
1on1ミーティングとは、上司と部下が定期的に話し合いを行うことです。部下の人材育成や、上司と部下の信頼関係を築くという目的があります。
本記事では、1on1ミーティングの概要や取り組み方、成功させるポイントなどを紹介します。
1on1ミーティングとは?
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で定期的に話し合うことです。部下の人材育成を主な目的として行われます。もともとアメリカのシリコンバレーにある企業で行われていた手法で、近年は日本でも導入する企業が増えています。ここでは、1on1ミーティングの目的や評価面談との違い、注目される背景についてみていきましょう。
1on1ミーティングの目的
1on1ミーティングは、主に以下のような目的で行われます。
- 上司と部下の対話を通じて、部下の成長を促す
- 部下の現状を把握してお互いの理解を深める
1on1ミーティングで上司は部下の悩みや課題を聞き出し、フィードバックしながら部下自身が解決を見出せるようサポートをします。定期的な面談でコミュニケーションをとることにより、上司と部下が相互理解を深め、信頼関係を築くのも目的のひとつです。
これらの目的を達成するため、1on1ミーティングは1回に30分から1時間ほどの時間をかけ、週1回や隔週など短いサイクルで行われます。高い頻度でじっくり話す機会を設けることで、部下の成長促進を目指します。
評価面談との違い
1on1ミーティングは、人事考課の評価面談とは目的や実施のタイミングが異なります。評価面談とは、上司が人事考課の結果を部下に伝え、改善に向けてアドバイスすることです。人事考課のタイミングに合わせ、半期に1回、もしくは1年に1回などの周期で行われます。
一方、1on1ミーティングは部下の成長や相互理解のために行われるため、実施は週1回など高い頻度で実施します。
それぞれの目的を理解し、正しく導入・実施しなければなりません。
1on1ミーティングが注目される背景
1on1ミーティングが注目されている理由のひとつに、ビジネス環境の変化が激しいという時代背景があります。現代はものごとの移り変わりが早く、将来が予測ができない時代です。
時代の変化に取り残されないためには、社員一人ひとりが主体性を持ち、変化を感じ取って柔軟に対応できるスキルを身につけなければなりません。そのような人材を育成するために、1on1ミーティングが行われます。
また、少子高齢化による人材不足も、1on1ミーティングが注目される理由のひとつです。
人材を確保し流出を防ぐためには、部下のモチベーションを高める環境の整備が求められます。そのためには上司と部下の信頼関係構築が必要であり、1on1ミーティングが果たす役割は大きいといえるでしょう。
1on1ミーティングのメリット
1on1ミーティングの実施により、以下のようなメリットが期待できます。
- 部下との信頼関係を構築する
- 部下の成長を促す
- 離職率が下がる
1on1ミーティングで部下とのコミュニケーション頻度が増えることで、信頼関係が深まります。部下の成長スピードが早まり、離職率の低下にもつながるでしょう。
ここでは、1on1ミーティングのメリットを解説します。
部下との信頼関係を構築する
定期的に高頻度な1on1ミーティングを行うことで、上司と部下のコミュニケーションが活発になります。信頼関係が築かれ、部下は意見やアイデアを出しやすくなるでしょう。業務の連携もスムーズになります。トラブルが起きたときもすぐに報告や相談ができるようになり、迅速な解決が図られます。業務が円滑に進むようになり、生産性の向上も期待できるでしょう。
部下の成長を促す
1on1ミーティングの主な目的は部下の育成であり、1on1ミーティングの実施で成長のスピードを早められます。成長が進むことで部下は仕事へのモチベーションを高め、さらに自発的な成長へとつながるでしょう。1on1ミーティングで失敗・成功の経験を共有することで、上司は部下に経験の振り返りや内省を促せます。部下は自ら教訓を導き出し、ほかの業務に活かすという方向で成長が促されるでしょう。
離職率が下がる
1on1ミーティングで上司との交流が進むことで、部下は「上司が自分のことを気にかけてくれている」と感じます。その結果、会社への愛着や貢献意欲という従業員エンゲージメントを高めることになり、離職率の低下につながるでしょう。近年の離職原因には人間関係の悪化や上司への不満が多く、1on1ミーティングの実施でこれらの原因が減ることもメリットです。結果として、従業員の定着率アップが期待できます。
1on1ミーティングの取り組み方
1on1ミーティングを具体的に進めるには、手順を踏む必要があります。まず、実施の目的を明確にしなくければなりません。1on1ミーティングで話す内容も、あらかじめ設定が必要です。また、ミーティングの効果を上げるためには定期的に実施することが大切であり、振り返りも大切です。
ここでは、1on1ミーティングの取り組み方をみていきましょう。
1on1ミーティングの目的を明確にする
1on1ミーティングを実施するにあたり、目的の明確化が必要です。実施の頻度が高いため、業務の時間が削られることもあります。目的が曖昧なまま実施すると、「忙しいのになぜ行うのか」「ただの話し合いではないか」と部下にネガティブなイメージを与える可能性があります。部下の成長のために必要な時間であることを伝え、理解を得ることが大切です。
1on1ミーティングで話すアジェンダを設定する
1on1ミーティングを行うには、事前準備も大切です。何も準備せずに始めると、何を話せば良いかわからず時間を無駄にする可能性があります。
そのようなことを防ぐためにも、事前に話す内容についてアジェンダを設定するようにしましょう。
アジェンダの設定例は、以下のとおりです。
- 仕事の課題や悩み
- 今後のキャリアについて
- 体調やメンタル面の状態など
- 業務外のできごと
1on1ミーティングで最も代表的な話題は、仕事の課題や悩みです。部下のなかには「仕事の悩みがあっても、職場で相談できる人がいない」という人もいるでしょう。定期的な面談で上司が相談にのることで部下のモチベーション低下を防ぎ、仕事へのやる気を引き出します。
今後のキャリアについて希望を聞くことも、面談のテーマに適しています。キャリアを話題にすることで、部下の描いたビジョンに沿ったマネジメントができるでしょう。
健康状態は気軽に周囲の人と話せる内容ではなく、1on1ミーティングの場で上司が相談にのることで、問題の解決につながる場合もあります。特にメンタルの不調は離職につながりやすく、定期的な面談で話を聞くことで、早めの対応と離職防止につなげることができるでしょう。
部下との会話をスムーズに進めるには、業務外のプライベートに関する話を話題にするのもおすすめです。日常のできごとや趣味に関する話であれば、部下も気軽に話しやすいでしょう。1on1ミーティングを始めたばかりの時期は部下の緊張が抜けないことも多く、プライベートの話は雰囲気を和ませるアイスブレイクの役割も果たします。
定期的に1on1ミーティングを実施する
アジェンダを設定したら、部下とスケジュールを調整しながら1on1ミーティングの日時を設定します。
1on1ミーティングは継続して行うことが大切であり、「毎週〇曜日の〇時から」というように、定期的な日時を設定しましょう。
お互いの理解を深め、信頼関係を構築するには、習慣的にコミュニケーションをとる必要があります。定期的にミーティングすることで、上司にいつでも相談し、自由に意見ができる文化が醸成されるでしょう。業務が忙しくて開催が難しい場合は、臨機応変に日時を変更しましょう。柔軟に対応することが、継続させるためのコツです。
日時を設定したら、スケジュールに沿って1on1ミーティングを実施します。1on1ミーティングで話した内容は部下の価値観や考えを知るために有用な情報であり、メモに記録しておくことが必要です。記録をしておくことで、次回の1on1ミーティングでの振り返りがスムーズになります。また、次回の開催までに課題を明確にしておくと、よりミーティングが意義のあるものになるでしょう。
振り返りを行う
1on1ミーティングの目的である部下の成長や上司・部下の相互理解は、数回のミーティングで達成できるものではありません。中長期的な取り組みが大切であり、継続的な実施が必要です。効果を上げるため、話し合った内容は必ず振り返り、部下の行動や上司のサポートについて、進捗を確認して行くようにしましょう。部下が行う次の行動には、背中を押すためのポジティブな声がけを行うことも効果的です。
1on1ミーティングを成功させるポイント
1on1ミーティングを有意義なものにして目的を達成するには、いくつかポイントを押さえる必要があります。まず、事前に準備するテーマは部下が決めることが大切です。また、ミーティングで上司は意見を控え、傾聴に徹するようにしましょう。
ここでは、1on1ミーティングを成功させるために押さえておきたいポイントを解説します。
テーマは部下が決める
1on1ミーティングは部下の主体性を高めることが目的であり、テーマも部下が決めることが重要です。上司が主導となるのではなく、あくまで部下が主役となってミーティングを進めるというスタンスにしてください。ただし、何もないところからテーマ選びを任せても、部下は困惑してしまいます。まずアジェンダを上司が準備し、その中から部下が具体的なテーマを決めていくとよいでしょう。
上司は傾聴に徹する
上司は自分の意見を話すことなく、聞き役になることが重要です。1on1ミーティングでは、上司が自分の意見を押しつけ、部下が萎縮して自由に発言できないといったことが起こりがちです。1on1ミーティングは部下の自主的な課題解決を促す場であり、上司は傾聴に徹しなければなりません。上司に求められるのは傾聴のスキルであり、適度に相づちを打ち、部下の意見に共感を示しながら部下が話しやすくする配慮が求められます。
部下の話に「それは〇〇ということ?」と同じことを繰り返したり、「〇〇とは、つまり△△ということですか?」と言い換えることも傾聴スキルのひとつです。部下の発言内容の理解を深めるだけでなく、部下自身が発言について再考することにもつながります。
上司には、傾聴スキルのほかにコミュニケーションスキルやコーチング・フィードバックのスキルも求められます。コーチングとは、部下との対話や傾聴で部下自身が問題を解決して自己実現できるように導くことです。まず部下が自発的に考え、行動することを優先し、すぐに答えを出さないことがポイントです。
部下自身にどうすれば良いのか考えさせたり、考えられるようなヒントを与えたりするサポートをします。また、1on1ミーティングにおけるフィードバックは、部下が知らないこと・気づいていない部分について伝えるスキルです。部下の良い部分だけでなく、悪い部分も上手に伝えることで、部下の成長を促進します。
上司のスキルは1on1ミーティングの成功を左右する要素のひとつであり、事前の研修が必要になることもあるでしょう。
1on1ミーティングは定期的に行う
1on1ミーティングは継続しなければなりません。たとえ短時間であっても、定期的に行うことが大切です。他の用事が入ったり業務が忙しくなったりした場合はスケジュールを調整し、中断せずに継続するように努めてください。部下との信頼関係を築くには、部下との時間を優先させるという姿勢を見せることも必要といえるでしょう。
ネガティブなことも共有できる場をつくる
1on1ミーティングは、なんでも自由に意見をいえる場にしなければなりません。部下のなかには、職場や仕事への不満を抱えている人がいる可能性もあります。
そのような部下が「ネガティブなことを発言すると評価が下がるのではないか」と不安を感じた場合、本音を引き出すことはできません。1on1ミーティングは、不安を感じることなくなんでも発言できる、心理的安全性が確保されている場にすることが大切です。心理的安全性とは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態を指します。心理的安全性が高い職場はコミュニケーションが活発になり、個々人のパフォーマンスも高まります。生産性の向上にもつながるでしょう。心理的安全性が高まると、業務や職場での改善提案をメンバーから積極的に引き出すこともでき、より良い職場づくりに貢献します。1on1ミーティングで自由な発言ができるようになれば、職場全体の心理的安全性を高めるのに役立つでしょう。
1on1ミーティングを行う際の注意点
1on1ミーティングでは、上司が心がけたいことがあります。質問を上手に使い分けること、先に自分の意見を言わないといったことです。
また、会話は部下の学びにつながる建設的な内容を目指し、雑談で終わらないようにすることも大切です。
ここでは、1on1ミーティングを行う際に上司が注意したい点について解説します。
オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを上手に使い分ける
1on1ミーティングには、上司と部下か相互理解を深めるという目的があります。そのためには、上司と部下のどちらかが一方的に話すのではなく、双方が話す対話型のコミュニケーションが大切です。
聞き役に徹する上司は、適切な質問をすることが求められます。質問には、オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンがあり、上手に使い分けなければなりません。クローズドクエスチョンは「はい」か「いいえ」で答えられるような質問です。誘導や尋問のように感じてしまうこともあるため、使う場面には注意しなければなりません。オープンクエスチョンとは「はい」か「いいえ」だけでなく、自由に答えられる質問です。相手からより多くの情報を引き出したい場合に効果的です。ただし、選択肢が多過ぎる質問をすると答えるのに負担を感じる場合もあるため、5W1Hを使って答える範囲を限定することも必要になるでしょう。相手の意図や状況を正確に理解し、質問を使い分けるようにしてください。
上司は先に自分の意見を言わないようにする
上司は部下の話に耳を傾け、先に自分の意見を言わないことも大切です。1on1ミーティングの目的を十分に理解していない、もしくは1on1ミーティングに慣れていない場合、人事評価面談や通常業務と同じような感覚で自分の意見を先に言ってしまうこともありがちです。上司が先に意見を言ってしまうと、それに対して部下は反対意見を言いづらくなり、自由な発言を阻害します。部下に言いたいことがあっても、それは別の機会に行いましょう。
1on1ミーティングの場で上司はあくまで聞き役であることを自覚し、相手の意見を引き出すことに尽力してください。
ただ聞くだけでなく、部下が話しやすい雰囲気にすることも大切です。「なぜ?」と疑問を投げかけたり、気になることに指摘を入れて話に水をさしてしまうと、部下は自由に発言できなくなります。相づちを打つなどして、自由な発言を促すようにしましょう。
雑談で終わらないようにする
1on1ミーティングは明確な目的を持たないと、雑談に終わりやすくなります。話しやすい雰囲気をつくるため、ミーティングに雑談を取り入れることは問題ありません。しかし、雑談だけで終わってしまうと部下の育成という目的を達成できないことになります。わざわざ時間を設けてミーティングをする意味がなくなるでしょう。雑談になりやすくなるのは、事前に話す内容を決めていなかったり、目的を十分に理解しないまま実施したりすることが原因です。
上司と部下は目的をしっかり理解し、テーマを決めて1on1ミーティングにのぞまなければなりません。ミーティングの内容は記録に残し、最後には振り返りを行うことが大切です。次回のミーティングの際には前回に話した内容を振り返り、課題を出していた場合は、それが改善されているかの確認を行いましょう。雑談ではなく、学びにつながる会話を目指してください。
まとめ
1on1ミーティングは、部下の主体性を育み、変化の激しい時代に対応できる人材へと育成することが目的です。また、定期的なミーティングでコミュニケーションをとり、上司と部下の信頼関係を築くことも目指しています。1on1ミーティングの目的を達成するためには、部下が自由に発言できる場を設定しなければなりません。部下が上司になんでも発言できるようになれば、職場全体の心理的安全性も高まるでしょう。
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