心理的安全性とは?意見が言い合えるチーム作りの新概念を徹底解説

「心理的安全性」とは、組織の中でメンバーそれぞれが、気兼ねなく自分の意見や気持ちを発信できるかどうかを表した概念のことです。

例えば、私たちは以下のように、人からどう思われるか不安に感じることがあります。

  • 上司とは反対の意見を言いたいけれど、言ったら評価が下がるのではないか
  • 失敗して迷惑をかけたら、チームのメンバーに嫌われるのではないか
  • 会議の内容が理解できないけれど、質問したらバカにされるのではないか

“心理的安全性が高い環境とは、このような不安を感じることなく、自然体で行動ができる環境です。

「心理的安全性が高いチームは成果を出しやすい」ことが研究により明らかになり、「心理的安全性の概念を取り入れたい」と考える経営者やマネジャーが増えています。

しかし、心理的安全性について正しく理解している人は、ほんの一握りです。

多くの人が「心理的安全性」という言葉の表面的なニュアンスだけを捉えて勘違いをしています。

例えば、

  • プレッシャーがなく精神的に安心できる職場
  • アットホームで厳しさのない雰囲気
  • スタッフの仲が良く結束力の高いチーム

これらは、心理的安全性の本質とは異なっています。誤った解釈では、心理的安全性による本来のメリットを組織にもたらすことができません。

そこでこの記事では、以下を重点的に解説します。

心理的安全性とは?勘違いしやすい本来の意味

心理的安全性を人材マネジメントに取り入れるメリット

心理的安全性を高める方法

最後までお読みいただくと、心理的安全性の概念が「なるほど!」と理解でき、すぐにでも自社のチーム運営に取り入れられるようになるでしょう。さっそく続きをご覧ください。

1.心理的安全性とは?勘違いしやすい本来の意味

チームの心理的安全性という概念を提唱したのは、ハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソン教授です。その概念が有名になったきっかけは、Googleが人材マネジメントに取り入れたことでした。

「先進的で強い組織作り」で注目されているGoogleが最重視している心理的安全性とは何なのか、基礎知識から学んでいきましょう。

1-1.心理的安全性の基本的な考え方

心理的安全性とは、冒頭でもお伝えした通り「組織の中でメンバーそれぞれが、気兼ねなく自分の意見や気持ちを発信できるかどうか」を表した概念です。

エドモンドソン教授は「対人リスクをとるのに安全な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態」と定義しています。

ここでいう「対人リスク」とは、具体的に以下のようなものです。

対人リスク

無知だと思われる不安

「自分だけ質問したら、無知だと思われるかもしれない」

無能だと思われる不安

「失敗したら、無能だと思われるかもしれない」

ネガティブだと思われる不安

「他の人の意見を批判したら、ネガティブな人格だと思われるかもしれない」

邪魔だと思われる不安

「手伝ってほしいと頼んだら、邪魔だと思われるかもしれない」

心理的安全性が高い環境では、これらの不安を感じずに済むため、堂々と質問したり、チャレンジしたり、反対意見を言ったり、支援を求めたりできます。

逆に心理的安全性が低い環境では、不安が障壁となって、本来は組織にとって必要な言動であったとしても、抑制されてしまいます。

不安が大きいほど心理的安全性は低く、不安が小さいほど心理的安全性は高くなるという関係性にあります。

心理的安全性の概念を理解する上で重要なのは、心理的安全性とは「対人リスクを取れるかどうか(=不安を感じずに行動できるかどうか)」を表した指標であり、心理的安全性が低いと組織にとって不利益なことが起きるという事実です。

具体的にどのようなことが起きるのか、次項で事例をご紹介します。

1-2.心理的安全性が低い組織で起きた悲劇

エドモンドゾン教授は著書の中で、心理的安全性が低い組織の悲劇として2003年のコロンビア号の空中分解事故におけるNASAを挙げています。

コロンビア号が空中分解する前、NASAにはコロンビア号の問題に気付いたエンジニアがいました。メールで直属の上司に報告したのですが、取り合ってもらえませんでした。

直属の上司は、上層部に報告することなく、自分のところでエンジニアの報告を止めてしまいました。

その後、エンジニアは幹部が出席する定例会議で報告しようかと迷います。しかし、懸念を口にするのは、NASAではキャリアをふいにすることにほかならないと思い、話すのをやめてしまったのです。

後に、エンジニアは定例会議で懸念を述べなかった理由を、以下のように語ったそうです。

「そんなことはできませんでした。私がいるのはピラミッドのずっと下のほう……そして彼女(幹部)ははるか上の人ですから」

また、エンジニアからの報告を上層部に報告しなかった直属の上司は、次のように述べています。

「たびたび言われていたのです。自分よりはるかに地位の高い人に意見を具申するなどもってのほかだ、と」

これはNASAという組織で起きた出来事ですが、よく似たことが日常茶飯事で起きている企業も多いのではないでしょうか。

心理的安全性という概念は、このような悲劇を防ぐためにあると理解しておきましょう。

1-3.心理的安全性が「高い職場」「低い職場」の違い

ここで、心理的安全性が「高い職場」と「低い職場」の特徴をまとめておきましょう。

心理的安全性が高い職場

・率直に本音で議論ができる

・厳しいフィードバックを与えることができる

・反対意見が歓迎される

・失敗を恐れずにチャレンジができる

・革新的なアイデアや斬新な意見が活発に生まれる

心理的安全性が低い職場

・事なかれ主義の雰囲気が流れている

・会議で沈黙がよく起きる

・空気を読むことが求められる

・同調圧力が起きやすい

・新しい意見や他の人と違う意見が潰されやすい

・トップの意見に合わせるイエスマンが多い

 この表から押さえておきたいポイントは、プレッシャーや責任感と心理的安全性は関係がないという点です。

むしろ、心理的安全性が低い職場の方が、プレッシャーや責任感が低いケースもあります。心理的安全性が極端に低くなると、チームメンバーは何もせず何も言わなくなるからです。

逆に心理的安全性が高い職場では、厳しい議論や難しいチャレンジが可能になり、チームメンバーはプレッシャーに強くなる傾向にあります。

1-4.「心理的安全性」と「信頼」「尊敬」の違い

心理的安全性は、チームメンバーが信頼し合い、尊敬し合っているときに生まれます。その意味では、心理的安全性の中には、信頼と尊敬が含まれていると言って良いでしょう。

ただし、学術的には「信頼」「尊敬」は2者の関係性にあるもの、エドモンドソン教授が提唱した「心理的安全性」はチームや組織といった集団レベルの現象、という違いがあります。

信頼・尊敬

2者間の関係性

心理的安全性

集団レベルの現象

つまり、信頼や尊敬は、ある2人の従業員の間に存在するものです。一方、チームの心理的安全性は、従業員個人ではなく、チーム・部署・組織など集団単位に存在するものです。

例えば、「従業員Aさんの心理的安全性が高い」という言い方はせず、「●●部署の心理的安全性が高い」という言い方をします。

2.心理的安全性を人材マネジメントに取り入れるメリット

心理的安全性を人材マネジメントに取り入れたいと考える企業が増えています。どのようなメリットがあるのでしょうか。

そのメリットは、大きく分けて3つあります。

イノベーションが促進される

問題解決がスピードアップする

組織が間違った方向へ進むのをくい止められる

順に解説します。

2-1.イノベーションが促進される

1つめのメリットは、イノベーションが促進されるという点です。

心理的安全性が高い職場では、斬新な意見を発信しやすくなります。「こんなことを言ったら、変に思われるのでは?」という不安がないので、一見奇抜に思えるようなアイデアも共有しやすくなるのです。

従来なら「前例がない」「コストがかかる」「実現できるわけがない」などと一蹴されていた意見も拾い上げることができるため、差別化された革新的な製品やサービスが生まれやすくなります。

2-2.問題解決がスピードアップする

2つめのメリットは、問題解決がスピードアップするという点です。

多くの人は「トラブルはできるだけ避けたい」という心理が働いて、問題に気付いても正面から向き合うことができません。時間が経過し、問題が大きくなってからようやく解決に乗り出すので、対応が後手に回りがちです。

心理的安全性が高い職場では、問題に気付いたらその場で声を挙げ、すぐに解決に向けて行動する従業員が増えます。

結果、問題解決のスピードがアップして、トラブルや変化に強い組織を作ることができるのです。

2-3.組織が間違った方向へ進むのをくい止められる

3つめのメリットは、組織が間違った方向へ進むのをくい止められるという点です。

組織とは、結束力が高いほど良いとも言い切れません。その結束力があだとなり調和を乱す異論は唱えづらくなって、組織が間違った方向へ突っ走ってしまうことがあります。

心理的安全性が高い職場では、各従業員は、自分の感じたままを発言できます。組織の空気感に抑圧されて、自分の意見を飲み込む必要はありません。

たとえ相手が自分の上司や企業のトップだったとしても、間違っていると思ったときには、率直に伝えることができる。それは、組織が間違った方向に進みそうになったときのブレーキ機能となります。

3.デメリットはマネジャーの負担が増えること

心理的安全性は、組織力を高める上で大変メリットの多い概念です。しかしながら、デメリットも存在します。

心理的安全性は、自然に高まることはありません。心理的安全性を高めるためには、マネジャー(チーム・リーダー)の在り方がカギを握ります。

マネジャーの態度、部下との接し方、コミュニケーションの量などが、チームの心理的安全性に直結するからです。

特に、心理的安全性が低いチームから高いチームへと変革していく時期においては、マネジャーの負担が増えるばかりで、心理的安全性を高める成果の手応えが、感じにくいかもしれません。

心理的安全性は、チーム内のコミュニケーションによって徐々に高まっていくものです。即効性を求めるのではなく、じっくり取り組む余裕が必要です。

4.心理的安全性を最重視するGoogleの考え方

 最後に「心理的安全性」の概念を有名にしたGoogleは、心理的安全性についてどのように考えているのか、確認しておきましょう。

Googleでは、効果的なチームを作るためには心理的安全性が最も重要であると結論付けています。

チームの効果性に影響する因子(重要な順)

①サイコロジカル・セーフティー(心理的安全性)

②相互信頼

③構造と明確さ

④仕事の意味

⑤インパクト

出典:ガイド: 「効果的なチームとは何か」を知る

チームの効果性が高いチームには上記の5つの要因があり、この中で圧倒的に重要なのが心理的安全性であるとGoogleは結論付けました。

心理的安全性の高いチームを作るために、全世界共通のマネジャー研修が行われ、チームの心理的安全性を高めるさまざまな仕組みが導入されています。

Googleのマネジャー研修内容は非公開ですが、Googleのホームページで公開されているのが「心理的安全性を高めるためにマネージャーにできること」という資料です。心理的安全性を高めるために何をしたら良いのか考える上で、有益なヒントが詰まっています。

また、Googleが導入している仕組みの一例を下記表にまとめました。

1 on 1

マネジャーは週に11時間、必ず全メンバーと個人面談する

ピアボーナス

チームメンバー同士が感謝の気持ちを少額のボーナスで贈り合う。日本の代表的なピアボーナスⓇサービスは「Unipos」などがある。

ライフ・ジャーニー

人生のターニングポイントにおける[行動その意図味わった感情]をチームメンバーと共有する

 マネジャーがチームづくりをリードしながら、それを補強する仕組みを導入しているのが、Google流のやり方といえるでしょう。

※心理的安全性を高めるための具体的な方法については「心理的安全性の高いチームの作り方!今すぐ使える8つの実践方法 にて詳しく解説しています。ぜひ、合わせてご覧ください。

5.現代において生産性の高い組織を作るために心理的安全性は不可欠

「心理的安全性」を高める効用は数多くありますが、統括すれば「生産性の高い組織を作ることができること」といえます。

これを発見して世に知らしめたのはGoogleですが、心理的安全性の概念が広く受け止められた理由には、時代背景も見逃せません。

企業は、既成概念にとらわれることなく新たなイノベーションを巻き起こすことが求められる反面、社会からのコンプライアンスやハラスメントへの監視が強くなり、リスク管理の重要性が増しています。

現代において、生産性の高い組織を作るために、心理的安全性の向上は欠かせないのです。いち早く自社の人材マネジメントに心理的安全性の概念を取り入れて、時代を生き抜く強い組織づくりに役立てていきましょう。

6.まとめ

心理的安全性とは「組織の中でメンバーそれぞれが、気兼ねなく自分の意見や気持ちを発信できるかどうか」を表した概念です。

心理的安全性が高い職場では、反対意見を率直に伝えたり、失敗を恐れずにチャレンジしたり、助けを求めたりすることが可能になります。

逆に心理的安全性が低い職場では、人からマイナスの評価を受ける不安によって行動が起こせなくなり、組織が間違った方向へ進んでしまうリスクがあります。

心理的安全性を人材マネジメントに取り入れることには以下のメリットがあります。

イノベーションが促進される

問題解決がスピードアップする

組織が間違った方向へ進むのをくい止められる

一方、デメリットとしては、心理的安全性の高いチームが作れるかどうかはマネジャーの手腕にかかっており、マネジャーの負担が大きくなる点が挙げられます。

心理的安全性をいち早く人材マネジメントに取り入れたのがGoogleで、Googleのホームページではそのマネジメント方法の一部が公開されています。心理的安全性の理解を深めるために、一読しておくと良いでしょう。

さらに詳しく心理的安全性について知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。

心理的安全性を測定する方法とGoogleに学ぶ心理的安全性の高め方