、人材戦略に力を注ぎ「社員」「資本市場」「労働市場」などのステークホルダーに向けて情報発信していく必要があります。積極的に対話を図っていくことが重要です。 VUCA時代に必要となるマネジメント VUCA時代では、必要なマネジメントやリーダーシップのあり方にも変化が見られます。どのようなものが求められているのか、確認していきましょう。 明確なビジョンを提示する VUCA時代は、不確定要素が多いだけでなく、ビジョンを明確化することが求められています。 そのため、「企業がどのようなゴールを目指しているのかわからない」といった状態では、従業員は方向性がわからず困惑してしまいかねません。企業が歩みたい道筋をはっきりと従業員に示すことが重要です。 これにより、従業員一人ひとりが何をすべきか役割を自覚できます。従業員が自主的に行動できるようになり、「企業が掲げるビジョンに向かってともに歩もう」という意識も生まれるでしょう。 また、こうした従業員の自主性を高めることによって、新しい事業やアイディアが創出されやすくなることも期待できます。 新しい情報をインプットする VUCA時代では、過去に成功した事例や体験を丸々活用することは難しくなっています。そのため、事業を進めるためにはアンテナを広く張り、常に市場の最新情報を集めることが必要です。 従来のやり方ばかりに固執していると、時代に取り残されてしまう要因となりかねません。新しい情報を積極的にインプットし、それを自社の経営や戦略に活かすことが求められます。 国内に限らず、海外など広い視野を持って情報収集を行うことがおすすめです。国内外の最新のビジネスモデルや、IT技術を把握し多角的な視点を持つように心がけましょう。 情報収集ツールを増やす 情報収集を行うツールは、複数用意しておくことが重要となります。なぜなら、ツールが限られている場合、得られる情報に偏りが生じやすくなるからです。 偏った情報を参考にすると、考え方が凝り固まってしまう原因となりかねません。視野が狭まりやすく、不測の事態に遭遇したときに適切な判断を下せない可能性が高まるため、注意が必要です。 正しい判断をするためにも、幅広い情報をインプットしていくことを意識しましょう。複数のツールを利用することで、情報の偏りを減らしたりソースを確認したりすることもできます。 メンバーへの動機付けを行う 従来の教育方法では、リーダーやマネージャーが上に立ち一方的な指導を行うスタイルも多く見られました。 しかし、このような教育はVUCA時代に合うとは限りません。 VUCA時代は、メンバーと同じ目線に立って教育するスキルが求められます。多様性を求めて人材採用をしたとしても、一方的な教育をするだけでは個々の強みを引き出せません。同じ目標に向かって進むためには、メンバーそれぞれの特性を把握し、それをうまく活用する必要があります。 組織の運用を円滑にするためにも、リーダーやマネージャーのあり方を見直し、メンバーの動機付けを行うことが重要です。 決断力と行動力を身に付ける 変化の激しいVUCA時代は、そのときどきの状況に合わせて素早く判断・行動するための力が必要です。 不測の事態に対峙した際に、慌てるのではなく状況を即座に分析して解決するスキルが求められます。 企業は、このような決断力と行動力を身に付けたリーダーを育成する必要があるでしょう。 集中力を養う 未踏の課題に直面したりプロジェクトを任されたりしたとき、何を選択することが正しいのかは誰にもわかりません。 さまざまな情報から予測をする中で、「間違いかもしれない」と不安になることもあるでしょう。しかし、VUCA時代にはこうした迷いを打ち消し、「判断は間違っていない」「必ずやり遂げる」という強い意思を持てる人材が不可欠です。予測や選択の際に集中できる力が求められます。 VUCA時代における組織づくりのポイント VUCA時代を生き抜くためには、従業員の教育・育成の方法について見つめ直すことも大切です。VUCA時代における組織づくりのポイントには、主に以下の3つが挙げられます。 体験型研修を行う 従来の研修では、座学形式や現場で実務を通じたOJT形式が多い傾向にありました。 しかし、正解のないVUCA時代は、ただの座学や実務といった研修内容ではなく、自ら考えて行動するための体験型研修を行うことがポイントとなります。体験型研修によって、自発的に行動できる人材の育成が期待できるでしょう。 例えば、考え方が柔軟になったり、自分の頭で考えて行動できるようになったりするなどのメリットがあります。体験型研修として、グローバル人材育成研修、相互交流型研修などを実施することも方法の一つです。 自発的な成長を促す VUCA時代は、変化に対応するため、常に新しいことを吸収する姿勢が求められます。 企業は、自発的な学びを支援するための体制づくりを行うことが必要です。例えば、語学講座の受講料を補助したり、留学のための休職制度を設けたりすることも選択肢の一つ。 教育と就労のサイクルをつくることで、環境の変化に強い従業員を増やすことが期待できます。 リーダーを育成する VUCA時代では、変化にいち早く気づける人材を確保することが重要になります。 また、変化に気づくだけではなく、速やかに策を講じて決断・行動するためのスキルを備えた人材が必要です。このような力を持ったリーダーを育成することが、VUCA時代に生き残るための鍵となります。 リーダーの主な重要な役割は、「現場の意見を収集する」「得た情報を経営層に伝える」といった2つです。リーダーは、企業にとって欠かせないものだからこそ、今まで以上に育成に力を注ぐ必要があります。 リーダーシップやマネジメントについて、学べる研修プログラムを実施することも効果的です。 対策を講じてVUCA時代を生き抜こう VUCA時代では、今までのやり方が通用しない意識を持つことが重要です。そのため、日ごろからアンテナを張って、情報収集を積極的に行うことを意識しましょう。 また、VUCA時代を生き抜くためには、従業員の教育・育成の方法について見つめ直すことも大切です。ポイントを押さえて対策を講じ、不測の事態にも柔軟に対応できる組織を構築していきましょう。 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