職場の人間関係を改善するために管理職がするべきことは?改善によるメリットも解説

職場の人間関係が悪い場合、管理職には改善に向けて働きかける役割があります。改善により業務がスムーズになり、生産性も向上するでしょう。

本記事では職場の人間関係が悪くなる原因や、改善に向けて管理職が心がけることを解説します。会社ができることについても紹介しますので、参考にしてください。

職場の人間関係が悪くなる原因

管理職が職場の人間関係を改善する役割を解説する前提として、人間関係が悪くなる原因もみていきましょう。ここでは、代表的なものを4つ解説します。

コミュニケーションが不足している

場のコミュニケーション不足は、人間関係の悪化につながります。気軽に雑談できない職場は、円滑な業務の進行を妨げるでしょう。

コミュニケーションが足りない職場は、管理職のコミュニケーションスキルに課題があることも少なくありません。管理職と従業員間で適切なコミュニケーションがとれないと、報告・連絡・相談といった業務の情報共有もうまくいかないでしょう。ミスやトラブルにもつながります。

仕事に必要な最低限の会話しかしない、傾聴力に欠ける、管理職の前で雑談ができる雰囲気ではないといった状況があると、コミュニケーション不足により人間関係が悪化しやすくなります。

部下との価値観の相違

管理職と部下で世代が離れていると、働き方などの価値観が異なるのも人間関係が悪くなる原因です。お互いの価値観が理解できず許容できないと、信頼関係は築けません。

世代は近くても、部下にはさまざまな人間がいます。上司とは正反対の価値観を持つ部下もいるでしょう。そのような価値観を受け入れられないと不協和音が生じ、人間関係の悪化につながります

部下を思うように育成できない

部下をうまく育成できないことも、人間関係悪化の原因になります。教育体制が整っていない、管理職の育成スキルが不足しているといった理由で部下をうまく育成できないと、業務が思うように進まず、成果も出せません

業務がスムーズに進まなければ職場全体が忙しくなり、雰囲気の悪化につながります。管理職もますます育成に時間をかける余裕がなくなるでしょう。

成果が出ないことで、管理職はストレスを抱えることにもになります。さらに人間関係を悪化させる原因になるでしょう。

上層部と部下の板ばさみになる

管理職が上層部と部下からの板挟みとなることも、人間関係が悪化する原因です。部長や課長などの中間管理職は上司と部下の中間にある立場となり、両方の意見を聞いてどちらも納得できる結論を出さなければなりません。

上司からの指示・命令や部下からの意見・要望など、常に間に立ってバランスを保つ必要があります。責任や人間関係に悩まされ、ストレスを感じることも多いでしょう。

上司からの指示が難しい内容であっても、それを部下に伝えて実行しなければならないケースもあります。部下が思うように動いてくれず、人間関係の悪化につながる場合もあるでしょう。

職場の人間関係に悩む管理職は多い

職場の人間関係が悪くなる原因はさまざまあり、悩んでいる管理職は多いのが現状です。人間関係の悪化は離職原因の上位を占めており、2021年の厚生労働省による調査では、「人間関係」を理由に退職した人は、男性で8.1%、女性で9.1%と高い割合を占めています。

調査結果を見ても、職場での人間関係に悩む人が多いことがわかります。特に管理職は、上層部と従業員の間に立ち、複雑な人間関係の中で働かなければなりません。部下をマネジメントしつつ上層部と部下の意見を調整するなど、ストレスになることも多々あります。

職場の人間関係が悪化すると業務がスムーズに進まなくなり、従業員のモチベーションも下がります。その結果、部署の成果が上がらず、会社の生産性が下がるということにもなるでしょう。

参考:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況」

職場の人間関係を改善するメリット

職場の人間関係を改善することで、管理職や従業員、会社に多くのメリットをもたらします。ミスやトラブルを抑え、生産性を高めることができるでしょう。人間関係が良くなれば、離職率を下げることも可能です。ここでは、職場の人間関係を改善するメリットを解説します。

仕事上のミスやトラブルを最小限に抑える

職場の人間関係が良くないとコミュニケーション不足になり、情報共有がうまく行われません。そのため、ミスやトラブルが起こりがちです。

人間関係が良くなれば、従業員同士が連携して助け合う環境ができます。万が一ミスが起きてもすぐに連絡・相談をすることで、トラブルを最小限に抑えられるでしょう。フォローし合える職場は1人が業務を抱えることもなく、仕事も早く進みます。長時間勤務がなくなり、労働環境の改善にもつながるでしょう。

生産性を高める

管理職や従業員が人間関係によるストレスや悩みを抱えることがなくなれば、仕事へのモチベーションが高まります。業務のパフォーマンスが上がり、生産性の向上につながるでしょう。製品やサービスの質も良くなり、顧客満足度の向上にもつながります。人間関係が改善されれば、コミュニケーションも活発になるでしょう。従業員は誰に対しても気兼ねなく自由に発言できる心理的安全性を高め、良いアイデアや改善策が生まれやすい環境になります

離職率を下げる

職場の人間関係が悪化すると、離職する従業員が増えてきます。しかし、良好な人間関係が築かれている職場であれば働きやすく、ストレスを抱えることもありません。仕事が楽しくなり、やりがいも生まれるでしょう。

会社への愛着・信頼といったエンゲージメントも醸成されます。その結果、離職率の低下へとつながるでしょう。離職率が低く働きやすい職場は求職者からの人気も高まり、優秀な人材確保も期待できます。

職場の人間関係を改善するために管理職がするべきこと

管理職は、職場の人間関係改善に果たすべき重要な役割があります。管理職が働きかけることで、改善につながることは少なくありません。上司から部下へ積極的に話しかけるだけでも、状況は変わってきます。

人間関係改善のために管理職ができることを紹介します。

部下に話しかける

人間関係の改善には、管理職から部下へ積極的に話しかけることが大切です。部下から管理職に話しかけるのを躊躇する部下は多いでしょう。管理職から気軽に話しかけることで場の雰囲気が和み、職場がコミュニケーションしやすい雰囲気に変わります

挨拶もしっかり行うようにしましょう。部下の挨拶に対して適当に返すのではなく、きちんと挨拶することが職場の雰囲気を良くするコツです。

部下と接する際は、敬意を持つことも忘れないようにしてください。部下だからといって上から目線の態度では、好かれる上司にはなれません。上下関係に関わらず、誰に対しても敬意ある態度は必要です。

年上部下との人間関係に悩む管理職もいるでしょう。相手に敬意を持って接することで、関係改善につながる場合もあります。例えば、仕事を依頼する際は、これまでの実績や経験に敬意を示したうえで依頼するようにすることで、相手の自尊心を損ねず良好な関係を築くことができるでしょう。

言動をポジティブにする

管理職は、言動をポジティブにすることを意識することも重要です。ネガティブな言動は周囲の雰囲気を悪くします。特に管理職の言動や表情は職場に大きな影響を与えるため、意識してポジティブを心がけなければなりません。

職場の人間関係が悪い場合、管理職自身がネガティブな発言をしていないか振り返ってみるのもよいでしょう。

依頼した仕事を済ませた部下には「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えたり、出勤時や退勤時は元気よく挨拶したりすると、職場の雰囲気も変わってきます。

部下との価値観の違いに悩んだときは、自分の考えを押しつけないよう気をつけてください。自分の価値観で部下や職場をコントロールしようとすると、反発を受ける可能性があるでしょう。

現代は多様性の時代であり、さまざまな価値観を持つ人が職場に集まります。「価値観はそれぞれ違って当たり前」という気持ちで受け入れることで、職場も円満になるでしょう。部下に対して指導や命令をするのではなく、自立を支援するというスタンスで接すると関係性も良好になります。

部下の仕事量に配慮する

部下の働き方を見直すことも、管理職の重要な役割です。部下は与えられた仕事をこなすことで精一杯であり、管理職が仕事量や残業時間をチェックする必要があります。仕事量が多くなっている状況があれば、業務の問題点を考えて見直しを検討しなければなりません。

仕事量が減って余裕ができれば、従業員同士のコミュニケーションが生まれます。人間関係も改善していくでしょう。

1人に業務が偏っていないか、どの業務に時間がかかっているのかを確認し、適切な配分を考えてください。フレックスタイム制やリモートワークなど、より適した働き方があれば、働き方改革を上層部に提案するという方法もあります。

働き方を変えること自体が気分転換になり、ストレス解消にもつながるでしょう。

定期的に話を聞く機会を設ける

部下と定期的に話す機会を設け、信頼関係を構築することは人間関係の改善につながります。人間関係の悪化は、管理職が部下の考え方を理解していないことが原因となっている場合も少なくありません。

定期的に部下とコミュニケーションをとって部下の考え方を理解できれば、距離感や接し方もわかるようになるでしょう。定期的な面談により、部下も「上司が自分のことを考えてくれている」と感じ、良い印象に変わります。

定期的に上司と部下が1対1で話し合う「1on1ミーティング」の導入もおすすめです。1on1ミーティングは部下の成長を目的に行われるもので、目標や成果を評価する面談とは異なります。部下の話を傾聴し、コミュニケーションをとりながら関係性を築きます。

部下との面談では、アドバイスが説教にならないことも大切です。説教になってしまうと部下は萎縮し、煩わしさを感じる可能性もあります。人間関係の改善からは遠のくでしょう。

職場の人間関係を改善するために会社ができること

職場の人間関係が悪化する原因はさまざまで、管理職の努力だけでは対応できない部分も少なくありません。社内コミュニケーションの活性化や教育体制の整備は、会社からの対応が求められます。

詳しい内容をみていきましょう。

社内コミュニケーションを活性化させる

社内コミュニケーションの不足で人間関係が良くない場合、社内コミュニケーションを活性化させる施策を考えましょう。コミュニケーション不足は組織風土や社風に根ざしている場合も多く、管理職の心がけだけでは解消できない場合もあります。

 

会社を上げて施策を検討し、改善に取り組みましょう。まずは現状を確認し、コミュニケーション不足の原因を明確にします。明らかにした原因に対し、どのような施策が効果的かを考えましょう。

 

社内コミュニケーションの活性化として行われている取り組みには、以下のものがあげられます。

  • 社内報の発行
  • 社内イベントの開催
  • リフレッシュスペースの設置
  • コミュニケーションツールの導入

社内報で社内の出来事や連絡事項を伝えることで、会社や他の従業員についての理解が深まります。規模の大きな会社で従業員同士の面識が薄く、他部署についてもよく知らないといった場合に有効な方法です。

懇親会や運動会などの社内イベントでは、業務を離れて従業員同士が交流できます。お互いの理解を深め、社内コミュニケーションを活性化するきっかけとなるでしょう。

リフレッシュスペースを設け、さまざまな従業員が集まる場所を作るのも効果的です。休憩時間にリラックスしながら雑談することで、従業員同士の交流が深まります。

チャットツールやグループウェアなどのコミュニケーションツールは、リモートワークを導入した企業に効果的な方法です。リモートワークで対面が減った職場でも、気軽にコミュニケーションがとれます。

従業員のコミュニケーションを促進できるのが、ピアボーナスのUniposです。ピアボーナスとは、従業員同士がお互いの貢献に感謝の気持ちを送り合う方法です。従業員が称賛や感謝をおくり合うことで職場の雰囲気が明るくなり、「称賛し合う文化」を醸成できます。会社やメンバーへの愛着心が生まれ、人間関係も改善するでしょう。

Uniposを導入し、社内コミュニケーションを活性化させた事例を紹介します。

心理的安全性が向上して社内コミュニケーションが活性化

女性医療分野や急性期医療分野の医薬品を開発・製造・販売する医薬品メーカーの富士製薬工業株式会社は、専門性の高さから部署間の異動が少なく、拠点間・部署間のコミュニケーションが不足していました。

そのため、社内コミュニケーションの活性化と心理的安全性の向上を目的に、約800名の従業員を対象にしたUniposの全社導入を行っています。同社では以前から「徳目制度」という評価制度を導入しており、徳のある人になることを呼びかけています。Uniposは、可視化しにくい「徳のある人」を可視化する役割も担いました。

Uniposの運用は、他の社内施策と一緒に活用したり、表彰制度と連動させたりして浸透につとめ、工場などパソコンをあまり使わない人も活用するようになったということです。

その結果、組織サーベイによる心理的安全性にかかわる項目の数値が上昇し、コミュニケーションが活発になるという成果が得られました。

社内の教育体制を整備する

部下の育成がうまくいかず、教育体制に不備がある場合、会社が教育体制を整備することも必要です。従業員が成長できる教育体制が整っていれば働きやすい職場になり、人間関係の改善につながります。

教育体制を整備して効率的に人材育成を行えば、新入社員も業務に早く慣れ、職場の業務全体が円滑に進むでしょう。管理職の負担を軽減でき、生産性も向上します。

従業員のレベルに合わせ、OJT(実務を通じて指導する教育方法)とOff-JT(座学研修)を適切に使い分ければ、効率的な育成ができます。

また、資格取得制度など、従業員のスキルアップを支援するのもおすすめです。

まとめ

管理職は、職場の人間関係に大きな影響を与えます。人間関係はコミュニケーション不足や部下との価値観の相違などで悪化しやすく、業務が円滑に進まないなどの問題が起こりやすくなります。

人間関係改善のために管理職の果たす役割は重要で、ポジティブな言動をとる、部下と定期的に面談を行うなど、積極的に対処することが求められるでしょう。

コミュニケーション不足が人間関係に影響している場合、会社が施策に取り組むことも必要です。

職場の人間関係を改善し、従業員が働きやすい環境をつくりましょう。