愛社精神は必要なのか?社員が気持ちよく働ける環境作りに必要な条件5つ

新入社員へ向けて、「愛社精神を持つように」という企業は多くあります。愛社精神とは、「自分が属する企業を愛す」という意味です。

 

社員に愛社精神を持ってもらうことは、モチベーションのアップや離職率の低下など、企業にとって大きなメリットがあります。

しかし、社員に対して愛社精神を強要することが、果たして正しいことなのでしょうか?

今回は、適切な愛社精神を育むための方法と、愛社精神がもたらすデメリットともいえる部分についてご説明します。

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1.愛社精神とは

愛社精神とは、勤務先の企業を愛する気持ちのことです。

企業に属する誇りや仕事へのモチベーションなど、愛社精神によって社員が高いパフォーマンスを発揮することが期待できます。

1-1.愛社精神を持てない社員が増加中

内閣府が1629歳を対象に、平成30年に行った「子供・若者白書」によると、「自分の能力や適性に合わない職場であっても、転職は絶対すべきではない」または「自分の能力や適性に合わない職場であっても、転職はできる限りしない方がよい」といった、転職に否定的な意見はわずか17.3%であり、2割に満たないものでした。

対して、「自分の能力や適性に合わない職場ならば、転職することもやむをえない」「自分の能力や適性に合わない職場ならば、転職するべきである」といった、転職に肯定的な意見が72.2%と、非常に多いのが特徴です。

転職に関する意識

割合

「自分の能力や適性に合わない職場であっても、転職は絶対すべきではない」

5.5%

「自分の能力や適性に合わない職場であっても、転職はできる限りしない方がよい」

11.8%

「自分の能力や適性に合わない職場ならば、転職することもやむをえない」

36.7%

「自分の能力や適性に合わない職場ならば、転職する方がよい」

25.4%

「自分の能力や適性に合わない職場ならば、転職するべきである」

10.0%

「わからない」

10.5%

参照:内閣府・平成30年版 子供・若者白書 特集 就労等に関する若者の意識

https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h30gaiyou/s0.html

愛社精神が強ければ、所属している企業で定年まで勤務したいという意識が働くはずなので、若者を中心に、愛社精神を持てない社員が増加していることがわかります。

1-2.終身雇用制の崩壊が影響

終身雇用制が機能していた時代には、多くの社員が愛社精神を持っていました。終身雇用制や年功序列の制度下では、一つの企業で定年まで勤め上げることが前提にあります。企業の業績が自分の生活にも影響を及ぼすため、自然と企業を支えるために働き、愛社精神を育むようになったのです。

その過程で上司や同僚ともコミュニケーションを取り、多くの社員の中で愛社精神が醸成されていきました。社員は企業のために尽くし、企業は社員の生活を保護するという、相互関係の上に愛社精神は成り立っていたのです。

しかし、少子高齢化により若い労働者の人口が減った結果、人件費の高騰により企業は終身雇用制度を維持できなくなりました。大手企業が早期退職者を募るなど、終身雇用制は徐々に姿を消しつつあります。

2.愛社精神を育むための5つの施策

愛社精神が希薄になりつつある現代。社員に愛社精神を持ってもらうためには、企業としてどのような施策をとるべきなのでしょうか。以下の5つの施策をご紹介します。

1.経営層が企業理念やビジョンを示す

2.行動指針を定める

3.福利厚生の充実

4.社員エンゲージメントを高める

5.適切な評価制度の確立

2-1.経営層が企業理念やビジョンを示す

社員の愛社精神を育むためには、企業が社員に対して明確なビジョンを示すことが重要です。企業理念や経営のビジョンをわかりやすく、丁寧に社員に伝える体制を整えましょう。

企業のあり方や目標を身近に感じてもらうことで、社員に愛社精神が生まれる可能性が高まります。企業理念やビジョンは朝礼の他にも社内報や社内wiki社内ポータルサイトなどを活用することで浸透させやすくできます。

2-2.行動指針を定める

企業の行動指針の存在は、社員の働き方に大きく影響します。行動指針とは社員の規範となるもので、企業理念よりも具体性のあるものです。有名な行動指針として、世界的なホテル事業を展開するザ・リッツ・カールトンホテル カンパニー L.L.Cの「ゴールドスタンダード」があります。ゴールドスタンダードはクレドカードという携帯可能なカードにまとめられており、社員はいつでも内容を確認できます。

社員が顧客や同僚に対し、行動指針に合わせた振る舞いを行うようになるため、自然と愛社精神が育まれていくのです。

2-3.福利厚生の充実

社員が働きやすい環境を整備することも愛社精神の醸成には欠かせません。

福利厚生には各種社会保険への加入のほか、社員への家賃補助や定期的なシャッフルランチの実施、部活動への補助金などが含まれます。

充実した福利厚生によって社員が安心して働ける環境を作れば、自然と仕事に集中することができるようになります。「企業のために働きたい」と思う気持ちが芽生え、愛社精神が育まれていくでしょう。

2-4.社員エンゲージメントを高める

愛社精神と少し似ていますが、意味が異なる「社員エンゲージメント」という言葉があります。これは、「所属する企業と自分の仕事に熱意を持ち、自発的に貢献しようとする社員の意欲」を指します。つまり、企業と社員が双方向的に貢献できるような関係のことです。社員エンゲージメントが高まると、自発的な行動によって企業の発展に貢献してくれるようになるでしょう。

愛社精神は社員から企業への一方通行的な側面が多いですが、企業側も社員に対して働きやすさや仕事のやりがいを提供することで、社員エンゲージメントを高めることにつながります。

社員エンゲージメントを高めるための施策としては、以下の2つの方法が効果的です。

・社員に対して企業理念やビジョンを明確にする

社員に対して企業の考え方や今後の方向性を示すことが重要です。企業を支える1人であるという当事者意識と、経営的な視点を持ってもらうことで社員のモチベーションが向上し、社員エンゲージメントも高まります。

・社員ごとに適切な評価を行う

社員に企業から認められていると意識してもらうことも、社員エンゲージメントを高めるために欠かせません。上司は部下との面談の際に、努力したり成果を出したりした点を適切に評価するようにしましょう。

評価されていることが「自分をちゃんと見てくれている」という意識につながり、企業へ貢献したいと思うようになるのが期待できます。

2-5.適切な評価制度の確立

社員の生活やがんばりをきちんと認める、適切な評価制度の確立も必要です。人事評価によって、社員の努力や働きを適正に認めることで、「正当な評価をしてもらえている」という意識を持ってもらうことが重要といえます。企業や上司から必要な人材とされていることで、より貢献しようという意識が芽生えます。それが愛社精神へとつながっていくのです。

社員のコンディションを把握するために、定期的な面談を行うなど、社員のケアに力を入れることも大切です。

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3.社員の愛社精神により期待できる3つの効果

社員が愛社精神を持つことで、主に以下の3つの効果が期待できます。

1.離職率の低下

2.生産性の向上

3.社員の自主性の発達

3-1.離職率の低下

先述の通り、若手社員を中心に転職に対してネガティブなイメージを持たず、労働環境の改善やキャリアアップを目的に、転職するのが当たり前になりつつあります。しかし、愛社精神を持った社員の場合は、企業を愛しているため転職や退職といった選択を思い描くことはほとんどありません。

採用した人材が成長し長く働いてもらえることは、企業として多くのメリットがあります。

3-2.生産性の向上

愛社精神を持つ社員が増えると、企業の成長を喜ぶ習慣が定着していきます。自然と仕事にも力が入るようになり、結束力が高まるでしょう。それにより高いチームワークが発揮され、社員間の業務効率が上がり、生産性の向上が期待できるのです。

3-3.社員の自主性の発達

愛社精神がある社員は仕事に対して非常に積極的です。企業の成長のため、部署の目標達成のために全力を尽くす姿は、周囲の社員にもよい影響を及ぼすでしょう。お互いに刺激し合いながら、社員たちは自主性を身につけていきます。

4.愛社精神は強要すべきものではない

前の章にて社員エンゲージメントについて解説しました。企業と社員が双方向的に貢献しようとする姿は、現在の日本企業のあり方にふさわしい形だといえるでしょう。

企業側が社員に対し、一方的に愛社精神を強要すべきではないのです。

4-1.愛社精神が強すぎると盲目的に

企業への愛が強すぎる社員は盲目的になりがちです。長時間労働によって体調を崩してしまうなど、企業のためと思っての行動が、裏目に出てしまうこともあるでしょう。

また、仕事内容や部署のメンバーとの関係性など、あまりよくない条件で働いているにもかかわらず、気付かずにいることは、かえってパフォーマンスの低下を招きかねません。

企業のことを想いすぎるあまり、不正に手を染めてしまう社員が現れる危険性もあります。愛社精神が強い社員が集まる部署で不正が行われた場合、明るみに出るのが遅くなり、社会問題に発展する恐れもあるのです。

4-2.雇用形態の変化を考慮すべき

終身雇用制が機能し、年功序列による昇格や昇給があった時代には、社員が自然と愛社精神を持つことができました。働き続けることで雇用の継続や給与アップが保証された環境では、自発的に企業のために働こうという意識が生まれるからです。

しかし、終身雇用制は崩壊し、多くの企業が成果主義を導入している現代では、社員が愛社精神を持つことが難しくなりつつあります。評価の対象にならなければ給与は上がらず、リストラなどにより定年まで働き続けることが難しくなっているからです。

企業としてはこのような現状を踏まえ、愛社精神を強要するのではなく、社員に愛社精神が芽生えるような企業風土の実現をめざしましょう。

4-3.労働環境と愛社精神を結びつけない

社員に対して過酷な労働を強いる、ブラック企業の存在が注目を浴びている近年、国を挙げた働き方改革の推進が始まっています。長時間労働の是正や多様な働き方の実現など、社会全体の生産性を高めることが働き方改革の狙いです。

このような流れの中で、企業側が愛社精神を盾にして、社員に対して不当に労働環境を悪化させることは避けるべきです。あくまでも、企業と社員が双方の繁栄のために尽力する姿が理想的だといえるでしょう。

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5.まとめ

適切な愛社精神があれば、社員はモチベーションを高く持って働くことができます。企業内の雰囲気も前向きになるでしょう。

社員の愛社精神を育むには、企業側の姿勢が大切です。

・企業理念やビジョンを明確にし、社員に進むべき道を提示する

・社員が働きやすい環境を整備する

・社員エンゲージメントを高める

上記の3点を意識して社員に示せるようにしておきましょう。

愛社精神は強制するものではなく、社員の中に自然と生まれてくるものなのです。

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