賃上げしても届かない?「第3の給料」で手取りと満足度を同時に高める方法

2025年の春闘では、基本給を底上げするベースアップの賃上げ率が過去最高水準を記録しました(出典:日本労働組合総連合会 2025春季生活闘争 第7回回答集計結果)。しかし、多くの経営者や人事担当者が感じているのは「賃上げしたのに、思ったほど従業員に届いていない」という実感ではないでしょうか。

ベースアップで月1万円を上乗せしても、社会保険料や所得税が差し引かれ、従業員の手取りに届くのは約70〜80%。企業側も社会保険料の負担が増え、コストに見合った効果を感じにくいのが現実です。

こうした課題の解決策として、いま注目を集めているのが「第3の給料」です。本記事では、第3の給料として活用できる具体的な施策の比較・選び方から、導入時に失敗しやすい落とし穴、そして3ステップの導入ロードマップまでを解説します。

「第3の給料」の定義や仕組みの詳細については、メイン記事「第3の賃上げとは?定期昇給・ベースアップに続く新しい報酬の仕組みと導入事例を解説」をご覧ください。

社内コミュニケーションを促進する「ピアボーナス」とは?

目次

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  1. 「第3の給料」が注目される理由──賃上げだけでは解決しない時代
    1. 第3の給料は大企業向けですか?小規模でも使えますか?
    2. 賃上げと第3の給料、どちらを優先すべきですか?
  2. 施策を比較して選ぶ──自社に合う「第3の給料」はどれか
    1. コスト・手間・効果で比較する施策マップ
    2. 「まず1つ」ならどれ?企業タイプ別おすすめ
    3. 複数の施策を同時に導入してもいいですか?
    4. パート・アルバイトにも適用できますか?
  3. 導入で失敗しやすい5つの落とし穴と対策
    1. 落とし穴①|非課税要件をギリギリで設計して税務調査で否認された
    2. 落とし穴②|制度を作ったのに使われない
    3. 落とし穴③|一部の従業員しか恩恵を受けられない
    4. 落とし穴④|導入後に効果測定をしていない
    5. 落とし穴⑤|福利厚生だけで「満足」を期待してしまう
    6. 非課税要件を満たさなかった場合どうなりますか?
    7. 導入したけど利用されない場合、どう立て直せばいいですか?
  4. 「第3の給料」導入ロードマップ──3ステップで始める
    1. ステップ1|月5,000円以下の施策を1つ選ぶ(1〜2週間)
    2. ステップ2|3か月運用して効果を検証する
    3. ステップ3|2施策目を追加し「両輪」にする
    4. 社内稟議を通すコツはありますか?
    5. 効果測定のKPIは何を見ればいいですか?
  5. 年間コストで見る──賃上げ vs 第3の給料
    1. 従業員50人の企業で年間シミュレーション
    2. 賃上げと第3の給料を併用することはできますか?
    3. コスト試算を社内に説明する際のポイントは?
  6. まとめ──「賃上げ」の次の一手を持つ

「第3の給料」が注目される理由──賃上げだけでは解決しない時代

テレビや新聞で「第3の給料」という言葉を耳にする機会が増えました。その背景にあるのは、「賃上げをしても届かない」という構造的な問題です。

企業が月1万円のベースアップを行った場合、企業側には給与額面に加えて社会保険料の負担(約15%)が上乗せされます。一方、従業員側でも社会保険料と所得税が差し引かれるため、実際の手取り増加額は7,000〜8,000円程度にとどまります。

つまり、企業が約11,500円のコストを負担しているにもかかわらず、従業員に届くのはその6〜7割にすぎないのです。

※社会保険料の企業負担割合は約15%が目安です。月額1万円×50人×12か月×15%=年間約90万円の追加負担となります。

こうした「届かない賃上げ」の限界を補う手段として、非課税の福利厚生制度を活用した「第3の給料」が注目されています。

さらに、2026年度の税制改正では、食事補助の非課税上限が月額3,500円から7,500円へ約40年ぶりに引き上げられる見込みです(出典:令和8年度与党税制改正大綱)。これにより、企業が非課税で従業員に届けられる金額が大幅に拡大し、「第3の給料」の選択肢はさらに広がっています。

第3の給料は大企業向けですか?小規模でも使えますか?

第3の給料は企業規模を問わず導入できます。むしろ、賃上げの原資が限られる中小企業にとってこそ、非課税の福利厚生を活用するメリットは大きいといえます。食事補助であれば、初期費用をほとんどかけずに導入可能なサービスも多く存在します。

賃上げと第3の給料、どちらを優先すべきですか?

二者択一ではなく、併用が理想的です。賃上げは従業員の基本的な生活水準を支え、第3の給料は「手取りを効率的に増やす」役割を担います。まずは非課税施策で従業員の実感を高め、そのうえで賃上げの計画を進めるという順序も有効です。

施策を比較して選ぶ──自社に合う「第3の給料」はどれか

「第3の給料」として活用できる施策はさまざまです。しかし、すべてを一度に導入する必要はありません。大切なのは、自社の状況に合った施策を1つ選び、確実に運用することです。

ここでは、代表的な5つの施策をコスト・手間・効果の3軸で比較します。

コスト・手間・効果で比較する施策マップ

施策 月額コスト目安 導入の手間 従業員の実感 おすすめの企業タイプ
食事補助 3,500〜7,500円/人 低い 高い(毎日使える) まず手軽に始めたい企業
借上社宅 物件による 高い 非常に高い 管理体制が整っている企業
健康診断オプション補助 年1〜3万円/人 低い 中程度 既存制度を拡張したい企業
自己啓発支援 数千円/人〜 低い 成長意欲の高い層に◎ 若手社員が多い企業
ピアボーナス サービス利用料 低い 高い(やりがいに直結) エンゲージメント重視の企業

※食事補助の非課税上限は、2026年度の税制改正により月額3,500円から7,500円への引き上げが予定されています。

「まず1つ」ならどれ?企業タイプ別おすすめ

どの施策から始めればよいか迷った場合は、自社の最も大きな課題から逆算して選ぶのが効果的です。

全社員に平等に届けたい場合は、食事補助が最も適しています。雇用形態や職種を問わず、すべての従業員が毎日恩恵を受けられるため、「会社が自分たちのことを考えてくれている」という実感につながりやすい施策です。

採用競争力を強化したい場合は、借上社宅制度が有力です。手取りへのインパクトが大きく、求人票に記載した際の訴求力も高まります。ただし、物件管理や契約手続きなど運用の手間がかかるため、管理体制が整っている企業向けといえます。

離職を防ぎたい場合は、ピアボーナスのような「働きがい」に直結する施策が効果的です。日常的に感謝や承認が可視化されることで、従業員エンゲージメントが向上し、定着率の改善につながります。ピアボーナスを活用した具体的な導入事例や効果については、こちらの資料で詳しくご紹介しています。

予算が限られている場合は、自己啓発支援が現実的な選択肢です。書籍購入補助やオンライン講座の費用負担など、少額から始められるうえに、従業員の成長意欲を後押しする効果があります。

複数の施策を同時に導入してもいいですか?

可能です。ただし、一度に複数の施策を導入すると、管理が煩雑になり、どの施策が効果を発揮しているか測定しにくくなります。まずは1つの施策を3か月運用し、効果を確認してから2つ目を追加する段階的なアプローチがおすすめです。

パート・アルバイトにも適用できますか?

福利厚生の適用範囲は企業が定めることができます。ただし、正社員のみを対象とした場合、非正規社員との待遇格差が問題視されるリスクがあります。同一労働同一賃金の観点からも、可能な限り全従業員を対象にすることが望ましいでしょう。

導入で失敗しやすい5つの落とし穴と対策

「第3の給料」は正しく設計すれば企業・従業員の双方にメリットがありますが、要件を満たさなかったり、運用を誤ると、かえってコスト増や社員の不満を招くことがあります。

ここでは、実際に企業が陥りやすい5つの失敗パターンと、その対策を紹介します。

落とし穴①|非課税要件をギリギリで設計して税務調査で否認された

食事補助を非課税で提供するためには、以下の2つの条件を同時に満たす必要があります(出典:国税庁 No.2594 食事を支給したとき)。

1つ目は、従業員が食事代の50%以上を自己負担していること。2つ目は、企業の負担額が月額3,500円以下(税抜)であることです。なお、2026年度の税制改正により、この上限は7,500円に引き上げられる予定です。

特に注意すべきなのは、上限を1円でも超えた場合、超過分だけでなく企業負担額の全額が給与として課税される点です。「3,500円ギリギリで設計したら、消費税の計算方法の違いで超過してしまった」というケースは珍しくありません。

対策としては、上限額に対して余裕を持った制度設計を行うこと、そして導入前に税理士へ確認することが重要です。

落とし穴②|制度を作ったのに使われない

福利厚生制度を導入したものの、利用率が低いまま予算だけが消化されるケースは少なくありません。原因の多くは、申請手続きの煩雑さ、対象範囲の狭さ、そして周知不足の3つに集約されます。

対策としては、導入初期に経営層自らが率先して制度を利用し、「使っていいんだ」という空気をつくることが効果的です。あわせて、社内ポータルやSlackなどで定期的にリマインドを行い、制度の存在を忘れさせないことが重要です。

落とし穴③|一部の従業員しか恩恵を受けられない

借上社宅は単身者やファミリー層に有利ですが、持ち家の社員には恩恵がありません。食事補助もオフィス勤務者が中心で、外勤やリモートワーカーには届きにくい場合があります。

特定の層だけが得をする制度は、不公平感から社員のモチベーション低下を招く恐れがあります。

対策としては、複数の施策を組み合わせ、すべての従業員にメリットが届く設計にすることが大切です。たとえば、食事補助に加えてピアボーナスを導入すれば、勤務場所に関係なく全員が恩恵を受けられる体制が整います。

落とし穴④|導入後に効果測定をしていない

制度を入れて満足してしまい、「本当に従業員の満足度が上がったのか」「離職率に変化があったのか」を確認していないケースが多く見受けられます。効果測定をしなければ、経営層への説明材料もなくなり、制度が縮小・廃止されるリスクが高まります。

対策としては、導入から3か月後を目安に、利用率の集計と従業員アンケートを実施しましょう。「利用率80%以上」「満足度スコアの改善」「離職率の変動」など、あらかじめKPIを設定しておくと、報告の際に説得力が増します。MBO(目標管理制度)のように、評価制度と連動させることで、施策の効果をより正確に把握することも可能です。

落とし穴⑤|福利厚生だけで「満足」を期待してしまう

経営学の動機付け理論では、給与や福利厚生は「不満を解消する要因(衛生要因)」であり、「満足を高める要因(動機付け要因)」とは区別されています。

つまり、食事補助や社宅制度だけでは「不満は減るが、やりがいは生まれない」のです。従業員の定着率を本質的に改善するには、感謝や承認といった「働きがい」を高める施策との組み合わせが不可欠です。

ピアボーナスのように、日常的に称賛が可視化される仕組みを取り入れることで、「手取り」と「やりがい」の両輪で従業員に報いることができます。詳しくは、メイン記事「第3の賃上げとは?」をご覧ください。

非課税要件を満たさなかった場合どうなりますか?

企業負担額の全額が「給与」として扱われ、所得税と社会保険料の課税対象になります。超過分だけではなく全額が課税される点が重要です。たとえば、企業負担が月4,000円だった場合、上限の3,500円との差額500円ではなく、4,000円全額が課税されます。

導入したけど利用されない場合、どう立て直せばいいですか?

まず利用されていない原因を特定しましょう。よくある原因は、申請方法がわからない、制度の存在を知らない、対象だと思っていない、の3つです。短いアンケートで原因を把握し、周知方法の見直しや手続きの簡略化など、ピンポイントで改善するのが効果的です。

「第3の給料」導入ロードマップ──3ステップで始める

「第3の給料」の導入は、大規模なプロジェクトである必要はありません。以下の3つのステップに沿って進めれば、少ない工数で確実に成果を出すことができます。

ステップ1|月5,000円以下の施策を1つ選ぶ(1〜2週間)

まずは、前章の施策比較マップを参考に、自社に最も合った施策を1つだけ選びましょう。最初から完璧な制度をつくる必要はなく、「小さく始めて、反応を見ながら改善する」姿勢が大切です。

社内稟議を通す際は、「同じ1万円でも、ベースアップなら手取りは約7,000〜8,000円だが、非課税の食事補助なら10割届く」というシミュレーションを添えると、経営層の納得を得やすくなります。

具体的な手取りシミュレーションや導入事例は、こちらの資料でご確認いただけます。

ステップ2|3か月運用して効果を検証する

施策を導入したら、3か月間は大きな変更を加えず、まず運用を安定させることに集中しましょう。

3か月後に以下のKPIを確認します。

  • 制度の利用率(目安:80%以上)
  • 従業員満足度アンケートのスコア変化
  • 離職率の推移

数値が改善していれば施策は成功です。改善が見られない場合は、利用されていない原因を特定し、周知方法や申請手続きの見直しを行いましょう。

ステップ3|2施策目を追加し「両輪」にする

食事補助のような生活支援型の施策が定着したら、次はピアボーナスなどの「働きがい」施策を追加しましょう。

生活支援型の施策は「不満の解消」、働きがい施策は「満足の向上」を担います。この両輪が揃うことで、従業員の定着率を最大化できます。

社内稟議を通すコツはありますか?

経営層が最も気にするのは「コストに対してどれだけの効果があるか」です。ベースアップとの比較シミュレーション(同じ予算で手取りにどれだけ差が出るか)を数字で示すのが最も効果的です。あわせて、「非課税なので企業の社会保険料負担も増えない」という点を強調しましょう。

効果測定のKPIは何を見ればいいですか?

代表的なKPIは、制度利用率、従業員満足度スコア、離職率の3つです。導入前の数値をベースラインとして記録しておき、3か月後・6か月後に比較することで、施策の効果を客観的に評価できます。

年間コストで見る──賃上げ vs 第3の給料

「第3の給料」の効果をより明確にするため、従業員50人の企業を例に、年間コストを比較してみましょう。

2026年度の税制改正では、食事補助の非課税上限が月額3,500円から7,500円へ約40年ぶりに引き上げられる見込みです。この改正により、非課税で従業員に届けられる金額は大幅に拡大します。

従業員50人の企業で年間シミュレーション

方法 月額/人 年間総コスト(50人) 企業の社保負担増 従業員の手取り効果
ベースアップ1万円 10,000円 600万円 +約90万円 約70〜80%しか届かない
食事補助(非課税) 5,000円 300万円 なし 100%届く
食事補助+ピアボーナス 7,000円 420万円 なし〜少額 手取り+やりがい

※税率・社会保険料率は個人の所得水準により異なります。上記は一般的な目安です。
※社保負担の計算:月額1万円×50人×12か月×企業負担約15%=年間約90万円

ベースアップの場合、年間690万円(給与600万円+社保負担約90万円)のコストに対し、従業員の手取りに届くのはその7〜8割です。

一方、食事補助であれば年間300万円のコストで、全額が非課税で従業員に届きます。さらにピアボーナスを組み合わせた場合でも年間420万円と、ベースアップより270万円少ないコストで「手取り+やりがい」の両方を届けることが可能です。

賃上げと第3の給料を併用することはできますか?

もちろん可能です。むしろ併用がおすすめです。賃上げで基本給を底上げしつつ、第3の給料で手取りを効率的に増やすことで、従業員満足度と企業のコスト効率を両立できます。

コスト試算を社内に説明する際のポイントは?

上記のシミュレーション表のように「同じ予算でどれだけ届くか」を並べて見せるのが最も伝わりやすい方法です。「ベースアップ1万円よりも、食事補助5,000円+ピアボーナス2,000円の方が、手取りもやりがいも上」という比較は、経営層にとって判断しやすい材料になります。

まとめ──「賃上げ」の次の一手を持つ

賃上げは企業として当然取り組むべき施策ですが、それだけでは従業員の手取りに十分に届かないのが現実です。

本記事で解説したように、非課税の福利厚生制度を活用した「第3の給料」を導入することで、企業はコストを抑えながら、従業員に対してより実感のある報酬を届けることができます。

導入のポイントを改めて整理します。

  • 自社の課題に合った施策を1つ選ぶ(施策比較マップを活用)
  • 非課税要件を正しく理解し、余裕を持った制度設計をする
  • 3か月運用して効果を検証し、2施策目で「両輪」を完成させる

「賃上げか、福利厚生か」ではなく、「報酬の設計力」で従業員に報いる時代です。まずは小さな一歩から始めてみてはいかがでしょうか。

「第3の給料」を実現するピアボーナスの仕組みや、導入企業の具体的な成果について詳しく知りたい方は、以下の資料をご活用ください。

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