
「賃上げしたいけど、これ以上人件費を増やす余裕がない」
「ベースアップしたのに、社会保険料で吸収されて従業員に実感がない」
2025年春闘の平均賃上げ率は5.25%と34年ぶりの高水準を記録しました(出典:連合 2025年春闘最終回答集計)。
しかし、中小企業の賃上げ率は4.65%にとどまり、大企業との格差は依然として大きいのが現実です。
さらに、賃上げをしても物価上昇に追いつかず、「手取りが増えた実感がない」と答えた従業員は6割以上にのぼります
(出典:#第3の賃上げアクション「賃上げ実態調査2025」)。
こうした「実感なき賃上げ」を打破する手段として、いま注目されているのが「第3の賃上げ」という考え方です。
本記事では、第3の賃上げの基本的な仕組みから、具体的な施策の選び方、非課税の条件、そしてピアボーナスを活用した導入事例までを網羅的に解説します。
「第3の賃上げ」とは?いま注目される背景

企業が従業員に報いる方法は、大きく3つに整理できます。
- 第1の賃上げ(定期昇給):勤続年数や年齢に応じた定期的な昇給
- 第2の賃上げ(ベースアップ):基本給の一律引き上げ
- 第3の賃上げ:福利厚生やピアボーナス等を活用し、実質手取りと働きがいを両立させる戦略的報酬
「第3の賃上げ」という概念は、2024年2月にエデンレッドジャパンとfreeeが共同で立ち上げた「#第3の賃上げアクション」プロジェクトによって定義・提唱されました。
なぜ今、第3の賃上げなのか
物価高騰と人手不足が同時に進行する中で、基本給の引き上げだけでは企業の体力が持たないケースが増えています。
ベースアップには構造的な限界があります。額面が上がっても、所得税・住民税・社会保険料が連動して増加するため、従業員の手取りへの反映は限定的です。企業側も社会保険料の折半負担が増えるため、「賃上げ疲れ」と呼ばれる現象が起きています。
一方、福利厚生費として支給される住宅補助、食事補助、健康支援、ピアボーナスなどは、一定の要件を満たせば非課税で処理できます。同じ金額を基本給として支払うよりも、企業のコスト負担を抑えながら従業員の実質的な手取りと満足度を高められる──これが第3の賃上げの核心です。
#第3の賃上げアクションの調査によれば、導入企業の8割近くが「第3の賃上げ」に満足と回答。特に中小企業では約9割が満足と答えています(出典:#第3の賃上げアクション「賃上げ実態調査2025」)。
Q&A
Q:第3の賃上げと第3の給与は同じ意味ですか?
A:厳密な定義が統一されているわけではありません。いずれも「基本給以外の方法で従業員に報いる」という考え方を指しています。「第3の賃上げ」は福利厚生型の施策を中心に語られることが多く、「第3の給与」はピアボーナスのような感謝報酬を含む、より広い概念として使われる傾向があります。本記事では「第3の賃上げ」として、福利厚生型とピアボーナス型の両方を包括的に扱います。
Q:第3の賃上げは法律で定められた制度ですか?
A:いいえ、法律で定められた制度ではありません。企業が任意で導入する福利厚生施策の総称です。ただし、非課税となる条件には税法上のルールがあるため、導入時には要件の確認が必要です。政府も「第3の賃上げ」という用語を直接使用してはいませんが、賃上げ促進税制や福利厚生費の非課税制度を通じて、企業の取り組みを間接的に支援しています(出典:マイナビキャリアリサーチLab「第三の賃上げとは?」)。
「第3の賃上げ」の具体的な施策と非課税の仕組み

第3の賃上げに該当する施策は多岐にわたります。主な9つのカテゴリを以下に整理します。
- 住宅:借上社宅、家賃補助
- 食事:社食・食事補助チケット・フリードリンク
- 健康・医療:人間ドック補助、メンタルヘルス支援、スポーツジム補助
- 休暇:リフレッシュ休暇、アニバーサリー休暇
- 通勤交通:交通費全額支給、リモートワーク手当
- 育児・介護:保育料補助、ベビーシッター補助、時短勤務、介護支援
- 職場環境・働き方:フレックスタイム、サテライトオフィス
- 自己啓発:書籍購入補助、資格取得支援、セミナー参加費補助
- ピアボーナス:従業員同士が感謝と少額報酬を送り合う仕組み
非課税の仕組み──なぜ手取りが増えるのか
通常の賃上げ(基本給の引き上げ)では、増えた分に対して所得税・住民税・社会保険料がかかります。たとえば月1万円のベースアップでも、実際に手取りに反映されるのは7,000〜8,000円程度です。企業側も社会保険料の折半負担分が増加します。
一方、福利厚生費として支給する場合、一定の要件を満たせば非課税扱いになります。非課税であれば所得税も社会保険料も増えないため、同じ1万円でも従業員の手取りへの反映が大きくなり、企業の追加コストも抑えられます。
非課税になる要件(主な施策別)
- 食事補助:企業の負担額が月3,500円(税別)以下、かつ従業員が食事代の50%以上を負担
- 通勤手当:月15万円以下(公共交通機関利用の場合)
- 借上社宅:従業員から一定額以上の賃料を徴収していること(賃貸料相当額の50%以上)
- 健康診断:全従業員を対象とし、常識的な範囲の内容・費用であること
要件を満たさないと給与として課税され、手取りアップ効果が消失します。導入前に税理士への確認を推奨します。
少額から始められる
食事補助であれば月額5,000円程度(従業員1人あたり)からスタートできます。エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は導入実績3,000社以上で、企業と従業員が同額(月3,500円・税別)を負担する設計です(出典:税理士ドットコム / Yahoo!ニュース 2025年9月)。中小企業やスタートアップでも導入ハードルの低い施策から始められる点が第3の賃上げの強みです。
Q&A
Q:どのくらいの費用から始められますか?
A:食事補助であれば月額5,000円前後(従業員1人あたり)から始められます。借上社宅は物件の条件次第ですが、賃金として支給するよりも税・社会保険料の負担を軽減できるため、費用対効果の高い施策です。ピアボーナスはサービスの月額利用料が主なコストとなり、Uniposの場合は企業規模に応じたプランが用意されています。
Q:福利厚生で手取りが増える仕組みを具体的に教えてください
A:たとえば、企業が従業員の食事代として月3,500円を補助する場合を考えます。これを基本給に上乗せして支給すると、所得税・住民税・社会保険料が差し引かれ、手取りの増加は約2,500〜2,800円程度にとどまります。しかし、福利厚生費(食事補助)として支給すれば非課税のため、3,500円がそのまま従業員の食費負担を軽減します。企業側も社会保険料の折半負担が発生しません。
Q:非課税になる条件は何ですか?
A:施策ごとに異なります。食事補助は「企業負担が月3,500円(税別)以下かつ従業員が半額以上負担」、通勤手当は「月15万円以下」、借上社宅は「賃貸料相当額の50%以上を従業員から徴収」など、税法で定められた上限や要件があります。全従業員を対象としていること、社会通念上妥当な金額であることも共通の条件です。
「働きやすさ」と「働きがい」──施策の選び方

第3の賃上げの施策は、大きく「働きやすさ」に効くものと「働きがい」に効くものに分けられます。
- 「働きやすさ」に効く施策(住宅・食事・通勤・育児・健康):生活基盤を支え、不満を解消し、離職防止に寄与する
- 「働きがい」に効く施策(ピアボーナス・自己啓発・職場環境):承認と成長実感を生み、エンゲージメントを高める
「働きやすさ」施策だけでは足りない理由
多くの企業は住宅補助や食事補助といった「働きやすさ」施策に投資を集中しがちです。これらは従業員の生活を直接支える効果があり、「不満を減らす」ためには有効です。
しかし、ハーズバーグの二要因理論で説明されるように、給与や福利厚生は「衛生要因」に分類されます。衛生要因は「あって当たり前」と感じられやすく、それだけでは「この会社で働き続けたい」「もっと貢献したい」という積極的な動機にはつながりにくいのが実情です。
一方、承認や成長実感は「動機づけ要因」に分類されます。「自分の貢献が認められている」「成長できている」という実感こそが、エンゲージメントを押し上げる力を持っています。
両輪で効果を最大化する
最も効果的な第3の賃上げの設計は、「働きやすさ」施策で生活基盤を支えつつ、「働きがい」施策で承認と成長実感を生むという両輪のアプローチです。
たとえば、食事補助で毎日の食費負担を減らしながら、ピアボーナスで日々の貢献が可視化・称賛される環境をつくる。この組み合わせにより、従業員は「生活を支えてもらっている」という安心感と「自分の仕事が認められている」という充実感の両方を実感できます。
Q&A
Q:うちの会社は福利厚生が充実しているのに離職が減りません。なぜですか?
A:福利厚生は「不満の解消(衛生要因)」には効果がありますが、「満足の向上(動機づけ要因)」には限界があります。離職の原因が「給与や待遇への不満」であれば福利厚生の充実は有効ですが、「自分の仕事が評価されていない」「成長を感じられない」といった理由の場合、ピアボーナスや自己啓発支援など「働きがい」に効く施策を組み合わせることが必要です。まず離職者のアンケートやエンゲージメントサーベイで原因を特定し、衛生要因と動機づけ要因のどちらが不足しているかを見極めることが第一歩です。
Q:小規模な会社でも働きがい施策は導入できますか?
A:導入できます。ピアボーナスは少人数の組織でもすぐに始められ、むしろ人数が少ない方が「誰が何をしているか」が見えやすく、称賛の効果を全員が実感しやすい傾向があります。自己啓発支援も書籍購入補助や外部セミナーの参加費補助であれば、月数千円の予算から開始できます。
ピアボーナス──「働きがい」を生む第3の賃上げ

ピアボーナスとは、従業員同士が日常の業務の中で感謝や称賛のメッセージとともに少額の報酬(ポイント)を送り合う仕組みです。2000年代初頭にGoogleが導入したことで知られ、日本ではUnipos(ユニポス)がピアボーナスサービスの先駆けとして2017年にサービスを開始しました。「ピアボーナス」はUnipos株式会社の登録商標です。
一律のベースアップとの違い
ベースアップは全従業員に一律で適用されます。これは公平性が高い反面、「自分の貢献に応じて報いてもらっている」という実感は生まれにくい構造です。
ピアボーナスは「貢献に応じて報いる」設計になっています。営業のように成果が数値化されやすい職種だけでなく、経理、総務、情報システム部門など、日常のルーティン業務や裏方の仕事で組織を支えている「縁の下の力持ち」的な貢献にも光を当てることができます。
Unipos導入企業では、「経理や総務、情報システム部など、目立たないけれど大事な仕事をする人たちの貢献が可視化され、組織で共有されるようになった」という声が多く寄せられています。
形骸化を防ぐ設計のポイント
ピアボーナスを導入しても、使われなくなっては意味がありません。定着させるためには、以下の設計ポイントが重要です。
- 投稿を強制しない:自発性がピアボーナスの生命線。義務化するとポジティブな感情が失われる
- ポイントの繰越を不可にする:「使い切り」にすることで、送り合いを自然に促進する
- タイムラインをオープンにする:称賛が全社で共有され、部署を超えた相互理解が深まる
- 経営層・管理職が率先して使う:上からの実践が組織文化としての定着を加速させる
学術的な根拠
一方向の評価(上司→部下)だけでなく、同僚同士や部下から上司への双方向の称賛が日常的に行われることで、心理的安全性が高まり、組織全体のエンゲージメントが向上することが研究で示されています。Unipos導入企業でピアボーナスが行き渡っている割合を調べたところ、「1か月に81%の人が1回以上もらっている」という結果が出ており、数か月経てばほぼ全員がもらえる水準に達しています。
導入事例
カクイチ(創業130年超の老舗企業)
ITリテラシーが高くない50代以上の社員が、最も活発にUniposを活用しています。世代を超えたコミュニケーションが実現し、これまで見えにくかった現場の貢献が全社に共有されるようになりました。「ピアボーナスは例外だった。導入すると少し拡散するだけで、あっという間に社内に広まった」と評価されています。
※出典:Unipos導入事例|カクイチ
アース製薬(全社員活用の仕組み構築)
Uniposと他の人事施策を組み合わせることで相乗効果を生み出し、全社員が活用する運用を実現。人材の定着率が改善しました。
※出典:Unipos導入事例|アース製薬
関西みらい銀行(金融機関での組織風土変革)
堅い組織文化を持つ金融機関においても、Uniposの導入により部署を超えた感謝の可視化が進み、組織風土の変革につながっています。
Q&A
Q:ピアボーナスの金額は一般的にいくらですか?
A:1回あたり数十円〜数百円程度が一般的です。金額の大小が目的ではなく、「感謝を言語化して送る」という行為自体が承認欲求を満たし、エンゲージメント向上に寄与します。Uniposでは「缶ジュース1本程度」の少額設計にすることで、不正の動機が生まれにくく、純粋な感謝の交換が維持される仕組みになっています。
Q:ピアボーナスが形骸化しないためにはどうすればいいですか?
A:最も重要なのは強制しないことです。加えて、導入初期に経営層や管理職が率先して投稿することが定着率を大きく左右します。Uniposでは導入前の設計から導入後の定着まで、専任のコンサルタントが伴走するサポート体制を提供しています。導入企業370社以上の知見をもとに、組織規模や課題に応じた最適な運用を提案します。
まとめ──続きはホワイトペーパーで

本記事のポイントを整理します。
- 第3の賃上げとは:福利厚生やピアボーナスを活用し、非課税の仕組みで実質手取りと働きがいを同時に高める戦略的報酬。2024年にエデンレッドジャパンとfreeeが提唱
- 非課税メリット:同じ金額でも基本給で支給するより手取りへの反映が大きく、企業の追加コストも抑えられる
- 施策の選び方:「働きやすさ」施策(住宅・食事・健康等)と「働きがい」施策(ピアボーナス・自己啓発等)の両輪が重要。福利厚生だけでは離職は止まらない
- ピアボーナスの効果:数値で測れない貢献を可視化し、双方向の称賛でエンゲージメントを向上させる。形骸化しない設計と運用サポートが定着の鍵
第3の賃上げの導入ステップや、より詳細な施策の設計方法・費用シミュレーションについては、ホワイトペーパーで解説しています。
ピアボーナスの導入を検討されている方は、お気軽にお問い合わせください。Uniposの専任コンサルタントが、貴社の課題に合わせた最適な導入プランをご提案します。

