
近年、組織の称賛文化の醸成やコミュニケーションの活性化を目的に、「サンクスカード」への注目が集まっています。
しかし、サンクスカードを導入し定着させるためには、導入して失敗した原因や成功するポイントについて理解しておく必要があるでしょう。
この記事では、サンクスカードの目的やメリット、運用方法などについて解説します。サンクスカード導入事例や例文もご紹介するため、サンクスカードで社内のコミュニケーション活性化を図りたいと考えている方はぜひ参考にしてください。
サンクスカードとは?
ビジネス領域で導入されている「サンクスカード」とは、従業員同士が、お互いに感謝の気持ちを伝え合う際に用いられるカードです。
「昨日は、私の作業を手伝っていただきありがとうございました。」
「まとめてくれた資料のおかげで、お客様からお褒めの言葉をいただきました!」などと、感謝の気持ちを伝えることで、伝える側の従業員も受け取る側の従業員も、ポジティブな気持ちになれます。
サンクスカードは「ありがとうカード」と呼ばれることもあり、組織内のコミュニケーションを活性化させる施策として、日本でも各業界の有名企業が導入し話題となっています。
サンクスカードの例文
「サンクスカードに、どのようなことを書けば良いのかわからない」という方は多くいるようです。ここでは、サンクスカードの例文を簡単にご紹介しますので、参考にしてみてください。
「昨日は、私の作業を手伝っていただきありがとうございました。とても助かりました。」
「まとめてくれた資料のおかげで、お客様からお褒めの言葉をいただきました!」
「◯◯さんが教えてくれた方法で試してみたら、不具合を解消できました。感謝しています。」
「先日は丁寧に教えてくださりありがとうございました。おかげで◯◯が達成できました!」
「遅くまでサポートしていただきありがとうございます。自分で少しずつできるようになりました。」
「何気なく言ってくれた意見が、自分では思いつかない観点で、とても参考になりました。」
サンクスカード導入事例
ここから、実際にサンクスカードを導入し、良い効果やメリットを組織にもたらすことができた3社の事例をご紹介します。
株式会社メルカリ
メルカリでは、Unipos(ユニポス)のサービスを利用し、「mertip (メルチップ)」を運営しています。
メルチップとは、日常的に発生しているものの、見落とされやすい出来事に対して、気軽に感謝の気持ちを表せる仕組みです。
従業員同士でリアルタイムに感謝しあいながら、インセンティブとして一定の金額をおくり合うことができます。
メルカリでは、元々四半期ごとにサンクスカードをおくり合う文化がありましたが、より気軽に、リアルタイムで称賛し合うためにメルチップを導入したそうです。
従業員の満足度が高いだけでなく、今まで見えにくかったメンバーの仕事ぶりにも目が届くようになり、組織にもプラスの効果がありました。
参考:贈りあえるピアボーナス(成果給)制度『mertip(メルチップ)』を導入しました。
mercan (メルカン)(https://mercan.mercari.com/articles/2017-10-24-151523/)
導入事例│社員の主体性を引き出すためにメルカリが行っていること
ザ・リッツ・カールトン東京
ザ・リッツ・カールトン東京では、「ファーストクラス・カード」として、サンクスカードを導入しています。
繁忙期には、自分の業務だけではなく、例えばドアマンがベルボーイを手伝うなど、協力して業務をこなします。
リッツ・カールトンでは、そのような場面で、手伝ってもらった従業員から手伝ってくれた従業員に対してファーストクラス・カードを渡します。ファーストクラス・カードには「あなたはファーストクラス(最高)だ」という意味が込められており、モチベーションの向上につながっています。
そして、何より特徴的なのが、このファーストクラス・カードは人事考査でも参考資料になるという点です。
手伝ったことも、感謝したことも、人事考査にプラスとなるため、称賛文化の醸成がなされやすいといえるでしょう。
参考:褒める、励ますはリーダーだけの仕事か?――モチベーション向上の秘策(https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0710/11/news088_2.html)
日本航空株式会社(JAL)
日本航空では、称賛文化を醸成する目的で「Thanks card」を導入しています。
2006年4月に導入されたThanks cardは、定着に伴い従業員の喜びの声が至る所で聞こえるようになったといいます。日本航空の特徴は、「やらされ感」をなくすために業務命令はせず、あくまで趣旨に賛同してくれた部署に口コミで広げていったそうです。
カードをおくりあう条件もルール化せずに
一人ひとりが自由に仲間の行動に対して感謝の気持ちを伝えることで、組織の活性化が図られました。
従業員間の連帯感の醸成と良好なコミュニケーションを確保した事例といえます。
参考:褒める企業文化の醸成 | CSR情報 | JAL企業サイト(https://www.jal.com/ja/csr/iso/corporate_culture.html)
参考:手書きカードで現場が讃え合う、風土醸成の鍵は照れや押しつけ感の払拭(https://xtech.nikkei.com/it/article/JIREI/20080130/292399/)
サンクスカードの目的・メリット
企業がサンクスカードを導入する目的・メリットについてご紹介します。
サンクスカードの目的
企業がサンクスカードを導入する目的は、大きく分けて2つです。ここでは、それぞれの目的・効果についてご紹介します。
称賛文化の醸成
サンクスカードを導入することで、相手を褒めたり、ねぎらったりすることが「当たり前」になっていきます。すると、組織には称賛文化が醸成されていくでしょう。
称賛文化が醸成されることは「心理的安全性」の醸成にもつながります。
部署や役職を超えたコミュニケーション
チーム内や部署内では、これまでも感謝を伝える場面はあったかもしれません。
しかし、サンクスカードを導入すれば、部署や役職に限定されず、サンクスカードを通じたコミュニケーションが生まれます。
サンクスカードのメリット
称賛文化の醸成や、部署や役職を超えたコミュニケーションの活性化といった目的で導入されるサンクスカードですが、実際に導入するとさまざまなメリットが得られます。
ここでは、3つのメリットについてそれぞれ見ていきましょう。
従業員間のコミュニケーションが活性化する
サンクスカード導入の最大のメリットともいえるのが、従業員間のコミュニケーションの活性化です。
部署や役職にとらわれず、「感謝」をお互いに認識し合うという、ポジティブな関係性へと変わっていきます。
従業員のモチベーションが向上する
たとえ普段から行っている小さな行動・発言でも、相手にとっては大きなサポートになっている場合もあります。
そのような行動や発言に対して、サンクスカードという目に見える形で感謝やねぎらいを受けることで、従業員のモチベーションは向上します。
人材定着を促進できる
サンクスカードによって組織全体のコミュニケーションが活性化し、従業員一人ひとりのモチベーションが向上すれば、自ずと組織の雰囲気は良くなっていきます。
組織の雰囲気が良くなれば、従業員の離職を防止することにもつながるでしょう。
互いの仕事を認め合う称賛文化をつくる少額のインセンティブが従業員の利用を後押しする「Unipos」の詳細はこちら
サンクスカードを導入して失敗した原因
サンクスカードを導入して失敗した事例もあります。主な失敗の原因は、以下のとおりです。
- 負担を感じる従業員もいる
- 参加しづらい部署や職種がある
組織にとっても、従業員一人ひとりにとってもメリットがあるサンクスカードですが、「苦痛」という声が一定数あるのも事実です。
特に、もともとコミュニケーションが苦手な方にとっては、サンクスカードをおくること自体がノルマのように感じてしまいます。
サンクスカードをおくる相手を決めなければならない、今週は何枚書かなければならない、サンクスカードに書く内容を決めなければならないなどと、苦痛に感じてしまうかもしれません。
それ以外にも、「どのような内容を書けばいいのか考えるのに時間がかかる」「感謝の気持ちを伝えるのも伝えられるのも、慣れていないので、サンクスカードを苦痛と感じるさまざまな意見が存在するようです。
サンクスカードをおくることが半ばノルマのようになってしまうと、サンクスカードを導入する本来の趣旨に合わないことにもなるでしょう。
また、営業部など、日中は外出していてオフィスにいる時間が短い人はサンクスカードに参加しづらい傾向にあります。
参加するのが一部の人だけでは、本来の目的である社内コミュニケーションの活性化が図れません。形骸化してしまう可能性があります。
サンクスカードは、全従業員が参加することで本来の目的を果たすものです。すべての従業員が参加しやすい方法を検討する必要があるでしょう。
サンクスカードのデメリットなど失敗の原因になりやすい点についてさらに詳しい説明は、こちらの記事をご覧ください。
サンクスカード4つのデメリット|導入時のポイントと注意点を紹介
サンクスカードの注意点
サンクスカードを導入する際は、いくつか注意したい点があります。導入の前に次の3点は把握しておきましょう。
- 紙で運用する場合は手間がかかる
- 強制はしない
- 制度が定着するには時間が必要
特に従業員の多い会社は、紙で運用する場合の手間について把握しておくことが必要です。
サンクスカード導入の注意点についてご紹介します
手間やコストがかかる
サンクスカードを紙で運用する場合、カードを配布したり贈られたカードを集計したり、手間と時間がかかります。利便性が低く、途中で行き詰まる可能性もあるでしょう。本来の業務を行いながらサンクスカードの作業をすることは、担当者の負担にもなります。
サンクスカードにはWebツールやアプリで運用する方法もあり、そちらを利用するのもおすすめです。Webツールはカードの送受信をオンライン上で行い、データ集計もシステム内で自動化されるため便利です。
Webツールには幅広いサービスがあり、自社に合うものを慎重に選ぶようにしましょう。
単に便利だからというだけではなく、必要とする機能はあるか、費用対効果は問題ないかを考えてから導入してください。
強制されると利用しづらい
サンクスカードは、感謝の気持ちをおくりたいときに自発的におくるものです。強制されてノルマのようになってしまっては、サンクスカード本来の効果を得られません。あくまでも従業員の自主性を尊重しながら運用することが大切です。
自発的な行動に頼ると利用が少なくなり、形骸化する懸念もあります。形骸化を防ぐには、評価制度の指標にするなどの工夫も必要です。
定着には時間が必要
サンクスカードの運用が社内に定着するには、ある程度の時間がかかります。
苦痛を感じる従業員もいるため、定期的に見直しをしながら慎重に定着を図りましょう。
多くもらった人を表彰する制度を取り入れたり、サンクスカードで感謝された行為を社内報で紹介したりするなど、浸透させるための工夫をするのもひとつの方法です。
失敗しないためには?うまく活用するには
サンクスカードの導入に失敗せず、うまく運用していくためには以下のポイントをチェックしましょう。
- 導入目的を従業員と共有する
- 運用方法・ルールを明確にする
- 経営層も積極的に参加する
- 定期的な振り返りで運用を改善する
- ピアボーナスを導入する
特にサンクスカードを浸透させるためには、導入の目的を明らかにすることが重要です。
サンクスカード導入に失敗しないための方法をご紹介します。
導入の目的を共有する
サンクスカードの導入に失敗しないためには、導入する目的を明確にすることが必要です。
サンクスカードは社内に浸透するまで時間がかかり、否定的な意見が増えて形骸化すると、社内に定着せずに失敗する可能性があります。
そのような事態を避けるには、サンクスカードによって何を達成したいか、どのような課題を解決したいかを明らかにしなければなりません。
目的は従業員と共有することも大切です。経営トップや管理職からメッセージを発信するなどして、従業員がサンクスカードの目的や意義を十分に理解することが、導入に成功するポイントです。
ルールを明確にする
サンクスカードをうまく活用していくためには、ルールを明確にすることも大切です。
紙でやり取りするサンクスカードの運用方法やルールについては以下のステップを押さえましょう。
- 集計日を設定する
- 目標枚数を設定する
- 社内で共有する
サンクスカードを導入したら、定着するよう定期的な制度の見直しが必要です。サンクスカードの利用状況を確認し、従業員の負担は大きくなっていないか、期待する効果を得られているかをモニタリングしていきましょう。
経営層が積極的に参加する
サンクスカードの導入当初は、従業員にとってイメージが湧きにくく、気恥ずかしさもあるでしょう。そのため、サンクスカードの活用を従業員に丸投げしただけでは、定着させるのは難しいといえます。
まずは、経営層やリーダー層、もしくはサンクスカードの導入推進者が、実際に活用している場面を見せることが大切です。そうすることで、従業員も活用イメージが湧き、徐々に活用するようになるでしょう。
定期的な振り返りで運用を改善する
サンクスカードの導入後は定期的な振り返りを行い、見直しを行いましょう。見直しにより運用を改善することで、サンクスカードの管理にかかる負担を軽減します。
さらに、利用促進や定着化を図るよう、工夫していくことも大切です。導入直後はなかなかうまくいかないこともありますが、職場に根付かせるために改善を重ねていきましょう。
ピアボーナスを導入する
サンクスカードの形骸化を防ぐには、感謝のメッセージに加え、少額のインセンティブをおくるピアボーナスを導入する方法もあります。ピアボーナスとは、社員同士で報酬を送り合う仕組みです。 社内チャットツールやアプリなどから、評価や感謝を送りたい相手にポイントやメッセージを送信し、一定のタイミングで少額のインセンティブが支給されます。
ピアボーナスとしてさまざまなサービスが提供されており、特におすすめなものが、Webサービスの「Unipos(ユニポス)」です。
Unipos(ユニポス)では、インターネット上で従業員が感謝のメッセージをおくるだけでなくポイントを添えておくることができ、ポイントは金銭や賞品と交換できます。交換するものは少額の金銭やオリジナルの景品など、自社の文化に合わせて設定できます。
Uniosの導入により、組織が抱えるさまざまな課題を解決できるのが強みです。主に、以下のようなメリットがあります。
- 称賛文化を熟成して心理的安全性を高め、離職を防止する
- 「貢献の見える化」により、社員に理想的な行動を促す
- 社員の働きがいが向上し、エンゲージメントが高まる
また、利用を促進・定着させるための仕掛けが盛り込まれているため、形骸化の抑制につながります。
Unipos(ユニポス)についてのさらに詳しい説明は、こちらの記事をぜひご覧ください。
参考:サンクスカードアプリで社内の活性化を!導入ステップ、事例を紹介
サンクスカード導入を成功させるポイント
サンクスカード導入を成功させるには、いくつかのポイントがあります。利用状況を可視化させる、メッセージを共有するなどポイントを抑えることで、社内の定着化が図れるでしょう。
ここでは、サンクスカード導入を成功させる4つのポイントをご紹介します。
利用状況を可視化するツールを使う
サンクスカードを定着させるには、手軽に感謝を伝えられることも必要です。 紙に手書きでメッセージを書いて渡すのは手間がかかり、面倒になっておくらないというケースも出てくるでしょう。
Webツールを導入して、おくりたいときにいつでも手軽におくれるようにするのもおすすめです。
Webツールには、サンクスカードの利用状況を可視化できる機能を備えるものもあります。利用状況を定期的に確認することで改善点も見つけやすくなり、定着化に役立つでしょう。
メッセージを共有する
サンクスカードの目的のひとつは、感謝の気持ちを伝えて従業員のモチベーションを高めることです。感謝はおくった人・おくられた人だけにとどめず、可視化して多くの人の目に留まることで従業員のモチベーションはさらに上がるでしょう。
紙で運用するサンクスカードも掲示板に貼り出すことで可視化はできますが、周知には限界があります。タイムラインでシェアされるWebシステムであれば、広く周知が可能です。
WebサービスのUnipos(ユニポス)はメッセージの投稿を全従業員がリアルタイムに閲覧できるため、隠れた貢献も可視化できます。
具体的な感謝をおくる
サンクスカードは、具体的な感謝をおくることが成功のコツです。ただ「ありがとう」だけのメッセージよりも、「請求書の整理を手伝っていただいて、締め切りに間に合わせることができました!感謝しています」といった具体的なメッセージにすると、より感謝の気持ちが伝わります。メッセージを共有した人にも、より貢献度が伝わるでしょう。
また、「気づいたらすぐに書く」ことも大切です。感謝する出来事が生じて長期間経ってからサンクスカードを書くのでは、サンクスカードを書く側も受け取る側も記憶が薄れ、せっかくの感謝の言葉に対する熱量は下がってしまうでしょう。
また、気づいたらすぐに書くという習慣がつかなければ、サンクスカード自体が定着しにくくなってしまいます。
サンクスカードをおくり合う従業員本人のためにも、組織のためにも、サンクスカードの「即時性」を意識することが欠かせません。
インセンティブをつける
感謝のメッセージだけでも嬉しいものですが、インセンティブがつくことでさらに従業員のモチベーションは高まります。定期的に表彰したりランキングを設けたりすることも活用を促すのに役立つでしょう。
Unipos(ユニポス)ではメッセージに添えて少額のインセンティブをつけられるため、従業員のモチベーションアップに貢献します。
Unipos(ユニポス)についてのさらに詳しい説明は、こちらの記事をぜひご覧ください。
参考:サンクスカードアプリで社内の活性化を!導入ステップ、事例を紹介
まとめ
今回の記事では、「サンクスカード」について、企業が導入する目的やメリット、導入事例などを中心に解説しました。
改めて、記事の内容について振り返ってみましょう。
- サンクスカードとは、従業員同士が感謝の気持ちを伝え合うカード
- サンクスカードのメリット
- コミュニケーション活性化
- モチベーション向上
- 人材の定着
- サンクスカードの注意点
- コストが発生すること
- 定着に時間がかかること
- 参加の強制しないこと
- 失敗しないためのコツ
- 導入の目的を共有する
- ルールを明確にする
- 経営層が積極的に参加する
- 社員の負担にならないように
- ピアボーナスを導入する
- 定期的な振り返りで運用を改善する
- サンクスカードを導入を成功させるポイント
- 利用状況を可視化するツールを使う
- メッセージを共有する
- 具体的な感謝を贈る
- インセンティブをつける
この記事が、サンクスカード導入・定着の参考になれば幸いです。