テレワークで成功するチームに必須!心理的安全性とは?

場所や時間にとらわれない、柔軟な働き方のことを意味する「テレワーク」。

一口に「テレワーク」とはいっても、その種類はさまざまですが、自宅を就業場所とする「在宅勤務」の形態が最もイメージしやすいのではないでしょうか。

東京都が定期的に行っている「テレワーク実施率調査」の、2021年11月度調査によると、従業員30人以上の都内企業のテレワーク実施率は57.2%という結果でした。

特に、従業員300人以上の企業では86.7%と、実施率が9割に近い結果となっているとともに、週5日テレワークを実施しているケースも2割程度あるのが現状です。

加えて、東京都が推進している半日・時間単位のテレワーク(=テレハーフ)の活用も進んでいることが伺えます。

緊急事態宣言期間が過ぎた現在でも、多くの企業がテレワークを導入・継続しており、まだ実施できていない企業にとっても、今後のテレワーク導入の追い風になると想定されます。

そのような状況を踏まえ本記事では、テレワークにより表面化したコミュニケーションの課題とともに、テレワークでもチームとして成功するために重要な要素「心理的安全性」について解説します。

テレワークでのコミュニケーションにまつわる課題にお悩みの方や、心理的安全性を高める具体的な方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

参考:テレワークとは|一般社団法人日本テレワーク協会

参考:テレワーク実施率調査結果|東京都

1.テレワークにより表面化したコミュニケーションの課題

2020年10月2日から6日まで、全国の3,087名(会社員・公務員・経営者・役員)を対象に、サイボウズチームワーク総研が実施した「テレワークでの職場内コミュニケーション」についての調査では、次のような結果が出ています。

・ 在宅勤務時のコミュニケーション手段は、「E-mail」が8割、「電話」が7割

・ 職場の人とコミュニケーションをとる時間は、「業務に関わるもの(社内会議や打ち合わせ、申し送りなど)」では1日あたり「30分未満(0分含む)」が6割、「業務に直接関わらないもの(雑談、ランチ、交流会など)」では「0分」が4割

・ 在宅勤務時に「コミュニケーションがしにくい」と感じる人は5割を超え、20代では6割を超える

・ 在宅勤務により、職場の人が「何をしているかわかりにくい」「話さない人が増えた」と感じる人は6割、「意見・提案(アドバイス)をしにくくなった」「協力し合うことが減った」と感じる人は4割

・ コミュニケーションの場面では、「ちょっとした会話やランチ・飲み会での交流が減る」人が8割

上記の結果を踏まえつつ、テレワークにより表面化したコミュニケーションの課題について、以下で詳しく解説します。

参考:テレワークでの職場内コミュニケーション 「業務の話」は1日あたり「30分未満(0分含)」6割 「業務以外」は「0分」4割 | サイボウズチームワーク総研

相談するタイミングがつかめない

オフィスで仕事をする場合は、目の前に同僚や先輩、上司がいるため、相手の忙しさなどを伺いつつ気軽に相談することができます。

しかし、テレワークでは、相手が今何をしているかが見えにくく、「今相談したら迷惑になるのでは……」「ちょっとした相談にわざわざ時間を割いてもらうのは申し訳ない」「これくらい自分でわからないのかと思われないだろうか」などと思いやすくなりがちです。

相談をするかしないか、どのタイミングなら良さそうかと悩むだけで時間が経過してしまい、業務効率の低下にまで影響する可能性もあります。

意思疎通が図りにくい

テレワークでは、ミーティングツールなどを活用しない限り、相手と直接対面することはなく、おもにメールや電話を介してコミュニケーションをとります。

そのため、顔を合わせていればわかる仕草や表情、雰囲気などから読み取れる情報も読み取りにくくなり、相手の反応がわからず不安になる場面も多いでしょう。

意思疎通が図りにくいことで、例えば、以下のような場面が生じます。

・ チームで進めているプロジェクトについて、メンバー間の連携は取れているのか、進捗状況に問題はないのか不安になる

・ 上司から部下へ指示を出したときや、先輩から後輩へアドバイスをしたときに、部下・後輩に的確に内容が伝わっているのか不安になる

さらに、個人差はありますが、テレワークでは相手から返事がなかなかこないといったケースもあるでしょう。

相手の反応がわからない・返事もなかなかこないとなると、さらに意思疎通が図りにくくなり、チームワークにも悪い影響を及ぼしかねません。

業務に直接関係する話題以外は持ち出しにくい

メンバーが同じ空間にいれば、業務に直接関係しない話題が生まれることも多くあるでしょう。特にチームワークの良いチームでは、雑談も大切なコミュニケーションとして、積極的に取り入れています。

しかし、テレワークでは、業務に直接関係する話題でさえ持ち出しにくく、雑談のような気軽なコミュニケーションは一層難しくなります。

先にご紹介した調査結果でも、業務に関わる話題は1日あたり「30分未満(0分含む)」と回答した人が6割、業務に直接関わらない話題は1日あたり「0分」と回答した人が4割にも上っています。

2.テレワークでも機能するチームにするには

前の章で解説した “コミュニケーションの課題” を解決し、テレワークでも機能するチームにするためにはどうしたら良いのでしょうか。

「円滑なコミュニケーションをサポートするためのツールを導入すれば良いのでは?」と考えるかもしれません。

しかし、ツールをただ導入するだけでは、根本的な課題が解決されず、チームが効果的に機能することはないでしょう。

ツールを導入する前に、メンバーが対人関係を気にせずに意見や考えを言い合えるような、チームの土台をつくる必要があります。

それが「心理的安全性」です。

次の章から、心理的安全性の概要と、テレワーク環境で機能・成功するチームにするためのポイントについて理解していきましょう。

3.心理的安全性とは

まずは、心理的安全性の概要と、心理的安全性という概念が生まれた背景、心理的安全性が注目されるようになったきっかけについて解説します。

心理的安全性の概要

「心理的安全性(psychological safety)」とは、チームや組織のなかで、従業員が「相手の反応を懸念することなく、自分の能力や個性を安心して発揮できる」という状態を表す心理学用語です。

少し噛み砕けば「メンバー一人ひとりがが自分らしくいられる」「誰でも遠慮なく発言できる雰囲気がある」という組織の状態ともいえます。

心理的安全性の概念は、組織行動学の研究者であるエイミー・C・エドモンドソン氏によって初めて提唱されました。

エドモンドソン教授は、心理的安全性を「このチームのなかでは対人関係のリスクをとっても安全だ、とメンバーに共有されている思い」と定義しています。

関連記事:心理的安全性とは?高める5つの方法とメリットを解説

心理的安全性の概念が生まれた背景

心理的安全性という概念が生まれた背景には、「チーム」のあり方が変化していることが挙げられます。

これまでの「チーム」は、文化が似通ったメンバーが、物理的に同じ場所で同じ時間を過ごし、徐々に信頼関係を築いていく集団でした。

しかし、近年の「チーム」は、プロジェクトごとにメンバーが招集され、目的が達成されれば解散するという、流動的な集団となりつつあります。

文化も異なり、物理的な距離もあり、時間をかけて信頼関係を築くことも難しい環境のなかで、成功するチームであるために必要なのが心理的安全性なのです。

心理的安全性が注目されるようになったきっかけ

多くの企業が心理的安全性に注目するようになったのは、2012年から開始された、米Google社の「プロジェクト・アリストテレス」と呼ばれるプロジェクトが大きなきっかけです。

Google社内のリサーチチームが、業績の高いチームと低いチームを含む合計180チームを選定し、チームメンバーの年齢・性別やメンバー同士の関係性などが、チームの生産性にどのように影響するのかを大規模に調査・分析しました。

その結果として、「誰がチームのメンバーであるかよりも、チームメンバーがどのように協力し合っているかが重要である」とし、心理的安全性は成功するチームに最も欠かせない要素であることを示しました。

この研究結果によって、心理的安全性とチームの生産性との関係が明らかになり、心理的安全性という言葉が世界中に知れ渡るようになったのです。

参考:Google re:Work – ガイド: 「効果的なチームとは何か」を知る

4.心理的安全性を高めるには

心理的安全性を高める方法として、次の4つのポイントが挙げられます。

・ まずは反応する習慣をつける

・ ストロークを意識した声掛けをする

・ 意思決定には他者の意見や考えを求める

・ 1on1を実施する

それぞれのポイントについて、以下で確認していきましょう。

まずは“反応する”習慣をつける

顔が見えないテレワークでは、相手の反応がわかりにくい・意思疎通が図りにくいといった課題が生じます。

そこで大切なのが、まずはとにかく「反応する」という習慣をつけることです。

その際、「反応すること」と「返信すること」を同一に考えないのがポイントです。

例えば、メンバーから質問を受けた際に、すぐにフィードバックはできなくても、まずはそのメールやチャットの文面を「見ました」という意思表示をします。

フィードバックができそうなタイミングが見通せているなら、「◯◯ごろに再度連絡します」と併せて伝えるとよいでしょう。

もし「きちんとフィードバックできる状態になってから連絡しよう」と考えてしまうと、反応が遅れ、質問したメンバーは、そもそもメールやチャットは見てくれているのか、忙しいのに迷惑だと思われたのではないだろうかと、不安な時間が続いてしまいます。

まずは反応することをチームで共有・習慣づけることで、不必要な気遣いのないコミュニケーションがとれるようになります。

参考:【石井遼介】うまくいくテレワークに絶対必要な「心理的安全性」とは?

肯定的ストロークを意識した声掛けをする

「ストローク(Stroke)」とは、コミュニケーションから得られる精神的な刺激のことで、受け手の感じ方によって「肯定的ストローク」と「否定的ストローク」に分類されます。

例えば、相手を直接褒めたり、正しく評価したり、大切な仕事を任せるなど相手を信頼していることが伝わるような行動をとったりすることが、肯定的ストロークに該当します。

肯定的ストロークを受けた相手は、存在や価値を認められて “心の栄養” を得ることができます。

一方で、悪口をいったり、嘲笑したりといった否定的ストロークの多いチームでは、メンバーは萎縮してしまい、本来の能力や個性を発揮することは難しくなってしまうでしょう。

心理的安全性を高めるには、肯定的ストロークを意識した声掛けを積極的に行うことが重要です。

テレワーク中でも、お互いに感謝のメッセージを送り合う、些細なことでも褒め合うなど、相手のプラスになる働きかけをすることを意識するとよいでしょう。

意思決定には他者の意見や考えを求める

意思決定を下す際には、自分一人で決断するのではなく、積極的にチームに相談するようにしましょう。

メンバーそれぞれの意見や考えを求めることで、メンバーは自分が意思決定プロセスに携われていると感じられるようになります。

そのことは、メンバーのモチベーション向上、チームの心理的安全性の構築に寄与するでしょう。

また、意見や考えを発言してくれたメンバーには、その姿勢に対して感謝の言葉をかけることで、仮に最終的には採用されない意見・考えだとしても、自分らしく発言して大丈夫だという環境を作ることができます。

さらに、メンバーの意見を踏まえた意思決定を下したら、彼らの意見がどのように考慮され、反映されたのかをメンバーに説明する機会を設けるようにしましょう。

1on1を実施する

心理的安全性を高めるには「1on1(ワン・オン・ワン)」も有効です。

1on1とは、上司と部下が1対1で行う、定期的なミーティングのことを指します。

1on1を通じて、上司は部下が抱えている悩みや今後のビジョンなどを理解し、部下の成長を促進・支援していきます。

チームミーティングなどの複数名で行うミーティングとは異なり、1on1は上司と部下2人だけで行うため、1on1の場を設けること自体が「あなたを大切にしている」というメッセージになるでしょう。

加えて、1on1では、上司が意見を押し付けるのではなく、上司が部下の発言に耳を傾けることになります。

メンバーの「自分の話をきちんと聴いてもらえている」「自分の考えを受け入れてくれている」という実感が積み上がり、心理的安全性の向上につながるでしょう。

Google社でも、マネージャーはすべてのチームメンバーと週に1回の1on1を実施しています。

心理的安全性の高め方を専門家である石井氏が徹底解説!

5.まとめ

今回は、テレワークにより表面化したコミュニケーションの課題を踏まえ、テレワークでも機能・成功するチームを目指すために重要な要素「心理的安全性」について解説しました。

あらためて、記事の内容を振り返ってみましょう。

・テレワークにより表面化したコミュニケーションの課題は、次の3点

 ・相談するタイミングがつかめない

 ・意思疎通が図りにくい

 ・業務に直接関係する話題以外は持ち出しにくい

・心理的安全性とは、相手の反応を懸念することなく、チームや組織のなかで自分の能力や個性を安心して発揮できる状態を表す言葉

・心理的安全性の概念は、組織行動学の研究者であるエイミー・C・エドモンドソン氏が初めて提唱

・心理的安全性の概念が生まれた背景には、チームの変化がある

・米Google社の調査結果から、心理的安全性の高いチームは生産性が高いことがわかっている

・心理的安全性を高めるためには、次のポイントを意識する

 ・まずは反応する習慣をつける

 ・肯定的ストロークを意識した声掛けをする

 ・意思決定には他者の意見や考えを求める

 ・1on1を実施する

本記事を参考に、できることから心理的安全性を高める取り組みを実践し、生産性の高いチームを目指しましょう。

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