
「部下の本音が聞けているか、正直自信がない…」 「1on1ミーティングが、いつの間にかただの業務報告会になっている…」
もし、このような悩みを少しでも感じているのであれば、それはリーダーとしての能力不足ではなく、リーダーシップのあり方そのものに変革が必要なサインなのかもしれません。
本記事では、部下の主体性を引き出し、形骸化した対話から脱却するための鍵となる**「アサーティブ・リーダーシップ」**について、その理論から具体的な実践方法までを網羅的に解説します。アサーションとは、相手を尊重しながら自身の意見を率直に伝えるコミュニケーションスキルです。
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「良かれと思って」が裏目に…多くの管理職が陥るコミュニケーションの罠

部下の成長を心から願い、熱心に指導やアドバイスを行う。それはリーダーとして当然の姿勢です。しかし、その「良かれと思って」の行動が、意図せず部下の主体性を奪い、本音を封じ込めてしまう「コミュニケーションの罠」**に陥っているケースが後を絶ちません。
善意からくる過剰なサポート、マイクロマネジメントに近い詳細すぎる指示は、部下の自律的な成長を阻害し、いつしか組織の活力を削いでいきます。
なぜ部下は「はい、分かりました」としか言わないのか?
1on1で問いかけても、返ってくるのは「特にありません」「はい、分かりました」という形式的な言葉ばかり。この背景には、部下が心理的安全性の欠如を感じている可能性が極めて高いです。
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「反論すれば、自分の評価が下がるのではないか?」
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「どうせ意見を言っても、否定されるだけではないか?」
-
「この場で本音を語っても、何も変わらないのではないか?」
このような諦めや恐れは、部下を主体性のない指示待ち人間に変えてしまいます。新たな挑戦を恐れ、ミスの報告が遅れ、結果としてチーム全体のパフォーマンスは静かに低下していくのです。問題は部下の意欲ではなく、リーダー自身の**「聴き方」と「問いかけ方」**にあるのかもしれません。
会議で意見が出ず、終わった後に不満が聞こえてくる理由
会議中は静まり返っていたのに、終了後にチャットツールや喫煙所で「あの決定は納得できない」といった不満が聞こえてくる。これは、リーダーが意図せず作り出してしまった**「発言しても無駄だ」という空気感**が最大の原因です。
リーダー自身にそのつもりがなくても、既に結論ありきで話を進めたり、反対意見に対して無意識に不機嫌な態度を取ったりすれば、部下は「自分の意見は歓迎されていない」と瞬時に察知します。
さらに、部下は**「反対意見が人格否定と捉えられることへの恐怖」**を抱えています。心理的安全性が低い職場では、チームと異なる意見を述べることが、能力不足や反抗のレッテルに繋がるのではないかという不安から、多くのメンバーが沈黙を選びます。公の場での発言という「ハイリスク」な行動を避け、仲間内での共感を得やすい「低リスク」な不満の共有に流れてしまうのです。これでは、建設的な議論が生まれるはずもありません。
形骸化する1on1と、深まらない信頼関係というジレンマ
部下の成長支援と信頼関係構築を目的に導入されたはずの1on1。しかし、その実態が「業務進捗の確認」や「上司からの一方的なアドバイス」の場になっていないでしょうか。
本来、1on1には以下の目的がありますが、形骸化によりこれらの目的が見失われているのが実情です。
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社員の主体性・自律性の向上
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業務内外における困りごとや悩み相談の場
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ざっくばらんなコミュニケーションの場
本来、1on1が目指すべきは**「社員の主体性・自律性の向上」や「ざっくばらんなコミュニケーション」**です。しかし、この目的が見失われると、部下は本音を語ることをやめ、当たり障りのない会話に終始します。管理職は「時間をかけているのに信頼関係が深まらない」というジレンマを抱え、部下は「やらされ感」を募らせる。双方にとって不幸な時間が繰り返されることで、組織の活力は確実に失われていきます。
これらの根本原因は、リーダーの「伝え方」と「聴き方」にある
ここまで見てきた「部下が本音を言わない」「会議で意見が出ない」「1on1が形骸化する」といった課題は、すべて根源で繋がっています。その共通の原因こそ、リーダー自身のコミュニケーションスタイルです。
部下の成長を願うあまり、話を遮って結論を急いだり、すぐに正論でアドバイスを与えたりしていないでしょうか。ある調査では、実際に、パーソル総合研究所が実施した「就労者の本音と建前に関する定量調査」によれば、**上司に対して「全く本音で話せていない」もしくは「あまり本音で話せていない」と回答した人は合計で37.9%**にものぼります。約4割の部下が、リーダーとの対話において本音を隠しているという事実は、多くの管理職にとって看過できない問題ではないでしょうか。
(出典:パーソル総合研究所「就労者の本音と建前に関する定量調査」)
重要なのは、問題の所在を部下の意欲や能力に求めるのではなく、まずリーダー自身の**「伝え方(意見表明)」と「聴き方(傾聴)」に改善の余地があるという視点を持つことです。その具体的な処方箋となるのが、次章で解説する「アサーション」**なのです。

その課題、「アサーション」で解決できます

前章で見てきた根深いコミュニケーション課題も、決して解決不可能なものではありません。その鍵を握るのが「アサーション」というスキルです。
アサーションとは、相手の意見や気持ちを尊重しつつ、自分自身の意見や感情も誠実に表明する「誠実で対等なコミュニケーション」を指します。一方的に意見を押し付けるのでもなく、相手に遠慮して我慢するのでもない。誰もが対等な立場で建設的に対話できる関係性を築くための、極めて実践的な手法です。
アサーションは、攻撃的でも受動的でもない「第3の選択肢」です。その目的は、単に自分の要求を通すことではありません。健全な人間関係を維持しながら、お互いの価値観を深く理解し合い、共に最適な問題解決を目指すこと。これからの時代のリーダーにとって、不可欠なスキルと言えるでしょう。
アサーションとは?支配でも遠慮でもない「第3のコミュニケーション」
コミュニケーションのスタイルは、大きく3つに分類できます。
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スタイル |
特徴 |
関係性への影響 |
|---|---|---|
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攻撃的(アグレッシブ) |
自分の意見を一方的に主張し、相手の意見を軽視する |
相手を支配し、関係を損ねる |
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受動的(ノン・アサーティブ) |
自分の意見を控え、相手の意見に流されやすい |
自分の権利を犠牲にし、不満をためる |
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アサーティブ |
双方の権利を尊重し、率直かつ誠実に意見を表明する |
相互理解を深め、健全な関係を築く |
アサーションは、攻撃的でも受動的でもない「第3の選択肢」です。その目的は、単に自分の要求を通すことではありません。健全な人間関係を維持しながら、お互いの価値観を深く理解し合い、共に最適な問題解決を目指すこと。これからの時代のリーダーにとって、不可欠なスキルと言えるでしょう。
あなたはどのタイプ?3つの自己表現タイプを自己診断
ご自身のコミュニケーションスタイルを客観的に把握することから始めましょう。以下のチェックリストで、直感的に「はい」「いいえ」でお答えください。
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部下へのフィードバックで、改善点と併せて貢献した点も具体的に伝えていますか?
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会議で自分の意見が多数派と異なっていても、積極的に発言しますか?
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上司や他部署からの依頼が困難な場合、状況を説明して断ることができますか?
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自分の意見を言うことで人間関係が悪くなると恐れ、発言を控えることがありますか?
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チーム内の意見対立時、自分の考えを強く主張し、相手の意見を聞き入れないことがありますか?
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自分が納得できない指示でも、反論せずに受け入れてしまうことが多いですか?
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チームの目標達成のためなら、多少強引な手段もいとわないことがありますか?
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自分の仕事量が多いと感じても、他者に助けを求めることをためらいますか?
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質問番号(「はい」の場合) |
タイプ |
傾向 |
|---|---|---|
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1, 2, 3 |
アサーティブ |
建設的な自己表現ができる傾向がある |
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4, 6, 8 |
ノンアサーティブ |
自己主張を控える傾向がある |
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5, 7 |
アグレッシブ |
攻撃的な自己主張をする傾向がある |
この診断はあくまで傾向を掴むためのものです。誰もが状況によって異なるタイプを使い分けています。次の項目から、各タイプの特徴をより深く見ていきましょう。
タイプ1:アグレッシブ(攻撃的):「俺はこう思う(お前は?)」
自分の意見や要求を一方的に主張し、相手の気持ちや権利を軽視するスタイルです。「なぜできないんだ?」「普通はこうだろう?」といった高圧的な発言で相手を支配し、物事を勝ち負けで判断する傾向があります。
このスタイルは、短期的には物事を動かす力に見えますが、長期的には部下の萎縮と指示待ち人間を生み出すだけです。チームの心理的安全性は著しく低下し、その根底には、リーダー自身の「常に正しくなければならない」という思い込みや、弱さを見せることへの恐怖が隠れていることも少なくありません。
タイプ2:ノンアサーティブ(受動的):「(自分はこう思うけど…)どう思いますか?」
相手に嫌われたくない、傷つきたくないという思いから、自分の意見や感情を後回しにするスタイルです。相手の要求を断れず、納得できない指示も受け入れてしまうため、部下からは「何を考えているかわからない」と映りがちです。
リーダー自身が不満とストレスを溜め込むだけでなく、チーム全体の議論の停滞を招きます。「波風を立てない」ことを優先するあまり、本質的な問題解決の機会を失ってしまう危険なスタイルです。
タイプ3:アサーティブ(誠実・対等):「私はこう思う。あなたはどう思う?」
自分と相手、双方の意見や感情を等しく尊重し、誠実かつ率直に対話を進めるスタイルです。その根底には**「I'm OK, You're OK」**という相互尊重の姿勢があります。
アサーティブな対話では、主語を「私」にする「I(アイ)メッセージ」が効果を発揮します。「(あなたは)なぜ報告しないんだ」ではなく、「(私は)報告がないと心配になる」と伝えることで、相手を責めることなく、こちらの状況と気持ちを誠実に伝えることができます。このスタイルこそが、建設的な対話と信頼関係の基盤を築くのです。
アサーティブなリーダーが、チームの心理的安全性を劇的に高める
リーダーがアサーティブな姿勢を示すことで、メンバーは「自分の意見を言っても人格を否定されない」「反対意見を述べても安全だ」という絶対的な安心感を得られます。これこそが、Googleの研究でも注目された「心理的安全性」の本質です。
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リーダーシップスタイル |
チームへの影響 |
|---|---|
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攻撃的 |
メンバーの萎縮を招き、意見が出にくい |
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ノンアサーティブ |
不満が蓄積されやすく、意見表明の機会が失われがち |
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アサーティブ |
建設的な意見対立、活発な議論を促進し、安心感を醸成 |
リーダーが自らアサーティブなコミュニケーションの手本を示すことで、チーム全体のエンゲージメントと生産性は飛躍的に向上し、持続的な成長が可能になります。
4.アサーションを身に付けるメリット

【シーン別】管理職のためのアサーション実践講座
ここからは、アサーションを具体的なスキルとして現場で活用するための実践的な方法をご紹介します。管理職が日常的に直面する3つのシーンで共通して活用できる最強のフレームワークが**「DESC(デスク)法」**です。
最強フレームワーク「DESC法」を使いこなす
DESC法は、伝えにくい内容であっても、感情的にならず、相手を尊重しながら明確に自分の意見を伝えるための「型」です。
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頭文字 |
ステップ名 |
内容 |
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D |
Describe(描写する) |
客観的な事実や状況、相手の行動を具体的に伝える |
|
E |
Express / Explain(表現・説明する) |
Dに対する自分の率直な気持ちや考えを「私」を主語に伝える |
|
S |
Specify / Suggest(提案する) |
相手に求める具体的な行動や、解決策、代替案を提案する |
|
C |
Choose(選択する) |
提案を受け入れた場合/入れなかった場合の結果を伝え、相手に選択を委ねる |
このフレームワークに沿って対話を構成することで、どんな相手に対しても、冷静かつ誠実なコミュニケーションが可能になります。
DESC法の4ステップと、会話を切り出す際の「枕詞」
DESC法を実践する際は、唐突に本題に入るのではなく、相手が心の準備をするための「枕詞(クッション言葉)」が極めて有効です。
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状況 |
具体的なフレーズ例 |
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会話の切り出し |
「少しお時間よろしいでしょうか?」「〇〇の件でご相談したいのですが」 |
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ポジティブな内容 |
「いつも本当に感謝しています。その上で、一点だけお願いが…」 |
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ネガティブな内容 |
「大変申し上げにくいのですが…」「お話しづらいことなのですが…」 |
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依頼時 |
「大変恐縮ですが、ご協力いただけないでしょうか」 |
ケース1:部下へのフィードバック(1on1・面談)
「関係性を壊したくない」「モチベーションを下げたくない」という思いから、本質的なフィードバックをためらっていませんか?アサーティブなフィードバックは「ダメ出し」ではなく、部下の成長を心から願う「対等なパートナー」としての対話です。
「できていないこと」を伝え、成長を促すためのアサーティブな指摘
NG例 「〇〇さんは仕事が雑だよね。もっとちゃんと確認しないとダメだよ。」 →人格を否定するような主観的な表現は、相手の反発を招くだけです。
DESC法を用いたOK例
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D(描写): 「先週提出してくれたA社向けの資料、データが豊富でとても分かりやすかったよ。ただ1点、最終ページの費用概算の数字が、前回の打ち合わせから更新されていなかったんだ。」
-
E(表現): 「もしクライアントが先に気づいていたら、私たちの信頼に関わる可能性があったと感じて、正直少しヒヤリとしたよ。」
-
S(提案): 「次回以降、最終提出の前には、ダブルチェックの意味も込めて、一度私にも共有してもらえるかな?」
-
C(選択): 「そうすれば、君も私も安心して提出できるし、プロジェクト全体の品質もさらに上がると思う。どうだろう?」
部下の「でも」「だって」を引き出さず、前向きな行動に繋げるには?
部下が反発するのは、指摘を人格への攻撃と受け止め、自己防衛本能が働くためです。この壁を越えるには、主語を「あなた」ではなく「私」にする**「I(アイ)メッセージ」が絶大な効果を発揮します。
Youメッセージ 「(あなたは)なぜ報告が遅いんだ?」 →相手を詰問し、追い詰める表現。
Iメッセージ 👍 「(私は)報告がないと、次の工程に進めず困ってしまうんだ。早めに報告をもらえると、とても助かるよ。」 →自分の状況を伝えることで、相手にプレッシャーを与えずに要望を伝えられる。
さらに、一方的に解決策を示すのではなく、「どうすれば改善できると思う?」「何か手伝えることはある?」とコーチング的な問いかけをすることで、部下は課題を「自分ごと」として捉え、主体的な行動変容へと繋がっていきます。
ケース2:チーム会議のファシリテーション
「活発な意見が出ない」「議論が深まらない」。これらの課題は、会議をトップダウンで進める非アサーティブなファシリテーションが原因です。アサーティブなファシリテーターは、参加者全員が安心して意見を表明できる**「心理的に安全な場」**を創り出すガイド役を担います。
反対意見を歓迎し、議論を深めるための問いかけ
活発な議論には、健全な意見の対立が不可欠です。会議の冒頭で**「意見と人格は別」「反対意見は人格否定ではない」**というグランドルールを明確に示しましょう。
NGな問いかけ 👎 「何か意見はありますか?…ないなら、これで進めますよ。」 →沈黙を同意とみなし、議論を打ち切ってしまう。
OKな問いかけ 👍
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「ありがとうございます。〇〇さんとは少し違う視点ですね。非常に興味深いです。具体的に、どの点に懸念を感じていますか?」
-
「あえて、この案の弱点を挙げるとしたら何でしょう?」
-
「A案の支持者が多いようですが、B案の可能性を擁護する意見も聞いてみたいです。」
反対意見が出た際は、まずその勇気と貢献に感謝を伝え、その背景を深掘りする質問を投げかけることで、議論はより本質的なものになります。
反対意見を歓迎し、議論を深めるための問いかけ
活発な議論には、健全な意見の対立が不可欠です。会議の冒頭で「意見と人格は別」「反対意見は人格否定ではない」**というグランドルールを明確に示しましょう。
NGな問いかけ 👎 「何か意見はありますか?…ないなら、これで進めますよ。」 →沈黙を同意とみなし、議論を打ち切ってしまう。
OKな問いかけ 👍
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「ありがとうございます。〇〇さんとは少し違う視点ですね。非常に興味深いです。具体的に、どの点に懸念を感じていますか?」
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「あえて、この案の弱点を挙げるとしたら何でしょう?」
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「A案の支持者が多いようですが、B案の可能性を擁護する意見も聞いてみたいです。」
反対意見が出た際は、まずその勇気と貢献に感謝を伝え、その背景を深掘りする質問を投げかけることで、議論はより本質的なものになります。
発言しないメンバーに、プレッシャーなく意見を求める方法
発言しないメンバーの背景には、「間違ったらどうしよう」という不安が潜んでいます。いきなり名指しで意見を求めると、プレッシャーでさらに萎縮させてしまいます。
発言のハードルを下げる工夫 ✨
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選択式の質問から始める: 「A案とB案なら、どちらが良いと思いますか?」
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限定的な質問をする: 「この点について、何か懸念はありますか?」
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多様な参加方法を用意する:
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2〜3人の少人数グループで意見交換(ブレイクアウトセッション)
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チャットや付箋で、文字で意見を表明してもらう
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そして最も重要なのは、どんな意見が出ても、まずは「なるほど、そういう視点もありますね」「貴重な意見をありがとう」**と肯定的に受け止める(承認する)姿勢です。この承認こそが、次の発言を促す土壌となります。
ケース3:他部署や上司との交渉・調整
上司からの指示と部下のキャパシティ、自部署の目標と他部署の依頼…。管理職は常に「板挟み」の状況にあります。感情的に反発したり、無理な要求を丸呑みしたりしては、状況は悪化する一方です。
このシーンでのアサーションの目的は、単に「No」と言うことではありません。お互いの権利を尊重し、対立を乗り越え、組織全体の利益に繋がる協力関係を築くことです。
チームの状況を伝え、無理な要求を角を立てずに断る伝え方
単に「できません」と拒否するのではなく、DESC法を用いて「なぜ難しいのか」を客観的かつ誠実に伝えましょう。
会話例:
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D(描写): 「ご依頼いただいたC案件の件ですが、現在私たちのチームは、今月末が納期のA案件にリソースを集中させている状況です。」
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E(表現): 「正直なところ、今このタイミングでお引き受けすると、どちらの品質も中途半端になってしまい、かえってご迷惑をおかけする可能性が高いと(私は)懸念しています。」
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S(提案): 「もし可能であれば、納期を来月の15日までお待ちいただくことは可能でしょうか?あるいは、今回のご依頼の一部だけでも、そちらの部署でご担当いただくことはできますでしょうか?」
このように、客観的な事実とIメッセージで状況を伝え、代替案や条件を提示することで、単なる拒否ではなく、建設的な問題解決の対話へと転換できます。
自分の意見と、相手の意見の「共通の目的」を見つける
意見が対立しているように見えても、その根底には「プロジェクトを成功させたい」といった共通の目的が隠れているはずです。交渉を「勝ち負け」ではなく、共通の目的を達成するための「協働作業」と捉え直しましょう。
有効な問いかけ: 「その施策で、最終的に何を達成したいのですか?」 このように、相手の意見の背景にある「Why(なぜそう考えるのか?)」を深掘りする質問が極めて有効です。相手の真の狙いを理解することで、お互いが納得できる第3の案が見つかる可能性が高まります。「私たちのゴールは〇〇ですよね」と共通の目的を言語化し、対立構造から共同作業へと視点を転換させましょう。
【Unipos独自理論】アサーションだけでは不十分。なぜ「承認」が最強の武器になるのか

アサーション(伝える力)と承認(聴く・認める力)。この2つのスキルを両輪で使いこなせて初めて、リーダーはチームのポテンシャルを最大限に引き出すことができます。
ここでは、あなたの現在のリーダーシップスタイルを可視化するための、本記事独自のフレームワーク「アサーティブ・コミュニケーションマトリクス」をご紹介します。ご自身が4つの象限のどこに位置するか、診断してみてください。
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アサーション(伝える力)が低い |
アサーション(伝える力)が高い |
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承認(聴く・認める力)が高い |
象限①:疲弊する良い人 部下の話は親身に聞くが、NOが言えず仕事を抱え込みがち。部下からは好かれますが、チームを成果に導くことは困難です。 |
象限④:信頼されるリーダー 言うべきことは誠実に伝え、相手の貢献を心から承認する。心理的安全性が高く、成果も出す理想の状態。(太陽) |
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承認(聴く・認める力)が低い |
象限③:無関心な傍観者 自己主張もせず、他者への関心も薄い。チームは停滞し、エンゲージメントは最低の状態に陥ります。 |
象限②:孤立する独裁者 正論で人を動かそうとしますが、部下の意見には耳を貸さない。短期的には成果が出ても、部下は疲弊し離れていきます。(北風) |
成功事例:株式会社明電舎(部門間の壁を「承認」の文化で打破し、eNPSが1年で4.8pt向上)
【課題】 100年以上の歴史を持つ重電メーカーである同社は、事業部制に起因する縦割り意識が根強く、部門を越えたコミュニケーションの不足が長年の経営課題となっていました。特に若手社員からは「他部署の業務内容や貢献が見えにくく、組織としての一体感を感じづらい」という声が上がっており、エンゲージメント向上が急務でした。
【取り組み】 同社は課題解決のため、Uniposをコミュニケーション活性化の基盤として導入しました。単なるツール導入に終わらせず、経営トップが自ら活用をコミットし、人事部門が事務局として全社的な推進役を担いました。事務局は、利用が低迷する部署に対して個別勉強会を実施するなど、「おせっかい」と称するほどの積極的かつ丁寧なサポートを展開しました。これにより、称賛・感謝を伝え合う文化を一方的な押し付けではなく、現場に寄り添う形で浸透させていきました。
【成果】 導入から1年で、従業員エンゲージメントの重要指標であるeNPS(従業員推奨度)は4.8ポイントの向上を達成しました。Unipos上での投稿を通じて、これまで可視化されにくかった他部署の業務内容や個々の社員の貢献が全社で共有されるようになりました。結果として、部門間の心理的な壁が低減し、組織の一体感が醸成されるという具体的な成果に繋がっています。
「正しい指摘」だけでは、人の心は動かない
イソップ寓話の「北風と太陽」が示すように、人は強制的な力(北風=正論)よりも、自ら動きたくなるような温かい働きかけ(太陽=共感・承認)によって行動を変えるものです。
部下が指摘を受け入れるかどうかは、その内容(What)が正しいかだけでなく、伝え手である上司との間にどれほどの信頼関係があるか(Who)に大きく依存します。この信頼関係の量を、私たちは「信頼残高」と呼んでいます。
アサーティブな伝え方を意識しても、日頃の信頼残高がマイナスでは、その言葉は単なる「冷たい正論」として弾かれてしまいます。「正しい指摘」という**“引き出し”をするためには、日頃からの「承認」という“預け入れ”**が不可欠なのです。
