人事制度2020年代の最新トレンド傾向と事例3社に学ぶ取り入れ方

「最近、人事制度に新たなトレンドが訪れている」と感じている方は、多いのではないでしょうか。実際その通りで、2020年代の人事制度は新たな動きを見せています。

さっそくですが「トレンド傾向の特徴」からご紹介しましょう。

詳しくは本文で解説しますが、大きな流れとして、1990年代に主流だった「成果主義型」から「役割主義型」の人事制度へ変更する企業が増加しています。これに伴い、人事評価の手法や等級制度のあり方にも、変化が訪れているのです。

優秀な人材を確保するために「トレンドを意識した人事制度が強力な武器になる」ことは、いうまでもありません。そこで本記事では「人事制度の最新トレンド」をテーマに、以下の情報をわかりやすくまとめました。

  • 2020年の最新のトレンド傾向の特徴とは?
  • トレンド人事制度の最新手法5つ
  • 新しい人事制度を導入した企業事例
  • トレンド人事制度のメリットとデメリット
  • 取り入れる上で注意したい点

「人事制度のトレンドは今どうなっているのか」を理解した上で、自社に最適なトレンドの取り入れ方がわかる内容になっています。時流をつかむ最新情報をチェックしていきましょう。

1. 2020年代の最新トレンド傾向の特徴とは?

冒頭で、人事制度のトレンドには、

役割主義型
行動評価
リアルタイム評価
ランク付けの廃止
評価の見える化

5つのポイントが見られることをご紹介しました。本章ではひとつずつ詳しく見ていきましょう。

1-1. 人事制度は役割主義型へ変遷

まず押さえておきたいのが、人事制度は1970年代〜2000年代にかけて【年功→職能→成果→役割主義型】へと変遷している点です。

それぞれの特徴は、以下の通りです。

<人事制度の種類別の特徴>

年代

人事制度

特徴

1970年代

年功主義型

終身雇用が基本で勤続年数・年功によって処遇が良くなる

1980年代

職能主義型

資格の有無などの職能の査定反映が拡大、給与体系は年功序列が主流

1990年代

成果主義型

成果重視の評価制度、雇用は流動化し転職が一般化

2000年代以降

役割主義型

役割や行動をさまざまな視点から評価し価値に見合った報酬を付与

1970年代は「終身雇用・年功序列」が一般的でした。この時代、従業員の個性は重視されていません。「従業員全体がムラなく一様に管理されていること」が重要でした。

1980年代・1990年代は、社会が個性重視へと変化。人事制度も「職能」「成果」など、個人が持つ能力や成果にフォーカスし始めます。「年功序列の人事制度が崩壊、成果主義へ」と世間でも話題になりました。

多くの企業が成果主義型の人事制度を採用し業績を向上させましたが、2000年代になると「成果主義型の問題点」も明らかになってきました。

<成果主義型の問題点>
・短期的な個人成績を追求する傾向が強まる
・チームワークが弱くなりやすい
・離職率が高くなることがある
・(職種によっては)成果の定義が難しい
・従業員のメンタルヘルスに悪影響を与える可能性がある

そこで、これらの問題を解決し組織の生産性を高める人事制度として台頭しているのが「役割主義型」従業員の「役割に基づく行動」をさまざまな視点から評価し、その評価結果に見合った報酬を付与する制度です。

「成果主義型」が「成果」を重視するのに対し、「役割主義型」では「役割」を重視します。

<成果と役割の違い>

成果

従業員が業務に取り組むことによって残した結果

役割

従業員にしてほしい行動を示したもの

これに伴い、評価基準も「行動」にフォーカスする形に変わっていきます。詳しくは次項で解説しましょう。

1-2.評価基準は行動にフォーカス

役割主義型の人事制度では、評価基準は「行動」にフォーカスします。簡単にいえば「どんな行動をしたのか」が評価されるのです。

従来の人事制度で評価対象となっていたのは、以下の要素でした。

  • 勤続年数
  • その人自身が持つ能力、資格
  • 成果

役割主義型の人事制度では、これらの要素よりも「行動」が重視されるのが特徴です。

具体的な評価手法には、企業の価値観に合った行動を評価する「バリュー評価」や、部下や同僚からも行動を評価してもらう360度評価」が挙げられます。

詳しくは次章の「2. トレンド人事制度として注目を集める7つの最新手法」にて解説しますので、そちらも併せてご覧ください。

1-3. 期間を区切らずリアルタイムに評価

評価期間がどんどん短期的になり、リアルタイム化しているという特徴も見られます。

1990年代に主流だった成果主義型での評価には、「成果を計測する期間」が必要です。そのため、評価は1年ごとに行うのが一般的でした。

一方、役割主義型では「行動」を評価するので、成果を計測する期間は必要ありません。リアルタイムに、その場その場の行動を評価していく仕組みを取り入れる企業が増えています。

例えば「パフォーマンス・デベロップメント」が、その具体的な手法にあたります。こちらも詳しくは次章でご紹介しましょう。

1-4.ランク付けを廃止するノーレイティング

人事制度が役割主義型へと移行するのとともに、世界的に「ランク付け」を廃止する動きが出ていることも、トレンド傾向としては見逃せません。ランク付けを行わない人事制度のことを「ノーレイティング」といいます。

ここでいう「ランク」とは、等級制度の「等級」部分にあたります。

従業員をランク付けして、ランクごとに処遇を変える人事制度は、長年ごく一般的なものでした。例えば、海外で有名なランク付け制度に、GE(ゼネラルエレクトリック)の9ブロック」があります。

 

9マスの中に従業員をプロットし、1年ごとに下位1割(ボトム10%)は退職か配置換え——という厳しさがGEの好業績を支えていると注目の的に。多くの企業がGEに追随し、9ブロックを自社の人事制度に取り入れました。

ところが、GEは9ブロックを廃止。ノーレイティングの人事制度へ変更しました。この背景のひとつとして、近年「心理的安全性」という概念が見いだされたことが挙げられます。

心理的安全性とは、組織の中で従業員が気兼ねなく自分の意見や気持ちを発信できるかの指標です。Google「効果的なチームを作るためには心理的安全性が最も重要である」と結論づけたことで広く知られるようになりました。

今では、厳しすぎる評価制度は心理的安全性を損ない、組織の生産性を低下させるリスクがあると考えられています。心理的安全性に配慮した人事制度は、新たなトレンドといえるでしょう。

※さらに詳しく心理的安全性について知りたい方は「心理的安全性とは?意見が言い合えるチーム作りの新概念を徹底解説」 も併せてご覧ください。

1-5. 評価を見える化してオープンに運用

最後にご紹介するのは「評価の見える化」です。評価基準や評価結果を公開するオープンな人事評価制度を「公開型評価(オープン主義評価)」と呼びますが、公開型評価を採用する企業が増えています。

1990年代までは「評価基準や評価結果は、すべてを公開する必要はない」という考えが主流。「評価の実体はベールに包まれている」という企業が、多数存在しました。

しかし現在では、「評価制度はオープンにした方が従業員の納得感が醸成しやすく、モチベーション向上や成長意欲の促進に寄与する」という考え方に変わってきています。

以上が、2020年代の人事制度トレンド傾向です。気になる「これが実践レベルではどう運用されているの?」という点については、次章で見ていくことにしましょう。

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