360度評価の導入失敗で起こる弊害2つと失敗する4つの原因を解説

「『360度評価』の導入に失敗すると、どんな弊害が起こるの?」
「話題の『360度評価』って失敗しやすいと聞いたんだけど、実際のところどうなの?」

このように考えている方も多いのではないでしょうか。

実際、導入に失敗する会社も少なからず存在しています。
しっかりポイントや手順を押さえないと「従業員のモチベーション低下」や「社内コミュニケーション不全」などの弊害を招いてしまうことさえあります。

そこで今回は、以下について詳しく説明します。

・360度評価の導入に失敗すると起こる2つの弊害
・360度評価の導入に失敗する4つの原因
・360度評価の導入を成功させる3つのポイント

この記事で挙げる失敗原因に気を付け「成功する3つのポイント」を押さえれば、導入に失敗する可能性がとても低くなります。

それでは早速、見ていきましょう。

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1.「360度評価」の導入失敗で起こる「2つの弊害」

「360度評価の導入に失敗した」という話を耳にすることがありますが「失敗の中身」について語られることはほとんどありません。

そのため本章では「360度評価」の導入に失敗すると起こる「2つの弊害」を知っていただこうと思います。結論からいえば、弊害は以下の2つです。

【導入失敗で起こる2つの弊害】

・従業員同士の「忖度」が当たり前になり、健全な社内コミュニケーションが取れなくなる
・評価にショックやストレスを受けた従業員のモチベーションが低下する

それでは、早速ご覧ください。

1-1.「忖度」が当たり前になり、健全な社内コミュニケーションが取れなくなる

第一に「360度評価」の導入に失敗すると「健全な社内コミュニケーション」が取れなくなります。

「360度評価」は、さまざまなメンバーからのフィードバックを受けつつ、フィードバックも行うのが最大の特徴です。「上司・部下」といった関係は一切なくなり、完全なフラットな状態で各人への評価が行われるのが一般的。

そうした場合に懸念されるのが「従業員間での忖度(そんたく)」です。
お互いに高評価を求めるあまり「余計な発言は控えよう」という守りの姿勢に入りやすくなるのです。

具体的な失敗例をご紹介しますね。

【部下や同僚をもつ課長のケース】

とある会社では、今年から360度評価が導入されることに。
社員向けの説明会では「誰が評価したかわかる」制度設計になっていることがが伝えられました。
説明会後、部下をもつ上司はこう考えました。

「最近の若者は打たれ弱い。厳しく指導すると、部下から嫌われるだろう。『360度評価』で悪い評価がつけられたら困るから、あまり手厳しいことはいわないでおこう」

好評価を得たいので、部下の教育の手を緩めようと考えたのです。

一方、同僚に対しては、以下のように考えました。

「同僚Aは、報連相がなっていないと思う。でも、そのことを率直にフィードバックしたら、自分も悪い評価をつけられてしまうかもしれない。だったら、よい評価を書いておいた方が得だな」

自分も高評価をつけてもらえるよう、同僚の評価は甘くしておこうと考えました。

いかがでしょうか。
このような思惑が働く可能性はゼロではありません。

忖度する従業員が増えると、活発な社内コミュニケーションは減り、互いに対する率直なアドバイスや適切なフィードバックが受けられる機会が、極端に減ってしまうでしょう。

各従業員のパフォーマンスの向上も、当然見込めません。これは非常に困った事態ですね。
会社としては「機能不全状態」に陥ってしまうはずです。

評価制度自体の「実効性」に大きな疑問符がつくでしょう。
「従業員間での忖度」は、「360度評価」の導入失敗で起こる典型的な弊害なのです。

1-2.評価にショックやストレスを受けた従業員のモチベーションが低下する

正しい評価方法をレクチャーしたり、評価ルールをしっかり定めたりしておかないと「コメントの記載ポイント」がずれる可能性があります。

その結果、受けた評価を言葉通り受け取って、ショックを受けてモチベーションが低下してしまう従業員が出てくるのです。
実際にどのようなことが起こり得るのか、具体例をご紹介しますね。

【フリーコメント欄の場合】

「360度評価」のフリーコメント欄で、同僚の気になるポイントを記述させる場合。
「悪いフィードバック例」のような書き方をすれば、モチベーションが急降下してしまう従業員も出てくるでしょう。

【よいフィードバック例】
・報連相ができるようになると、もっと成長できると思います。期待しています!

【悪いフィードバック例】
・報連相ができないなんて、社会人失格だと思います。
・報連相ができていないのが問題です。正直、Aさんとはどう接していいかわからないです。

いかがでしたか。
上記は極端な例ではありますが、受け手の印象は、まるで違うものになりますよね。
指摘しているポイントはほとんど同じにも関わらず、です。

伝え方一つで「成長につながる一言」になる一方「モチベーションを低下させる一言」にもなるということが、おわかりいただけたのではないでしょうか。

「360度評価」では、評価を行う際のルールをしっかりと説明しておかなければ、従業員のモチベーションを低下させたり、ストレスを増幅させたりする危険性をはらんでいるのです。

ここまで「360度評価」の導入によって起こる2つの弊害をご紹介してきました。

「健全な社内コミュニケーション」が取れなくなったり、「モチベーションの低下」を引き起こしたりといった具合に、正しい手順を踏まなければ、さまざまな弊害が起こるのです。

続きまして「360度評価」の導入が失敗に終わってしまう「根本的な原因」について、詳しく解説していきます。

「導入するからには、絶対に失敗したくない!」と考えている方は、是非目を通してくださいね。

2.「360度評価」の導入が失敗に終わってしまう4大原因

2-1.実施目的をしっかり説明しない

「実施目的をしっかり説明しない」と、360度評価の導入は失敗します。
なぜならば、ピントのずれたフィードバックを行う従業員が出てきて、必要なフィードバックが得られなくなってしまうからです。

このことは、具体例を用いるとイメージしやすいです。
以下の事例をご覧ください。

【実施目的にそぐわない評価コメントの事例】

ある会社では「従業員の能力開発」を目的に360度評価を導入しました。そのため、本来であれば以下のようなフィードバックを期待していました。

【よいフィードバック例】
・営業のAさんは、もう少しヒアリングを丁寧に行うと、もっと成果がUPしていくと思う。(→弱点の克服)
・ヒアリングで要望がきちんと聞けるようになるとベターだと思う。営業のBさんに同行してもらうとよいと思う。(→弱点の克服)

しかし、ある会社では「実施目的」を従業員に周知徹底しなかったため、以下のようなフィードバックが散見されました。

【悪いフィードバック例】
・営業のAさんは、体調不良を理由に早退ばかりしている。会社の雰囲気を乱していると思う
・営業のAさんは、メールの返信が遅い。もっと早くレスをしてくれないと、業務に支障を来すから改善すべきだ

見てお分かりの通り、悪いフィードバック例は、コメント者の主観的な感想に過ぎません。「目的に沿わない主観的な評価」は、従業員の能力開発には役立ちませんから、何の意味もありませんね。

従業員のモチベーション低下につながる可能性も十分に考えられます。
実施目的をしっかり説明しないと、「360度評価」の導入は失敗に終わってしまうでしょう。

2-2.「業績評価」「人事考課」に組み込んでしまう

360度評価の結果を「業績評価」や「人事考課」に組み込んでしまうと失敗します。
なぜならば実態に即していない「歪んだフィードバック」が行われる可能性が高まるからです。

具体的には以下の通りです。

●よい評価を得たいという「自己利益」のバイアスがかかった場合
従業員間での忖度(よい評価のつけ合い)が起こる

例:「上司のAさんによい評価をつけておこう。そうすれば、自分の評価も多少上がるはずだ」

●ニガテ意識のある人物の評価を下げたいという「悪意」のバイアスがかかった場合
仕事のパフォーマンスに問題ないにもかかわらず意図的に「低評価」をつける

例:「同僚のBのことはあまり好きじゃない。仕事はできると思うが、評価を下げてやろう」

こんな具合に、「自己利益」に走ったり「悪意」をもったりした場合には、適正なフィードバックを受けることができなくなります。

現実に即さない恣意的なフィードバックが増えれば、従業員の能力開発に結び付きません。さらに、従業員のモチベーション低下にもつながるでしょう。

「360度評価」の導入を成功させるためには、給与や人事考課とは切り離し、純粋に「能力開発」や「スキルアップ」のみの活用に限定するべきです。

2-3.設問が多すぎて、いい加減に取り組まれてしまう

「360度評価」は、上司・部下・同僚の評価を行うため、基本的には社員の負担が大きいものです。
ですから、設問が多すぎると、「流れ作業的にこなして終わらせる」社員が増える可能性があります。

そうすると、十分に役立つフィードバックが受けられなくなる可能性があります。
「360度評価」の意義そのものが疑問視される事態にもなりかねません。こうなっては「導入に失敗」したも同然といえるでしょう。

設問の分量には、最大限の注意を払いましょう。

2-4.評価結果を受け取るだけで、何のアフターフォローも行わない

「フィードバックを受けっぱなしで終わらせる」のは絶対に避けましょう。
なぜならば、受けたフィードバックが従業員の能力向上に活用されず、ただ時間を浪費しただけで終わってしまうからです。これは一番もったいないことともいえる状況ですし、まぎれもなく典型的な失敗例です。

アフターフォロー不足の代表的な失敗例は、以下の2点です。

◎振り返り面談を行わない
◎受けた評価を「PDCAサイクル」で管理しない

この点については、以下で詳しく解説します!

2-4-1.振り返りの面談を行わない

「振り返り面談を行わない」と、「360度評価」が失敗に終わります。

なぜならば、せっかく受けたフィードバックが活かされず、そのまま流れてしまう可能性が高いからです。日々の業務で忙しい中、自己フィードバックを行う時間を確保するのは至難の業ですから、当然といえば当然かもしれません。

しかし、振り返り面談の日程を設定しておけば、そのような失敗は防げます。
「360度評価」の運用設計時に「振り返り面談の日時設定」も行っておきましょう。

2-4-2.受けた評価を「PDCAサイクル」で管理しない

制度設計段階で「PDCAサイクル」を意識した管理を行わないと、「360度評価」の導入に失敗します。
PDCAとは以下のようなものです。

Plan(計画)
アクションリストの作成

Do(実行)
行動の改善/努力

Check(確認)
行動の達成度合いのチェック

Action(実行)
アクションリストの修正

PDCAサイクルで管理していかなければ、フィードバックは受けっぱなしのまま忘れ去られてしまうでしょう。当然、従業員の行動に具体的な変化を起こすことは不可能です。

そのため、計画を立てて、日々行動チェックを継続することが大切です。

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3.「360度評価」の導入を成功させる3つのポイント

ここまでの記事を通して「360度評価」の導入に失敗する根本的な原因について、ご理解いただけたのではないかと思います。

最後に、こうした失敗を回避し「導入を成功に導く」具体的な対策についてご紹介します。

3-1.「実施目的」と「ガイドライン」を明確にしておく

各従業員が有意義なフィードバックを受けられるよう、人事部や管理部門は「360度評価」の実施目的・ガイドライン(ルール)を取り決めておきましょう。

●実施目的
「従業員の能力開発を行うため」「仕事への取り組み姿勢を改善するため」など、「360度評価」を行う目的を伝える

●ガイドライン
評価方法、評価期間、注意点などをわかりやすく伝える

実施目的・ガイドライン(ルール)が定まったら、従業員がしっかり腹落ちするまで、何度でもくわしく説明し理解を促します。

実施目的に適ったフィードバックが行われるよう、説明会を開催するなりして、徹底して指導しましょう。評価に関する質問がある従業員が、気軽に相談できる「相談窓口」を設置するのも有効な方法の一つでしょう。

3-2.「360度評価」~振り返り面談までのスケジュール計画を立てる

受けっぱなしにならないよう、制度設計時に「全体スケジュール」を明確化しておいてください。
大まかな流れの例としては以下の通りです。以下の流れを意識して「360度評価」を運用していくと、失敗しないでしょう。

STEP1.
「360度評価」の制度説明会の開催
・「実施目的」「評価方法に関するガイドライン」「全体スケジュール」「評価項目」「記入方法」「人事考課や業績評価に反映されるのか否か」などについて説明する
・従業員が多い場合、複数回実施する

STEP2.
従業員が実施した評価の集計・評価の返却
・評価を受けてどのような改善が必要なのか、部下に考えさせる「自己フィードバック」を命じる
・自己フィードバックを行わせたうえで、面談日時を設定する

STEP3.
自己フィードバック
・受けたフィードバックに対して、部下は自己フィードバック(内省)する
・部下は自己フィードバックの結果、どのような改善を行っていくべきか自分なりの考えをまとめる

STEP4.
上司との面談
・上司は、「360度評価」の結果や、自己フィードバックの結果「どのようなことを考えたのか」じっくり聞く
・「今後どのような努力・改善を行うべきか」しっかり話し合う

STEP5.
Plan(計画)
・上司と一緒に、パフォーマンスを向上させるためのPDCAに取り組んでいく
・まずは「何を改善するべきか」「どんな努力を行うべきか」具体的なアクションリストを作成する

STEP6.
Do(実行)
・アクションリストに沿って業務を遂行する(上司は行動状況を日々見守る)

STEP7.
Check(確認)
・アクションリストの達成具合を1ヵ月単位等で、自分自身でチェック(評価)させる
・アクションリストの達成具合を1ヵ月単位等で、上司がチェック(評価)する

STEP8.
Action(実行)
・評価に基づいて、改善された点・改善すべき点を洗い出し、アクションリストの修正や項目追加を行う。

上記の流れを参考に、「360度評価」を設計してみてください。

3-3.従業員の負担にならない「設問づくり」を行う

実際に取り組んでもらう「設問」は、1人の評価につき「15分程度で完了する内容」にしましょう。
選択式の設問の数は30問までにとどめ、比較的時間がかかるフリーコメントは1~2問程度にし、文字数も少な目に制限するとよいでしょう。

以下にポイントをまとめましたので、ご覧ください。

【設問を作る際に押さえておきたいポイント】

・設問はどんなに多くても20~30問程度に留める
・選択式の回答を行う場合、その回答基準は5段階程度にとどめる
・フリーコメントの設問は、1~2問程度に絞る

4.まとめ

いかがでしたか。「360度評価」の導入失敗で起こる弊害や、失敗してしまう根本的な原因、導入を成功させるために押さえるべきポイントなどが、ご理解いただけたのではないでしょうか。

ポイントさえ外さなければ「360度評価」は優れた効果を発揮する「人事評価制度」です。
「従業員の能力開発」や「スキルアップ」「パフォーマンス向上」を図るならば、前向きに導入を検討するべきです!

最後に、この記事のポイントを整理します。

◎「360度評価」の導入に失敗すると、健全な社内コミュニケーションが取れなくなる
◎「360度評価」の導入に失敗すると、従業員のモチベーションが低下する
◎「実施目的」を説明しないと、実効性の高いフィードバックが得られず失敗に終わる
◎設問が多すぎると、流れ作業的にこなす従業員が増えるため、有益なフィードバックが得られない
◎振り返り面談が行われないと、フィードバックは活用されずに終わる
◎フィードバックを「PDCAサイクル」で管理しないと、従業員の能力開発には活かせない
◎「実施目的」と「ガイドライン」を明確にしておくことが大切!
◎「360度評価」の実施~振り返り面談までのスケジュールを計画しておく
◎従業員の負担にならない「設問づくり」を行う

この記事が「360度評価」の導入を検討している方の参考になりましたら幸いです。

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