人的資本開示に関してこの半年で起こったことまとめ|田中弦のCEOBlog-vol.10

※こちらのブログは、UniposサイトのCEOblogから転載/リライトしています。

このCEOブログは、CEOの田中がこれからの企業経営について得た人的資本経営に関する情報をまとめ、見解を踏まえて投稿していくシリーズです。

8月〜12月にかけて、人的資本開示に関して大きな動きがありました。流れが速いので色々な方が混乱していたり、整理するのが大変になっているので、まとめてみようと思います。

ちなみに、今まで人的資本についての私の見解は以下の記事から読めますので、気になる方は是非どうぞ。
(全て新規ウィンドウで開きます)

【今さら聞けない!】人的資本経営に関する資料3選を無料でダウンロード

人的資本開示に関しての振り返り

【前提振り返り】人的資本開示の開示項目と対象企業規模

元々、人的資本開示にまつわる上場企業の開示については、コーポレート・ガバナンスコード(2021年6月改定)において、プライム市場またはスタンダード市場に上場している企業は開示すべき事項として記載がありました。全部で83原則あり、この中に人的資本に関する項目が入っています。

また、グロース市場においては基本5原則となっており、人的資本の開示についてはグロース市場は開示必須では無い、という理解でした。

一方、金融庁の下記ディスクロージャーワーキンググループの事務局資料においては、有価証券報告書において人的資本に関する開示は「全企業」となっていましたので、全企業対象となる可能性がありました

有価証券報告書におけるサステナビリティ開示の概観

ここまでの情報で、「プライム企業以外のグロース企業は開示が必須なの?どうなの?」という、若干不確かな情報で右往左往していたかと思います。

※ちなみに、2023年1月31日に正式に、「全上場企業が「人的資本」の「戦略」と「指標および目標」の開示を義務化」することが決定されました。

2022年5月13日 経済産業省より、「人材版伊藤レポート2.0」が発表

経済産業省より、「人材版伊藤レポート2.0」が発表され、人的資本経営の具体的なアイデアや方法論が提示されました。

2022年8月6日 内閣官房・非財務情報可視化研究会が「人的資本可視化指針」を公開

2022年8月6日内閣官房・非財務情報可視化研究会が「人的資本可視化指針を公開しました

人的資本可視化指針では、下記のように投資家のニーズが高い「比較可能指標」と企業独自の戦略やビジネスモデルについては「独自指標」を推奨し、両指標のバランスが重要とされました。

独自性事項と比較可能性事項のバランスの確保

出典:人的資本可視化指針

2022年11月7日 金融庁より「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案の公表について発表

2022年11月7日金融庁より「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案の公表についてが発表されました。

この改正案により、今後は有価証券報告書内で、「従業員の状況」において、男女差異等に関する項目が追加され、「サステイナビリティへに関する考え方および取り組み」において、人材の育成方針と社内環境整備への戦略と指標の記載の追加が求められることになりました。

2022年11月28日 日経新聞報道人的資本開示、23年3月期から大手4000社対象へ 

2022年11月28日日経新聞報道「人的資本開示、23年3月期から 大手4000社対象 」が発表されました。以下日本経済新聞からの引用です。

人材を企業の資本とみなす「人的資本」の開示義務化に向けて、金融庁が検討してきた制度の詳細が固まった。有価証券報告書(有報)を発行する大手企業4000社を対象とし、2023年3月期決算以降の有報に人材投資額や社員満足度といった情報の記載を求める。上場企業の多くを占める3月期企業は早急な対応を迫られる。

引用:日本経済新聞

と記述があり、上場企業すべてに開示義務が発生すると読み取れます。特に3月末決算の会社の多くは来年6月に有価証券報告書を提出しますので、この時点であと半年しか準備期間が無いということになり、対象企業においては、早急な対応が必要となりました。

2022年12月7日 上記改正案のパブリックコメントが締め切られる

2022年1月31日「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案に対するパブリックコメントの結果等についてが開示される

まとめ

ざっとまとめてみました。2021年6月から1年余りで、人的資本開示については日本全体の企業においてかなりのインパクトがあったのだと思います。今後の流れとしては、パブリックコメントで寄せられた意見の反映がありますのでこの改正案通りにはならないかもしれませんが、コーポレートガバナンスコードに従ってグロース市場は除くなどの措置がとられる可能性も、あるかもしれません。

ただ、開示義務が発生するか否かにかかわらず、私としてはグロース市場に上場するような新興企業やベンチャー企業こそ人的資本が重要になってくると思っていますし、積極的に開示することが重要ではないかと思っています。

すでに人的資本開示について良い実例も多数上がっており、参考にできそうな事例として先日、丸井グループさんに取材に行ったのでご紹介しています。

丸井グループさんに人的資本経営について教えてもらいました|田中弦のCEOBlog-vol.8

他にも、今後さらにヒートアップしそうな人的資本経営、人的資本開示については取り上げていこうと思っていますのでお楽しみに!

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 代表取締役社長CEO 田中 弦
1999年にソフトバンク株式会社のインターネット部門採用第一期生としてインターネット産業に関わる。ブロードキャスト・コム(現 Yahoo!動画)の立ち上げに参加。その後ネットイヤーグループ創業に参画。 2001年経営コンサルティング会社コーポレイトディレクションに入社。 2005年ネットエイジグループ(現UNITED)執行役員。モバイル広告代理店事業の立ち上げにかかわる。2005年Fringe81株式会社を創業、代表取締役に就任。2013年3月マネジメントバイアウトにより独立。2017年8月に東証マザーズへ上場。2017年に発⾒⼤賞という社内⼈事制度から着想を得たUniposのサービスを開始。2021年10月に社名変更をし、Unipos株式会社 代表取締役社長として感情報酬の社会実装に取り組む。2022年10月に著書「心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100(ダイヤモンド社刊)」を刊行。

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