
上司にとって部下の育成は大切な仕事のひとつです。
しかし中には、
■自己主張が強く、メンバーと対立ばかりしている
■不満ばかりでミスが多い
という扱いづらい部下もいることでしょう。
あなたを悩ませる部下の言動は、
「自分のことを分かってほしい」「もっと認めてほしい」
という承認欲求が屈折した形で表面化している可能性もあります。
承認欲求とは、すべての人間が持つ「自分を認めて欲しい」という欲求です。
誰もが持つ欲求ですが、衣食住の欲求と同様に、その強さには個人差があります。
承認欲求はモチベーション向上にもつながるため、必ずしも悪いものではありません。しかし、承認欲求が強すぎ、それに囚われてしまうと、自分のみならず周囲にも悪影響を及ぼします。
承認欲求はささいなきっかけで、強くなったり弱くなったりするものです。若いうちは特に、いつの間にか承認欲求が増大して自分でもコントロールができなくなってしまう、といった状態に陥る可能性もゼロではありません。部下の承認欲求に対して上司は適切な対処法を知っておくことが求められるのです。
そこで当記事では承認欲求が強い部下を抱えて悩む上司に向けて、
■そもそも承認欲求とは何か
■承認欲求の強い部下の特徴
■承認欲求の強い部下の対処法とやってはいけないこと
を解説していきます。
当記事を読めば、承認欲求が強い部下について、どのように対処すればよいのかが完全に理解できるでしょう。
あなたの対応次第では、職場で困った人材と見られていた承認欲求が強い部下が能力を発揮し、会社にとって唯一無二の人材になるかもしれません。
ぜひ最後までご覧になって、理解を深めてくださいね。
1.そもそも承認欲求とは?
承認欲求とは、誰もが持っている本能的な欲求です。
具体的には、
■自分のことを「価値がある存在」と認めて欲しい
■自分の考えを理解して欲しい
■自分のことを評価して欲しい
■自分のことを大切にして欲しい
というような感情を指します。
承認欲求は、アメリカの心理学者・マズローによる有名な理論「欲求の5段階説」に登場する言葉です。
日本では人間が持つ根本的な欲求として、食欲・睡眠欲・性欲の三大欲求が有名ですが、世界的には承認欲求などを加えたマズローの「五大欲求」、キリスト教の「七つの大罪(欲求)」などが広く知られています。
承認欲求は誰でも持っているものですが、「承認欲求の強さ」は人によって異なります。強すぎる承認欲求を持ってしまうと、対人コミュニケーションの障害となることもあるので注意が必要です。
そしてその他の欲求と同じように、欲求が満たされないとストレスとして溜まっていくことになります。
この章では、
■承認欲求とは何か
■承認欲求と自己顕示欲の違い
についてマズローの理論を軸に解説していきます。
心理学者・マズローとは?
アブラハム・ハロルド・マズロー(1908年-1970年)は、アメリカの心理学者。
人間の自己実現を研究する「人間性心理学」の生みの親とされ、人間の欲求階層説を唱えた「自己実現理論(欲求5段階説)」が有名。
自己実現理論は現代でも重要視されており、マーケティングや人事マネジメントなどで応用されることが多い。
1-1.承認欲求は心理学者・マズローの欲求5段階説の4段階にあたる
アメリカの心理学者・マズローは、人間の欲求について「大きく5つに分類でき、ピラミッドのように構成されている」と考えました。
マズローの理論は、「下層の欲求が満たされると、さらに1段階上の欲求を満たそうとしていく」という考え方です。
承認欲求は、このピラミッドの4段階にあたります。
承認欲求は、欲求の中でも高次レベルの欲求と言えるでしょう。
承認欲求をさらに深掘りすると、次の2つに分けることができます。
◎「自分で自分をどう思うか」を重視する「自己承認欲求」
◎「他人から自分が認められているか」を重視する「他者承認欲求」
次の項でそれぞれ詳しく解説していきます。
1-1-1.【自己承認欲求】理想とする自分に近づきたい気持ち
自己承認欲求は、「自分で自分を認めたい」という欲求です。
具体的には、
■もっと能力を高めたい
■もっと技術力を上げたい
■もっと自分を信頼したい
などの、現在の自分よりさらに上のレベルを目指す欲求です。
現状に甘んじることなく努力を重ねることはとても素晴らしいのですが、時としてマイナスに作用することがあります。
■頑張りすぎて疲れてしまう
■目標が高すぎて達成できず、フラストレーションがたまる
比較的、真面目で努力家なタイプが抱きやすい欲求とも言えます。
努力の経過よりも結果を重視しがちなので、上司は努力過程を適宜認めてあげることが大切です。
1-1-2.【他者承認欲求】他者に認められたい気持ち
他者承認欲求とは、「他者から認められたい」という欲求です。
具体的には、
■尊敬されたい
■褒められたい
■注目を集めたい
■地位や名声が欲しい
などの欲求がこれにあたります。
承認を与えるのが他者になるため、他者の基準で物事を判断しがちです。
「人からどう思われているか」が気になるあまり、業務がおろそかになる人もいます。
また、「周囲から良い人と思われたい」一心で、不要な業務や残業を引き受けてしまう自己犠牲型の人も目立ちます。
他者承認欲求が強すぎると、周囲とのコミュニケーションがうまくいかなくなったり、強いストレスを抱えたりとマイナス面も大きいのが特徴です。
1-2.自己顕示欲との違いは「他者の評価」の必要性
承認欲求と似ている言葉に、自己顕示欲があります。
どちらも、自己主張の強い人に対して使われることが多い言葉ですが、意味は少し異なります。
承認欲求と自己顕示欲の違いは、「他者の評価が必要かどうか」です。
承認欲求は「他者に自分を認めてもらいたい」「他者に自分を受け入れて欲しい」という欲求です。判断を下すのは自分ではなく他者のため、どちらかというと受動的な欲求になります。
一方、自己顕示欲は「自分をアピールしたい」「注目して欲しい」という欲求です。
自己顕示欲の根底には「他者に認めて欲しい」という承認欲求が含まれていることがありますが、必ずしも他者の承認が必要というわけではありません。
「とにかく積極的に自己主張しなければ!」という能動的な欲求を指します。
そのため、
◎承認欲求が強い部下には「認める」こと
◎自己顕示欲が強い部下には「頼りにする」こと
がベストな対処法となります。
部下の思いを引き出しやすくするためには心理的安全性が必須!詳細はこちら
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