承認欲求が強い部下を活かすには?上司が知っておくべき全てのこと

上司にとって部下の育成は大切な仕事のひとつです。

しかし中には、

自己主張が強く、メンバーと対立ばかりしている

不満ばかりでミスが多い

という扱いづらい部下もいることでしょう。

あなたを悩ませる部下の言動は、

「自分のことを分かってほしい」「もっと認めてほしい」

という承認欲求が屈折した形で表面化している可能性もあります。

承認欲求とは、すべての人間が持つ「自分を認めて欲しい」という欲求です。

誰もが持つ欲求ですが、衣食住の欲求と同様に、その強さには個人差があります。

承認欲求はモチベーション向上にもつながるため、必ずしも悪いものではありません。しかし、承認欲求が強すぎ、それに囚われてしまうと、自分のみならず周囲にも悪影響を及ぼします。

承認欲求はささいなきっかけで、強くなったり弱くなったりするものです。若いうちは特に、いつの間にか承認欲求が増大して自分でもコントロールができなくなってしまう、といった状態に陥る可能性もゼロではありません。部下の承認欲求に対して上司は適切な対処法を知っておくことが求められるのです。

そこで当記事では承認欲求が強い部下を抱えて悩む上司に向けて、

そもそも承認欲求とは何か

承認欲求の強い部下の特徴

承認欲求の強い部下の対処法とやってはいけないこと

を解説していきます。

当記事を読めば、承認欲求が強い部下について、どのように対処すればよいのかが完全に理解できるでしょう。

あなたの対応次第では、職場で困った人材と見られていた承認欲求が強い部下が能力を発揮し、会社にとって唯一無二の人材になるかもしれません。

ぜひ最後までご覧になって、理解を深めてくださいね。

1.そもそも承認欲求とは?

承認欲求とは、誰もが持っている本能的な欲求です。

具体的には、

自分のことを「価値がある存在」と認めて欲しい

自分の考えを理解して欲しい

自分のことを評価して欲しい

自分のことを大切にして欲しい

というような感情を指します。

承認欲求は、アメリカの心理学者・マズローによる有名な理論「欲求の5段階説」に登場する言葉です。

日本では人間が持つ根本的な欲求として、食欲・睡眠欲・性欲の三大欲求が有名ですが、世界的には承認欲求などを加えたマズローの「五大欲求」、キリスト教の「七つの大罪(欲求)」などが広く知られています。

承認欲求は誰でも持っているものですが、「承認欲求の強さ」は人によって異なります強すぎる承認欲求を持ってしまうと、対人コミュニケーションの障害となることもあるので注意が必要です。

そしてその他の欲求と同じように、欲求が満たされないとストレスとして溜まっていくことになります。

この章では、

承認欲求とは何か

承認欲求と自己顕示欲の違い

についてマズローの理論を軸に解説していきます。

心理学者・マズローとは?

アブラハム・ハロルド・マズロー(1908年-1970年)は、アメリカの心理学者。

人間の自己実現を研究する「人間性心理学」の生みの親とされ、人間の欲求階層説を唱えた「自己実現理論(欲求5段階説)」が有名。

自己実現理論は現代でも重要視されており、マーケティングや人事マネジメントなどで応用されることが多い。

1-1.承認欲求は心理学者・マズローの欲求5段階説の4段階にあたる

アメリカの心理学者・マズローは、人間の欲求について「大きく5つに分類でき、ピラミッドのように構成されている」と考えました。

マズローの理論は、「下層の欲求が満たされると、さらに1段階上の欲求を満たそうとしていく」という考え方です。

承認欲求は、このピラミッドの4段階にあたります。

承認欲求は、欲求の中でも高次レベルの欲求と言えるでしょう。

承認欲求をさらに深掘りすると、次の2つに分けることができます。

「自分で自分をどう思うか」を重視する「自己承認欲求」

「他人から自分が認められているか」を重視する「他者承認欲求」

次の項でそれぞれ詳しく解説していきます。

1-1-1.【自己承認欲求】理想とする自分に近づきたい気持ち

自己承認欲求は、「自分で自分を認めたい」という欲求です。

具体的には、

もっと能力を高めたい

もっと技術力を上げたい

もっと自分を信頼したい

などの、現在の自分よりさらに上のレベルを目指す欲求です。

現状に甘んじることなく努力を重ねることはとても素晴らしいのですが、時としてマイナスに作用することがあります。

頑張りすぎて疲れてしまう

目標が高すぎて達成できず、フラストレーションがたまる

比較的、真面目で努力家なタイプが抱きやすい欲求とも言えます。

努力の経過よりも結果を重視しがちなので、上司は努力過程を適宜認めてあげることが大切です。

1-1-2.【他者承認欲求】他者に認められたい気持ち

他者承認欲求とは、「他者から認められたい」という欲求です。

具体的には、

尊敬されたい

褒められたい

注目を集めたい

地位や名声が欲しい

などの欲求がこれにあたります。

承認を与えるのが他者になるため、他者の基準で物事を判断しがちです。

「人からどう思われているか」が気になるあまり、業務がおろそかになる人もいます。

また、「周囲から良い人と思われたい」一心で、不要な業務や残業を引き受けてしまう自己犠牲型の人も目立ちます。

他者承認欲求が強すぎると、周囲とのコミュニケーションがうまくいかなくなったり、強いストレスを抱えたりとマイナス面も大きいのが特徴です。

1-2.自己顕示欲との違いは「他者の評価」の必要性

承認欲求と似ている言葉に、自己顕示欲があります。

どちらも、自己主張の強い人に対して使われることが多い言葉ですが、意味は少し異なります。

承認欲求と自己顕示欲の違いは、「他者の評価が必要かどうか」です。

承認欲求は「他者に自分を認めてもらいたい」「他者に自分を受け入れて欲しい」という欲求です。判断を下すのは自分ではなく他者のため、どちらかというと受動的な欲求になります。

一方、自己顕示欲は「自分をアピールしたい」「注目して欲しい」という欲求です。

自己顕示欲の根底には「他者に認めて欲しい」という承認欲求が含まれていることがありますが、必ずしも他者の承認が必要というわけではありません。

「とにかく積極的に自己主張しなければ!」という能動的な欲求を指します。

そのため、

承認欲求が強い部下には「認める」こと

自己顕示欲が強い部下には「頼りにする」こと

がベストな対処法となります。

部下の思いを引き出しやすくするためには心理的安全性が必須!詳細はこちら

2.知っておきたい!承認欲求の強い部下の具体的な6つの特徴

部下の困った言動の原因が分からなければ、上司は適切な対処ができません。

失恋や友人とのプライベートなトラブルによるものか、それとも承認欲求が強いことによるものなのかで、取るべき対応は異なります。

この章では、承認欲求が強い部下によくある特徴を具体的に紹介していきます。

承認欲求が強い部下によくある特徴は次の6つです。

自己アピールが強い

他人からどう思われているかを極端に気にする

言い訳が多い

何事も自分に都合よく解釈する

他者をよく褒める

他者に対して上から目線で接する

部下の言動が、「承認欲求の強さが原因」である場合は、4章でご紹介する対処法が有効になります。

あなたの部下の言動に当てはまるかどうか、是非照らし合わせながら読み進めてくださいね。

2-1.自己アピールが強い

承認欲求は自己アピールとして表面化することが非常に多いものです。

「もっと自分を見て欲しい」

「もっと自分に注目して欲しい」

という感情が強く、そのための手段も選びません。

話を大げさに膨らませる

病弱をアピールして心配してもらいたがる

仕事で失敗したら激しく落ち込む

などの言動がたびたび見られたら、承認欲求が強い可能性を疑いましょう。

加えて承認欲求が強い部下は、とにかく目立ちたがり屋です。

目立つ仕事をやりたがる

地味だったり、裏方に回る仕事を嫌がる

自分勝手な行動を取りがち

という特徴も見られるため、業務が滞ったり、チームワークが乱れることがあります。

「自己アピールの強さ=承認欲求の強さ」とも考えられるでしょう。

2-2.他者からどう思われているかを極端に気にする

承認欲求が強い人は、他者の目に映る自分の姿を意識しすぎる傾向にあります。

「他者は自分をどう思うか」が気になりすぎると、業務に支障が出ることも少なくありません。

例えば、業務で不明点がある場合、多くの人は誰かに教えてもらったり、確認を取ったりしてから進めますよね。

しかし、承認欲求が強い部下は、

「こんな簡単なことを聞いては、能力が低いと思われないか?」

「呆れられてしまうのでは?」

と他者の感情を推察して気になってしまい、相談ができません。

その結果、業務をスムーズに終えらず、上司や同僚から、「分からないならなぜ聞かないのか?」「なぜこんなに仕事を抱えてしまうのか」と首を傾げられることになります。

2-3.話を聞くのが苦手で言い訳が多い

承認欲求が強い部下は、他者の話を聞くのが苦手です。なぜなら、「自分がどう見られているか」や「自分が正しく評価されているかどうか」が気になり、注意力が散漫になることが多いからです。

説明をきちんと聞かずにミスを連発する

何度教えても簡単な仕事が覚えられない

話を最後まで聞かない

これだけでも十分困ってしまうのですが、承認欲求が強い部下は注意されると、「でも」「しかし」「だって」と言い訳をするのが特徴的です。

「聞いていなかった」「知らなかった」などと自分を正当化するために、メンバーの怒りをかったり、職場の雰囲気を悪くしたりします。

2-4.何事も自分に都合よく解釈する

物事を都合よく歪曲して捉えるのも、承認欲求が強い部下の特徴に該当します。

判断基準があくまで自分という主観になるため、指示の解釈を間違ってトラブルに発展することもあります。

例えば、部署内で日報提出がルールとなっている中、未提出の部下がいるとします。

この部下に「日報を提出するように」と指示をしたところ、指示をした日のみ日報を提出しました。

なぜ毎日日報を提出しないのか聞くと「毎日提出と指示されていないので、言われた日だけで良いと思った」と回答。

上司の立場からすれば、「少し考えたら分かるだろう」「言われなくても分かるはず」と腹立たしいことこの上ないのですが、承認欲求が強い部下は指示を独自のフィルターを通して、自分に都合よく歪曲してとらえる傾向があります。

業務上でトラブルがあった場合に、自分の言動を顧みることなく、「上司の指示が的確じゃなかったから」「上司の指導が悪い」などと他人のせいに側面も併せ持っているので厄介です。

2-5.他者をよく褒める

承認欲求が強い人は、他者をよく褒めます。それは相手を評価しているというよりも、自分を評価して欲しいという感情に基づくものです。

相手を褒めることで、自分の評価を上げたい

自分のことも褒めて欲しい

という気持ちが根底にあり、他者を理解しているわけではありません。

ですから、時として過剰とも思える褒め方をします。

他者に対して、その人の能力や成果よりも極端に高すぎる評価をする人は承認欲求が強い可能性があります。

2-6.他者に対して上から目線で接する

承認欲求が強い部下の中には、評論家ポジションで「そのやり方はダメ」などと否定的な意見を連発する人がいます。

これは、「自分は何でも知っている」「自分は仕事ができる」というアピールです。

チームのメンバーよりも自分が上位でありたいという気持ちが強く、周囲を下に見ることで自分の自信を保とうとする傾向があります。

年上の部下の中には、

年下の上司を役職で呼ばず、君付けで呼ぶ

敬語を使わない

ことで、年下上司に上から目線で接することもあるでしょう。

そのほか、

学歴をアピールする

武勇伝を披露したがる

という特徴がある部下も、承認欲求の強さの表れと考えられます。

3.上司が部下の承認欲求を満たさないといけない3つの理由

承認欲求が強い部下を持つと上司は苦労します。

腹が立ったり、情けなくなったりと感情が揺さぶられることもあるでしょう。

しかし、承認欲求が強い部下は決してダメな社員ではありません。

承認欲求が強いということは、「能力を高めたい」という気持ちの表れです。

強すぎる承認欲求に捉われ、困った言動に出る部下も、自分自身をコントロールできずに苦しんでいると考えられます。

そして、彼らは例外的なケースではありません。

誰でも取り巻く環境やほんの些細なきっかけで承認欲求が強くなり、コントロール不能になる恐れがあるのです。

承認欲求が強い部下に対して、救いの手を差し伸べられるのは、職場では上司しかいません。

上司は部下の長所、努力、貢献を見出し、適切に対処することで、彼らが持つ本来の能力を発揮させることが出来るでしょう。

上司の対処次第で、組織にとってかけがえのない人材になることがあるのです。

この章では、なぜ上司が部下の承認欲求を満たさなければならないのかを解説していきます。

3-1.理由「承認欲求が強い=悪い」ではない

承認欲求が強い部下は、「扱いが大変」「面倒くさい人」というレッテルを貼られがちです。

しかし、実は承認欲求が強いことは悪いことではありません。

問題なのは、承認欲求が強すぎることと、承認欲求を満たせないことです。

承認欲求は「自分のことを認めて欲しい」という欲望です。

自分のことを認めて欲しいという思いは、何事も前向きに取り組み、努力することにつながります。

承認欲求が強い部下ほど、「伸びしろがある」とも言えるのです。

3-2.理由承認欲求を満たすことができれば、モチベーション向上につながる

誰でも自分の頑張りや貢献が認められると嬉しいものです。

どんなに大変な仕事でも努力が実を結び認められると、「次はもっと頑張ろう!」と意欲が高まります。

承認欲求が強い部下は、

「もっと責任のある仕事を任されたい」

「スキルアップしたら昇給して欲しい」

などの欲求を叶えるために努力や工夫を積み上げます。

承認を勝ち取るための頑張りが認められると、喜びはひとしお!

部下にとって、上司に褒められることは特に嬉しいことのひとつですから、上司の目に留まる働きをした自分を誇らしく感じられることでしょう。

3-3.理由承認欲求が強い部下を放置することによる弊害を防ぐため

承認欲求が強い部下は職場で孤立しがちです。

人付き合いがうまくいかないケースが多く、放っておくことで業務に支障が出ることがあります。

承認欲求が強い部下を放置することで4つの弊害が起こる可能性があります。

弊害人間関係が悪化する

弊害仕事のミスが増える

弊害離職につながる

弊害上司に過剰なストレスがかかる

ここでは承認欲求が強い部下を放置することで起こる弊害を、1つずつ解説していきます。

3-3-1.弊害人間関係が悪化する

承認欲求が強い部下を放置することで、人間関係が悪化する恐れがあります。

上司や同僚の指示に従わず投げやりな態度を取ったり、周囲に迷惑をかけたりする人に対して、私たちはなかなか寛大になることはできません。

実際に尻ぬぐいをさせられた人にとっては、

「あいつは自分勝手なことをして迷惑だ」

「あいつとは関わりたくない!」

と不満を持つことでしょう。

そういった困った人物を放置することは、その迷惑な人物の行為を認めていることとも受け取られかねません。

きちんと対応をしない上司に対して不満を抱くメンバーも出てくるでしょう。

「真面目に働くことがバカらしい」という雰囲気が広がると、職場の士気が下がります。

3-3-2.弊害仕事のミスが増える

承認欲求の強さは、業務上にも影響を出します。

例えば、「仕事を頑張ることで認められたい」と思う部下は、他者に仕事を振ることができずに自分1人で仕事を抱え込みやすくなります。

これは自分の存在価値を仕事量と等価値ととらえることにより起こります

他者に仕事を振ると自分の存在価値がなくなる(少なくなる)と考えてしまい、どんどん苦しくなってしまうケースです。

さらに承認欲求が強い部下には「人の話を聞かない」という特徴があるため、どうしてもミスが多くなりがちです。

また、仕事を頑張る原動力が「他者に認められたい」なので、努力の方向が本質からズレているケースも見られます。頑張れば頑張るほど空回りして自滅するケースもあります。

3-3-3.弊害離職につながる

承認欲求が満たされるとモチベーション向上につながりますが、満たされないことが離職の原因となることもあります。

アメリカ企業のAchieversが行った調査によると、転職の理由として「承認不足」が44にも上りました。

従業員の65%以上が「職場で認められていると感じない」という調査結果もあり、職場での承認がいかに重要であるかが明確となりました。

承認欲求が強い部下にとって、自分を認めてくれない職場ではストレスや不満がたまるばかりです。自分を認めてくれる職場を探しに行くのも当然と言えるでしょう。

3-3-4.弊害上司自身に過剰なストレスがかかる

上司の重要な役割として部下の教育があります。

部下に対して適切な指示を出せない上司は、役割を果たしているとは言い難く、場合によっては管理責任を問われかねません。

責任感が強い上司であれば、自分の役割を果たすべく、一生懸命対処しようと頑張るでしょう。ギリギリまで頑張った結果、心身のバランスを崩してしまうこともありますので注意してください。

正しい対処法でなければ、承認欲求が強い部下に対して無意味だったり、逆に反発されたりすることがあります。

承認欲求が強い部下の対処法については次章で詳しく説明していきますね。

部下の思いを引き出しやすくするためには心理的安全性が必須!詳細はこちら

4.承認欲求の強い部下に上司がすべき対処法一覧

それでは承認欲求が強い部下にはどのように接するのが良いのでしょうか?

実は上司だからできる有効な対処法がいくつか存在します。

上司ができる対処法を一覧にすると次のようになります。

目を合わせて名前を呼ぶ

傾聴する

具体的な理由を挙げて褒める

感謝を伝える

時には厳しく叱る

それぞれについて詳しく解説していきます。

どれも今すぐに誰でも簡単に実行できることですから、明日からさっそく始めてみてください。

4-1.目を合わせて名前を呼ぶ

シンプルながら強力な承認サインとなるのが、「目を合わせて名前を呼ぶ」行為です。

「そんなの当然!」とお考えの方も多いかと思いますが、意識をしていないと、パソコン画面や資料を見ながら話しがちです。

目を見て挨拶

名前を呼ぶ

会話中は目を合わせるようにする

この3つは日常的に送れる承認のサインです。

この3つを守ると、相手は「自分のことを受け入れてくれている」「認めてくれている」と感じられるので、ぜひ実践してみてください。

4-2.傾聴する

部下の話を聞く時の姿勢も大切です。

傾聴とは、単に耳を傾けるだけでなく、心も傾けて聴くことを意味します。

傾聴は相手に満足感を与えられるため、リーダーには必須のスキルともいえるでしょう。

傾聴の具体的な方法は次の3つです。

◎目を合わせる

視線を合わせることは、「あなたを認めている」「あなたに興味がある」というアピールになります。会話中、ずっと相手の目を見ているのはお互いに気詰まりでしょうから、適度に目を見るようにするといいでしょう。

◎頷く

頷きも承認のサインです。ややオーバーリアクション気味に頷くと相手に伝わりやすく、「丁寧に受け止めてくれている」という感覚を持ってもらえます。

相手に意識を向けて注意深く聴くこと、しっかり頷くことが重要ですが、目をつぶって腕組をして頷かれると「この人はきちんと話を聞いているの?」と不安になるもの。

頷き方が悪いと逆効果になりますので注意してください。

◎相手の言葉を繰り返す

部下が口にした通りの言葉を部分的い繰り返すことも効果的です。

この時、たとえ同じ意味だったとしても別の言葉に置き換えるのはNG

気持ちを読み取りながら聞くには、相手が使った言葉をそのまま反復するのが大切です。

4-3.具体的な理由を挙げて褒める

人間は褒められることで承認欲求を満たします。

だからと言って、ただやみくもに褒めればいいというものではありません。

誰でもできる簡単な仕事で褒める

無理やり褒める

などを行うと、相手は「バカにされているのではないか?」と不快に感じます。

上手な褒め方のコツは、具体的な理由をセットにして褒めることです。

例えば、「よくやってくれた。先方も喜んでいたよ」と誰にでも当てはまる褒め方ではなく、「現場の知識が豊富な君が担当だから、先方はスムーズに作業に入れると喜んでいたよ」などと、部下個人だから褒めている(喜ばれた)という理由を挙げると、より思いが伝わるでしょう。

4-4.感謝を伝える

感謝やねぎらいの言葉を言われると、誰だって嬉しいものです。

中でも上司の一言には絶大な効果があります。

「いつも丁寧な資料を作ってくれてありがとう」

「君の頑張りにいつも助けられているよ」

そう言われてイヤな気持ちがする部下はいません。

それどころか、

「上司が自分の働きを認めてくれた」

「頑張っているところを見ていてくれた」

と予想以上の効力を発揮することでしょう。

部下にとって上司に感謝されることは成功体験です。

成功体験の積み重ねは、自己肯定感を支え、自分で自分の頑張りが認められるようになるでしょう。

┗参考:マネジメントは「叱る」より「褒める」が効果あり!その根拠とすぐ使える効果的な褒め方

4-5.時には厳しく叱る

承認欲求は褒められることで満たされますが、一方で叱られることで「自分の存在が周囲に影響を与えている」と実感できることもあります。

とはいえ、叱ると言っても頭ごなしの否定は厳禁です。

「君はだらしない人間だ」「君はいつも嘘ばかりつく」などの人格否定は絶対にやめましょう

叱るときのポイントは、

事実を指摘する

しつこく責めない

人格否定は絶対NG

です。

5.承認欲求が強い人に絶対にやってはいけない3つのこと

承認欲求が強い部下への対処法を理解したら、今度はやってはいけないことを知っておきましょう。

承認欲求が強い部下は扱い方を間違えると、職場に悪い空気をもたらすばかりか業務に差し障ります

以下の3つは承認欲求が強い部下に上司がやりがちな行為です。

一方的に叱る

自分のやり方を押しつける

仕事を与えない

この3つは承認欲求が強い部下に対して良い影響をもたらしません。

それどころか、承認欲求をこじらせたり、無気力や反発的になったりするので気をつけましょう。

それではさっそく、それぞれを詳しく解説していきます。

5-1.一方的に叱る

指示を聞かない、守らない。言い訳ばかりする。

こんな部下を持つと上司は苦労しますよね。

承認欲求が強い部下は時として、挑発的または無気力な言動を見せることがあります。

そのため、部下の言動で腹が立つということもあるでしょう。

しかし、感情的になるのはNGです。

承認欲求が強い部下に対しては、冷静に対応する必要があります。

3章で「厳しく叱ることの重要性」をお話ししましたが、事実がどうであれ一方的に叱るのはよくありません

部下によるミスで損害が出たとしても、部下の言い分や事実をしっかり確認することなく「何をやっている!」「なぜ!」などと怒鳴るのは避けましょう。

部下を追い詰めるように叱っては、挽回する気力もそがれてしまいます。

大切なのは、

失敗した事実をしっかり叱ること

原因を知って、繰り返さないようにすること

です。

くれぐれも感情的に対応するのはやめましょう。

5-2.自分のやり方を押しつける

承認欲求が強い強い部下の場合、自分の仕事のやり方にこだわりを持っていることがあります。部下なりのルールや秩序を持って業務にあたっているのに、「次回からはこのやり方をしなさい」と押しつけると、反発を招きます。

業務のやり方を否定したことで、「自分を否定された」と受け取り、ひねくれる可能性もあります。

仕事のやり方で改善すべき点がある場合は、改善する理由を明確に伝えることが大切です。

あくまで問題は「仕事のやり方である」ことをしっかり伝える必要があります。

5-3.仕事を与えない

承認欲求が強い部下に「かえって時間がかかるから」「納期に間に合わないから」などとして、仕事を与えない上司がいます。

これでは問題は解決しないばかりか、悪化する可能性があります。

承認欲求が強い部下は「自分を認めて欲しい」と願っているのに、適切な仕事が与えられないのですから、どんどんフラストレーションを貯めていくでしょう。

「上司は全然自分のことを分かっていない」

「上司は自分のことを軽んじている」

として怒り出すかもしれません。

部下の失敗を恐れて仕事を与えないのは悪手以外の何物でもありません。

とはいえ、業績や信頼にダイレクトに影響する仕事をいきなり与えるのも不安なもの。

万が一失敗してもリカバリーが可能な仕事を担当させ、どんどん仕事のレベルを上げていく方法がいいでしょう。

6.メンバーの承認欲求を満たすために組織ができること

これまでは上司ができる「部下の承認欲求の満たし方や対処法」についてご紹介しました。

いずれも確実に効果ができるものですが、中には個々人での解決が難しいケースもあります。

この場合に有効なのが、「組織全体で承認欲求を満たす」活動です。

冒頭でもお話ししたように承認欲求は誰にでもあるもの。

承認欲求の強弱に関わらず、互いに上手に満たしあうことでモチベーションが向上できます

組織全体で承認欲求を満たすには、

感謝を伝える場を設ける

業績や成果を讃える場を設ける

ことが有効です。

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出典:Unipos

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7.まとめ

承認欲求が強い部下は、どの職場にもいるものです。

承認欲求は「やる気の現表れ」ともいえますから、それ自体は悪くありません。

ただし、承認欲求が強すぎるとやる気が空回りして自滅するケースが多く、上司がうまく導いてやる必要があります。

承認欲求が強い部下には次の6つのような特徴があります。

自己アピールが強い

他人からどう思われているかを極端に気にする

言い訳が多い

何事も自分に都合よく解釈する

他者をよく褒める

他者に対して上から目線で接する

上記に該当する部下に対しては、適切な対処が必要です。

目を合わせて名前を呼ぶ

傾聴する

具体的な理由を挙げて褒める

感謝を伝える

時には厳しく叱る

承認欲求は誰もが持つ本能的な欲求です。

その強さに関係なく、全社員が持つ欲求ですから、互いが健全に満たしあうことで、活気ある組織づくりにつなげていくことができるのです。

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