
「人材育成がなかなか進まない」
「優秀な人材を育成するには、どうしたらいいのだろうか」
あなたは今このようにお悩みではありませんか?
人材育成については、実際多くの人が悩んでおり、厚生労働省の「人材育成の現状と課題 第3節」では、以下の4つの課題が明らかになりました。
多くの企業が抱える課題をさらに階層別に見ていくと、以下のようになります。
人材育成をスムーズに進めるためには、これらの課題をしっかり理解し、適切に対処することが重要です。
そこで当記事では、
- 厚生労働省の資料に基づいた人材育成の4大課題とそれぞれの解決策
- 階層別の育成課題に対する具体的な解決策
- 階層別の人材育成における注意点
を詳しく解説します。
人材育成の課題と解決策は、人材育成を円滑に進めるために必要不可欠な情報です。
階層別に課題や解決策をまとめていますので、該当する部分から読み進めてくださいね。
1.データから分かる人材育成における4大課題
本章では、厚生労働省が公開している「人材育成の現状と課題 第3節」のデータから、多くの企業が抱えている人材育成の課題を読み解きます。
このデータによると、多くの企業が抱えている課題は主に下記の4つであることが分かりました。
それぞれの課題について、次項より詳しく解説していきます。
早く解決策を知りたい方は、「2.人材育成における4大課題の解決策」へ進んでくださいね。
1-1.課題①業務が多忙で育成にかける時間がない
1つ目の課題は「業務が多忙で育成にかける時間がない」ことです。
通常、人材育成は日常の業務と並行して行われます。
上司(育成者)はプレイングマネージャーとして自分の課題を持ちながら職場を管理することもあり、多忙を極めているものです。
「仕事が忙しいから、部下を育成する時間が取れない」との声はよく耳にしますよね。
特に現場で業務指導を行うOJTの場合、
- 業績確保のための営業確保が忙しい
- 納期までの進捗が遅延している
- イレギュラーなトラブルが発生した
などを理由に「育成は後回し」「育成がいったんストップ」となりがちです。
これではいつまでたっても人材は育ちません。
この課題は、
- 業務中に育成指導を行う
- しっかりと練られた人材育成計画書を活用する
ことで解決することができます。
具体的な解決策と進め方については2章の「解決策①業務中に育成指導する」「解決策②しっかりと練られた人材育成計画書を活用する」で解説していきます。
1-2.課題②育成者の「育成スキル」が不足している
2つ目の課題は「育成者の『育成スキル』が不足している」ことです。
はじめから「育成スキル」が高い人は、残念ながらほとんどいません。
これについては、そもそも「教える行為」自体がとても難しいということを理解しておく必要があります。
業務のやり方を例に考えていきましょう。
例えば売上表の書き方を教える場合は、以下のようなステップが一般的です。
上記の場合、④の「1人で売上表を作成できる」ようになって、初めて「売上表のやり方」を教えたことになります。
育成者は相手のレベルや理解度などに応じて、教え方や教える内容を変えなければいけません。
人材育成における「育成スキル」は業務のやり方含め、下記の3つが必要となります。
- 業務のやり方を教える
- 育成ターゲットのモチベーションを管理する
- 育成ターゲットを良い方向へ導く
通常業務と並行してこれらを行うのですから、一朝一夕のスキルでは到底対応ができなくなるのも頷けるでしょう。
育成スキル不足でも、「信頼関係を築くこと」ができれば、この課題を解決することができます。
具体的な解決策については、「解決策③信頼関係を築く」をご覧ください。
1-3.課題③育成される側の意欲が低い
3つ目の課題は、「育成される側の意欲が低い」ことです。
「どんなに熱心に教えても、全然響いていないようだ」
「業務に対するモチベーションが低い」
このような場合、「どうしてこちらの熱意が伝わらないのか」と落胆したくもなりますよね。
先ほどの育成スキルの部分でもお話ししたように、育成ターゲットのやる気を引き出すのは、育成者である上司の役目です。
「そこまで面倒をみないといけないのか……」と嘆息交じりの声が聞こえてきそうですが、残念ながら答えはイエスです。上司は部下を「より良い方向へ導く」必要があります。
上司が考える以上に、部下は上司の言動に影響を受けるもの。
実は、上司の何気ない一言が部下のエネルギーを奪ったり引き出したりするのです。
この課題は、
①部下が意欲を高める働きがけ
②部下のモチベーションを上げる方法
を知ることで解決することができます。
具体的な解決策については、「解決策④部下が意欲を高める働きがけを行う」「解決策⑤部下のモチベーションを上げる」をご覧ください。
1-4.課題④育成予算がない
最後となる4つ目の課題は「育成予算がない」ことです。
人材育成にはどうしてもコストがかかります。
例えば、外部の専門家に研修を依頼する場合は講師代が必要です。
大人数を一度に集める場合には会場代や資料代、設備利用費などが発生します。
業務中に育成を行うOJT以外の場合は、間接的な人的コストがかかります。
いくらコストがかかっても、それに見合うまたは期待以上の効果があれば、組織は人材育成のために予算を確保するでしょう。
しかし、実際にはある1つの研修が組織にどのような貢献をしているのかは分かりません。
人材育成と業績や生産性の向上などの間に、直接的な因果関係を見出すのは非常に困難です。
このように人材育成はコストがかかる一方で、
- 育成に時間がかかる
- 成果が見えにくい
ため、「意味がない」「即戦力を採用すればいい」と考える企業もあります。
この問題の解決策は、
①費用をかけない育成方法を導入する
②育成プロセス、育成実績を提示して予算を確保する
の2つです。
それぞれ「解決策⑥費用をかけない育成方法を導入する」「解決策⑦育成プロセス、育成実績を提示して予算を確保する」で詳しく解説していきます。
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2.人材育成における4大課題の解決策
人材育成の課題が分かったら、さっそく解決策への理解を深めましょう。
4大課題の解決策は以下の通りです。
課題 |
解決策 |
育成時間がない |
|
育成スキルがない |
|
意欲がない |
|
予算がない |
それぞれ具体的に解説していますので、気になるところから読み進めてくださいね。
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2-1.解決策①業務中に育成指導する
解決策の1つ目は「業務中に育成指導する」ことです。
従来は、多くの人が【通常の業務+部下の育成】ととらえており、部下の育成指導のためには業務時間+αの時間の確保が必要と考えていました。
しかし、わざわざ「部下の育成時間」を確保しようとすると、いくら時間があっても足りません。
ですから、部下と接するすべての時間が育成指導のチャンスと考えましょう。
例えば、部下から報告を受ける場面では下記のような対応が一般的ですよね。
育成指導の意識なし |
|
育成指導の意識を持つと、上記に加えて、部下に適した対応を取る必要があります。
スタンドプレーに走りがち |
|
ケアレスミスが多い |
|
コミュニケーションが取れない |
|
これらの対応は業務中に一言二言盛り込んでいく程度の指導になるため、隙間時間で十分対応ができます。
このように、上司が部下に対して意識を向けることで、部下の行動改善につなげることができるのです。
とはいえ、これだけでは育成は不十分です。さらに踏み込んだ育成を行うには、「いかに効率良く育成するか」がポイントとなります。
この問題の解決策は次項「解決策②しっかりと練られた人材育成計画書を活用する」で詳しく解説していきます。
2-2.解決策②しっかりと練られた人材育成計画書を活用する
2つ目の解決策は、「しっかりと練られた人材育成計画書を活用する」ことです。
なぜなら、よく練られた人材育成書には「効率良く人材育成する3つのポイント」が含まれているからです。
【効率良く人材育成する3つのポイント】
- その業務はなぜあるのか
- その業務はなぜ必要なのか
- その業務を行うことで、どのような結果になるのか
この3つをしっかり理解させるだけで、育成ターゲットは「自分が何をすべきか」を判断し、行動に移せるようになります。
人材育成計画がしっかり共有されていると、育成ターゲットは、
- やるべき業務
- 業務の目的
- 求められている業務の結果
を理解した上で業務に携わるため、育成者が期待するパフォーマンスを上げることができるでしょう。
つまり、
「自社製品について自分で勉強しておきなさい」
「分からない点があれば質問して、問題なければそのまま進めて」
と指示を出すだけで、育成ターゲットは「あなたが望む業務」を遂行できるようになるのです。
反対に人材育成計画書が練られていなかったり、具体的でない場合は、逐一細かな指示を出さなければいけません。
これでは業務多忙になると、育成が完全にストップしてしまいますよね。
このほか、人材育成計画書には次のような利点があります。
人材育成計画の立て方や計画書の作成については、「 人材育成計画に必要な4つの要素と計画書に役立つ情報!テンプレあり 」の記事で詳しく解説していますので、お役立てください。
2-3.解決策③信頼関係を築く
解決策の3つ目は「信頼関係を築く」ことです。
部下との間に信頼関係が構築されていれば、育成スキル不足を十分補うことができます。
なぜなら、他者から指導を受ける時、「何を教わるか」「どうやって教わるか」よりも、「誰に教わるか」が大きなウエイトを占めるからです。
もしあなたが指示を受ける側の立場なら、
(A)すでに信頼関係があり、尊敬している上司の指示
(B)信頼関係がなく、あまり尊敬していない上司の指示
すんなりと指示に従えるのは、どちらでしょうか?
おそらく多くの人が(A)の信頼関係がある上司を選択するはずです。
信頼できない人の場合「従っても大丈夫だろうか?」「やり方が間違っている可能性もあるのでは?」と疑心暗鬼になり、取り組みに集中ができません。
それでは、部下との信頼関係はどのように築くのでしょうか?
今すぐ実践できる3つのポイントは次の通りです。
【部下の信頼を獲得するための3つのポイント】 |
①業務や人に対して誠実である 業務や人に対して、常に誠実であることを心がけましょう。とはいっても、媚びを売る必要はありません。誠実であるということは、当たり前のことを当たり前に取り組むことです。 |
②ポジティブである ポジティブであることは非常に重要です。 |
③コミュニケーションをしっかり取る 信頼関係を構築するためには、コミュニケーションは欠かせません。
だけでも十分です。 「自分のことをきちんと見てくれている」と部下が感じれば、自然とあなたに対して信頼感を持つでしょう。 |
このように育成者に「人材育成のスキル」が不足していたとしても、育成者と育成ターゲットの間に信頼関係が成立していれば、育成は十分可能になります。
2-4.解決策④部下が意欲を高める働きがけを行う
4つ目の解決策は「部下が意欲を高める働きがけを行う」ことです。
「働きがけ」は上司の言動と考えていただくと分かりやすいでしょう。
上司の働きがけがプラスに作用すると、部下の意欲は高まり、マイナスに作用すると部下は意欲をなくします。
それぞれの代表的な例は下記の通りです。
意欲を高める代表的な働きかけ |
意欲をなくす代表的な働きかけ |
|
|
育成ターゲットが意欲をなくすと、上司の顔色をうかがいながら仕事をするようになります。
業務に対する積極性が失われ、持ち味が発揮できなくなるかもしれません。
それでは部下が意欲を出す時とは、どのような時なのでしょうか?
部下が意欲を出す時と意欲をなくす時の具体例をご紹介します。
【部下が意欲を出す時】
|
【部下が意欲をなくす時】
|
もちろん、上記以外にも部下自身のプライベートな問題から業務意欲が低下することがあります。
「部下のモチベーションの上げ方」には万人に適応する正解はありません。
部下のモチベーションの上げ方については、次項で詳しく解説していきます。
2-5.解決策⑤部下のモチベーションを上げる
5つ目の解決策は「部下のモチベーションを上げる」ことです。
部下のモチベーションを上げるのも下げるのも、上司の対応が大きく影響します。
育成者と育成ターゲットの間に年代差があると、自分事のようにとらえるのは難しいもの。
しかし、育成ターゲットに寄り添って考えることで、自然と取るべき対応が見えてきます。
一般的に仕事のモチベーションが上がらない場合の理由としては次のことが考えられます。
(A)仕事がつまらない(興味がない、キャリアアップにつながらない)
(B)プライベートで問題を抱えている
(A)の場合は、
- 育成ターゲットが行う業務の必要性や意味
- 業務を達成することで得られるスキルやキャリア
- 育成ターゲットの働きがチームや組織にもたらす利益
について十分理解させる必要があるでしょう。
(B)の場合は、
- 育成ターゲットの話を傾聴する
- やるべき業務をルーチン化する
- 効果的に褒める
ことが有効です。
プライベートな悩みに関しては、深く詮索したり、過剰な反応をするとマイナスに作用することがあります。
この場合は、どんな精神状態でも最低限の業務を行えるよう、業務のルーチン化を推進しましょう。
ルーチン化された業務をこなすことで、部下の精神状態が回復してくるのを待ちます。もちろん「いつでも相談に乗る」「いつでもサポートする」という姿勢でいることが前提ですが、「部下には自分で立ち直る力がある」と信頼することが大切です。
業務のルーチン化には、
- 精神面に左右されることなく、一定の効果を上げられる
- やるべき業務が明確になる
- やるべき業務に取り組むことで、集中できる
等のメリットがあります。
それぞれの具体的な対応例は下記の通りです。
部下への対応 |
具体例 |
傾聴 |
・きちんと向き合って話を聞く(PCや資料を見ない) |
ルーチン化 |
①やるべき業務について、段取りとペース配分を計画する |
効果的に褒める |
・「良かった点」「伸びたところ」を具体的に褒める |
こちらの記事「モチベーションを上げる具体的方法9つ|リーダーが部下へできること 」では、自分と部下のモチベーションを上げる方法が詳しく紹介されています。
ぜひお読みになって参考にしてくださいね。
2-6.解決策⑥ 費用をかけない育成方法を導入する
6つ目の解決策は、「費用をかけない育成方法を導入する」ことです。
人材育成は必ずしも費用をかければ良いというものではありません。
近年ではIT化が進んだこともあり、インターネット上で学習ができるデジタルラーニングや、テレビ電話を使用した研修も可能になっています。
デジタルラーニング |
デジタルラーニングとは、PCやタブレット、スマートフォンなどのデジタルツールを用いた学習法。 ネットワークと学習する端末さえあれば良いため、導入コストを抑えることができる。いつでもどこでも学習ができるのも魅力的。 |
テレビ電話 |
テレビ電話を使って会議や研修を行うメリットは主に4つ。
低頻度で行う会議より、高頻度で行うテレビ会議の方が、コミュニケーションエラーが起きにくいこともあり、複数の拠点を持つ企業には特におすすめ。 |
それでは、費用をかけない人材育成で成果をあげている2社の実例をご紹介します。
2-6-1.【成功事例①】株式会社栄光
少人数制の学習塾・栄光ゼミナールを運営する株式会社栄光では、講師スタッフとして大学生や大学院生が多く働いています。そのため、次のような課題を抱えていました。
①計12時間の初期研修(教室配属前の集合研修)に参加必須
②指導者側・指導される側ともに大きな負担がかかっていた
そこで同社では、課題を解決するためにe-ラーニングを導入。集合研修の4分の1をeラーニングに変更した結果、次のような成果が出ました。
- スマートフォンやタブレットで学べるため、忙しい学生の学習法として最適
- 集合研修に対する集中力アップ
- 「新人講師のスキルが上がっている」との声が各教室から届く
- トレーナーのコストを25%削減
参考:〔株式会社栄光〕研修のスリム化:研修の1/4をeラーニング化し、運用コスト25%削減 | 株式会社ライトワークス
2-6-2.【成功事例②】Sushi Kin Sdn Bhd(スシキング)
マレーシアで回転寿司などの日本食サービスを提供するスシキングでは、次の3つの課題を抱えていました。
①スタッフの能力に差がある
②新人の人材育成に時間がかかる
③マニュアルを各店舗に配布するのに時間・コストがかかる
スシキングでは上記の3つの課題を解決するために、マニュアルツールを導入し、マニュアルのペーパーレス化を実施。その結果、次のような成果が出ました。
- マニュアルの印刷代が250万から30万になり、85%のコストカットを実現
- トレーナ―の出張費やマニュアル配布にかかるコストなど、年間300万円削減
参考:導入事例 Sushi Kin Sdn Bhd(スシキング)様|Teachme Biz
このようにコストを抑えても、アイディア次第で人材育成の成果をあげることができます。
2-7.解決策⑦育成プロセス、育成実績を提示して予算を確保する
最後7つ目の解決策は、「育成プロセス、育成実績を提示して予算を確保する」ことです。
経営状況に問題はないものの、人材育成の予算を確保してもらえない場合は、「人材育成にかかった費用と成果をしっかり提示」しましょう。
予算を確保するためには、経営陣に「人材育成は企業にとってプラスである」と認めてもらう必要があるのです。
人材育成手法 |
費用と成果の算出例 |
OJT |
OJTを実施前に人材育成計画書を作成し、OJT終了後に成果報告を行う |
Off-JT |
研修にかかった費用を算出し、研修内容や参加者アンケートなどで近似的な費用対効果を導き出す |
どんな組織でも予算によるコスト管理が行われているものです。
育成予算が確保できるよう、育成プロセスや育成の成果を見える化することような仕組みを作りましょう。
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3.【階層別】育成課題の具体的な解決策
人材育成の課題は大きく4つに集約されますが、階層ごとに見ていくと、それぞれが異なる課題を抱えていることが分かりました。
厚生労働省の人材育成の現状と課題 第3節のデータより、新人~若手層、中堅・リーダー層、そして管理職と階層別に課題をまとめると下記のようになります。
- 【新卒~若手層の課題】 育成時間の確保とモチベーション維持
- 【中堅・リーダー層の課題】育成時間の確保と管理職の育成能力不足
- 【管理職層の課題】 育成能力やリーダーシップ不足
解決策を押さえておかないと、人材育成がスムーズに行かない恐れがあります。
次項より、階層ごとに詳しく解説していきますので必ず確認しておきましょう。
3-1. 新卒~若手層の育成課題
厚労省が公開している「人材育成の現状と課題 第3節」によると、新卒~若手層が抱える育成課題は主に次の3つでした。
- 業務が多忙で、育成の時間的余裕がない
- 育成者の育成能力や指導意識の不足
- 人材育成が計画的・体系的に行われていない
この3つの課題を解決するには、
①新人研修・OJTの内容を強化する
②若手社員をメンターに抜擢する
③加点方式で評価する
の3通りの解決策があります。
それぞれの解決策について詳しく解説していきますね。
3-1-1. 解決策①新人研修・OJTの内容を強化する
1つ目の解決策は、「新人研修・OJTの内容を強化する」ことです。
新人や若手社員が「社会人としての基礎力や初歩的な業務部分」でつまずいている場合は、新人研修の見直しが急務です。
新人研修の中で「分かりにくい部分」がないか、抜けや漏れがないかを確認しましょう。
育成者は多忙であることが多いため、基礎的な部分を一から十まで現場で指導することはできません。
新人から中堅層の育成は、
- 研修で基礎的な知識や技術を学ぶ
- OJTで実務を遂行する過程で習得する
ことが理想的です。
OJTとは「On-the-Job Training」の略称で、実際に業務をさせながら育成する方法です。
業務を遂行しながら指導するため、OJTとして教える側の体制を整えていく必要があります。
OJTがスムーズに行えるように、
- 通常業務の見直し
- OJT担当者の人材育成スキル向上
を同時に行うとより高い効果が期待できるでしょう。
3-1-2. 解決策②若手社員をメンターに抜擢する
2つ目の解決策は、「若手社員をメンターに抜擢する」ことです。
メンターとは、新人社員に対して1対1でさまざまな支援を行う部署外の先輩を指します。
「仕事が向いていない気がする」
「この仕事にやりがいを感じない」
などの悩みを新人が持った場合、上司や同部署の先輩に相談しにくいものですが、メンターを置くことで若手社員はメンタル面での不安を軽減することができるでしょう。
この時に新人のメンターとして若手層の人材を抜擢することで、新人・メンターの若手ともに次のような効果が期待できます。
【新人(メンティ)】
- メンター(先輩)に業務以外の不安点などを気軽に相談できる
- 悩みや不安をひとりで抱え込みすぎない
- 将来のビジョンが描きやすい
- モチベーション維持に役立つ
【若手層(メンター)】
- メンターに抜擢されたことが名誉・実績になる
- メンティに「頼られる」ことで、自身の存在を「役に立つ」と認めることができる
- メンティの悩みを自分事のようにとらえることで、育成スキルがつく
- コミュニケーション能力の向上
メンター制度については、「メンター制度とは?メリットデメリットと事例から学ぶ失敗しない方法 」で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
3-1-3. 解決策③加点方式で評価する
解決策の3つ目は「加点方式で評価する」ことです。
加点方式とは、その名の通り、プラスの言動について加点していく評価方法です。
仮に失敗をしたとしても失敗を挽回できたり、過程に問題がなかったりした場合はプラスの評価をつけます。
これにより、
「失敗しても取り戻せばいい!」
「確実にできることだけでなく、新しいことにチャレンジしよう!」
という何事にも前向きにとらえる姿勢が養われます。
多くの組織が導入している減点評価は、基本的に加点されることがありません。
減点評価とは、目標完璧に達成できる状態を100点満点として設定し、ミスをするたびに減点していく評価方法ですから、
「確実にできることだけに取り組もう」
「絶対に失敗しないようにしよう」
と失敗を極端に恐れる人材を生み出しがちです。
「チャレンジ精神旺盛な人材」や「新しい業務に積極的に取り組める人材」を育成したいなら、加点方式での評価をおすすめします。
3-2.【中堅・リーダー層の課題】育成時間の確保と管理職の育成能力不足
厚労省が公開している「人材育成の現状と課題 第3節」によると、中堅・リーダー層が抱える育成課題は次の3つでした。
- 業務が多忙で、育成の時間的余裕がない
- 育成者の育成能力や指導意識の不足
- 人材育成が計画的・体系的に行われていない
中堅・リーダー層は、業務の重責度が増すだけでなく、自身が育成する側・育成する側の両方にあたるため、キャパオーバーになりやすいのが大きな問題です。
この3つの課題を解決するには、
①社内・社外研修を有効的に使う
②新人の指導は若手社員に任せる
③キャリアアップに人材配置を行う
3つの解決策があります。
それぞれの解決策について詳しく解説していきますね。
3-2-1. 解決策①社内・社外研修を有効的に使う
1つ目の解決策は、「社内・社外研修を有効的に使う」ことです。
社内外における集合研修は、新人や管理職がメインに設定されがちですが、中堅・リーダー層の社員にも有益です。
例えば、新人の育成能力やリーダーシップ向上を目的とした研修では、
- 新人育成のケーススタディ
- 新人のタイプ別の指導方法
- 新人の人材育成計画書の作成法
などを学ぶことで、実際の指導を円滑に進められる効果が期待できます。
特に新人の人材育成計画書の作成方法については、計画書の出来が育成を左右すると言っても過言ではありません。
しっかり練られた計画書があれば育成ターゲットとの目標共有がしやすく、ざっくりとした指示でも、相手は指示の真意をくみ取って業務にあたることができるでしょう。
反対に計画書が新人全員に当てはまるような大枠のものだったり、曖昧な書き方だったりすると、現場でいちいち細かく指示を出す必要が生じます。
社内外の研修などで人材育成に役立つスキルや知識を身に付けておくと、将来非常に役立ちます。
3-2-2. 解決策②新人の指導は若手社員に任せる
2つ目の解決策は、「新人の指導は若手社員に任せる」ことです。
ただし「新人の指導を若手社員に丸投げする」ということではないので注意してください。
これは最終的な育成や要となる指導は自身で行い、それ以外の部分を若手社員に指導させるということです。実行には、よく練られた人材育成計画書が必要になります。
良い人材育成計画書には、5W1H(いつ・どこで・だれが・何を・どうして・どのように)が必ず含まれているもの。ですから、上司以外の社員でも人材育成計画書を見るだけで、「部下に指導すべきこと」が分かり、実践できるのです。
中堅・リーダー層の社員は自身のスキルアップと通常業務に加えて、新人育成にあたるため、「いくら時間があっても足りない」状態に陥りがちです。
「自分以外でも指導可能なところ」はどんどん若手社員に任せましょう。
これにより、タイムロスなく人材育成を進めることができるのです。
3-2-3. 解決策③キャリアアップに人材配置を行う
3つ目の解決策は、「キャリアアップに人材配置を行う」ことです。
中堅・リーダー層を育成するメンバー陣に余裕や適正がない場合は、働く環境を変えるのも1つの手段です。
さまざまな現場や職種を経験することで、多面的なビジネススキルを身に付けることができます。
近年、導入が増えている「キャリアパス」という人材育成制度もこれに該当します。
キャリアパス制度とは、企業内での昇進や異動などのキャリアップの基準や条件を明確にし、「どのような経験やスキルがあれば、昇進または異動のチャンスがあるのか」を提示したものです。
将来の目標へのステップが可視化できるため、キャリアアップを希望する社員にとってはモチベーションの維持がしやすくなります。
さらに企業にとっては、優秀な人材の流出防止にもなります。
もちろん、人材配置は育成ターゲットの希望が第一優先です。
くれぐれも育成者の勝手な思い込みで育成ターゲットのキャリアルートを確定することは控えましょう。
希望していない人材配置は育成ターゲットにとって大きなマイナスになる可能性がありますので、注意してください。
3-3.【管理職層の課題】育成能力やリーダーシップ不足
厚労省が公開している「人材育成の現状と課題 第3節」によると、管理職層が抱える育成上の課題は、
- 管理職としての能力や資質
- 部下の育成・指導力
- リーダーシップ
- 実行・推進力
など、いずれも管理職としての必須スキルや資質の不足でした。
高い能力・資質を持つ人材がいる一方で、管理職にふさわしくない人材も少なくないようで、「管理職の質の担保の難しさ」が浮き彫りになった形です。
この問題を解決するには、
①マネジメントやコーチングなどの学習機会を提供する
②人材育成の環境を整備する
を推進していく必要があります。
次項でそれぞれ詳しく解説していきますね。
3-3-1. 解決策①マネジメントやコーチングなどの学習機会を提供する
1つ目の解決策は、「マネジメントやコーチングなどの学習機会を提供する」ことです。
管理職によって人材育成スキルに差が出るのは、各々の実体験をベースに自由な指導を行っているからです。
育成手法が統一されていないため、それぞれが考えるベストな属人的な方法で指導にあたることになります。実体験に基づいて成果主義ベースで指導する部長がいたり、プロセス重視で評価する部長がいたりしては、育成ターゲット間で不満が生まれる恐れもあります。
このような問題を解決するためには、マネジメントやコーチングなどの学習機会を提供し、管理職に「組織で統一された人材育成スキル」を教え込む必要があります。
育成手法を統一させ、育成レベルの底上げをしなければ、いつまでたっても良い人材は育てられません。
また、管理職には組織をマネジメントするための知識も必要です。
コンプライアンスやメンタルヘルスなどの基礎知識を学ぶことで、育成ターゲットの問題を自分事にとらえることができます。
3-3-2. 解決策②人材育成の環境を整備する
2つ目の解決策は、「人材育成の環境を整備する」ことです。
管理職層はとにかく多忙という人が多いもの。
管理職層の業務量と責任は新人や中堅層の比ではありません。
人材育成がうまく進んでいない組織にいたっては、管理職層の負担は増大する一方でしょう。
この問題を解決するには、企業側の理解とアクションが必要です。
- 管理職の業務量
- マネジメントしている組織の規模
この2つを確認した上で、部下の育成に取り組める環境を整えましょう。
【人材育成に取り組める環境作りの例】
- 管理職が抱える業務負担の軽減
- 組織運営を円滑に進めるためマネジメント研修やガイドラインの設定
- 人材育成のキャリアマップや具体的な指導例をフォーマット化
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4. 人材育成を行う時の注意点
ここまでで人材育成が抱える課題と解決策について、ご理解いただけたかと思います。
本章ではさらに人材育成を円滑に進めるために知っておくべき注意点をご紹介します。
【人材育成における階層ごとの注意点】
このように、育成時の注意点は階層ごとに異なります。
育成する階層ごとに上記の注意点をしっかりおさえておきましょう。
4-1.【新人・若手層】人格否定はNG!性格ではなく、行動を変える
新人・若手層には、人格を否定する言葉は絶対に使わないように気をつけましょう。
これは私たちの誰にでも当てはまることではありますが、人格を否定されると、途端に自信とやる気を失ってしまうからです。
特に新人・若手の場合は、業務における成功経験が少ないため、人格否定で自信を失うと、中々立ち直れません。
育成者は大前提として、「育成ターゲットの性格や思考は変えられない」と肝に銘じておきましょう。
性格や思考は、自分が「変えたい」「変えよう」と決意した時にのみ、変化するものです。
そのため、育成者は「育成ターゲットの行動を変える」ことを目指して指導すると良いでしょう。
育成ターゲットの行動を変えるには、目標(ゴール)が行動になるように設定する必要があります。
状態 |
『こちらが真剣に話をしているのに、どこか上の空で聞いている』 |
ゴール(行動) |
|
状態 |
『指示をきちんと理解しないで、仕事を進めて失敗する』 |
ゴール(行動) |
|
人間は叱っても、本人の意思が伴わない限りは変わらないものです。
そのため、期待する状態を行動に置き換えて伝えると良いでしょう。
4-2.【中堅・リーダー層】固定概念に縛られるのはNG!みんなで育てる意識を持つ
中堅・リーダー層に対しては、固定概念に縛られないように注意しましょう。
人材育成における固定概念とは次の通りです。
- 新人を放置してはいけない
- OJTはマンツーマンで徹底的に行うべき
このような固定概念に縛られていると、
「君が新人指導の責任者だから、もっとしっかりしなさい」
「もう少し新人指導の時間を取るべきだ」
などと中堅・リーダー層に無理な要求をして苦しませてしまいます。
この問題を避けるためには、社内全体で人材育成の固定概念を払拭することが重要です。
【人材育成における抱きがちな固定概念】 |
【新しい考え方】 |
新人を放置してはいけない |
|
OJTはマンツーマンで徹底的に行うべき |
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このように、人材育成を一個人に完全に委ねるのではなく、部署全体でサポートする姿勢を作ることが望まれます。
中堅・リーダー層となると、業務難度も上がりますし、OJT指導者やメンターなどとして後輩を育成する立場も担います。
上司からすると「かなり頼れる存在」になるため、ついパーフェクトな取り組みを期待しがちですが、彼らも多忙であることを理解し、部署全体での育成を心がけましょう。
4-3.【管理職層】ルール違反はNG!常に模範となる行動を
管理職層に対しては、ルール違反に注意して育成を進めましょう。
管理職を指導する立場となると、自分の裁量で動けることが多くなります。
そのため、ふと気を緩ませると、ルール違反を犯しやすいので気をつけましょう。
【管理職の上司が犯しやすいルール違反の例】
- 喫煙所以外で喫煙する
- 私腹を肥やす行為に走る
(例:出張時は最安値の航空券を購入する規則だが、マイルを貯めるために決まりを破るなど) - 有給申請の期日を守らない
上記の例はいずれも企業に大ダメージを与えたり、規則を大きく破ったりするものではない小さなことかもしれません。しかし、「たかが」「これくらいいいだろう」という思考が、企業の倫理やモラルの崩壊につながっていきます。
ですから、管理職の上司は、常に全社員の模範となる行動が求められます。
「なぜ部下の手本とならなければいけないのか」を意識して行動することが大切です。
模範的な行動をするあなたを見て、管理職層の社員も「上司としてのあるべき姿」を学ぶでしょう。
⒌ まとめ
当記事では、人材育成が抱える課題とその解決策について解説しました。
多くの企業が抱える人材育成上の課題は、
- 業務が多忙で育成にかける時間がない
- 育成者の「育成スキル」が不足している
- 育成される側の意欲が低い
- 育成予算がない
の4つでしたね。
上記の課題に対しては、
- ポイントを守ることで、人材育成を効率的に進める
- 育成スキル不足は、指導者の人間力(信頼)で補完できる
などの解決策をご紹介しました。
階層別の育成課題と解決策は次の通りです。
新人~若手層 |
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育成課題 |
●業務が多忙で、育成の時間的余裕がない |
解決策 |
①新人研修・OJTの内容を強化する |
中堅・リーダー層 |
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育成課題 |
●業務が多忙で、育成の時間的余裕がない |
解決策 |
①社内・社外研修を有効的に使う |
管理職層 |
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育成課題 |
●管理職としての能力や資質の不足 |
解決策 |
①マネジメントやコーチングなどの学習機会を提供する |
人材育成は企業の成長の要となるものです。
人材育成が抱えやすい課題を理解することで、適切な対処ができるようになります。
いずれの課題もほんの少しの視点や行動の変化でプラスに作用することができますので、明日からの人材育成にぜひお役立てくださいね!
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